2017年03月11日

「ハゲタカ」お金と不幸 ⭐️⭐️⭐️⭐️

ハゲタカ
大森南朋
2013-11-26





私の総合評価 ⭐️⭐️⭐️⭐️
脚本 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
配役 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
演出 ⭐️⭐️⭐️
映像 ⭐️⭐️⭐️
音楽 ⭐️⭐️⭐️

ハゲタカは、真山仁の小説が2007年にTVドラマ化され、イタリア放送協会主催イタリア賞をとるなど高い評価を受けたドラマだったようです。2009年に映画化されたこの映画を私は観ましたが、時代背景に合わせて脚本が大幅に変更されたようです。2008年にはリーマン・ショックがありました。

主人公を演じた大森南朋という俳優を私は2017年になり初めて知りましたが、日本アカデミー賞を獲得するだけの魅力的な演技だと思いました。

映画の内容では、主人公が呟いていた言葉が印象的でした。映画がわかりやすくまとまっていて主張がストレートに伝わると思いました。

世の中には、2つのタイプの不幸があり、お金のない不幸とお金のありすぎる不幸がある、ということに私も心から共感できました。



主人公鷲津は、世界を股にかけ活躍する金融ブローカー。

三流大学を出て銀行に就職しましたが、200万円を回収するため、ある会社社長を自殺のような形に追い込んでしまった過去を持ちます。その後、銀行を辞め、海外へ渡り帰国。日本で活躍していましたが、日本の体制に嫌気が刺し、隠遁生活をしていました。

そこへ、アカマ自動車で執行役員を勤める高校の先輩芝野が主人公に仕事の依頼にきます。会社の悪評を立てる集団がいるため、自社買収を狙われているらしいと芝野が疑ったためです。

やがて、中国の残留日本人だという劉一華が表に立ち、日本を代表する自動車会社であるアカマ自動車をブルー・ウォール・パートナーが買収する計画をプレス発表します。日本企業に都合がよすぎるほど甘い条件で高値という旨すぎる話でした。

鷲津は彼に対抗して、より高値でアカマ自動車を買収することをプレス発表します。ブルー・ウォール・パートナーも更に値上げします。両者の値上げ合戦となった末、鷲津達の限界を超える資金でブルー・ウォール・パートナーによる買収が決まりかけてしまいます。

実は、ブルー・ウォール・パートナーは中国国家が裏で資金提供していることがわかりましたが、ブルー・ウォール・パートナー代表の劉一華は人気があり、株主は中国が支援していても支持する割合が高い状況でした。劉一華は、アメリカ時代は鷲津の後輩で、鷲津に対抗心を燃やしています。

スパイとして森山という若い派遣工を劉一華は囲い込みアカマ自動車内でストライキを計画させます。また劉一華は鷲津に恨みがある女性記者をそそのかしストを報道させようとします。そうして、劉一華は、アカマ自動車の社長を脅しあげます。

すると、アカマ自動車の社長は、劉一華が属するブルー・ウォール・パートナーズと提携するとプレス発表してしまいます。



そんな鷲津達の信用が落ちるかもしれない状況のなか、鷲津は想定内だと語っています。

鷲津は自らドバイに飛び、富豪にオイルマネーの支援を受けに出掛けていました。

鷲津の先輩芝野は、社長に抗議して、ブルー・ウォール・パートナーは表向きの甘い条件提示の裏で、アカマ自動車の本社もろとも中国へ会社を移転する計画を裏で立てていることを突き止め報告しますが、社長の判断は翻りません。

鷲津らの調査で、人気を集めていた劉一華は、別人が劉一華に成りすましていることが発覚します。劉一華を語る青年の生い立ちは、貧しい農村で母親が血液を売りながら育てた中国人青年だと判明します。

ストライキを起こすようそそのかされ、脅迫に利用した後はストを妨害された森山は、騙されたことに怒り劉一華を訪問します。劉一華から400万円渡されて森山は反抗してお金をばら撒きました。

しかし、拾うよう強く言われると、結局、抵抗しながらも従って森山は這いつくばってお金を拾い集めてしまうのでした。森山が金を集めながら一瞬動きが止まり、また集めてしまう演技が哀しみを際立たせていました。貧しさの惨めさを劉一華は森山に伝えるかのようでした。

劉一華の虚栄は長く続きません。



帰国した鷲津は、アカマ自動車が提携するアメリカ企業を買収することを発表します。しかし、中国側にアメリカ企業は泣きつき、高値で中国側に買収されます。

すると、鷲津は突然買収した株全てを市場を閉める時間間際に売ります。困ったアメリカ企業はイギリス市場に賭けて頼りの綱を探るのですが、鷲津が先に手を回していて窮地に陥らせたのでした。

結局、アメリカ企業の信用が急激に低下して世界中の株主が売りに出したため、アメリカ企業は破綻してしまいます。

そして、アメリカ企業のほとんどの株を買い占めた中国の財力を背景としたブルー・ウォール・パートナーは、アカマ自動車を買収する余裕がなくなり撤退し、鷲津ファンドが勝利して日本企業を守りました。



勝敗により各々の人生が決まりました。

中国に操られていただけのブルー・ウォール・パートナー日本代表を解任された落ち目の劉一華は、雨のなか公園で強盗に財布から金を盗まれ刃物で刺されます。周りにいたホームレスが金に群がると、劉一華は赤土の泥水に塗れて這いつくばってホームレスを退け金をかき集めます。そして、鷲津に訳のわからない留守電を一方的にかけながら出血して命を落とします。

その頃、劉一華に騙された派遣工、森山は、お洒落をしてアカマ自動車の真っ赤な高級車を買ってドライブを楽しんでいました。

アカマ自動車社長は解任されて、先輩芝野が社長に就任しました。

鷲津は、劉一華からの留守電を聞いて嗚咽します。そして、彼は亡くなった劉一華を偲んで、中国の山間部にある貧困地域を訪問し、彼が子供の頃に描いた赤い自動車を眺めていました。

劉一華が育った村の村人は、死者がお金がなくて困らないよう紙銭を焼いていました。お金に信仰や風習が混じるほど貧しい地域で劉一華は育ったのかもしれません。



貧し過ぎると犯罪に手を染めなければ生き抜けず、抜け出したくて働いて巨額の富を動かす立場に立てば、沢山の人達の期待にこたえ、その地位を守り生き延びるために相手を蹴落とさなければならない苦しみが待っているものかもしれません。

日本企業の体質に失望して隠遁生活を鷲津は選んだという設定でしたが、お金に依存する人はこうした不幸に巻きこまれやすいので主人公は隠遁したくなったのだろうと私は察してしまいました。

生き伸びるために、誰かの命を奪わなければならない戦いから離れることのできる余裕は、両者の立場を経験して経済的余裕がもてるから生まれたものなのでしょうか。

一度は市場から撤退した彼が、日本を守るという正当化のもと戻って勝利したものの、敵は命を落とすという残酷な戦いの世界をまた味わい、生き延びています。

彼は映画の冒頭では、美女がビキニで駆け回る南国の海辺で昼間から酒を飲む自由な暮らしをしていました。彼はスリルを求めてしまっただけだったのだろうかと疑う部分もありましたが、彼の目的は何だったのでしょう。

理解しきれない部分も残ります。ただ、主人公が単なるお金や仕事へ依存して何も省みない人柄ではなく、戦った相手を人生の1人の大切な出会いとして大事にしようとする人生観をもっていたところから、私は鷲津に人間味を感じました。






 


sasa320 at 17:53│Comments(0)邦画 | ドラマ

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