2015年10月18日

映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

628a553e.jpg公開されたばかりの映画、『ヒトラー暗殺、13分の誤算』をさっそく見てきました。映画という媒体の迫力で、期待していた以上の衝撃を与えてくれる作品でした。
1939年11月8日、当時36歳だった家具職人のゲオルク・エルザーという人物が計画した爆破事件という実話に基づくドラマです。爆破の目的は、ヒトラーの暗殺です。ヒトラーはナチスにとっての記念日(1923年11月8日〜9日「ミュンヘン一揆」)に、毎年、その舞台となったビアホール「ビュルガーブロイケラー」で行われる式典で演説することが慣例になっていました。エルザーはその日に照準を合わせて、演説時間内に爆発するように周到な準備をして爆弾をセットします。映画の冒頭は、そのシーンです。
しかし想定外のことが起こりました。ヒトラーは予定より演説を早く切り上げて、会場を立ち去ります。その結果、ヒトラーは難を免れ、代わりに死者8名を含む多くの被害者が出てしまいます。エルザーは国外脱出寸前に、不審な行動を疑われ逮捕されます。そして、間もなくこの爆破事件に関与していることが判明します。
この暗殺未遂事件は、数多く知られるヒトラー暗殺事件のうちで知られることは少なかったようです。謎が多かったからです。爆破事件の容疑者として追及されたエルザーに対して共犯者や背後関係があるのではないかと疑われますが、単独犯との主張は変えませんでした。そして、逮捕後も生かされ続けていたことから、ナチスによる自作自演説も流れたこともあったようです。
エルザーがなぜひとりでヒトラー暗殺を企てることになったのか、真実はわかりにくいですが、映画は、時代背景も巧みに織り交ぜながら、ナチスに違和感をいだいていく過程が丹念に描かれています。例えば、ユダヤ人と付き合ったために女友達が道端でさらされていたり、エルザーの友人の共産党員が強制労働させられていたりといった場面は、通俗的な場面のようにも思いましたが、映画全体の流れの中では不自然ではなく感じました。エルザーの怒り、あまりにも人間的で自然な心の動きが、たった一人の反乱を生んだのでしょう。本筋であるドラマは、拷問場面など目を背けくなるシーンも登場しますので、迫力は十分です。
エルザーは、ダッハウの強制収容所に収監されていて1945年4月9日に処刑されました。ヒトラーが自殺する三週間前のことになります。エルザーの行動が、単独でなくスパイであることが立証できれば公開裁判にかけるつもりもあったようですが、もはや敗戦が避けられずヒトラーにとっては利用価値がなくなったためだったらしい。
ところで映画では、主人公エルザーはいつも自分の気持ちに正直に行動します。人妻だからと言って、遠慮することなく手に入れてしまいます。こうした一本気の自然児が立ち向かったものが、たまたまとんでもない相手だったこと、を描いたとみることも可能かもしれません。
独裁政治を、ほのかに感じさせる雰囲気が漂う現代日本を思い起こしながら、映画の余韻を味わいたいです。

sawarabiblog at 20:05│Comments(0)TrackBack(0)

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