油断~Independence Girls・第10話お説教。(れなえり)

2011/07/17

そばにいたいだけ(真野→?)

今日も夏のハロー!プロジェクトライブ。


みんな朝から最終リハーサルに余念がない。



でも。




あたしは、リハに集中できていなかった。

つんく♂さんがアドバイスしてくれていたのに、ほとんど覚えてない。



せっかくハロプロメンバーが全員揃ってるのに。



あの人と話ができてない。



朝からずっとチャンスをうかがっているけど、

あの人はマネージャーさんや他のメンバーと話をしていて忙しそうで。



気付くと、どんな時でもあの人をずっと目で追っている。


あの人がひとりになる瞬間を逃さないように。



自分のパートのリハがひとまず終わり、
あたしは楽屋へ戻る。


「あっ」


あたしは思わず声を上げた。


あの人がひとりでいる。



あたしは話しかけようと駆け寄って行った。


が。



あたしが行くより先に、徳永さんがあの人のもとへ。



……嬉しそうに話してるなぁ。

仕方ないよね、徳永さんの方が付き合い長いんだし。



あたしは黙って自分の楽屋へ戻った。


はあ。なにやってんだろ、あたし。

楽屋に入るなり、大きなため息をつく。


でも、やっぱりあの人とふたりで話したいんだもん。

電話とかじゃなくて、直接。


ハロコンはそれができるチャンス。

逃さない手はない。


あたしは意を決して、あの人の楽屋へ向かった。



「あっ……」

あたしの決意は、次の瞬間あっさりと揺らぎそうになった。



強敵。



鈴木さんがあの人と話をしていた。



鈴木さん、寄り添いすぎじゃない?

そ、それに……腕なんか絡めちゃってるし。



鈴木さんと目が合う。



あたしを見て、笑った。

そしてすぐあの人の方へ視線を戻す。



なんなの?

もしかして……気付かれてる?


鈴木さんって、妙に感が鋭いからなぁ……あり得る。



あたしは、とりあえず鈴木さんの背中に軽く会釈しておいて、
客席へと向かった。


暇つぶしに、他のメンバーのリハでも見てよっと。




ステージでは、モーニング娘。さんのリハが行われていた。


やっぱり娘。さんは違うなぁ。かっこいい。

あたしはステージにしばし見とれていた。



あたしも、こんなかっこよく歌って踊れるようになりたいなぁ…。


と、誰かが隣に座る気配を感じた。

あたしはステージに集中してたいので、視線を向けることもしない。



「まーのちゃん」

耳元でささやくように名前を呼ばれた。


その声に、あたしの集中力は一気にステージから離れていく。





隣にいたのは――あの人。



「舞美ちゃん……!」

朝からずっとあたしが話したくてしょうがなかった相手。


まさか舞美ちゃんの方から来てくれるなんて。



「どうしたの?」

あたしは、嬉しすぎてにやにやしたくなるのをぐっとこらえながら聞く。


「どうしたの、って」

すると舞美ちゃんは、にっこりと笑った。


「あたしに話があったのは、真野ちゃんでしょ?
朝からずっと何か言いたそうにしてたじゃない」

舞美ちゃんは、あたしの方にぐっと顔を寄せてこう続けた。


ばれてた。ちょっと恥ずかしい。


「で、なーに?」

舞美ちゃんがあたしに聞く。


もぉ、首とかかしげないで。かわいすぎる。


あたしは、ついににやにやしてしまった。



「なんにもなーい」

あたしはおどけて答える。


「隣にいてくれればいいのっ」

あたしはそう言うと、舞美ちゃんのおでこに自分のおでこをくっつけた。



「真野ちゃん?どうしたの?」


「なんでもないなんでもない。うふふっ」


びっくりしたように目を見開く舞美ちゃん。

たぶん、あたしの笑顔はちょっと気持ち悪かったと思う。



でも、そんなことどうでもよくなっちゃったんだもん。

いろいろ話したいことあったはずなんだけど。


なんか全部吹っ飛んじゃった。




このまま時間が止まってくれればいい。



あたしは本気でそんなことを考えていた。


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sarishin at 14:13│Comments(0)TrackBack(0)真野恵里菜編 

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