佐々木智弘の今度は北京で「中国新政治を読む」

今度は北京で中国政治の新しい動きを見つけ、 私の見方を紹介します (since 2011.9.1)

2011年10月

 ★今日の『人民日報』★では、中国共産党の動きを伝える機関紙『人民日報』の中から、私が注目する記事を紹介し、私の見方を紹介します
 ★私の宣伝★では、私が書いたものが掲載された書籍などを宣伝します
「官方」サイト公開中:佐々木智弘の「中国新政治を読む」http://hw001.wh.qit.ne.jp/sasaki-zuo/

温州の中小企業の安定を印象づけ(今日の『人民日報』-20111031)

  「温州の中小企業は安定している」と題する記事が掲載されている。小見出しは以下の通り。
 (1)圧力は耐えず増大しているが、温州企業の全体的な情況には大きな異常は出現していない
 (2)直近の憂慮を解決し、将来展望を図る。浙江は上から下まで全力を挙げ、企業家は再び自信を取り戻している
 (3)実業に回帰し、転換を宣言し、一を聞いて十を知るという具合に良策を探求している

 30日の『人民日報』によれば、29日の国務院常務会議は、現在の経済情勢を分析し、直近の経済工作を指示した。
 (1)マクロコントロールの方向、力の入れ具合、テンポをしっかり理解する。経済情勢で出現している趨勢の変化を鋭く、正確に理解し、政策の適応性、柔軟性、展望性をさらに注視し、適時適度に調整準備(預調)、微調整(微調)を進める。金融貸出総量の合理的増加を維持し、融資構造をグレードアップさせ、金融サービス水準を高める。財税政策を完備し、構造性減税を推進し、民生の保障と改善についての差し迫った問題を集中的に解決する。
 (2)引き続き物価総水準の安定措置をとることに力を入れる

 注目された国務院常務会議でのマクロ経済政策の取り扱いだが、今月4度にわたる温家宝の地方視察で示された認識、方針が再確認されたにすぎず、突っ込んだ指示はなかった。その際の焦点になったと思われる温州の中小企業の資金調達難の問題についても、今日の記事では安定を強調した。温州の問題を個別のケースと認識し、他の沿海地区まで拡大していないというような印象付けをして、できるだけ問題を大きくしたくないような感じだ。そのため、マクロ経済情勢については当面様子見という感じか。

新聞記者の会議に習近平、李克強が出席(今日の『人民日報』-20111029)

 李長春、中国全国新聞工作者協会(中国記協)第8期理事会第1回会議で講話。習近平、李克強が出席。
 李長春は次のことを協調した。「新聞メディアは、文化建設の重要な陣地であり、新聞宣伝は文化伝搬の重要なチャンネルであり、文化発展の中で特殊な地位にあり、重要な作用を発揮するものである。新聞戦線は、高度な政治的責任感と強い歴史的使命感をもって、6中全会の精神を深く学習し宣伝し貫徹し、社会主義文化の大発展大繁栄を推進するために、中国の特色を持つ社会主義事業の新局面を切り開き、強い力の思想世論の支持を提供しなければならない」
 李長春は次のことを要請した。「中国記協は絶えず、党と国家の工作の大局を中心とし、新聞宣伝の重点任務を中心とし、広範な新聞工作者と団結し、党が新聞宣伝工作の参謀と助手になる」

 最近、国家インターネット信息弁公室が主催した中央新聞ウェブサイト責任者会議における中央対外宣伝弁公室副主任・国家インターネット信息弁公室副主任の銭小■の指示も掲載された。
 「6中全会の精神を立派に学習し、立派に宣伝し、立派に貫徹することが、現在、今後の一時期のインターネット新聞宣伝戦線の第一の政治任務である、中央の統一配置、高度な重視、念入りな組織化に沿って、ネット上で6中全会の学習、宣伝、貫徹の盛り上がりを迅速に高め、健全に向上するネット文化の発展を推進し、社会主義文化の大発展大繁栄のために貢献しなければならない」

 中国記協理事会が新体制になり、所管する李長春が出席し、講話を行った。このこと自体は5年前もそうだったので通例である。しかし、習近平、李克強まで出席したことは、ちょっと異例。5年前は胡錦濤と温家宝が会議の前に代表者と会見していたが、会議には出席していない。今回、胡錦濤と温家宝と会見していないことを問題にすることもできるが、私は次期指導部のナンバー1とナンバー2が、李長春とともに会議に出席したことを重視したい。党中央政治局常務委員が3人もひな壇に並んでいることは、やっぱり異常だ。
 昨今の新聞メディア、新聞記者に対し当局が締め付けを厳しくしていることがその理由だろう。党にとって新聞メディアが重要であることを関係者に伝えるとともに、共産党の一党支配の維持、習近平新体制に貢献するよう指示したということだ。
 中央新聞ウェブサイト責任者会議も同様だ。6中全会精神の宣伝もあるが、もっと深い意義はネットに勝手なことをするなという指示を伝え、締め付けを強化するということだ。

 この他、胡錦濤のG20 サミット出席について、外交部、財政部、人民銀行が事前ブリーフィングを行ったことも報道されている。素人がこのことに触れるのはやめておこう。
 

 

法規を守る意識の低さ(今日の『人民日報』-20111028)

 国務院新聞弁公室が「中国の特色を持つ法律体系」と題する白書を発表した。中国の法律体系がきちんとしていることを宣伝する文章だ。これまで制定された法律がいかに体系的で、民主的な手続きに沿っているかといったことが長々と紹介されている。それらは、読んでも退屈だし、あまり意味がない。
 これからどんな法律整備に力を入れるのかについても言及している。現在、今後、中国は経済社会発展にもとづく客観的な需要に基づき、しっかりと科学的発展の実現と経済発展方式転換の加速を中心として、民生の保障と改善、調和社会建設の推進に力を入れ、経済領域の立法を特に強化し、文化科学技術領域の立法を注視し、生態文明領域の立法を行動に重視し、科学的な立法、民主的な立法を深く推進し、立法の質の向上に力を入れる、ということだ。

 民生、環境などの分野の立法に力を入れるということで、経済発展方式の転換に本格的に取り組もうという姿勢はうかがわれる。

 晋風「価格低下の風波に直面しても、コントロールは動揺することはできない」と題する文章に目が行った。最近、上海の個別分譲マンションの価格が低下し、早期に高値で購入した人の不満が高まっているというのが、話題になっているようだ。中国版バブル崩壊のこともあり、この文章が気になった。
 価格低下は、金融引き締めなど政府の一連の不動産コントロールによって、売れなくなっているので、ディベロッパーが価格を引き下げたことによるもの。上海市政府は、価格引き下げによる販売活動の停止を呼びかけた。またディベロッパーと購入者は契約に基づく話し合いによりこの問題を解決し、商品住宅の価格管理規定に違反する行為を取り締まることを明らかにした。住宅の売買は市場行為であり、購入後の価格低下に対するディベロッパーの賠償が契約書に明記されていないのならば、双方は契約を履行しなければならない。こうした「権利保障」は、契約法律効力を軽視するもので、契約精神に欠ける。政府の不動産コントロールの決心は変わらないし、市場秩序の信頼を維持することは変わらない、一般の人々の合法的な立場を守ることも変えらない。

 購入者のレベルの低さには笑ってしまう。昨日、国土資源部が違法な土地利用行為の多くは地方政府が主導していると指摘した。土地問題については、地方政府とディベロッパーの癒着など違法行為がよく取り沙汰されるが、この件は購入者の身勝手。
 法規の整備は進むが、法規を守る意識は低い。このことは今に始まったことではなく、ずっと前から言われている。この問題を解決する方法は教育しかない、時間がかかると多くの中国の知識人はいう。しかし、これだけずっと言われていても、改善されているようには思えない。どうしてだろうか。それとも改善されているが、新しい情況が発生しているのだろうか。
 こんな人々の身勝手に、上海市政府がいちいち対応するというのも変な感じだ。政府がやることはもっと他にあるだろうと思うのだが。これは政府の仕事ではなく、公取のような機関や司法の仕事でしょう。晋風の文章が言うように、市場行為に政府が口を出すなということ。しかし、こうした一般の人々の身勝手が政府批判に転化してしまうことを恐れているので、政府が対応しなければならない。そうなると、この問題は、法規を守る意識の問題なのか、それともやはり政治体制の問題なのか。晋風はそこまでは問題に踏み込んでいない。
 いずれにしても、現実に、法規を遵守することを知っている人たちや国が、法規を守る意識の低い中国を相手にするのは、フラストレーションがたまる。また愚痴になってしまった。
 1つ注意しておきたいことは、『人民日報』はこのことを、法律問題としてではなく、晋風の文章のタイトルが示すとおり、バブル崩壊を警戒した経済問題として取り上げていることだ。不動産に対する政府のコントロールは維持するというメッセージである。

文化、文化に飽きています(今日の『人民日報』-20111027)

 一昨日、6中全会の「決定」の全文が発表されたことで、今日の紙面はその関連記事でいっぱいだ。
 「誕生記」では、今年4月から始まった「決定」がどのように策定されたかが紹介されている。党が一生懸命議論して作ったのだというアピールだが、そこでどんな点が問題になったかなど詳しい議論が紹介されているわけではないので、あまり意味はない。
 6中全会精神を学習せよとの文章の連載がスタート。1回目は「史書に名を残す文化の一里塚」と題する文章。この文章に書いていることが「決定」をなぞっているだけなのか、「決定」にはないことが書いているのか、分からないので、特にコメントできない。というのも、「決定」が長すぎるし、文化、文化と飽きてしまって、正直「決定」を読む気がしない。他にやらなければならないこともあるので、必要に迫られるまでは読みそうにない。
 李長春が6中全会で行った「決定」に関する説明の全文も掲載された。これも長すぎて読む気がしない。
 などなど他にもいくつか「決定」関連の記事が掲載されている。

 国務院常務会議が開かれて、注目していたマクロ経済について、何か施策が発表されるかと思ったが、何もなかった。増値税改革の試点について決定されたが、これは特に関係ないと見た。 

 最近、周小川が金融政策の基調は変わらない、柔軟性と的確性を増強すると発言したことが伝えられた。IMF国際通貨金融委員会第24回閣僚級会議期間中のメディアインタビューでの発言で、次のように述べた。
 「中国経済全体の趨勢に大きな変化はない。そのため、財政、金融政策の取り上げ方に変化はなく、引き続きうまくやっていく。同時に国際経済に予想外の、あるいは予想以上の深刻な問題が出現しないか警戒しなければならない。そのために、金融政策は柔軟性と的確性を持って、準備をしなければならない」
 「中国の中央銀行には4つの大きな役割がある。(1)低インフレ、(2)経済成長、(3)就業率、(4)国際収支バランス。われわれは終始同時にこの4つの目標に注視し、1つだけを注視しそのほかを軽視することはあり得ない」「たえずインフレを注視しており、成長を注視してインフレを軽視することはあり得ない」
 「たえずインフレを注視しており、成長を注視してインフレを軽視することはあり得ない。インフレを抑える上で、私は効能にタイムラグがあることを考慮する必要があると思う。すぐにインフレを抑えることのできる政策はない。同時に国内国外の情勢を考慮しなければならない。現在、多くの不安定な、不確定な要素が存在している」

 最近のマクロ経済状況に対する周小川の発言が少ないので、目が行った。しかし、現状維持を主張するだけで、おもしろくはない。ちょっと違和感があるのは、中国人民銀行の役割を語ったことを伝えている点だ。何の意味があるのだろう。人民銀行は与えられた役割に徹するという控えめな意図か、それともいろんな役割があるから介入するぞという決意表明か。この「わざわざ説明した感」が気になる。

温家宝の天津視察2(今日の『人民日報』20111026-2)

 昼休みに、温家宝の天津市視察の記事を読み返すと、おもしろいやり取りをいくつか見落としていたことに気づいたので、追加。

 ハイテク産業、戦略的新興産業の企業を視察し、企業責任者と座談会をもった。
 天津膜天膜科股分有限公司「海外製品との不平等な競争に直面しており、一部の入札では明確に外国製も用いることを要求している」
 天津芯碩精密機械有限公司「現在企業の財務負担が重く、資金の回転が困難である、現在の国の金融政策は産業政策に適応していない。科学技術型の小型超小型企業が銀行融資を受けるのは難しい」

 温家宝「銀行の人間は、企業に行って実地調査を行ったことがあるのか?」
 天津芯碩精密機械有限公司「来たことはある。しかし、銀行はおもに生産ラインや並んでいる設備などの資産を見て、我々には立派な設備はないので、彼らは見ただけで(融資を-佐々木注)しり込みする」
 温家宝「商業銀行は、もっと専門分野に長けて人材を有して、きちんと企業の調査研究を深め、そうしてから融資するかどうかを決定すべきだ。これが責任を負う態度だ。」

 労働集約型企業ではなく、ハイテク企業を視察し、現在のホットイシューである小型・超小型企業の信金調達難の問題を取り上げている。企業責任者が抱えている問題について、政府批判ともとれる発言を行い、それをそのまま掲載している。また温家宝も、商業銀行の貸し渋り姿勢を厳しく批判している。なかなかこのやり取りがおもしろい。
 温家宝は、小型・超小型企業への支援策として、「構造性減税」という個別対象にしぼった減税の実施も明らかにしている。
 
 金融引き締め政策の緩和というマクロ経済政策の変更をせずに、小型・超小型企業、しかもハイテク産業など資本集約型企業へのピンポイントの支援を行うことで、現在の問題を乗り切ろうということだろうか。それは、まさに構造転換を優先するということである。
 以上のやり取りも含めて、この天津の視察の意味を考えてみると、2008年の時とは異なり、構造転換に本腰を入れようという姿勢もうかがわれる。そこでは、構造転換を支持する選択的な個別政策の推進が重要になってくる。 
 温家宝が、金融政策を適時適度に調整することと、インフレを抑えることと、構造転換をすることを同時に掲げているということを指摘するところまでは、私にもできる。しかし、経済的に見て、経済政策として、これらがすべて同時に成立することなのか、矛盾しないのかということまでは、正直よくわからない。
 政治的にみれば、こうした温家宝の発言が、党内でコンセンサスがとれていることかどうかに関心がいく。やはりしばらく推移を見守らなければならない。

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