2011/08/31
密かな思い。(なきちさ)
「でさ、舞ちゃんってばひどいんだよぉ。千聖のことほったらかしでさー」
レコーディングの合間の休憩時間。
あたしと千聖は、近くのパスタ屋さんでお昼ご飯を食べていた。
「で、途中でいなくなっちゃって、迷子の呼び出ししてもらってさー」
上機嫌で喋り続ける千聖。
あたしは、その聞き手に徹する。
「あ、ごめんねなっきぃ。千聖ばっかりしゃべっちゃって」
千聖がそう言いながら小さく舌を出す。
「気にしなくていいよ。千聖の話聞いてるの楽しいしさ」
あたしは笑って答える。
実際、千聖の話は聞いてて飽きない。
言葉のチョイスが他の人と微妙に違う時があって、それがあたしのツボに入ったりする。
……ほかにも理由はあるけど。
「あーほら、なっきぃってば!またトマトソースついてる」
ぼーっとしながらパスタをフォークで巻いていると、
千聖が声を上げた。
「もー、世話が焼けるなぁ」
千聖の顔が近付く。
……女の子の顔になったよねぇ。
ちょっと前まで、めっちゃボーイッシュだったじゃん。
いつからこんな女っぽくなったんだろう。
いつからこんな魅力的になったんだろう。
あたしがそんなことを考えている間に、
千聖は、慣れた手つきであたしの口の端をそっと拭いていく。
……って。
「ちょっと岡さん!ナプキン使ってよ!」
あたしは思わず大きな声を出してしまった。
慌てて周りに頭を下げる。
だって……指。
千聖ってば、自分の指でソース拭くんだもん。
「いいじゃん別に。汚いもんじゃないんだからさ」
あたしの抗議にも千聖はどこ吹く風。
そして、ソースがついたままの指を――。
ちょ、ちょっと!
なにすんの千聖――!
ぺろっ。
……舐めちゃった。
「あーっ!トマトソースもおいしいー!今度はトマトソースのやつ頼もうかな」
千聖はやっぱり気にしてる様子はない。
あたしの鼓動はMAXまで早まっていた。
びっくりした。
千聖の行動があまりにも自然で、それがかえって恥ずかしくて。
あたしはしばらく千聖の顔が見られなかった。
ひとりで勝手に盛り上がってる、あたし。
でもそれは、仕方のないこと。
だって、千聖への気持ちは、誰にも教えてないから。
千聖にはもちろんだけど、℃-uteメンバーにもずっと内緒にしてる。
千聖といると、ホントに安心できる。
さりげない気遣いや、何気ない優しさ、そして、可愛い顔と可愛い声。
全部が好き。
だけど、言えない。
言っちゃいけない。
「―っきぃ!なっきぃってば!」
はっ、自分の世界に入ってた。
千聖の声で現実の世界に引き戻される。
「巻きすぎ」
千聖がそう言って、にやにやしてる。
ん?巻きすぎって?
「あ」
あたしは自分の手元を見て、すべてを理解した。
皿にあったほとんどのパスタをフォークに巻きつけていた。
どんだけぼーっとしてたの、あたし。
「中さんだいじょうぶー?」
千聖が笑顔のまま、あたしの頭をぽんぽんとなでる。
笑うと三日月形になるその目。
あたしが、千聖の顔で一番好きなとこ。
それが、今、あたしの目の前にある。
――ダメだよ、早貴。
その時、千聖の携帯が鳴った。
千聖はあわてて自分のバッグから携帯を取り出す。
電話はマネージャーさんからのようだった。
ふう。
危なく理性が崩壊するとこだった。
「ごめんなっきぃ」
電話を切った千聖が、あたしに両手を合わせてくる。
「レコーディングの予定変わって、千聖だけ先に行かなきゃいけなくなっちゃった」
……なんちゃってデート終了。
あたしは、大きなため息をひとつつく。
「……怒ってる?」
千聖がおそるおそる聞いてくる。
「怒ってるわけないでしょ」
あたしは笑って答える。
「よかったぁ」
ほんとにほっとしたように笑い、千聖は立ちあがる。
「じゃあ、先行くね」
千聖は千円札を1枚テーブルに置いて、ぱたぱたと駆けていった。
――デートみたいで楽しかったね、なんて言い残して。
その言葉、罪つくりだよ、千聖。
もし、千聖がその場にいたら、あたしはこんな言葉をぶつけてしまったかもしれない。
『みやとのデートより楽しかった?』
レコーディングの合間の休憩時間。
あたしと千聖は、近くのパスタ屋さんでお昼ご飯を食べていた。
「で、途中でいなくなっちゃって、迷子の呼び出ししてもらってさー」
上機嫌で喋り続ける千聖。
あたしは、その聞き手に徹する。
「あ、ごめんねなっきぃ。千聖ばっかりしゃべっちゃって」
千聖がそう言いながら小さく舌を出す。
「気にしなくていいよ。千聖の話聞いてるの楽しいしさ」
あたしは笑って答える。
実際、千聖の話は聞いてて飽きない。
言葉のチョイスが他の人と微妙に違う時があって、それがあたしのツボに入ったりする。
……ほかにも理由はあるけど。
「あーほら、なっきぃってば!またトマトソースついてる」
ぼーっとしながらパスタをフォークで巻いていると、
千聖が声を上げた。
「もー、世話が焼けるなぁ」
千聖の顔が近付く。
……女の子の顔になったよねぇ。
ちょっと前まで、めっちゃボーイッシュだったじゃん。
いつからこんな女っぽくなったんだろう。
いつからこんな魅力的になったんだろう。
あたしがそんなことを考えている間に、
千聖は、慣れた手つきであたしの口の端をそっと拭いていく。
……って。
「ちょっと岡さん!ナプキン使ってよ!」
あたしは思わず大きな声を出してしまった。
慌てて周りに頭を下げる。
だって……指。
千聖ってば、自分の指でソース拭くんだもん。
「いいじゃん別に。汚いもんじゃないんだからさ」
あたしの抗議にも千聖はどこ吹く風。
そして、ソースがついたままの指を――。
ちょ、ちょっと!
なにすんの千聖――!
ぺろっ。
……舐めちゃった。
「あーっ!トマトソースもおいしいー!今度はトマトソースのやつ頼もうかな」
千聖はやっぱり気にしてる様子はない。
あたしの鼓動はMAXまで早まっていた。
びっくりした。
千聖の行動があまりにも自然で、それがかえって恥ずかしくて。
あたしはしばらく千聖の顔が見られなかった。
ひとりで勝手に盛り上がってる、あたし。
でもそれは、仕方のないこと。
だって、千聖への気持ちは、誰にも教えてないから。
千聖にはもちろんだけど、℃-uteメンバーにもずっと内緒にしてる。
千聖といると、ホントに安心できる。
さりげない気遣いや、何気ない優しさ、そして、可愛い顔と可愛い声。
全部が好き。
だけど、言えない。
言っちゃいけない。
「―っきぃ!なっきぃってば!」
はっ、自分の世界に入ってた。
千聖の声で現実の世界に引き戻される。
「巻きすぎ」
千聖がそう言って、にやにやしてる。
ん?巻きすぎって?
「あ」
あたしは自分の手元を見て、すべてを理解した。
皿にあったほとんどのパスタをフォークに巻きつけていた。
どんだけぼーっとしてたの、あたし。
「中さんだいじょうぶー?」
千聖が笑顔のまま、あたしの頭をぽんぽんとなでる。
笑うと三日月形になるその目。
あたしが、千聖の顔で一番好きなとこ。
それが、今、あたしの目の前にある。
――ダメだよ、早貴。
その時、千聖の携帯が鳴った。
千聖はあわてて自分のバッグから携帯を取り出す。
電話はマネージャーさんからのようだった。
ふう。
危なく理性が崩壊するとこだった。
「ごめんなっきぃ」
電話を切った千聖が、あたしに両手を合わせてくる。
「レコーディングの予定変わって、千聖だけ先に行かなきゃいけなくなっちゃった」
……なんちゃってデート終了。
あたしは、大きなため息をひとつつく。
「……怒ってる?」
千聖がおそるおそる聞いてくる。
「怒ってるわけないでしょ」
あたしは笑って答える。
「よかったぁ」
ほんとにほっとしたように笑い、千聖は立ちあがる。
「じゃあ、先行くね」
千聖は千円札を1枚テーブルに置いて、ぱたぱたと駆けていった。
――デートみたいで楽しかったね、なんて言い残して。
その言葉、罪つくりだよ、千聖。
もし、千聖がその場にいたら、あたしはこんな言葉をぶつけてしまったかもしれない。
『みやとのデートより楽しかった?』
