2017年03月05日

「進撃の巨人」残酷な世界に酔う⭐︎⭐︎⭐︎



総合評価 ⭐️⭐️⭐️
脚本 ⭐️⭐️⭐️
配役 ⭐️⭐️⭐️
演出 ⭐️⭐️⭐️
映像 ⭐️⭐️⭐︎⭐︎⭐︎
音楽 ⭐️⭐️⭐️⭐︎

進撃の巨人のアニメを初めて観ました。一話からひきこまれました。

登場人物達のキャラクター描写がリアルで、各々、反発や抵抗をしながら生き延びていく姿に共感できました。自傷、過食、イネイブリング、解離などしながら成長する各々のキャラクターに惹きつけられました。

巨人に食べられる人の描写もリアルで、捕食される対象を眺めることが、その人の攻撃性を満足させるような残酷な世界に酔うような闇を感じました。

きっと、トラウマを観客に与えるような効果もあるかもしれず、設定には謎が多く、内容には規制がなく反社会的ですらあるかもしれず、自由で魅力的でした。



この話のオリジナリティは、北欧の神話である巨人をモチーフにしているところかもしれず、特に巨人を何処にでもいそうな知性が低い人として、裸で一つの感情だけ表情に浮かべて何もしないまま過ごして、人を食べることだけが目的という訳のわからない設定にしたところに予測不能な怖さを感じました。

作者インタビューで、インターネットカフェでバイトしていた作者が、酔っ払った客の対応をしていて、普通の人がみせる気味の悪さを表現しているというような記事を読んだ気がします。漫★画太郎の漫画に出てくる登場人物にも似たような雰囲気を持つ自由な巨人だと私は思いました。

ガリバー旅行記の巨人が小さな人間達に捕まった挿絵に似た、圧倒的に非力で小さな人間の集団である壁外調査兵団が巨人達を捕らえる映像を眺めると、作者の創造力に驚きました。



3人の幼馴染がこのアニメのメインキャラクターでした。

主人公は、衝動的で正義感が強く、知性が低いかもしれない青年アレン。

医者グリシャと干渉的な母親なもと守られています。両親を犯罪で亡くして引き取られた有能な幼馴染ミカサと共に成長していて、博学でも体が小さくイジメられがちなアルミンをよく助けていました。

外の世界に憧れて両親から秘密の本を借りたアルミンは、外の世界の魅力をアレンに伝えます。

アレンも壁外に興味をもち壁外調査兵団に憧れるようになります。

現実的で、何故か喧嘩が圧倒的に強い女性のミカサは母親に言いつけて、命を落としかねない壁外調査兵団にアレンが入らないよう猛反対します。

人間は巨人との戦いのなか三重の壁を作り、その壁の中で数百年、平和な時を過ごしていたという環境設定のもと、3人も壁の内側で平和に過ごしていました。

国内では外の世界の情報を得ることを禁じられていて、まるで江戸時代の鎖国のようだと思いました。



誰もが意味もなく平和が続くことを信じていたある日、黒船来航のように故郷の城壁に巨人が現れます。

大型巨人が壁を壊し、外の世界から多数の巨人が侵入し、街を混乱に陥れます。

平和に過ごしてきた街の人々は、東日本大震災で未曾有の津波を目撃したかのように何かに怯え、沢山の人達が命を失い、生き残った人達も茫然自失のショックを受け、トラウマを抱えながら生き延びることになります。

アレンとミカサは、母親を虫けらのように目の前で巨人につままれて食べられてしまいます。壁内警備をする知人男性に2人は無理やり巨人から引き離されます。命を助けられた2人は呆然としています。そんな時、普段は2人に助けられがちだったアルミン一家が食糧を確保したり、2人を気遣います。

しかし、せっかく助かった人命も、国家が食糧難を解決しようとして成人を壁外遠征に送ることを決めたため、アルミンの両親を含めた避難民の多くは殆ど全滅してしまい、国に殺されたような状況でした。

アレンは、悲劇が起きたことを自分の弱さに原因を求めて軍隊に入隊希望をします。ミカサは大事な家族をこれ以上失わないようにアレンを守りたくて入隊します。アルミンは、巨人や国家により身寄りを失い、いつも助けられてばかりいる2人と対等でいたいから影響を受けて自己鍛錬のために入隊します。



巨人が現れてから、軍隊入隊は国民にとって義務のような社会体制になっていました。

日本も巨大な国からの攻撃を受けた後、長州から明治維新の軍人達が生まれたように、自分や家族を守るため軍事力が必要になる時が来るかもしれないということを伝えているかのようでした。

平和な時代には税金の無駄遣いと呼ばれ酒ばかり飲んでいた壁外調査兵団も、そんな時代には社会的需要が高まると地位が上がります。常時と災害時の自衛隊への評価の違いを彷彿とします。

被災者以外の出身者は、安全な内地勤務や体裁を保つため志願していました。一方、被災地域の志願者は目的意識が異なりました。

毎日、厳しい上官により厳しい課題が課され、落第者は農業に従事することになるなど脱落するなか、主人公達は、周りに頭を下げてでも助けを求め、障害物を乗り越えて、生き延びていきます。

軍隊のなかで、厳しい訓練のなか切磋琢磨した同期との絆も生まれて、若い主人公達は厳しい運命のなかで刺激を与えあい成長していきます。



そして卒業を迎えると、巨人が5年ぶりに壁を壊しに現れます。

周りが怯えながら殺されていくなか、主人公だけが巨人を殺そうとして巨人に襲いかかりますが、突然、巨人は消えてしまうのでした。

また今回も5年前と同じ状況で、巨人が開けた穴から多数の巨人が侵入し、街でも市民を巻き込んだ戦いになります。新兵達の初陣は、復讐劇にも似ていましたが、成長した子供達は街を守れたでしょうか。

現実は残酷で、新兵達は初陣で殆ど全滅に近い状況となります。エレンは、巨人を前に身体がすくんで巨人に食べられかけていたアルミンを助けて、身代わりに巨人に食べられてしまいます。

ミカサは、後方の陣営を任されていましたが、アルミンとエレンを心配してかけつけると、アルミンはずっと残酷な光景にショックを受けて凍りついたままでした。大事なアレンを失なったことをアルミンから聴きだすと、ミカサはショックで自暴自棄な戦い方をして巨人に殺されかける危機を迎えます。

そんな絶望的な状況で、巨人と戦いミカサを助けてくれる、人類のために戦う巨人が現われ、人類は圧倒的に悲惨な被害を受けながらも抵抗できました。その巨人のなかからアレンが見つかりました。



他の巨人のアニメで超人ハルクを思い出しますが、せっかく生き延びた主人公は、ハルクと同様に国家から巨人化する危険人物として管理されてしまいました。

自分を殺せる力を持つかもしれないアレンに人類が怯えてしまい、アレンを牢獄へ幽閉しようとするなか、壁外調査団にいる人類最強の戦闘力を持つというレヴィン隊長だけは、自分なら巨人も殺せるという自信があったので、主人公の希望を汲み壁外調査団で引き受けて部下として育て始めます。

その後、アルミンやミカサも壁外調査団に入隊して、巨人の弱点を学び、巨人との戦い方を知り、巨人の襲撃に備え実践を重ねながら、命からがら傷つきながら対抗していくのです。主人公を手にしたことで壁外調査団、人類は巨人に負けなくなっていきます。

巨人には、アレンのように人間が巨大化するタイプの巨人がいること、壁は巨人で出来ていて巨人を作り出したのは人類であること、外の世界で人類は死滅などしておらず2つの国の争いにアレンの家族や厳しい訓練で出会った仲間達がスパイとして巻きこまれていたことに主人公達は気づいて成長していきます。

遂に、彼らは武力でもって自分達の国内での地位を高めて国家に対してクーデターを起こします。



アジアの社会情勢が落ちつかない時代だからこそ、平和な日本を襲撃されない明確な理由はないはずで、未曾有の東日本大震災を体験した日本の若い世代が感じる朧げな不安に共鳴して、この作品は人気を博したのではないかと推察します。

一部地域では、戦争や内戦という残酷な世界が続いているなか、過保護に育ったかもしれない日本の若者にとって、社会の残酷さを知る前に世の中に残酷な部分もあることを知ることが、平和ボケして突然ショックを受けるより、心の備えを養えるのかもしれません。

物語のなかで、非情でなければ何も変えることは出来ないことが繰り返しメッセージとして伝えられていて、変革の時代が来れば、変革で正当化して法を破り暴力で争うことになるのだということを倫理を無視して徹底して伝えているような作品で、ここに怖さを感じました。

善行を良しとする宗教的倫理観や国が法で規制してまで歪ませた社会認識に反発する反社会的な世界を描くことで、生き延びるために敵を騙し殺してでも戦えと説くアニメがウケる今の時代。後世に名が残る英雄としての人生を目指す若者達に気高さも感じます。

主人公達に都合の悪いパワハラ上官や、闘わなくなった時が負けだと偉そうに語った副長官が女々しくヒーヒー言いながら巨人に食いちぎられていく映像が日頃の鬱憤を晴らしてくれるとしても、視聴側の闇の深さも感じる描写かもしれません。

なお、チベット仏教にも争いがあれば3m越えの身体が宇宙のように透けている巨人の女神マクソル・ゲェルモが現れて怒りを食べてくれるという話があるそうです。女神が怒りを食べてくれたら、私達は女神に感謝すれば良いのだそうなので、巨人が怒りを癒してくれている部分もあるのだと前向きに捉えます。

残酷な世界を子供達が味わう時代が来ても、仲間と助け合って、きっと生き抜ける、というような闘志を与えるようなアニメだと良い解釈をしてみようと思います。



応援お願いします


映画評論・レビューランキングへ



sasa320 at 16:19│Comments(0)漫画 | SF

コメントする

名前
URL
 
  絵文字