佐々木智弘の今度は北京で「中国新政治を読む」

今度は北京で中国政治の新しい動きを見つけ、 私の見方を紹介します (since 2011.9.1)

2011年12月

 ★今日の『人民日報』★では、中国共産党の動きを伝える機関紙『人民日報』の中から、私が注目する記事を紹介し、私の見方を紹介します
 ★私の宣伝★では、私が書いたものが掲載された書籍などを宣伝します
「官方」サイト公開中:佐々木智弘の「中国新政治を読む」http://hw001.wh.qit.ne.jp/sasaki-zuo/

今年1年ありがとうございました(20111228)

 年末までにやり遂げるぞ、と公言している仕事があって、けっこう切羽詰まっていますので、今年の更新はこれでおしまいにします。
 今年1年、このブログを訪問していただき、ありがとうございました。おかげさまで、少しずつですがアクセス数が増えていることを大変うれしく思います。
 来年も引き続き訪問していただけるよう、続けて更新していきたいと思います。
 2012年が皆様にとりまして、よい年になりますよう、北京から心よりお祈りしております。
 なお、来年の更新は、仕事が落ち着いたらということで。

習近平、李克強が香港とマカオの行政長官と会見(今日の『人民日報』-20111227)

 胡錦濤が野田首相と会見した。報道された胡錦濤の発言は、お決まりの日中関係への希望と朝鮮半島情勢についての見解の部分。

 野田首相の一連の会談に関する『人民日報』の報道からは、中国側にとっての今回の野田首相の訪中の意義として強調したかったのは、来年の日中国交正常化40周年の地ならしと金正日死去後の朝鮮半島情勢についての意見交換だったということになる。中国側には、タイミングよく、日本のみならず、諸外国に対し、北朝鮮に対するこれまでと変わらないスタンスを表明する機会となった。日本側にとってはパンダを借り受けることができてよかった。
 26日は、午前、午後、習近平も李克強も、香港特別行政区行政長官とマカオ特別行政区行政長官と会見している。2人とも北京にいたようだ。
 

野田首相が温家宝と会談(今日の『人民日報』-20111226)

 野田首相の中国訪問がスタートした。まず、温家宝と会談した。温家宝の主な発言は以下の通り。
 (1)「日中はいい隣国であり、いいパートナーでなければならず、敵であってはならない」
 (2)「日中省エネ環境保護総合フォーラム、グリーン博覧会などのメカニズムとプラットフォームの作用をさらに発揮し、できるだけ速く日中省エネ環境保護投資基金をスタートさせ、中日生態工業パークを立派に行い、省エネ環境保護、グリーン経済、低炭素経済、ハイテク領域の協力の水準と規模の向上に力を入れなければならない」
 (3)「中国側は日本側と密接に協力して、両国の通貨金融市場の発展を促進させ、日中韓FTAの進展と東アジア財政金融協力の推進を加速させたい」
 (4)「中国側は日本側の震災復興を引き続き支持、参加し、双方は災害防止災害削減、原発の安全の方面で経験交流を強化し、実務的な協力を展開することができる」
 (5)「朝鮮半島の平和安定を維持することが各関係方面の共同利益に符合することで双方は一致した。各関係方面は引き続き共同で努力し、対話と話し合いを通じて、半島の関連問題を解決し、一日も早い6カ国協議の再開に向けて進み、半島の平和安定を促進し、この地域の長期にわたる安定を実現することを希望する」

 (1)は温家宝の日中関係に対する基本認識。(2)省エネ環境保護での協力への期待が大きい。省エネ・環境循環型モデル都市開発区「曹妃甸エコシティー」建設への支援を示唆する発言。(3)は日本の中国国債購入の歓迎を示唆する発言で、日中韓FTAの推進について中国側の言質を引き出した。(4) は東北大地震に対する中国の関心を示し、パンダの貸出を示唆する発言。(5)金正日死去に伴う朝鮮半島情勢に対する中国側の認識を示しているが、ほとんど従来どおりだが、北朝鮮の新体制にも6カ国協議の重視を求めた発言。
 しかし、東シナ海ガス田開発問題や海洋安全保障問題など両国の懸案事項についての報道はない。

習近平がタイで東アジア協力に言及(今日の『人民日報』-20111224)

 ミャンマー、タイを訪問中の習近平がタイ華人華僑各界晩餐会であいさつをした。ほかにおもしろそうな記事はないし、習近平が何を語っているか気になったので、あいさつの全文を読んでみた。その中で気になった部分は以下のとおり。
 ―「現在の世界は大発展、大変革、大調整の時期にあり、東アジアの地位は日増しに重要で、役割は持続的に高まっている。中国、ASEAN、東アジアの国々の発展は新たなチャンスと挑戦に直面している。われわれはチャンスをしっかりつかみ、優勢を発揮し、中国-ASEAN関係を引き続き推進し、東アジア協力を深め、相互利益winwinを実現しなければならない」
 ―東アジア地域協力で理解すべき4つの重点:
 (1)ASEANの地域協力での主導的役割を堅持する
 (2)経済貿易、インフラ建設などの実務的な協力を深める
 (3)中国-ASEAN地域の安全安定を共同で維持する=われわれは中国-ASEAN地域に存在する対立する問題に対し、善隣友好、平等に接する、相互利益winwinの原則に基づき、関係国の対話協議によって平和解決しなければならない
 (4)その他の地域協力の有益な経験を積極的に参考にする=域外国が東アジア協力の促進過程における建設的役割を発揮することを歓迎し、域外国が中国-ASEAN地位の自主性、多様性を尊重し、それぞれの快適度に配慮することを希望する

 注目したいのは、ASEANのタイで東アジア地域協力について言及していることだ。もちろん、ASEANの主動的役割を強調しており、ASEAN+3(日中韓)をベースとした東アジア協力の推進という基本姿勢を説明したもの。しかし、これを習近平がASEANに向けて発言したことに意味があるし、彼が東アジア協力についても関心が高いことを示したことに意味がある。TPPについての直接言及はないが、「域外国」に言及しており、TPP や米国を強く意識しているというメッセージを読み取ることはできる。
 明日から野田首相が中国を訪問する。中国、そして次期最高指導者が東アジア協力を強く意識していることを十分理解して、そのことをうまく利用して、日本の対中外交にとって有利になるような成果を願うばかりだ。しかし、今回の訪中でそんなメッセージを発している習近平との会談はないという話も聞いている。是非習近平と会談してもらいたいが。

広東省陸豊鳥坎事件の教訓(今日の『人民日報』-20111222-2)

 昼に『京華時報』を読んでいtら、社説で広東省陸豊鳥坎事件の論評をしていたので、気になって『人民日報』のウェブサイトを見たら、今日の『人民日報』にも論評が掲載されていることがトップ項目で出ていたことを知った。住宅価格のことなんかよりも、こっちに目を向けるべきなのに、完全に見落としと、ちょっと反省。

 その論評は人民時評の欄に張鉄「“鳥坎転機”がわれわれに何を提示するのか」というタイトルで掲載されていた。

 広東省陸豊鳥坎事件が、21日に広東省党委副書記を組長とする工作組が陸豊に派遣され、省党委書記の重要な指示が伝達されたことで、解決に向かうことになった。この一連の事件から、何を教訓として学ぶべきかということ論じた文章だ。

 文章は、この事件を次のように理解している。

 ―「今年9月以来、一部の村民がたびたび陳情(上訪)したのは、村幹部の土地、財務、人事などの問題への不満に端を発している。もし(村幹部が)その都度、利益要求をしっかりつかみ、事件発生前に真剣に耳を傾け、公正に評価・判断し、速やかに解決していれば、小さなことが大きなことになり、(問題が)レベルアップし、群体性の衝突になることはなく、鳥坎事件は異なる結果になりえた」

―「広東省の工作組は『群衆の主な要求は合理的である』と肯定している」

―「鳥坎事件を直接誘発した土地問題は、全国各地で目新しいものではなく、・・・『偶然的』な衝突の背後には、『必然的』な動機がある」

教訓として次のことに言及している。

―「鳥坎事件では、末端政府の最初の過ちは、村民の合理的な利益要求を直視なかったことで、理性的な陳情(上訪)を過激な行動にエスカレートさせてしまった点にある」

―「社会管理の善し悪しは、対立(矛盾)や衝突が存在するかどうかではなく、対立や衝突をうまく受け入れ、解消できるかどうかである」

 

 鳥坎事件は今年9月に発生し、12月に入り新たな展開が見られ、注目されてきた。しかし、いつものことだが、『人民日報』は全くこの経緯を紹介することなく、教訓だけを論じようとするのだから、読者に親切ではない。注目されているのだからみんな詳細は知っているだろう、ということなのか。それともあまり経緯は知らせたくないけど、解決に向かっているので一応報道しないわけにはいかないので、高尚に論じたつもりなのか。いずれにせよ、新聞報道としてはダメだろう。それとも機関紙だからこれでいいのか。

 まあ、報道の仕方についてはこれくらいにして、鳥坎事件に対する私の理解は、9月に村民の陳情が聞き入れられず、暴動にエスカレートして、12月になって首謀者5人が捕まってそのうち1人が取調中に死亡したことで、その死亡原因をめぐり再び村民と地元政府のあいだに緊張が高まったというもの。だいたい合っているだろう。詳細は日本のメディア、ニュースサイトでも紹介されているので、そちらを参考に。

 一件落着しそうになったところで『人民日報』も初めてこの件を伝えた。この文章は、群衆側を肯定し、地元政府の対応を批判するという構図である。しかし、群衆側をここまで肯定するのはなんとも気持ち悪く、群衆に対する物わかりの良さを強調して、どことなく群衆に媚びている感じがしなくもない。それもこれも事件に対する分析がないので、この文章の判断が正しいのかどうか分からない。

こうした事件は全国で多発していることはこの文章も伝えている。地元政府の対応能力が低いことは分かっているが、それをこの文章が示唆するように個々の地元政府の原因と割り切っていいのか。やはり政治体制そのものの問題なのではないか。広東省で今年だけでも、いくつかの末端騒ぎが全国で注目された。これは広東当局にも対応に問題があるのではないか。もっと突っ込んだ分析をすればいいのに。

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