薄煕来騒動の今後の展開

 薄煕来騒動が過去の陳希同や陳良宇と決定的に異なるのは、王立軍が駐成都米国総領事館に駆け込んだこと、そして薄煕来関係者のヘイウッド氏殺害事件への関与が明るみになったことで、米国やイギリスを巻き込むことになり、国内問題に収まらなくなった点である。このことが、党中央の逆鱗に触れて、薄煕来は監督責任を問われ、ここまで追い込まれたという説明も可能である。つまり「野心」などという理由は考えすぎということである。そうではないという証拠を示すことはできないが、これについては私の「勘」。つまり王立軍問題や殺害事件への党中央の執拗な追求ぶり、また党中央への思想統一の強調ぶりから、単に個別事件による失脚とは思えないというしかない。いずれにしても、殺害事件に対する調査報告は対外的にキチンとしなければならない。

410日に党中央が中央政治局委員の役職停止決定を発表したことで、次の段階では中央規律検査委員会の調査報告、中央政治局委員の解任、党籍剥奪が発表されるだろう。それがいつになるかだが、第18回党大会前の7月頃の中央政治局会議ではないか。ただし、薄煕来騒動が権力闘争上は、薄煕来1人をターゲットにしたものであるため、中央政治局常務委員、同局委員の人事への影響はほぼ皆無と考えるため、処分はいつ発表されてもいい。ただし、薄煕来への処分の発表時には、ヘイウッド氏殺害事件に関する調査報告も発表せざるを得ないだろうから、対外的なことを考慮すれば、早い時期の発表になるかもしれない。

さて、「人事への影響はほぼ皆無」としたが、1つ影響があれば、周永康であろう。これまでのブログのエントリーでも周永康に注目してきたが、その理由は薄煕来と周永康の関係が私にはよく分からないからだ。周永康は1970年から1985年まで遼寧省の遼河石油勘探局に勤務しており、遼寧絡みで両者の関係が取り沙汰されており、周永康が薄煕来の後ろ盾で、中央政治局常務委員入りと政法委書記の兼務を支持していたというウワサは説得力があるように思われる。38日に全人代で重慶市代表団の討論に参加したのが周永康だったことも、その意図は定かではないが、薄煕来との関係によるものだろう。薄煕来失脚後、周永康がいち早く「胡錦濤同志を総書記とする党中央と高度に一致」と言及し、保身を図っている。普通に考えれば、中央政治局常務委員クラスの失脚はあり得ない。なぜならば指導部の不安定さを露呈するものだからだ。そのため、周永康の失脚はないと見ている。しかし、420日以降の周永康の行動に謙虚さは感じられず、むしろ挑戦的ですらある。たとえ党中央に忠誠を誓ったとしても、あまり個別攻撃をやれば、前代未聞の中央政治局常務委員の解任ということがないとは言い切れない。


次期人事予想

 最後に薄煕来騒動を踏まえた上での、今の時点での私の中央政治局常務委員の予想をしてみたい。前回第17回党大会でも人事予想をしたが、その時の反省を踏まえれば、今の時点で「第18回党大会時」の人事を予想することは不可能である。予防線を張るわけではないが、まだ半年近く先のことを今分かるわけがない。そのため、「今の時点での」とあえて断っておく。


 第1位 習近平 総書記、国家主席、中央軍事委員会副主席

 第2位 兪正声 全国人民代表大会常務委員会委員長

 第3位 李克強 国務院総理

 第4位 張高麗または張徳江 中国政治協商会議全国委員会主席

 第5位 李源潮 中央政法委員会書記

 第6位 王岐山 国家副主席

 第7位 張高麗または張徳江 宣伝担当

 第8位 劉雲山 中央規律検査委員会書記

 第9位 汪 洋 国務院常務副総理


 前提は、第1に第18回党大会では、ポスト習近平を決める必要はないので、中央委員からの2段階特進はなく、現在の中央政治局委員からの昇格のみ。つまり、令計劃、孟建柱、胡春華、周強、孫政才の抜擢はない。第2に定数は9。11では政策決定がやりにくい。7では「人事の既得権益」が守られない。

 第1位の習近平は説明の必要はないが、中央軍事委員会主席は「党内融和の」観点から胡錦濤が留任。

 李克強は実質的な権力を重視し国務院総理を兼務するため、第3位。

 中国の最高権力機構が全人代という建前があるため、第2位の全人代委員長兼務は不動。習近平と李克強が共に納得できる人物として67才という大先輩の兪正声。

 第4位も中国の政治体制の建前から政協主席兼務で不動。消去法で、張高麗、張徳江のどちらか。張高麗は「人事の既得権益」受益者である石油派の代表。張徳江は江沢民・曾慶紅グループの推し。

 第5位の李源潮は、本来第2位の全人代委員長と見ていたが、薄煕来騒動があり、胡錦濤は歴代指導者が考えたように公安部門を握る中央政法委書記には側近を送り込まなければならないと感じたのではないか。そうなると李源潮しかいない。ただし中央政法委書記の兼務が第9位である必要はないので、第5位で処遇。

 第6位の王岐山は、本来常務副総理と見ていたが、この職務は必ずしも経済担当ではなく、総務的分野、民生分野を担当することが多い。また経済も担当させると李克強がやりにくいのではないか。そう考えると、王岐山の特徴を生かすには、国家副主席を兼務させ、外交の舞台で活躍させる。

 第7位は第4位と同じ消去法で、張高麗と張徳江のどちらか。

 第8位の劉雲山は、本来宣伝部門と見ていたが、薄煕来騒動があり、胡錦濤は中央規律検査委書記も掌握しておきたいと考え、張高麗と張徳江よりもベターな人選。

 第9位の汪洋は、残った兼務が常務副総理。

 あたりも八卦、あたらぬも八卦。