ささき、実は筋肉好きだ。
ガチムチマッチョメンが大好きだ。

Village PeopleのマッチョメンのPVとか無駄に見ちゃう。


そんな私が、京都にマッチョバーがあると聞いて興味を持たずにはいられなかった。
しかしながら、さすがの私も一人マッチョバーができるかと言えば……NO
じゃあ、友達を誘うとなると……私の友達たちはどちらかと言うとマッチョが苦手な子ばかり。
なので、半分諦めモードだったのだが……
その一番のマッチョ苦手そうな友達が、楽しそうなる旨をツイットしとるやんけ!!
よし行こうか!!
私は思わずそう声をかけていた。




彼女(以後Aとする)はさっそく予約してくれた。

案外予約はあっさり取れた。土曜の夜、3名。
開店は夜の8時。開店時に予約した。
予約してからの3週間ほどはもう楽しみで楽しみで仕方がなかった。
いろんな人にマッチョ愛でに行くと言いふらした。

そして当日。
最初に行く約束をした友人がまさかの欠席。
彼女はノリが良くて、普段あんまりキャッキャッしない私だが、彼女といるとついテンションが上がってしまうため、楽しみたい時には欠かせない貴重な存在。

そんな貴重な存在なしにして、マッチョバーが楽しめるだろうか?
私のことはいいから、と言う友人に私は躊躇いもなくマッチョバー行きを決意する。



夜8時、私ともう一人の友人(以後Bとする)はマッチョバーの前に立った。

マッチョバー。

開店直前、店の前にはチラホラと女性客の姿が。
ざっと見ていると20代前半の大学生世代くらいの女子が大半で、彼女達はうら若い黄色い声でキャッキャッしていた。
残念なことにノリの悪い部類のアラサー我々はもう既にしんどみを感じ始めていた。

もしかして、かなり場違いな場所に来たのではないか、と。

私とBは、頼りのAがいない状態でこの場を乗り切れるのか不安になりながら開店を待った。

少し押して、8時過ぎ。
マッチョバーが開店した。
1番キャッキャッしてた女性達が中に入る様子を後ろで見守りつつ、どのような形で入店するのかをしっかりと観察することにした。

ガラス張りのドアを開けると爽やかイケメン風マッチョメンがキラッキラの笑顔で
「いらっしゃいマッチョ!!」
と、言った。
そうして彼女達の鞄を先に預かり、それはさっさと店の中へと運んで行った。
すると一人一人女性客をお姫様抱っこして席までエスコートし始めるではないか。

なんてこった!!

ここから私は軽くパニックになる。

なんてたって干物アラサー。
初対面のメンズにお姫様抱っこされるなんて…こんな恐ろしいことがあるだろうか。
触れられる恐怖、緊張、好奇心。

でもって、いくらマッチョメンと言え、私、重いぞ。
冗談抜きで。
本気で持てねぇ!って思われるのではないかという心配もあった。いやいや、女子の太ってるなんて案外そんなことないだろ~と思う方もいらっしゃるかもしれない。
だから、ここはあえて白状する。

私の体重は、60kg台だ。
身長があるから、という言い訳をしつつも、Bは同じくらいの身長で50kgない。
普通に、私は軽くはない。

そしてこの身を初対面のマッチョメンに持たせるなんて……嗚呼無理だ。

私達より前に並んでた女性の中にはお姫様抱っこ断る方もいた。
なるほど!断れるのか!!




🤗

好奇心には抗えなかった。

私は羽だった。
本気でそう思うくらい、軽々と我が身は宙に浮いた。

恥ずかしすぎて周りが全く見れなかった。
写真を撮ってくれたBが、顔写せなかった。ごめんね。と謝ってくれたが、この写真で十分ではないか。
これ以上明確に戸惑いにやけ顔してる所なんて撮られたくない。

マッチョメンは数歩、私を運んだ。
降ろされた時、恥ずかしながら腰が抜けそうになってふらついた。足腰が悪い老人のようだったので、更に恥ずかしかった。
抱っこされる側も、技術が必要のようだ。
意外に奥が深いお姫様抱っこ…恐るべし…。


Bも後からお姫様抱っこされて席に連れてこられた。

顔を真っ赤にしたアラサーが席につくと、抱っこしてくれたマッチョメンとは別のマッチョメンが食べやすいように!とお通しの落花生をおもむろに鷲掴みにした。
そして、それをバキバキと砕き割りながら「こういうパフォーマンスをしていくので、僕達のテンションが上がるような掛け声をお願いします!」
と店のシステムを説明してくれた。

要するに、ボディービルの大会で飛び交うアレをやれと言うのだ。

「キレてるよ!」
「デカいよ!」
「背中に羽が生えてるよ!」
などなど、筋肉褒めろと。
そして、飲食のオーダーがある度に、筋肉をアピールするパフォーマンスがあるという。

やばい。これはやばい予感。



マッチョが一度去り、落ち着きを取り戻し私達は生搾りカクテルとつまみのローストビーフを注文。

しかし、5分、10分してもなかなかドリンクは来ない。

それもそのはず。
各テーブル、各座席でマッスルパフォーマンスを行っているのだ。
はいどーぞ!とあっさりしたものではない。マッチョのマッチョサービスが、物凄いのだ。

狭い店内でやまない黄色い声。
至る所でキャーキャーキャーキャー。

私もBも、黄色い声が出せるタイプではない。しかし、周りの様子を見ながらニヤニヤニヤニヤするくらいには、そのキャーの気持ちがわかった。


そうしている内に、やっとこさ我々のドリンク、生搾りカクテルがやってきた。

オレンジは3つ分。
目の前で果実を絞ってくれる居酒屋は数多とあるだろう。
しかし、上腕二頭筋をもりもりさせて、見せつけるようにオレンジ絞る店はマッチョバーくらいだろう。

余談だが、オレンジ絞りに来たマッチョが私の顔をまじまじと見てきた。
ん?と顔をすると彼は「お客さん、初めてじゃないですよね?僕見たことあります」と言った。

初めてだよ。

この店だけでなく、度々友人や知人に全く覚えのないところでの目撃情報が度々あるので、私のドッペルゲンガーは割と遠くない所にいるようなのだが、
顔だけでなく、趣味まで似ているらしい……。


余談はさておき、マッチョメンはオレンジを鷲掴みしてオレンジを絞り始めた。
「絞ってるよ!絞ってるよ!どんどん絞ってくよ!」とセルフ掛け声をするマッチョメンに、あーそうか、掛け声言わなきゃ!と、慌てて「キレてる!キレてるよ!」などと声を上げる我々。

しかし、盛り上がる筋肉、浮き出る血管を前に、次第に無言に魅入る哀しきアラサー。

ふと、なぜ周りの女子達は盛り上げ続けることが出来るのだろうとも思った。

そう思いつつ、時折思い出したかのように「蝶ネクタイ(制服)が可愛いよ!」などと声を上げる。
悪いねぇ、ノリが悪くて……。
でも、ちゃんと楽しんでるよ…。

マッチョが目の前で絞ったカクテルはとても美味しかった。


背中に羽が生えてるよ!!




二杯目はソフトマッチョ(ソフトドリンク)
のプロテインを注文。
バナナが飲みたかったけども、品切れとのことで、ベリーベリーをオススメされた。

プロテインはシェイカーに入れられた状態でマッチョが目の前でシェイクしてくれる模様。
今度はどんなポージングでやってくれるのだろうか。とワクワクしていた。


ナ ン ダコ レ ハ
マッチョメンがまさかの私の顔を挟んでシェイクし始めたではないか!!!

目の前は褐色のムキムキ。
もう笑うしかない。
この状態で「キレてる」とか言える訳がない。

おおよそ、10秒ほど挟まれてシェイクせれた。
死んだ。


プロテインは最高だった。



そんなこんなで、マッチョが許せばお触りもオッケーで、軽率にハイになるアラサー。
プロテインでテンションMAXになり、一気に疲れが出始める。



箸置きは鉄アレイ(1kg)



この時点で2時間。
カクテル1杯、プロテイン1杯、ローストビーフ、落花生を少々。

お腹空いたので、次の店に行こうかという話になり始めたが、隣の席の女性達が有料パフォーマンスを注文したことに気付いた。
これは棚ぼた←
このパフォーマンスを呼ばれてから帰ろうということになった。


写真を見ていただければわかるが、彼らの制服はピチピチのポロシャツ。

これをオプションでタンクトップにさせ、テーブルを囲んでマッチョがボディービルのポージングをしてくれるサービスがある。

隣のテーブルでそれは行われた。

定番の音楽に合わせて次々とポーズしていくマッチョメンズ。
そして、最後は着ているタンクトップを破り捨てるのだ。



……既視感。
男性ストリップじゃん!!海外ドラマで見たことあるやつ!!


脱いだマッチョメンズは何故かテンションダダ上がり。
各テーブルを上半身裸で巡り、触っていいよ!!と触らせてくれた。
腹筋と、俗にいうエロ筋、そして背中を触らせてもらった。

鼻息を荒くさせながら、「乳首触らせてもらっていいですか?」と言いかけた自分が恥ずかしい。
寸前で我慢した。我慢した自分を褒めてやりたい。


マッチョ堪能2時間ちょい。
我々は店を出た。

すっかりホクホク顔だ。

あまりにも艶顔で出てきたせいか、それとも単に間が悪かったのか、店を出た瞬間、デロデロの酔っぱらいの男に典型的な絡まれ方をした。

「眼鏡女子!!ねぇ!飲もうよ!!」

まあ、普通に無視して通り過ぎるだけなんですが、なかなかに酷い奴らでした。

「ねぇ!振り向いてよ!!おい!眼鏡女子のクセに!!!!」


天国からの生還直後なので、カスが余計にカスに見える辛い現実。



マッチョバー、大変満喫致しました。

Bも、マッチョは刺さらないはずだったらしいが、大人しい彼女も思わず大興奮していた。
肉体美は無条件に女心をくすぐるのだろうか…。



ただ、この満足感はデメリットでもある。
あのような圧倒される肉体美を目にしたあと、酔っぱらいも含めて、外の男性のひ弱なこと…。と、ただでさえ独り身こじらせてるのに、更に理想が高くなった感じがする。

金銭を払って初めてのお姫様抱っこ、筋肉パフォーマンスを味わったこの余韻……なるほど、素人童貞は多分こんな気持ちなのだろう…という虚しさ。


楽しかったのに、それ以外の感情渦巻く、そんな貴重な夜でした。