2015年11月13日

映画『ベトナムの風に吹かれて』に思う

65d03aa2.jpgスバル座で11月6日(金)まで上映していた『ベトナムの風に吹かれて』を見てきました。
“認知症の母親”と“ベトナム”のキーワードが心を揺さぶりました。実話がベースになっているようなのですが、原作は読んでいませんのであくまで映画のストーリーに基づいた感想です。

ベトナム・ハノイで日本語を教えている主人公のみさお(松坂慶子)は、父親が亡くなったとの知らせを受けて故郷の新潟に帰ってきます。葬儀で気づかされたのは、母シズエ(草村礼子)が、誰の葬儀であるかも認識できていないことでした。後妻であった母にとって唯一の血縁者であるみさおは、兄夫婦の反対を押し切り母をベトナムに連れて行くことを決意して実行します。
ベトナムの人々は、温かく母を受け入れてくれました。迷子になったり多少ハラハラするエピソードが綴られます。ぎこちないほど素朴な会話が続いたりするのですが、見終わった後に何故か印象にのこるシーンが続いていたことに気づきました。アジア太平洋戦争の傷跡や、ベトナム戦争がもたらした爪痕などが登場した人々の心に刻印されているように見えますがそれでも日本人に対して心優しい。
主人公が、70年安保闘争をたたかった世代であることも、当時の友人の登場で明らかになりました。それは私にとっても、懐かしく切ない思い出の日々ですので、胸が熱くなる思いも味わいました。

さてメインストーリーの認知症の母親との関係が、映画の後半ではきれいごとだけでは済まされなくなります。交通事故のために手術を受けることになり、この出来事がきっかけで、まさに典型的な認知症特有の症状が主人公を苦しめます。夜中に何度も「便所行きてぇ」と叫ぶシズエに困り果て、ついにはベッドに縛り付けてしまうのでした。肉体的にも精神的にも疲れはてた状況が描かれます。それにしても、草村さんのすさまじい演技のリアリティに圧倒されました。私の場合も、認知症の父を介護した機会があり聞き分けのなさに閉口した思い出があります。介護の厳しさを、映画ならでの表現力で迫ってきました。ただし、最悪の事態には至らずに、後味よく終幕に向かっていきます。やはり認知症になっているらしいかつての大女優が、演技を忘れていないことに気付いた人々が、一夜限りの公演を企画して大成功するエピソードなども微笑ましい。

残留日本兵が帰国し、その孫が祖父のメッセージを伝えに、残されたベトナム人家族に会いに行くというエピソードもかなり重要な意味を持っていると感じました。ベトナムと日本の歴史を振り返ります。

日本がポツダム宣言による降伏文書に調印した9月2日に、正式にベトナム民主共和国として独立を宣言しました。しかし、かつての宗主国のフランスが植民地として支配しようとしたために、独立戦争を戦うことになります。このとき、ベトナムに駐屯していた軍人など600人余りの日本人が、この戦いに参加したというのです。1954年抗仏戦争が終結すつとともに残留日本人が、日本への帰国を求められたことがあったという史実が背景にあります。(古田元夫「映画に見る日本とベトナムの関係 70年の積み重ね」映画プログラムより)

気軽に楽しみながら、ベトナムの歴史の一端を学ぶことができました。

sawarabiblog at 20:01│Comments(0)TrackBack(0)

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