佐々木智弘の今度は北京で「中国新政治を読む」

今度は北京で中国政治の新しい動きを見つけ、 私の見方を紹介します (since 2011.9.1)

2011年09月

 ★今日の『人民日報』★では、中国共産党の動きを伝える機関紙『人民日報』の中から、私が注目する記事を紹介し、私の見方を紹介します
 ★私の宣伝★では、私が書いたものが掲載された書籍などを宣伝します
「官方」サイト公開中:佐々木智弘の「中国新政治を読む」http://hw001.wh.qit.ne.jp/sasaki-zuo/

「天宮1号」打ち上げにトップ9の指導者が集結(今日の『人民日報』-20110930)

 1面を大きく飾ったのが、昨夜の宇宙ステーション「天宮1号」の打ち上げ成功の話題。関連特集を含め、多くのページを割いている。
 驚いたのは、胡錦濤をはじめ党中央政治局常務委員全員が打ち上げを見るために北京のコントロールセンターに集まったことだ(温家宝は打ち上げ現場入り)。国家にとっての一大イベントであることを示している。国威発揚のためか、最近の事故頻発により揺らぐ自主開発技術への信頼を回復するためか。

 これ以外は大した記事はない。明日から8日間の国慶節連休を控えているからだろうか、ヤル気なしという感じ。

社会管理を周知徹底する会議(今日の『人民日報』-20110929)

 今日の北京は珍しく青空が広がっています。

 周永康が全国加強和創新社会管理工作テレビ電話会議で講話をおこなった。9月16日に開かれた中央社会管理総合治理委員会第1回全体会議の内容を関係部門に周知徹底するために開かれたものと思われる。社会の調和的安定に影響を与える突出した問題に対処する社会管理とは何か。6点を挙げる。
 (1)流動人口に対するサービス管理の強化
 (2)刑期満了により釈放された人を教育する人員や社区矯正人員などの特殊な人々に対する管理、教育、支援工作の強化
 (3)非公有制経済組織、社会組織に対するサービス管理の強化
 (4)情報ネットワーク総合管理システムの構築の強化と情報ネットワークの健全で秩序ある発展の促進
 (5)違法犯罪活動に対する取り締まり、予防、抑制の能力、突発性事件に対する応急処置能力の向上
 (6)社会矛盾に対する解決能力の向上と群衆の合法的権益の保障

 テレビ電話会議を開くほどであり、関連評論員文章も掲載されており、胡錦濤政権にとって社会管理の問題が今最も重要なイシューだということは間違いないだろう。そう思って、いつも社会管理関連の報道はチェックするのだが、「社会管理」というのが、何を意味するのかを理解するのは難しい。何が難しいかと言えば、額面どおり末端で起きている社会不安の原因となるさまざまな問題への対応ということだけなのか。それとも、まったく明示的ではない共産党の一党支配を守るための統制なのか。もちろん、前者から後者を読みとらなければならないのだろう。しかし、そう言うのは簡単なのだが、明示的でない分そう言い切るには論理的な説明や証拠を有する。なので、それを探すために、つまらない関連報道を読んでいる。
 今日の6項目も、いつもの報道で列挙される項目とさほど変わらないが、どうしてこんな項目を挙げるのかということを考えてみると、(1)は安定的ではない流動人口に対し、彼らの権利を保護しなければすぐに騒ぐことと、犯罪率が高いことへの警戒、(2)再犯への警戒、(3)より多くの就業を担っている非公有制企業と末端で実際に管理している社会組織に対する注視、(4)ネットによる当局に不利な世論誘導への警戒、(5)犯罪と突発性事件への対応の不満が反当局活動に転化することへの警戒、(6)社会矛盾を解決できないこと、群衆の合法的権益が守られないことへの不満が反当局価値道に転化されることへの警戒。こんな風に読み取ると、いくらか社会管理と一党支配体制の安定とを関連づけられるのか。
 まあ、報道内容だけ見れば、人々の要求に応えていきましょうというような「群衆」に媚びている感じなのだが、そんな生やさしい会議ではなく、報道されていない部分でかなり厳しい対応、まさに統制という意味での「管理」が指示されていることが伺われる。

自らを棚に上げた日米の「冷戦思考」批判(今日の『人民日報』-20110928)

 鐘声「合作の知恵をもって、アジアの安全の新たな形を構築しよう」という文章が掲載されている。「今年は『サンフランシスコ条約』調印から60周年である」という書き出しで始まっており、私自身日本人として全く注意していなかったので、目がいってしまった。
 私にとって、たぶん多くの日本人にとっても、サンフランシスコ条約については、日本が連合国各国と平和条約を結び、連合国による占領が終わったという認識だろう。しかし、鐘声の文章は「西側のメディアによると、この後形成された米国主導のアジア同盟システムにほとんど大きな変化がない」として、サンフランシスコ条約がアジアでの冷戦を固定化した役割について言及しており、そこには日本という言葉すら一度も出てこない。この認識はおそらく目新しいものではないと思うが、中国がサンフランシスコ平和条約をこのように見ているのかということが分かり興味深く感じた。そこで、この文章から、中国の現在のアジア観が読み取れないかと思い、読んでみた。
 「各国は普遍的に中国の発展の配当を得ており、いかなる国も中国の経済発展の快速車に乗車する切符を手放したくはない」
 「アジアは有効で、あらゆる国家に安全保障を提供することのできる新たなメカニズムを模索しているが、アジアの国々の融合は事実上すでに新たなメカニズムの基礎を構築している。アジアは既に冷戦を脱出している。中国を『別の集団』に切断するのは、中国の発展を望まない、あえて正視したくない人の考えである」
 「この状況は冷戦中も強固だったが、冷戦後も中国の台頭により継続されている。アジアには依然として冷静思考が成長する土壌があり、3つの危険を警告しなければならない:(1)一部の強国(米国のこと-佐々木注)が、中国の台頭と歴史的要因を口実に影響を企み、軍事上アジアとの連係を強化し、このような連係の矛先を正確に中国に合わせている、(2)一部の西側のマスコミは、実際にすでに解決した問題を工夫を凝らして大げさに言い、離間するように挑発し、中国と一部の国との争議を大げさに言って地域全体の衝突にしている、(3)一部の国(日本のこと-佐々木注)は米国の軍事力の助けを借りて、中国をけん制し均衡をとろうとし、手足を広げ、したい放題ふるまっている」
 「中国は未来のアジアの安全情勢の中で重要な地位を占める必要がある。しかしもともと誰かの力を押しのけようとは思っていなし、派閥を作り、中国を中心として一線を引いて別の国を脅迫することもあり得ない」

 タイトルにはアジアの「合作」を掲げながらも、その内容は自分勝手で、上から目線だなあという印象だ。周辺国が「中国を『別の集団』に切断する」のは、なぜなのか。その点には言及することはない。そこに、中国こそ未だに冷戦思考に固執しているという中国のアジア観を読み取ることができる。だからこそ、日本も、アジアは1つなどという理想論を掲げることなく、妥協することなく、冷静に中国に対応していくことが必要だ。
 『人民日報』では、「鐘声」というペンネームの外交問題、国際問題に関する文章が2日に1回ぐらいのペースで掲載されている。中国のスタンスを知る上ではなかなか興味深い評論だと、最近は注目するようにしている。しかし、何年も前から「鐘声」というペンネームの文章は掲載されているので、以前は私の関心が低く、素通りしていただけのようだが。

 

文化に一党支配を正当化させる(今日の『人民日報』-20110927)

 今日はいつもに比べると読もうかなあと思わせる記事が多かった。

 党中央政治局会議が開かれ、6中全会が10月15~18日に開かれることが決定した。また6中全会で採択される政策文書「文化体制改革を深化させ、社会主義文化の大発展大繁栄を推進させることについての若干の重大問題に関する決定」の案が審議された。会議の説明で関心をもったのは以下の部分。
 「文化がますます民族の凝集力と想像力の重要な源泉となり、綜合国力競争の重要な要素になり、経済社会発展の重要な後ろ盾となっており、精神文化生活を豊かにすることがますますわが国人民の熱烈な願望となっている」
 「党の文化工作に対する指導を強化、改善することが、文化改革発展を推進する根本的保証である」

 過去の党大会前の中央委員会全体会議でどのような政策文書が採択されたか。2006年は「社会主義和諧社会建設の若干の重大問題に関する決定」、2001年が「党の作風建設を強化、改善に関する決議」、1996年が「社会主義精神文明建設の若干の重要問題に関する決議」である。この傾向から見れば、先例に沿ったものといえる。
 他方、昨今メディア規制が強まっていること、さらに共産党の正統性を文化に求めようとしている動きも見られ、どのような内容になるかには注目しなければならない。

 馮玉軍「政治の転換は"多元的な方程式"である」と題する文章が掲載されている。これは、先にプーチンの大統領選出馬宣言を受けたロシア政治に対する論評だ。プーチンとメドベージェフの権力たすき掛けの情況をどう見ているか。
 「メドベージェフ・プーチン体制」から「プーチン・メドベージェフ体制」への転換は、ロシアの憲政制度の枠組みの下で完成されたものであり、"ストロングマン統治"というロシア政治文化の伝統に回帰したもので、昨今のロシア社会の政治的不確定性の憂慮を終結させた。客観的に、このようなやり方は、エリート階層と社会の分裂のリスクを減少させ、安定維持、発展促進、大国の地位の振興の沿った路線を引き続き前進させることを確保する」
 1990年代初頭のロシアの政治エリートは西側の価値観(政治では三権分立を経て、高度な集権から民主制度への発展)を積極的に取り入れ輝かしい未来を描いたが、現実の予想とはかけ離れ、制度矛盾が少なくなく、権力の危機が頻発した。
 「プーチン後は、少数支配を打破し、中央と地方の関係を再構築するなどの手段を通じて、垂直的権力システムを強化し、『民主抑制』をとり、政局混乱の局面を収束させた」
 「文化伝統はその国の政治体制の遺伝子である。その国の発展に適合する新たな体制を模索するには、外科手術的な方法で文化伝承の遺伝子を完全に切り落とすことはできず、時代の潮流に順応し、新たな文化遺伝子を絶えず壮大に成長させなければならない」
 「国家の政治転換は、『多元的な方程式』であり、憲政の原則、歴史的伝統、政治文化、現実の利益分配、具体的な人事配置などの多くの要素の影響を受けるもので、唯一の答えはない」
 
 たすき掛けで権力を回しているロシア政治の状況を私は決して正常だとは思わない。しかし、馮の文章はこれを高く評価している。大多数の国民の支持を背景にしたプーチンの強力なリーダーシップに対し、中国共産党が羨望のまなざしで見ているようにすら思われる。だから馮の文章は単なるロシア政治に対する評論ではない。中国共産党が一党支配を維持していく上で、ロシアの政治状況から学ぶことは多いだろう。
 前述の6中全会とも関連するが、このロシアの政治状況を、「ロシア政治文化の伝統」ととらえ、正当化している点は興味深く、中国共産党が文化に一党支配の正統性を見いだそうとしていることと重なる。しかし、一党支配の正統性を文化に帰結させることは、中国共産党のご都合主義。

 もう1つ興味深い記事があった。全国検察機関テレビ電話会議が開かれ、人民代表大会代表連絡工作の強化、改善について指示があった。検察機関が人民代表大会代表の活動に協力しようという指示だ。
 本来中立である検察機関が議員の活動に協力しようというのは理想的、ごく普通の姿だ。それが中国で提唱されているのだから興味深い指示だ。しかし、中国の検察機関が中立でありえるか。無理だろう。だから実際にはかけ声止まりになるだろう。
 と思ったが、冷静に考えてみると、検察機関が議員活動に協力するのは、理想的ではなく、あってはいけないことだった。「ごく普通の姿」というのは皮肉になってしまう。中国の政治体制だから、検察と議員の癒着を強めようということが指示されたということだ。誤解でした。

「一票否決」は単なる行政手段(今日の『人民日報』-20110926)

 今日もこれといって読みたい記事はないのだが・・・。

 9月21日に続き、「一票否決」について、取り上げられている。そのタイトルは「政策が出たときの情勢と背景にすでに重大な変化が発生しており、いくつかの"一票否決"は退出すべきだ」というもの。国家行政学院法学部の楊偉東教授の見解を中心に展開されている。いくつか興味深い指摘がある
 (1)どのような項目を「一票否決」に適用させるかを決めることは難しい。しかし、企業誘致や小中学生の体育活動状況などは適さない。
 (2)「一票否決」は、行政手段であって、法律手段に取って代わることはできない。法律があって手段を使うことはできるが、行政手段はよくないし使うべきでない。政策文書(文件)が法律に優越し、「一票否決」を主な手段とすることは、本末転倒である。
 (3)「一票否決」は便宜的なものであって、長期的に存在する必要があるかどうかは検討すべきだ。

 気がつかなかったが、確かに「一票否決」は法律で決まった制度ではなく、文件で提起されている行政手段にすぎない。これだけ問題があるのだから、法律にはならない。そんなものに振り回されるのはどうかとも思うが、中国らしいやり方だ。「一票否決」を支持する地方幹部の見解も紹介されているが、楊教授の指摘は至極まっとうだと思う。
 
 このほか、9月22~23日に開かれたフィリピン主催の南シナ海問題に関するASEAN海事法律専門家会議についても比較的大きく取り上げられている。
 

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