妄想小説1(梨沙子×あなた)デート。(さゆえり)

2011/02/08

妄想小説2(雅×あなた)

GREEからの掘り起こしもうひとつ。
雅ちゃんとの妄想デート編です。




「ねえ、明日買い物付き合ってよ」

登校するなり、雅からそんなことを言われた。
「おはよう」が先だろ。朝なんだから。

でも、雅と二人で買い物なんて、久しぶりだな。

家が隣同士なこともあって、
小さい頃から一緒に遊んだり、誕生日会したり、
二家族まとめて出かけたりしてたけど、
高校に入ってからはそんな機会も減っていた。

お互いに部活が忙しかったりっていうのもあるけど、
なんせ雅が同性に人気があるからなぁ。
暇さえあれば女友達に誘われている。しかも他のクラスからも。

以前、他のクラスの男子が雅に告白したことがあったが、
まあ周りの女子がうるさかった。
『あんたには釣り合わない』だの
『雅に告白なんて十年早い』だの言われてたっけ。
(しっかり雅にもフラれてたけど)

はっ、もしや俺もその標的に?

俺は慌てて辺りを見回してみる。
が、いつも通りの教室。
あれ?おかしいな。こっちを見てる女子がいない。
そして、目の前には机に両肘をつき、俺を見つめる雅。

「どうしたの?」
「い、いや、なんでもない」
雅が不思議そうに聞いてきたので、俺はとっさにごまかした。
取り巻きが気になって…なんて言えないだろ。

「で、買い物は?行くんでしょ?」
雅がさらに聞いてくる。
相変わらずの上から目線ですこと。昔からだけどさ。
「いいよ。どうせ暇だし」
「やったぁ」
俺が答えると、雅は一瞬満面の笑みになった。

!!
間近で見た雅の笑顔にちょっとドキッとした。
可愛い顔するなぁ…昔はちょっときつい印象だったけど。

「じゃ、明日ね」
時間と場所はメールするから、と雅は自分の席に戻っていった。
自分の用が済めばいいのね。昔からだけどさ。

言っときたいことがあったんだけどなぁ。
覚えてんのかなぁ…。



翌日。

俺と雅がやってきたのは、
近所にできたばかりのアウトレットモールだった。

「一回じっくり見に来たかったんだぁ、ここ」
入った瞬間に、雅のテンションは最高潮。
手当たり次第に店に飛び込んでいく。おいおい。

一時間もたたないうちに、
俺の両手は紙袋でいっぱいになっていた。
……はい。荷物持ちです。
こんなこったろうと思ったよ。

「あ、そうだ」
スキップしかねないテンションで歩いていた雅が急に立ち止まった。
俺は危なく雅に追突しそうになる。

「なんだよ急に」
「ん、ちょっとトイレ」
なんだトイレかよ…って、さっき行ったじゃん。

……?
ちょっと戻ったところにトイレがあったはずなのに、
雅は逆方向に向かって歩いて行く。

「こっちの方が近いぞー」
俺が指さして教えたのに、雅はどんどん逆方向へ。
「おーい、みやびー」
かなり離れてしまったので、大きな声で呼びかける。
すると、雅はくるっと振り返り、
「いいの!向こうの方が広いんだから!」
というが早いか、また向き直りすたすたと歩いて行く。
用足すだけなのに、広さとか関係あんのか?

仕方なく、手頃な壁に寄りかかり雅の帰りを待つ。
そういえば、昔はよく二人で出かけたっけなぁ…。

小さい頃は近所の公園とかだったけど、
中学ぐらいから雅がおしゃれに興味持ちだして、
やたら洋服屋に連れていかれるようになったんだよな。
そのあと二人でご飯食べて、カラオケ行って…。

今思えば、あれってデートっていうのか……?
思い返して恥ずかしくなってきたな。

「何ボーっとしてんの?」
いつの間にか雅が戻ってきていた。
「で、なんで顔が赤いのよ」
「えっ」
しまった、顔に出てた。

「ちょっと昔のことを思い出してて…さ」
「どうせやらしいこと考えてたんでしょ」
「違うよ。昔は雅と二人でよく出かけたよなぁ、と思って」
「なっ、なんであたしのこと考えて顔赤くしてんの!?」
ばしっ、と肩のあたりを叩かれた。
よく見るとそういう雅の顔も赤くなっている。

「お前の方こそ顔赤いけど」
「そ、それは…その、ほら急いで戻ってきたから」
俺が何の気なしに聞くと、雅は急にあたふたしだした。
なんでそんなに慌ててるんだよ。思いっきり挙動不審だぞ。
「そんなことより、外見た?」
そして思いっきり話をそらされる。まあいいけど。

「外?」
「うん。雨降ってきちゃった」
「雨!?」
近くの窓から外を見ると、外は大雨になっていた。
家を出る時は晴れてたから、傘なんか持ってないし。
どうしようかなぁ……。
と、次の瞬間。

ゴロゴロゴロ……。

遠くの方で、雷鳴が聞こえた。

「やだ、雷……?」
雅が自然と俺に寄り添ってくる。
「大丈夫だよ、まだ遠いから」

雅は強気なキャラに見えて、実は、雷とか幽霊が大の苦手。
一回お化け屋敷に連れて行こうとして、
顔面にグーパンチを食らったことがあるくらい。

こうなると、外には出られないなぁ。
雨があがるまでコーヒーでも飲んで待とうか。

俺の提案に雅も賛成。
「コーヒーショップは…3階にあるな」
エレベーター前の案内板で場所を確認。
エレベーターに乗り、3階のボタンを押す……。

ピカッ。

ん?なんだ今の。
ドアが閉まる前になんか光ったぞ。

「今の光、なに?」
雅も気づいたらしい。
「さあ。カメラのフラッシュかなんかじゃないか?」
なんて俺がのんきに答えた……その時だった。

ドーン!!!

天井から轟音が鳴り響いた。

「きゃあっ!!」
雅が俺の腕にしがみつく。な、なんだ!?

「!!」
電気が消えた。そして……。

エレベーターが止まった。

「なに、なんなの!?やだやだ、怖いっ!」
雅はパニック状態になっている。
暗くてよく見えないが、おそらくその場にへたりこんでいるんだろう。

さっきの光は雷か。どうやら建物を直撃したらしい。

「雅、落ち着け!今なんとかするから!」
俺はそう言うと、手探りで緊急通報用のボタンを探した。
確か、上の方だよな…電話のマークが書いてあるやつ…。

「ちょっと!離れないでよ!」
雅が俺の腕を両手でしっかりとつかむ。

「本当に怖いの……」
泣いてる……?
人前で泣いてるところを見せたことのない雅が。

でも、そんなに引っ張られると
ボタンに手が届かないんですけど……。

しばらくしてなんとか通報できた……けど、
エレベーター会社の人は来るまでに1時間ぐらいかかるらしい。
予備の電源が動いたのか、
エレベーターの中は薄暗い明りがついた。

雅は、エレベーターの隅っこでへたりこんだまま。
俺はその隣に腰をおろした。

「大丈夫だよ」
そう言って、俺は雅の頭をなでた。
「うん……」
雅は力なくうなずく。

だめだ、会話が続かない。
やっぱり怖いんだ。雅も……俺も。

俺たちが黙ってしまうとここは無音になる。
外がどうなっているのかわからない。
誰の声も何の音もしない。それが怖い。
1時間ってこんなに長かったかなぁ……。

「……ねえ」
おもむろに雅が口を開いた。
「前にもさ、似たようなことあったよね」
顔は前を向いたまま、絞り出すようにつぶやく。
似たようなこと?

ああ、あった。ずいぶん昔の話だ。

「キャンプで迷った時だろ?」
「そう。覚えてたんだ」
俺が答えると、雅がちょっとうれしそうに笑った。


もう10年前になる。
俺の家族と雅の家族でキャンプに行ったときの話。

それまでキャンプに行ったことのなかった俺と雅は、
森の中ではしゃいでるうちに道に迷ってしまった。
その時も雨が降ってきて、
偶然見つけたほら穴で一晩過ごしたんだっけ。


「あの時は、親にめっちゃ怒られたんだよなぁ」
「そうそう。うちのお母さんなんか泣きながら怒ってて、
もう訳わかんないことになってたもん」
そう言ってふたりで笑った。
雅と昔の話をするのは久しぶりかもな。

「あの時、ずっと腕枕してくれてたでしょ?」
不意に雅にそんなことを聞かれる。
「そういえば、そうだったかな」
俺はあやふやに答える。正直覚えていない。
「あれ、すっごく嬉しかったんだぁ」
そう言って、雅は俺の肩に頭を乗せてきた。

ドキドキしてる。びっくりするくらいに。
こんな時に不謹慎じゃないのか、俺。
もちろん、ドキドキの理由には
エレベーターに閉じ込められてるってのもあるけど。

小さいころから一緒にいたけど、
雅とこんなに密着したことは数えるぐらいしかない。
まして、高校に入ってからは……。

あらためて、異性として雅を意識してしまう。

「!!」
がたん、とエレベーターが揺れた。
落ちる!

「きゃああっ!」
「雅!」
俺は雅の体をしっかりと抱きしめた。

……。

キィーキィー、というワイヤーのきしむ音だけが
エレベーター内をしばし支配していた。

「……落ちて、ない?」
「……大丈夫みたいよ」
俺と雅はお互いに辺りを見回した。どうやら平気みたいだ。
雅を抱きしめていた腕をゆるめようと……。

「だめっ!」
腕をゆるめようとした瞬間、雅に止められた。
「お願い。しばらくこうやってて」
急に声が小さくなった。体が細かく震えている。

「また怖くなってきちゃったの……」
俺は無言で雅をぎゅっと抱きしめた。
また不謹慎だが、正直そんな雅が可愛くてしかたなかった。


「落ち着いてきたか?」
「ん、ちょっとね」
俺はしばらく雅を抱きしめながら、頭をそっとなでていた。
雅も安心したのか、完全に俺に体を預けている。

「……優しいね」
雅が聞こえるか聞こえないかぐらいの声でつぶやいた。
「雅だからだよ」
俺はごく自然にこんな言葉を発していた。
自分でもびっくりするくらい、自然に。

「えっ!?」
雅が強引に首をねじって俺の方に振り向く。
「俺が優しいのは、相手が雅だからだよ」
俺は改めて素直な気持ちを伝えた。

「雅じゃなかったら、ここまで優しくなれない」

「ほんと?本気で言ってんの?」
雅は体ごと俺に向きなおり、上目遣いで見つめてくる。
「本当だよ」
うたぐり深いなぁ。
俺は真正面からしっかりと雅の目を見て答えた。

「良かったぁ」
雅がほっとしたように笑った。ん?

「あたしも」
言いながら、雅は俺にぐっと近寄った。
俺の視界には雅の顔しかない。
「あなただから、ここまで甘えられるの」
そう言いながら雅はさらに顔を近づけてくる。

え、え、これはひょっとして……。

雅は顔を近づけながら――目を閉じた。

――よし、わかった。
雅の意思に答えようと、俺も目を閉じて……。


ガタガタッ。
「大丈夫ですか!?」
エレベーター会社の人だろう、
グレーの作業服を着た、中年の男性が扉を開けて飛び込んできた。

「だ、だ、大丈夫ですっ!」
俺と雅はこう声をそろえながら、
慌ててエレベーターの両端へ飛びのいた。はぁ。


帰る頃にはすっかり雨も上がっていた。
「でもラッキーだったね。商品券もらっちゃったし」
「そうだな」
お店からお詫びのしるしに、ということで商品券をもらった。
それはそれでラッキーだけど……。

「あ、そうだ」
ふと雅が立ち止まった。
バッグの中を何やら探している。何してんだ?
「はい、これ」
ずいっ、と手を俺の目の前に突き出す。

その手の上には――ブレスレット。

「この青い石……今日の誕生石なんだって」
雅は、顔を真っ赤にしながら説明してくれる。
「誕生日、おめでとう」

覚えててくれたのか。
昨日、念を押そうと思ってたのに。
これはかなり、いや、めっちゃうれしい。

「ありがとう」
俺はブレスレットを受け取り、さっそくはめてみる。
「どう?」 
「似合うよ。似合うに決まってるでしょ。あたしが選んだんだもん」
さっきまで照れてたかと思ったら、今度はいつもの調子。
忙しい奴だな、まったく。
でも、いつの間に買ってたんだ?これ。

「これ?トイレ行くって言ったとき」
雅に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
あの、わざと遠い方のトイレに行った時か。

「買うところ見られたくなかったから」
「なんで?」
「だって、ビックリさせたかったんだもん」
そう言って、恥ずかしそうにうつむく。可愛いなぁ。

「ありがとな、雅」
そう言って、俺は雅の手を握った。
紙袋を持っているせいでなかなかうまく握れないでいると、
雅の方から腕をからめてきた。
「うんっ」

こうして、俺たちは仲良く家路についた。


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