keizo1 池田聡のバックコーラス、アイドル歌手への楽曲提供を経て、1991年3月にメジャーデビューを果たした中西圭三。「Choo Choo TRAIN」や「タイミング」など提供作家としてのヒット曲を持つ彼ですが、基本的にはソングライター&ボーカリストとして90年代を通して主体的に活動を続けていました。今回の「Artist Archive」では、そんな中西の活動全盛期にあたる1991〜1994年までの全オリジナルアルバムをレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。



中西圭三・1991〜1994年全オリジナルアルバムレビュー


KEIZO〜かなわない夢もあった〜
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 1991年5月25日発売、帯に「メロディーの救世主」とのキャッチコピーが添えられたデビューアルバム。全10曲収録。
 二ヶ月前のデビューシングル「タンジェリン・アイズ」収録。作曲は当時駆け出しのアレンジャーであり、その後深く中西と関わることになる小西貴雄との全曲共作。作詞に川村真澄、松井五郎、編曲に清水信之、小林信吾といった実績のある制作陣を招いて手堅く作られており、その後のダンサブルっぽさは希薄なポップな作り。ミディアムアップの「ミッドナイト・コール」は翌年シングルのカップリングで大胆にリミックスされたので、オリジナル盤は今聴くと少し物足りない(笑)。本作では「Love again」「夏の終わりのデッキシューズ」などのバラードの佳曲が目立つ印象である。
 なお、本作のジャケットは二種類存在。上記のジャケット(真ん中分けの中西)が発売当時のもの。本記事冒頭のジャケット(髪をツンツンに立てた中西)が、次作「Yell」発売前後に新たに撮影され差し替えられたもの。


Yell
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 1992年3月25日発売、2ndアルバム。全10曲収録。
 昨年末から年明けにかけてZOOに提供した「Choo Choo TRAIN」が大ヒットして作曲家として注目された中、3rdシングルの「Woman」がカメリアダイヤモンドのCMソングに起用されヒット。前後のシングル「片想いのバースデー」「君は君の誇り」の計3枚のシングルを収録。作詞家の売野雅勇が10曲中7曲を手掛けるメインライター的存在に。
 前年からZOOのシングルにて(小西貴雄と共同で)楽曲提供を続けてきた歌モノダンサブル路線を自らの作風にも反映させたアルバムで、「ダイヤモンド・レイン」を筆頭に全編に渡って打ち込みダンスナンバーが目白押しだが、中西の清涼感あるボーカルのおかげで暑苦しさは全く感じさせない聴きやすいアルバム。ただダンス推し(?)が強烈すぎて途中で挟まれるバラード曲が箸休め的な地味な曲に聴こえてしまうのが難点か。


Steps
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 1993年3月3日発売、3rdアルバム。全12曲収録。初のオリコンチャート1位を獲得。
 ダンス路線「Ticket To Paradise」(フェードアウトしないリミックスバージョン)、ポップス路線「君のいる星」、熱唱型バラード「あの空を忘れない」、そして再びカメリアダイヤモンドのCMに起用された「You And I」の4枚のバラエティ豊かなシングルを収録。
 更にアルバム曲も充実。中でも初のオーケストラをバックに歌う「手のひら」、ミディアムスローの「青い影」、そして本作発売直後に自動車のCMソングタイアップが付いた「Precious Love」の3曲は後年のベストアルバムに複数回選曲されるなど存在感が大きい。中西の全オリジナルアルバムの中で最も完成度が高い作品として、ベストの次に聴くアルバムとしてお薦め。
 ちなみに予約購入限定特典として、THE TAPS名義の8cmシングル「明日があるさ」が配布された。坂本九のカバー曲で、中西プロデュースのアカペラ4声グループという設定だったが、実質は中西が一人で全てのパートを歌っているフェイクユニットだと後に明かされた。中西名義のアルバムには2016年のオールタイムベストにボーナストラック的に収録されている。


Starting Over
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 1994年3月23日発売、4thアルバム。全12曲収録。前作に続きオリコン1位を獲得。
 「眠れぬ想い」(完全新アレンジのorchestral style)、「たったひとつの愛を」「A.C.E.」の3枚のシングルに加え、後に構成を変更しシングルカットされた「非情階段」を収録。これまでは中西&小西の共作曲が各アルバムの半分を占めていたが、本作では1曲を除いて中西が単独で作曲を手掛けている。なお、小西は次二作のオリジナルアルバムでは1曲のみの担当になるなど関係が変化した(その後はまた全面的に復帰)。
 冒頭のタイトル曲「STARTING OVER」が頭ひとつ抜けたキラーチューン。前半は前作のバラエティ路線を踏襲。後半になると穏やかなミディアム「永遠の名前」、AOR風の「2a.m.」、久し振りに生ドラムを使用した「夢の果てまで」など90年代後半の彼の作風が顔を見せ始めるがこの時点では異色に映った。前半と後半でカラーがやや異なるアルバムだが、ポピュラリティーは相変わらずなので、聴きやすさは健在。