2017年08月02日

「製パン王キム・タック」感謝と尊敬 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎




総合評価 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
脚本 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
配役 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
演出 ⭐️⭐️⭐️⭐︎
映像 ⭐️⭐️⭐︎
音楽 ⭐️⭐️⭐️



製パン王キム・タックは、2000年以降の韓国ドラマでは歴代5位の40%近い視聴率を記録した作品。

コソン食品会社会長の息子2人がライバルとして対決を繰り返す、全てを奪われたタックと全てを手にしているマジュンの話でした。

実は、マジュンの実の父親は会長ではなく、ハン室長でした。ハン室長は孤立感や妬みから感謝を忘れて権力に取り憑かれてしまい、タックが生まれる時からタックと母親を陥れ殺そうとしてきました。タックが嗅覚の才能に恵まれていれば、マジュンも毒薬で障害を負わせようとします。

権力と富が集まる場所では韓国の歴史ドラマと似た権力構造が存在しているようでした。生まれる前から犯罪者を敵に回していたタックの立場を私なら辛いと感じますが、学歴も中学中退であっても持ち前の明るさで会長代理という役割をうけ、感謝や尊敬を胸に生き延びていく爽やかなタックに励まされました。

他の韓国高視聴率ドラマとも共通しているのが、ホジュン、チャングム、チュモンの親は妾の子供だったり、親が法律に違反して逃げている境遇で育ったりした子供が主人公。周りから殺したいほど憎まれながら生き延びる主人公でした。

そんな主人公達が観客の共感を呼ぶのは、権力の頂点に立つことを誰もが一度は夢見るものだからなのかもしれませんし、私達が生活の中で直面している困難も実は生存競争の一種で普遍性があるのかもしれないと思いました。



どの勢力も自分が生き延びるための正当防衛から権力争いに至っていくのかもしれません。

全てを奪ったマジュンが酒や女に浸った生活を送ったのは、本妻の長男でも不倫相手の子供だと気付き、会長に嘘を隠して暮らさないと生き延びられない立場だったからでしょう。規則違反をする実父を許せない苦しみのなか、戸籍上の長男であるタックに現在の地位を奪われることに怯えていたからでしょう。

全てを奪われたタックの方が明るく誠実に生きれたのは、婚外子という立場でも、優しい母親に愛情を注がれていて、実は会長の息子という立場への誇りがタックにはあるからでしょう。

マジュンやタックの母親同士の争いは、一度権力を手にした人が見せるよくある光景でしたが、子供達が争いの末に関係性を改善して協調して生きのびていく流れが韓国歴史ドラマに似ていると思いました。



コソン食品会社の会長は、2人の娘を妻との間にもうけ息子を待ち望んでいましたが、そんな時期に人生の取り返しのつかない転期が訪れます。

会長の母親は息子が出来ない妻をなじり続けてしまいました。苦しんだ末、夫以外の男性となら男児を得られるという占いを妻は信じてしまい、夫をライバル視する会長の母親が出資した奨学金で大学を卒業したハン室長と不倫してしまいます。

コソン食品会社の会長は2人が大事なので何も言えないまま、家に出入りしていた看護師ミスンと心を通わせるようになりタックが産まれます。 

妻はミスンを追い出し堕胎を命じ、自分は不倫相手との間にマジュンをもうけ夫の子供として育て夫にバレていないと信じて、夫の目を盗んではタックとミスンを迫害します。不倫相手のハン室長はマジュンの敵になりうるタックを何度も殺そうとしますが見逃していました。

会長が生きていてバレるかもしれないという恐怖心を与えるような親の目が光る時、子供は傷つけられにくいのかもしれないと思いました。逆に、自分の立場を追われ追い詰められるとハン室長は犯罪未遂を犯したので、犯罪者を追い詰めず側に置くという会長の共生に注意が向きました。

甘い判断を繰り返せば下克上なんて出来ず、会長が反発する機会を伺っていることにハン室長が気づいていないあたり滅亡が目に見えるようでした。



タックは小学生になると、ミスンにコソン食品会社会長宅に連れて来られてひきとられます。

しかし、妻はユジュンの父親を雇いミスンを崖から突き落とさせて殺そうとし、タックを会長にバレないよう追放します。

孤独なタックは難を逃れ、ボンパンという美味しいパンを作ることで有名な工場に住み込みで働き始め平穏な日々を取り戻します。



マジュンがパン職人の修行先としてタックと同じ工場を選んだので、2人の争いが始まります。

師匠が開催した試験は2次試験まで、中学中退のタックが勝ちました。

負けたマジュンは逆恨みをして工場に火をつけて、タックが恋心を抱いていたユジュンを奪い取り、工場のパンに異物が入っていたなど雇った人に証言させ工場を休止に追い込みます。

しかし、師匠はマジュンもタックと生きていく同士なのだと諭し、2人に手紙や言葉を残します。

世界で一番幸せなパンを作ること。

それを、2人が人生をかけて取り組むべき三次試験だと師匠は2人に共有できる人生の目標を与えました。

マジュンは、犯罪まで許容してもらった師匠に愛情を注がれて、手紙を見ながら嗚咽しますが、そう簡単に人は変われないので、2人は争いを繰り返します。



会長がある日、脳出血で倒れると、弁護士からタックの元に連絡があり会長代理や資産を委任されます。

それからタックは会長を見舞いながら、仕事に励み、解任請求を切り抜け、青山工場を再生させる任務を与えられます。そして、タックはパルボンベーカリーの仲間達に土下座して、仲間と知られず青山工場に雇われるよう依頼します。タックは仲間から課題を集め解決して新商品を開発して工場を再生させます。

高学歴でも、誰もがそんな風に頭を下げて危機を乗り切れるものでしょうか。仲間への感謝や尊敬、信頼なくして成し得ないと思いました。マジュンには出来ないことでしょう。

ハン室長は、マジュンに新商品を開発させ、取引先や重役をお金で懐柔しようと企みます。逆に、タックの母親が陰で、重役達にお金を回して社長そっくりのタックへの支持を集めることに成功します。



タックの初恋の相手ユジュンをマジュンが奪い結婚式を挙げ、恋愛競争でタックは負けてしまいます。

しかし、結婚翌日から、マジュンは酒を飲み女性と遊んでばかりでした。タックはマジュンを迎えに行き、師匠の言葉を一緒に思い出すことで、マジュンに人生の目標を再設定させます。そして、血の繋がりのない兄弟であったとしても、自分の弟だと、ありのままのマジュンをタックは受け入れます。

ユジュンは義母に言われた通り同居を始めます。辛くあたられたユジュンは、会長の母親殺しに関わっていた義母をマジュンからもらった証拠のブレスレットで脅し始め、家のなかでの力関係を逆転させます。
マジュンは、ユジュンを友人の別荘に送り、家内安全を守ります。

恋愛競争で負けても、タックは母親と同じ名前のミソンと新しい人生を歩もうと決め、敵を助け、家を守り長男としての役割を果たします。師匠に愛情を注がれた経験も、感謝や尊敬の姿勢に繋がりコミュニケーションが円滑になったのか。



意識が戻っても、意識がないふりをしていた会長は、マジュンが実子ではないことを確信して、敵の勢力を探ります。

不倫がバレた妻は、ハン室長に別れ話を持ち出します。

傷ついたハン室長は、マジュンを後継者にする夢を捨てきれず、会長から国外追放か警察通報かを選ぶように告げられて追い詰められると、遂にタックを誘拐して、ビルから突き落とそうとします。 

マジュンが気付いて警察へ通報して、タックは先輩に間一髪のところで助けられましたが、コソンではない人目につかない場所にタックを連れていくよう指示して殺せばアンハッピーな結果になりそうで、人の運命は紙一重で決まっていくのだろうと思いました。



最期にタックとマジュンは血は繋がらないながら兄弟として信頼関係を深め、姉に会長の座を渡します。

タックは母親と同じ名前のミスンとパルボンベーカリーで働きながら新たな人生を始めます。

マジュンは連日バーで酒を飲むユジュンを友人の別荘へ移し、草原でピクニックを始めます。自分が作った新作パンの試食をユジュンにしてもらい、世界を一緒に旅しようと航空券を差し出し、2人はやり直すのでした。



権力に支配され続けると、防衛戦に似た生存競争が起きるものかもしれず、それは王や会長の立場でも暮らし難さを抱えなければならず、そのなかで生まれた子供は自分達の人生を切り開く自由を選ぶことで権力闘争から抜け出せるという話だったのでしょうか。

飽くなき幸福の追求をしたマジュンと、幸福もあれば不幸もあると捉え生きのびることを追求したタックの生き方が対照的で惹かれた話でした。

感謝、尊敬を胸に抱けば、放火や毒を盛られることさえ許容できるのか。現実には許容できず、正当防衛をして戦いになりそうですが、許せば結果は違うのか。韓国ドラマは、寛容性の高さに敬意を置いているドラマが多い印象を私はもってしまいます。

sasa320 at 14:43│Comments(0)ドラマ | アジア

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