2012/03/12
こんなこともあろうかと。(やじすず)
撮影現場の帰り道、桜の咲く素敵な公園を見つけた。
明日は愛理も一緒だし、撮影もお昼過ぎには終わるから
二人でお花見しようかな。
【明日お花見しない?現場の近くに桜があるんだよー。】
愛理にメールしてみる。
【桜!?見たい見たいっ!お花見しよう!】
普段は返信の遅い愛理から、すぐに返事が返ってくる。
【じゃあ、明日お花見の準備していくね】
【愛理も準備してくねー】
俄然明日の撮影が楽しみになっちゃった。
明日に備えていつもより早く布団に入ったけど、
楽しみすぎて全然眠くならない。
修学旅行の前の日みたい。
わくわくしちゃってどうしよう。
撮影…お花見………楽しみだなぁ…………。
そして、朝。
「……うそでしょ……?」
窓を開けなくてもわかる。
2階にあるはずの、あたしの部屋の窓を勢いよく叩いているそれ。
そう。
外はどしゃ降りの雨。
一応、カーテンを開けてみる。
「やっぱり……」
雨は予想通り、激しく窓を叩いていた。
遠くの空では雲の隙間から閃光が漏れていた。雷が鳴ってる。
携帯を見てみると、マネージャーさんからのメール。
【撮影は延期。さすが矢島】
さすがじゃないよぉ。
撮影が延びたのも残念だけど、愛理とのお花見…。
今日の現場はそうそう何度も行ける所じゃないのに……。
その時、あたしの携帯にメールの着信。
「愛理?」
携帯の画面を見てつぶやく。
【舞美ちゃん、外見てみて】
外?
言われるがまま、あたしはもう一度窓へ。
「えっ?」
窓の外には、見慣れた色の傘。
その傘の下から、愛理の笑顔が覗く。
「愛理!?何してんの?」
聞こえるはずもないのに、思わず口をつく。
あたしは慌てて下の階へ降りていく。
こんな雨なのに、お花見なんてできるわけないじゃない。
「愛理!」
玄関にいっぱい並んでる傘を適当につかみ取り、外へ飛び出す。
「あ、舞美ちゃん。おはよー」
愛理はどこ吹く風、といった様子でひらひらと手を振る。
その腕には大きなバスケットが引っかけてある。
おそらくお弁当か何かが入ってるんだと思う。
「さ、行くよ」
言うが早いか、愛理はあたしの手を取って歩きだそうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ愛理。この雨だよ?お花見なんて…」
「いいからいいから」
あたしの抵抗も振り切って、愛理はずんずんと歩いて行く。
あれ?
愛理、どこ行く気なの?
行く予定だった現場とは全然違う方向だよ?
「んふふー、ここだよ」
愛理がにこにこしながら足を止める。
「ここ?」
連れてこられたのは近所にある大学。
「ここね、一般利用OKのいいとこがあるんだよ」
そう言うと、愛理は走りだした。
「待ってよ愛理!」
あたしも慌てて愛理の後を追う。
愛理と二人でエレベーターに乗りこむ。
押されたボタンは「R」……屋上?
「今まだ講義してる時間だから、空いてると思うんだけどなぁ…」
エレベーターの上にあるフロア表示が変わっていくのを見つめながら、
愛理がいつものふにゃりとした笑顔でつぶやく。
そしてエレベーターが屋上につく。
扉が開くと、そこには――。
「わあ……」
そこは眼下に広がる景色を一望できる、展望デッキになっていた。
川沿いに咲く桜も、遠くの山や公園に咲く桜もいっぺんに見られる。
「きれい……」
「でしょぉ?ここなら絶対いい景色が見られると思ったんだぁ」
感動するあたしの横で、愛理が自慢げに言う。
「でも愛理、なんでここに展望デッキがあるって知ってるの?」
あたしがふとした疑問を聞いてみる。
「へっ?それは…えっとぉ……」
愛理の顔がみるみる赤くなる。
「あのぉ…前に舞美ちゃんの家で遊んだ帰りにたまたまここに大学あるの知って、
で、偶然展望デッキがあるの見つけてぇ…ホントたまたまなんだけどぉ…」
耳まで真っ赤にしながら愛理が続ける。
「それでぇ、いつか舞美ちゃんと二人でここに来れたらいいなぁって、デートみたいだなぁって……」
早口でしゃべってるから最後の方は何言ってるかわかんないけど。
とりあえず、たまたまここを見つけたってことなんだね。
「ありがと愛理。うれしいよっ」
あたしは愛理をぎゅっと抱きしめる。
「どどどどどういたしましてっ」
愛理はますます顔を赤くする。雨にぬれて熱でも出たのかな。
「お、お弁当食べよっ」
あたしが離れると、愛理は窓際のベンチへ走っていく。
ベンチにならんで座り、景色を見ながら愛理手作りのお弁当を食べる。
愛理の熱も引いたみたいで、にこにこしながらあたしの方を見つめてる。
雨女っぷりが発揮されてどうしようかと思ったけど、結果オーライかな。
ありがとう愛理。大好きだよ。
そういう機転のきく所。
明日は愛理も一緒だし、撮影もお昼過ぎには終わるから
二人でお花見しようかな。
【明日お花見しない?現場の近くに桜があるんだよー。】
愛理にメールしてみる。
【桜!?見たい見たいっ!お花見しよう!】
普段は返信の遅い愛理から、すぐに返事が返ってくる。
【じゃあ、明日お花見の準備していくね】
【愛理も準備してくねー】
俄然明日の撮影が楽しみになっちゃった。
明日に備えていつもより早く布団に入ったけど、
楽しみすぎて全然眠くならない。
修学旅行の前の日みたい。
わくわくしちゃってどうしよう。
撮影…お花見………楽しみだなぁ…………。
そして、朝。
「……うそでしょ……?」
窓を開けなくてもわかる。
2階にあるはずの、あたしの部屋の窓を勢いよく叩いているそれ。
そう。
外はどしゃ降りの雨。
一応、カーテンを開けてみる。
「やっぱり……」
雨は予想通り、激しく窓を叩いていた。
遠くの空では雲の隙間から閃光が漏れていた。雷が鳴ってる。
携帯を見てみると、マネージャーさんからのメール。
【撮影は延期。さすが矢島】
さすがじゃないよぉ。
撮影が延びたのも残念だけど、愛理とのお花見…。
今日の現場はそうそう何度も行ける所じゃないのに……。
その時、あたしの携帯にメールの着信。
「愛理?」
携帯の画面を見てつぶやく。
【舞美ちゃん、外見てみて】
外?
言われるがまま、あたしはもう一度窓へ。
「えっ?」
窓の外には、見慣れた色の傘。
その傘の下から、愛理の笑顔が覗く。
「愛理!?何してんの?」
聞こえるはずもないのに、思わず口をつく。
あたしは慌てて下の階へ降りていく。
こんな雨なのに、お花見なんてできるわけないじゃない。
「愛理!」
玄関にいっぱい並んでる傘を適当につかみ取り、外へ飛び出す。
「あ、舞美ちゃん。おはよー」
愛理はどこ吹く風、といった様子でひらひらと手を振る。
その腕には大きなバスケットが引っかけてある。
おそらくお弁当か何かが入ってるんだと思う。
「さ、行くよ」
言うが早いか、愛理はあたしの手を取って歩きだそうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ愛理。この雨だよ?お花見なんて…」
「いいからいいから」
あたしの抵抗も振り切って、愛理はずんずんと歩いて行く。
あれ?
愛理、どこ行く気なの?
行く予定だった現場とは全然違う方向だよ?
「んふふー、ここだよ」
愛理がにこにこしながら足を止める。
「ここ?」
連れてこられたのは近所にある大学。
「ここね、一般利用OKのいいとこがあるんだよ」
そう言うと、愛理は走りだした。
「待ってよ愛理!」
あたしも慌てて愛理の後を追う。
愛理と二人でエレベーターに乗りこむ。
押されたボタンは「R」……屋上?
「今まだ講義してる時間だから、空いてると思うんだけどなぁ…」
エレベーターの上にあるフロア表示が変わっていくのを見つめながら、
愛理がいつものふにゃりとした笑顔でつぶやく。
そしてエレベーターが屋上につく。
扉が開くと、そこには――。
「わあ……」
そこは眼下に広がる景色を一望できる、展望デッキになっていた。
川沿いに咲く桜も、遠くの山や公園に咲く桜もいっぺんに見られる。
「きれい……」
「でしょぉ?ここなら絶対いい景色が見られると思ったんだぁ」
感動するあたしの横で、愛理が自慢げに言う。
「でも愛理、なんでここに展望デッキがあるって知ってるの?」
あたしがふとした疑問を聞いてみる。
「へっ?それは…えっとぉ……」
愛理の顔がみるみる赤くなる。
「あのぉ…前に舞美ちゃんの家で遊んだ帰りにたまたまここに大学あるの知って、
で、偶然展望デッキがあるの見つけてぇ…ホントたまたまなんだけどぉ…」
耳まで真っ赤にしながら愛理が続ける。
「それでぇ、いつか舞美ちゃんと二人でここに来れたらいいなぁって、デートみたいだなぁって……」
早口でしゃべってるから最後の方は何言ってるかわかんないけど。
とりあえず、たまたまここを見つけたってことなんだね。
「ありがと愛理。うれしいよっ」
あたしは愛理をぎゅっと抱きしめる。
「どどどどどういたしましてっ」
愛理はますます顔を赤くする。雨にぬれて熱でも出たのかな。
「お、お弁当食べよっ」
あたしが離れると、愛理は窓際のベンチへ走っていく。
ベンチにならんで座り、景色を見ながら愛理手作りのお弁当を食べる。
愛理の熱も引いたみたいで、にこにこしながらあたしの方を見つめてる。
雨女っぷりが発揮されてどうしようかと思ったけど、結果オーライかな。
ありがとう愛理。大好きだよ。
そういう機転のきく所。
