Prologue
2007年12月17日
Another side Story 〜Prologue〜
彼女との初めての出逢いは、今でも忘れられない。
あれはイチョウが色づき始める季節の夕方だった。
その日もまた、駅構内にはいつもと同じように人の波が流れていた。
冷たくなり始めた風に肩をすくめ、皆一様に無表情な人々。
一所に集まり、そしてまた散って行く…それは見る者に、体内を流れる血液を思わせる。
にぎやかにはしゃぎながら通り過ぎる若い女性の集団でさえも、実は皆能面のように無個性にしか見えない。
目の前の絶え間ない流れは、不純で生温かく生臭いモノ。
一度足を取られると即座に全身にまとわりついてしまい、いつまでも拭い切れないモノ。
そこに混じると、まるで自分もどろどろとした紅いモノになってしまうかのような錯覚に陥る。
その不快感に、どうしても拒否反応を起こしてしまう。
彼らは毎日ああやって流れ続けて、果たして何かを運んでいるのだろうか。血液はそれでも、身体の隅々に新鮮な酸素を送るのに。
彼らは果たしてどこへ辿り着くのだろうか。小さな川の流れも、いつか大海へと導かれているのに。
彼らは日常の隙間からこぼれたりしないのだろうか。ここから眺めている自分のように。
何故人は、水のような、星のような純粋な流れを作らないのだろう。
さらさらと流れる水の一滴になら、夜空に輝く光の一粒になら、喜んでこの身を変えるのに。
そのために払う犠牲など、自分にとってさしたる問題ではない。
大いなる力によって、この不純で濁った世界から解き放たれるのであれば、最早なんのためらいもない。
名残惜しいことなど、ここにはもうひとつとして残ってはいないのだから。
いつか、生まれ変わる時を…自分はいつもその『瞬間』を渇望している。
求めるものは『純粋』という名の光り輝く透明な結晶。
純粋な心を。
純粋な魂を…ただそれだけの存在を。
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あれはイチョウが色づき始める季節の夕方だった。
その日もまた、駅構内にはいつもと同じように人の波が流れていた。
冷たくなり始めた風に肩をすくめ、皆一様に無表情な人々。
一所に集まり、そしてまた散って行く…それは見る者に、体内を流れる血液を思わせる。
にぎやかにはしゃぎながら通り過ぎる若い女性の集団でさえも、実は皆能面のように無個性にしか見えない。
目の前の絶え間ない流れは、不純で生温かく生臭いモノ。
一度足を取られると即座に全身にまとわりついてしまい、いつまでも拭い切れないモノ。
そこに混じると、まるで自分もどろどろとした紅いモノになってしまうかのような錯覚に陥る。
その不快感に、どうしても拒否反応を起こしてしまう。
彼らは毎日ああやって流れ続けて、果たして何かを運んでいるのだろうか。血液はそれでも、身体の隅々に新鮮な酸素を送るのに。
彼らは果たしてどこへ辿り着くのだろうか。小さな川の流れも、いつか大海へと導かれているのに。
彼らは日常の隙間からこぼれたりしないのだろうか。ここから眺めている自分のように。
何故人は、水のような、星のような純粋な流れを作らないのだろう。
さらさらと流れる水の一滴になら、夜空に輝く光の一粒になら、喜んでこの身を変えるのに。
そのために払う犠牲など、自分にとってさしたる問題ではない。
大いなる力によって、この不純で濁った世界から解き放たれるのであれば、最早なんのためらいもない。
名残惜しいことなど、ここにはもうひとつとして残ってはいないのだから。
いつか、生まれ変わる時を…自分はいつもその『瞬間』を渇望している。
求めるものは『純粋』という名の光り輝く透明な結晶。
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