2017年08月10日

「マイレージ、マイライフ」Up in the air ⭐︎⭐︎⭐︎(⭐︎)





この映画を撮った監督は、1977年生まれのジェイソン・ライトマン。2007年公開、映画「ジュノ」を30歳でつくり注目を浴びていますが、2009年、この映画を32歳で作ってしまう監督の人生に興味を持ちました。

父親は、チェコ出身のホロコーストから逃れカナダに移住したユダヤ系のアイヴァン・ライトマン。ゴースト・バスターズの監督として知られる偉大な父親と女優の母親のもと監督は育ちロサンゼルスに転居。監督によると、自分は敗北者で映画オタクでシャイな幼少期を過ごしたそうです。

両親は我が強そうなので、引き立て役に回ってしまい愛情不足にならないか心配になる家庭環境ですが、1980年代後半には父親の映画に出演したり、映画製作アシスタントをしたり英才教育を受け、世界大学ランキングでも100番以内に入る南カリフォルニア大学卒業したり家の強みも活かしている人のようです。

因みに、同大学の映画芸術学部からは、スター・ウォーズシリーズを手がけたジョージ・ルーカス、バック・トゥ・ザ・フューチャーやフォレスト・ガンプを手がけたロバート・ゼメキス、ビューティフル・マインドを手がけたロン・ハワードが育っています。

ジュノとこの作品でアカデミー賞監督賞にノミネートされ、同大学の先輩達に続きアカデミー賞へ果敢にリーチをかけてきたジェイソン・ライトマン。因みに、本作では脚色賞にもノミネートされています。

2011年には娘をもうけた脚本家のミシェル・リーとの離婚も監督は経験。恋多き職業かもしれない監督や女優の家庭に育てば、確率的に監督も恋多くなってしまいそうな印象をもってしまい、ジュノの子供の父親のような家庭だったのかと想像してしまいます。

英語のタイトルは「up in the air」、未決定という意味のようですが、恋多い人生から監督が学ばれた深い理解を表現された作品かもしれません。



マイレージ・マイライフは、飛行機会社のマイレージを貯めることを目標にしているリストラ告知請負人を仕事とする中年男性の主人公が、2人の女性との出会いや別れのなかで、自分の人生の価値観を見直す作品。

私も最近、病気療養中に2週間後まで働きたいという私の希望を理解したという管理者からのメールが届き驚き、初めて退職にされたわけでもありませんが、リストラの憂き目を経験したことはあるため、実際にリストラされた人達の映像に胸を痛めました。給料未払いなどでは転職して誤りはないと思います。

ジョージ・クルーニー演じる主人公は、善良な人で、早くに両親を亡くしたためか、リストラ告知請負人のような過酷な職に就職。主人公は退職者が味わう人生でも最大級の苦痛を軽減することに励み、自分の仕事の専門性に誇りをもって成功も納める専門職でした。

大量にリストラを行う会社へ向かうため、日々、全米を飛行機で飛び回っていて家族とは疎遠になっていますが、充実した無駄のない効率的な暮らしに彼は満足していました。



しかし、妹が結婚することになり、妹夫妻の写真と全米の景色をカメラに撮って来て欲しいという願いを主人公は引き受けて、主人公の生活に変化が訪れます。

職場には、大学を首席で卒業した若い女性が採用されて、退職通知をwebで行えば経費節減に繋がる案を出し、主人公の上司は採用を検討します。主人公は長年勤めてきた慣れた仕事を失いかけたことに加えて、主人公が失業者に配慮してきた専門性を否定されたのかもしれず、若い女性と上司に抗議します。

すると、主人公はその女性の教育係に任命されてしまい、未熟で感情的、自己主張が強い若い女性と一緒に出張する立場となり、距離をとりクールに暮らしてきた今までの生活を脅かされます。

その前に、主人公は出張先のバーで、熟年のセクシーな女性と知り合い、遊びの関係と割り切り付き合っていました。主人公は彼女と楽しみたいのですが、新米が出張のせいで別れを経験して泣きついてくるなど思い通りにことが進みません。



交際相手の女性に妹の結婚式への同席を頼み、主人公は仕事の合間に結婚式へ向かいます。

そこで幼い頃の自分を交際相手の女性に語り受け入れられます。

また、結婚相手の男性が妹との結婚を突如拒んでしまったため、姉から説得を依頼されます。

結婚など求めていない主人公が必死に結婚するよう花婿を諭します。結局、2人は結婚します。



主人公はマイレージを貯める以上に、今まで面倒くさがってきた家族や友人、恋人との繋がりや愛情に癒されてしまいました。

主人公は遊びの付き合いと割り切っていた女性の家を訪ねて求婚を考えたようでした。しかし、ドアの向こうには、子供達と一緒の交際相手がいました。主人公は彼女にとっては不倫相手でした。遊びの関係なのに困ると交際相手は主人公との関係を断ちます。

そして遂に主人公は長年の夢であったマイレージ獲得を若年者最高記録で達成しましたが、全く喜べません。

部下の新人女性は、いきがって主人公の代わりに退職を宣告しましまが、その女性が自殺してしまったことにショックを受けてメール通告で会社を辞めます。主人公は彼女の転職が上手くいくよう紹介状を書きます。

会社もネットによるリストラ通知を考え直し、主人公は今まで通りの仕事が出来るようになりましたが、今までと違い仕事に張りがでません。



人生で何が大切なのか、を考えさせる、まだまだ遊びたい結婚を望んでいない男性が繋がりを悟る映画。

理想的内容だと思いましたが、現実の世界に生きる監督はこの数年後に離婚。愛情に目覚めても、誰もがキャラクターや長年の育ちの影響を簡単に拭えない気もします。お金や権力を誰もが手にできるわけでもないので依存してしまう男性も少なくないでしょう。

マイレージに楽しみを見出せていた主人公の方が幸せだった気もしてしまうのは、私に夢や希望がないのでしょうか。人生で何を重視するのか、私もup in the air。ただ、今は仕事だけを自分だと捉えておらず、退職しようと支え合える友人や家族がいるので、さほどショックもなく淡々と次を探し始めています。

主人公がリストラされた人達の経歴を調べて第二の人生を探ろうとした試みを温かく感じましたし、今の仕事とは別の人生の希望を熱く語っていたように転職を人生の節目と捉えて転職活動に励みます。

この映画はアメリカの辛辣なリストラという社会問題と個人の生き方を考えさせようとしているのかもしれませんが、深みにかける印象も受けました。

sasa320 at 01:50|PermalinkComments(0)ドラマ | 洋画

2017年08月06日

「ベスト・キッド」イジメから抜け出す⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

ベスト・キッド コレクターズ・エディション [DVD]
ジェイデン・スミス
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2011-04-22




総合評価 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
脚本 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
配役 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
演出 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
映像 ⭐️⭐️⭐︎
音楽 ⭐️⭐️⭐️



ベスト・キッドを観ました。

ストーリーは、父親を亡くしたアメリカ育ちの小柄な中学生が母親と中国に引っ越し、カンフーのできる中学生達に目をつけられて身体暴力を繰り返し受けてしまいます。

自宅アパートの管理人男性がカンフーの達人だと知り少年は弟子入りして、カンフー大会で優勝してイジメっ子達からの敬意を勝ち取るという喪失体験からの回復のストーリー。

学校のなかの犯罪イジメに向き合うことは難しいなか、自分の恐怖心と向き合いたいと語り戦う少年が、観客を含めた周囲の人達を変えていく爽やかな作品でした。



イジメはうつ病や不安障害、自傷に関わるという海外の研究が近年みられるようになってきました。

まず、Lancetに掲載されたレビューがあるようです(Lereya et al. 2015)。

アメリカの1000人規模の研究によると、9-16歳まで虐待や学校でイジメ被害を受けた子供は18-26歳までに不安障害を発症するリスクが約5倍、イジメ被害がない大人から虐待を受けていた子供よりリスクが高かったそうです。

イギリスの4000人規模の研究では、生後8週から8.6歳までに成人からの虐待を受けた児童と、8,10,13歳でイジメを受けた児童がうつ病や自傷を起こしたリスクは1.7倍。

また、オックスフォード大学による13歳までのイジメ被害と18歳までのうつ病に関する約7000人規模の思春期児童に対する縦断研究では、イジメ被害が少ない児童より被害が頻回な児童で、2倍うつ病を発症しやすかったとか(Bowes et al, 2015)。

さらに、小規模ですが。500人規模のアフリカでの思春期の学生に対する研究結果は、うつには、女子では家庭での感情的虐待が3.8倍、また学校の身体暴力が2.4倍関わっていました。男子では家庭での感情的暴力が2.9倍、DVが2.4倍、学校での身体暴力が2.5倍、うつに関わるそうです(Ameli et al, 2017)。

そのなかに、イジメ加害者は、女子で家庭での感情的暴力が4.5倍、男子でイジメ被害が2.9倍、学校での身体暴力が2.7倍という結果もありました。



この映画は、父親の死後、母親と中国に引っ越した一人息子の黒人の主人公が、中国人の同級生達から身体暴力を繰り返し受けるイジメ被害を受け始め、学校での身体暴力に対する恐怖感に向き合い、イジメっ子達が得意なカンフーの分野で彼らに打ち勝つ話でした。

イジメっ子達は、カンフー指導者に身体や精神の暴力を受けていましたが、家庭や学校でのそれまでの経緯は描かれていませんでした。

イジメがメンタルへ与える影響は侮れず、私も小中で経験したから興味がありますが、いったい何があれば乗り切れるのでしょう。



主人公ドレは、父親を失い、住み慣れた自宅や友人を失い、見知らぬ中国に母親の都合で連れて来られて、学校で制服を着ない日も分からず、身体暴力を繰り返し受け、母親や女性教師に気付かれていても十分に守ってもらえません。

片親や両親不在もイジメにあいやすい研究もあるようで(西田、2010)、中国社会とは違うデトロイト育ちの移民かもしれず、小さな体格のドレは弱い立場だったのでしょう。

ドレは、目立ち、好きな女の子にアプローチするなど積極的な性格でしたが、カンフーでイジメっ子に攻撃されると、初めは沢山のイジメっ子達に絡まれることに怯えて逃げ回り自宅でうつのように暮らします。



主人公は、反抗的な面もあり敵に人数や能力で及ばなくても歯向かってみることで事態が悪化するのですが、運命を切り拓いていきます。

結果、複数対1人でボコボコにされているところをジャッキー・チェン演じる自宅アパートの管理人ミスター・ハンがカンフーで助けてくれます。

そして、カンフー大会で戦うまではイジメっ子が少年に手を出さないようイジメっ子の師匠にミスター・ハンが話をつけてくれて、少年は求めていたかもしれない父性を感じさせる理想的な保護を受けます。



そこからミスター・ハンによる厳しい修行が続きましたが、同じ身体暴力でもイジメと格闘技の修行では違うでしょうし、同じ格闘技の修行でも主人公とイジメっ子達の環境も違いました。

暴力はただストレス発散の一時の衝動的破壊行為が多いかもしれませんが、格闘技の修行は新たな視点を得て自己鍛錬する日々の積み重ねのような筋トレに似た習慣なのかもしれません。

主人公の指導者はマンツーマンで技術や倫理観が高く、厳しさのなかに愛情がある父性でもって見守っていました。自らが選んだ厳しい修行に主人公は向き合うことが出来たのかもしれません。厳しくても成長に繋がるなら、その厳しさに主人公だけでなく多くの人が価値を見出せるものかもしれません。

一方、イジメっ子達は先にカンフーの修行を始めていましたが、格闘技やスポーツ業界のパワハラ的指導者が近年注目されたこともあるように、指導者が強さや勝利だけを求めたため彼らに身体・精神的暴力を振るっていました。

誤った信念に基づきイジメっ子達は、指導者にふるわれた暴力を学校で繰り返してしまっていただけかもしれません。厳しくても、勝つために彼らは師匠に従ってきました。

イジメっ子達は、戦いに負けると、ドレとミスター・ハンに敬意を示していました。彼らの目的は勝利だったので、あっさり彼らな愛情ある教育を望みながら受けることが出来なかったように見えました。



鍛えに鍛えて、友人や家族のため、自分自身の恐怖感に負けないため、敵側の師匠が反則技を指示したため怪我をしてしまいますが、主人公は苦難を乗り越え大会で優勝します。

そうして、主人公は周囲の中国人達からの敬意を勝ち取り、不安に打ち勝ち、中国を居場所に出来たのでしょう。

実はドレの師匠ミスター・ハンは、普段は無口でも、車を破壊して息子と妻を事故で亡くした悲しみを唐突に表現するなど危うさもある人でした。しかし、亡くした息子と同じくらいの年齢のドレを鍛えることに癒され、ドレの母親に付きまとわれ孤独から脱し愛情を伝えることが出来るように彼も成長しました。

イジメを傍観していても自尊心が低下するなど影響を受けるという研究も出典を忘れましたが、以前に読んだことがあります。主人公のイジメは、傍観する周りの友人や心配する家族への影響もあったかもしれませんが、その憂さを晴らすようなドレの課題解決が明快でした。

主人公の勝利が周りの友達や家族、周囲の大人、イジメっ子にすら希望を与えるところに勇気付けられました。



イジメを乗り切るのに大事な要素は何だったのでしょう。
 
まず、私はミスター・ハンとドレの出会いが、相互作用してお互いを成長させていて、出会いを大事だと思いましたし、誰にでも良縁は訪れうるので希望を持てました。はやし立てる観衆や見て見ぬ振りをする傍観者にならず、イジメを止める第三者の大人の存在を大事だと思いました。

また、今回は偶然発見されましたが、助けてくれる人もいると信じて暴力に抵抗し助けを求める希求援助の力や自信も大事なのかもしれません。自信がない人がイジメられているなら、周りが大人を呼びに行く方法もあるのかもしれません。

イジメを制止したり、加害者に呼び出されて関わったりすることは、力がない普通の人には戦えず、難しいことかもしれません。現実の日本に、ジャッキー・チェンはいません。ただ、子供向けの行政イジメ相談があるようですし、内閣府もイジメ相談を受け付けているとか。

戦う方法も、カンフーだけでなく、暴力をふるわれたら医療機関を受診して証拠を保持して、弁護士や警察と戦うこともできるかもしれません。争いが嫌なら、打ち込めることを探して達成感や成長を感じられれば1人でも充実して過ごせるので、イジメを機に心を耕すことも人生では勉強や仕事以上に大事なはず。

さらに、イジメられても、主人公は善良で、片親でも、教師、友人、彼女、管理人など支援者が多かったと思います。助けてくれる味方を見極めるのが難しかったり、誰かに相談して更に裏切られて傷つくことに被害者は怯えたりしがちですが、プロに相談して支援者になってもらうのが安全でしょうか。



周りの中国人がもっていないアメリカ人としての個性を持っていたから、イジメっ子達の目につき排除されかけた社会構造的なイジメという部分もあったでしょうし、小さなデトロイト育ちの黒人少年がそんな中国の共同体を打ち負かすから、アメリカ人には気分の良い話だったのかもしれません。




参考資料
国内 
http://www.coder.or.jp/hdr/24/HDRVol24.14.pdf
海外
https://medley.life/news/554b40fce7880cfa0070300e/
http://www.bmj.com/content/350/bmj.h2469
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28327416/?i=1&from=zomba+depression
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/KY-AA12318206-6501-06.pdf?file_id=35527
 

sasa320 at 10:00|PermalinkComments(0)洋画 | アジア

2017年08月05日

「宮廷女官チャングムの誓い」強者と成功の秘訣 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎



総合評価 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
脚本 ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎
配役 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
演出 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
映像 ⭐️⭐️⭐︎⭐︎
音楽 ⭐️⭐️⭐️⭐︎

宮廷女官チャングムの誓いを今更ながら観ました。

2000年以降の韓国ドラマで視聴率がトップ2に入るほどの人気作。

宮廷から命を狙われて逃げ延びた女官と武官の娘として百丁という奴婢の村に生まれたチャングムは、弱者の立場に生まれながら、かつては強者だった両親のもと生まれていて、才能をあり余していました。チャングムは男の子に混じりウサギをとったり、文字を学んだりする自由を母親に制限され育ちました。

隠れて無難に弱さを保護色にして生きることから自由を求めたチャングムは、父親に駄々をこねて人前で元武官の力を発揮させたことにより指名手配されていた父親は逮捕され、都で処刑される父親を追った母親を宿敵に殺され、孤児として弱者社会からもあぶれますが、苦難を生き延びて女傑に育っていきます。

抵抗勢力との壮絶な戦いを繰り広げ、強者の怯えや自身の過信を知り、沢山の人の犠牲と沢山の人への貢献により宮廷で最高尚官や王の主治医を務め歴史に名前を残します。結局、チャングムも宮廷を追われて両親と同様に追われながら百丁の村で弱者に紛れて平和な家庭を築きます。

誰もが求める富や権力の虚しさと人と人との愛情の尊さを描いた作品なのかもしれませんが、成功する強者が生まれる秘訣が見てとれるところに魅力を感じました。



チャングムの家庭は複雑な家庭でした。

父親は宮廷の元武官、母親は宮廷の元女官。2人とも宮廷で権力争いに巻き込まれて凄惨な思いを味わい、命を脅かされ疲れ果てていました。

チャングムの母親は無実の罪を着せられ毒を飲まされて野に捨てられた犯罪被害者でした。毒に解毒剤をチャングムの母親の親友が混ぜてくれていたおかげでチャングムの母親は生きのびます。

放送時、人気を博したという友人役はキーセンの親の元に生まれた賎民。男に乱暴されかけた時に大声を出して助けてくれた貧しい両班のチャングムの母親と友人になり宮廷料理人になり、チャングムの母親が陰謀に巻き込まれて命を奪われることを知りながら保身のため戦えなかった弱者でした。

毒をもられながら逃げ延びて川に流されていた弱者の母親と、そこを助けてくれた武官の父親との間にチャングムが生まれます。



チャングムは1人娘で両親から愛情を注がれて育ち自意識が強く、両班の男の子に混じり野山で遊んだり文字を学んだり、受け継いだ才能を豊かに開花させて育ちましたが、いつも犯罪に巻き込まれることを怯える母親に自由を制限され、隠れて暮らすよう言われるので、反発していました。

チャングムの父親は、チャングムに同情しすぎて、自分が実は武官だと漏らしてしまいます。8歳のチャングムは、父親に相撲をするようせがんだ上、父親が戦った相手にはめられて捕まりそうになった時、父親の身分を聴衆の前で叫んで明かしてしまいます。

実はチャングムの父親には燕山君の母親を毒殺する公務に関わった過去があり、燕山君により指名手配されていたため、父親はチャングムのために処刑されてしまいます。韓国史上悪名高い燕山君の時代、燕山君の母親毒殺に僅かでも関わった役人が次々と逮捕され処刑されていた時代でした。

チャングムは母親と村を追われ逃亡して都まで父親の死に目に会おうと追いかけました。しかし都に戻ると、チャングムの母親を殺そうとした宮廷の宿敵であるチェ一族に見つかり、刺客によりチャングムの母親は矢を放たれてチャングムを庇って殺されてしまいます。

8歳の少女チャングムは、母親の死も十分に理解できないながら母親を埋葬し、母親の遺言通り宮女になり母親の無念を晴らすという目的を胸に抱き、孤児として食べ物を盗んで手に入れながら生き延びていきます。そのなかで普通は守るべき社会規範やルールを超えたアウトローな強者になります。



チャングムは食べ物を盗もうと忍びこんだ家で、妻の目を欺き自宅で作った酒を盗む父子に出会い、後の国王に出会い、人生を切り開いていきます。

チャングムはその妻に見つかると、図々しく遺品を差し出し、家に済ませて欲しいと頼み込みます。そして8歳にしてチャングムは朝早くから家事を手伝い、重たいお酒を運ぶ児童労働に励み始めます。

燕山君の治世に反発する権力が謀反を起こす可能性があり後の中宗の家へは誰も近付けませんでしたが、反対勢力にチャングムが目をつけられてしまいます。何も知らずに政権交代に関わったチャングムは反対勢力から報酬をもらいますが、無礼ながら自分を宮女にしてほしいと配達先で直談判して機会をえます。

革命は成功し、中宗の時代が訪れると、チャングムは宮女見習いとして宮殿に呼ばれて生存/出世競争が幕を開けます。



チェ一族にしても、チャングムの恋人にしても、家や親の期待に添い、成績優秀に育った他者評価や社会規範を尊重する弱者のなか悪どいことをしても気にせず生きていた人達だったので、チャングムに畏敬の念を抱き、前者は自分と違う異物を取り除こうと激しく迫害し、後者は自分にはない強者を恋慕します。

チャングムは既に迫害されて1人で生きてきたので社会に排除される恐れなど持っていない上、様々な犯罪レベルの器物破損、拉致、投獄、殺人事件、服役に巻き込まれた経歴によって鋼のように打たれて、より強靭に鍛え上げられていきます。

成功を重ねて過信から失敗もして、宮中の脅迫や懐柔に動じない、王妃に対しても信念を主張できる稀有な存在であり、かつ幼い頃の王との因縁もあり、王に好意を寄せられてチャングムは側室ではなく王医として任命されます。

しかし、王や王妃に必要とされることで、失敗すれば命を失いかねない仕事に常に向き合うことになり、好きな男性は僻地に飛ばされてしまうなか、日々仕事に集中しなければならない重責を彼女は負います。朝鮮の女性のために人生を捧げ、王の死後は命を狙われながらも、家族の元に帰ります。

全力で目前のことに集中できる注意力障害かもしれないレベルの才能と最短で成功を掴み取る遂行能力と、友人や親族、恋人との関係性に支えられた成功を眺めると、チャングムを教えた主女医の語っていた成功者のパターンにそっていました。



強者が生まれる理由と成功の秘訣が詰まったサクセスストーリーでありながら、宮中で出世する虚しさも表現されていて、自分の家族と過ごし支配されすぎず自由に暮らす幸福も描かれていて、チャングムの人生は、女性にとって理想的な生き方に見えて、考えさせられる作品でした。


sasa320 at 10:00|PermalinkComments(0)アジア | tvドラマ