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「ブロガーサミットで話そうと思ってたこと」という過去形のタイトルにするとイベントがもう終わってしまったかのような誤解を与えてしまいそうですが、まだです。イベントは今週の24日土曜日に開催されます。

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http://agilemedia.jp/blogger/

イベントでは、スポンサードしているライブドアブログの代表として私もパネルディスカッションに参加させていただくのですが、正直どういう話になるかまったくわかりません。なにかおもしろい話でもできればいいのですが、ただの懐古厨になってはいかんぞと自分を戒めているところです。

ただ、このブログ10周年というタイミングで伝えておきたいなと思うことはあります。

どうせ当日は好き勝手しゃべる時間なんてないでしょうから、ブロガーサミットで話そうと思ってたことを事前に書いてしまえ、というのがこの記事の趣旨です。

僕が考える最強のブロガーサミット


イベントを今週末に控え、やまもとさんや中川さんが「僕が考える最強のブロガーサミット」を開陳しておられます。

「ブロガーサミット」とかってのを8月24日に徳力基彦さんが開催するみたいです: やまもといちろうBLOG(ブログ)
まもなくブロガーサミット2013!山本一郎さんが別企画を考えたので、オレも入場料5000円イベント考えたぞ : ウェブはバカと暇人のもの

過激なシャレのなかにも共感するところはあって、なかでも、主役の一人としてFC2ブログ的なものやアメブロ的なものが欠けているのではないか、というのは私も残念に思っているポイントです。もっといえば、CROOZ blog的なものや、インフォトップ的なものや、ブロマガ的なものも欠けているし、ステマ・SEO・ファイルアップロードブログ・まとめブログなどを裏稼業としている広告代理店や地方のウェブ制作会社といった面々も欠けています。

欠けているには欠けているなりの事情もあるのでしょう。興味がない、参加しても得にならない、そもそも呼ばれていない、呼ばれたところで表に顔なんか出せるかよ、ブロガーなにそれおいしいの。いろんな人がいるはずです。しかし、いろんな理由でブロガーサミットに来られなかった人も、その存在を知らなかった人も、ブログ10年の歴史に欠かせない役割を果たしてきました。そう断言できるのは、ライブドアブログというブログプラットフォームの事業を長年続けていて、水清ければ魚棲まず的な風景が嫌でも目に入ってくるからです。そして誰も彼もが、このインターネット世界を支えるのに欠かせない柱のひとつなんです。そのように実感します。

もちろん、それぞれの立場を私ひとりが代弁できるとは思っていませんし、むしろ私も含めたブロガーサミットの登壇者が図らずも象徴してしまうもの(それをなんと名づけていいかわかりません。とりあえずブロゴスフィアとか言っておけばいいでしょうか)のほうこそ少数派だとの自覚も当然あります。ですが、だからこそ、せめてこの祝祭のタイミングでは、いつもは口にすることのできないさまざまな存在やその価値について思うことを書き残しておきたいと思います。

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サイバーの藤田さんの『起業家』は、ブログの歴史を作ったひとりのプロデューサーの証言として必読です。ブログの可能性を信じ抜いて賭けに勝った偉大な人物をブロガーサミットに招聘できなかったのは損失と言わざるを得ない、というところがあると思います。

過小評価されがちな本ですが、後半はほとんどブログについて紙幅が割かれているので、ブログの歴史として読むと非常におもしろいですよ。Twitterに飛びついてFacebookに飛びついて今また「やっぱブログだな」なぞと言ってその浮気性を臆面もなくアーリーアダプターの矜持としている人には特におすすめです。

起業家
藤田晋
幻冬舎
2013-04-15


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「ステマとはなにか? ステマの何が悪かったのかあなたは人に説明できますか?」というテーマこそ、ブロガーサミットにふさわしいのではないかと思っています(実際にお題になるかもしれないし、ならないかもしれません)。

この問題はブログ10年の歴史に常につきまとってきたものですが、議論が棚上げされたまま、思わぬかたちで社会的な流行語になったのが2012年。その後、本来の意味とは違う誤用のまま(そして誤用とわかってわざとギャグとしても)使われるようになってしまいました。たとえばDiaryNote(そういうこじんまりとしたいいブログサービスがあるんです)でなんの変哲もない日記を書いているユーザーでさえ、「ステマです、すんません」なぞと偽悪ぶらなきゃ好きなアニメのDVDさえ紹介できない事態というのは、冷静に考えて本当に悲しいことです。

とはいえ、広告業界の偉い人が語るステマの罪だなぞという話を別にいまさら聞きたいわけではなく。今ならば、あえてその「功」についての主張が聞けないものでしょうか。今日もどこぞのブログサービスでは元気いっぱいのステマが観察できて、しかもそこにクライアントとブロガーと読者の蜜月さえ見てとれるわけですが、こういうのを見たあとで、ステマの何が悪かったのかあなたは人に説明できますか?

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また個人的な趣味としては、進化の隘路に陥り滅びてしまった、カモノハシ的なユニークなブログサービスたちのことも思い出しておきたいところです。

ネアンデルタール人は、その優しさやゆえに滅びてしまったとか言われますが(ほんとかどうか知りません)、現生人類のホモ・サピエンスが必ずしもあらゆる面で優れていたというわけではないのと同じように、いま生き残っているブログにはない優れた機能をもったサービスがありました。Reblogの元祖「NAVERブログ」や、バージョン管理システム(SVN)搭載ブログ「ブロックブログ」、音声投稿機能によるPodcastが可能な「Broach」、登場人物変換機能やしおり機能を搭載した「Forest Blog」、あるいはニュータイプのつもりが短命だった「VOX」や「nowa」なんてのもありました。

ブロガー(人)の特徴だと思っていたことが、実はブログ(道具)の機能に規定された人間性のある一面の発露に過ぎなかったということも、実際にあるでしょう。その認識に立てば、ツイッターがあるからかまってちゃん生まれ、バカ発見器があるからバカが生まれる、ということになります。であるならば、道具にはどのような進化を期待されるでしょうか。ブログサービスの開発元としては、そんなことも気になるテーマです。

道具としてのブログに関する議論のほうが主役だった時代の証言


まとめ


ブログサービスというのは、ウェブの本質を忠実に再現しているところがあって、非常にオープンです。だから一社の独占を許しません。ブロガーにとっても導入コストがゼロで、なおかつあらゆるフリーライドを許してしまいます(*1)。サーバや回線のフリーライド、コンテンツのフリーライド、広告販売に関するフリーライド、それこそあらゆるものです。どこかで誰かが許可したわけではありませんし、なかには重大なものもあって問題になりますが、止めようとしたって止められない。自然とそういう力が働いて自走しています。

* 1 GoogleやAmazonといった大企業さえ、ユーザーと直接契約してしまえば、ブログプラットフォームにお金を払う必要はありません。見落とされがちですがこれもフリーライドのひとつです。

こういう特徴をもったサービスを、事業を、カルチャーを、世界を持続させようとするときに有効なのは、あらゆるプレーヤーと協力し合うことです。個人も法人も、自社も他社も、正当派も邪道も関係ありません。清濁併せ呑んで、目をよく凝らさなければ見えない商流にも気を遣い、バランスを調整しながら互いに成長することです。少なくともライブドアブログというのは、そのような意識のもと運営し、事業開始から10年経っても今なお元気いっぱいやっております。

ブロガーサミットへの参加者にお伝えしたいのは、イベントに参加できなかった(あるいはその存在すら知らなかった)数多のプレーヤーの存在があるからこそ、いわゆるアルファブロガーの存在だとか、きっとイベント会場に顕現してしまうであろう「ブロゴスフィア」なんてものもあり得るのだ、ということです。

ブログ10周年にまつわるありがたいお話はきっと徳力さんあたりがしてくると思いますので、私のほうからは、ブログサービス事業者の立場から見える以上のような風景を想像してもらうきっかけを少しでもお伝えできればと思って登壇します。

なお、参加申込みはまだ間に合うもよう。

http://agilemedia.jp/blogger/

追記



とのこと! 当日お楽しみに。来てね。

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