2005年02月15日17:24

ロバート・キャパ写真展「キャパ・イン・カラー」(日本橋三越)

キャパ・イン・カラー
 今日から始まったロバート・キャパ展に行ってきた。

 「やらせ」論争を引き起こしたスペイン内戦の「崩れ落ちる兵士」や、ブレ&アレが臨場感をいや増すノルマンディー上陸作戦などの名作写真で知られるキャパ。キャパといえばモノクロ写真というイメージがあったが、実はカラー写真もかなりの量、撮影していたということを、横木安良夫のノンフィクション『ロバート・キャパ最期の日』で知った。キャパが撮るカラー写真はどんなものだったのか。

 まず、カラーの色鮮やかさに目を奪われる。1930年代〜50年代の写真であるにもかかわらず、経年変化による褪色が見られない。これはたぶん、デジタル処理による復元だろう。しかし、復元されることによって、まるで昨日のことのように数十年前の光景を見ることができるという衝撃を感じた。

 戦時中の従軍取材からすでにカラー写真を撮影していたことにまず驚かされるが、カタログによれば、モノクロ写真では「ライフ」にかなわないと考えたライバル誌がカラー写真で差別化を図ろうとしたことが理由のようだ。そして、あのキャパでさえ、「ライフ」の仕事かがあぶれ、他誌の要請でカラー写真を撮らなければならなかった、ということも意外だった。

 カラー写真は感度わずかISO25*(付記参照)ほどと低感度で、キャパも撮影には苦労したようだ。昼日中の写真でも、レンズ開放近くで撮っているらしく、被写界深度が浅い。ボケが印象深く、そのことが逆に不思議な風合いを写真に与えてもいる。

 感度が低いこともあったのだろう。写真はすべて日中だ。わずかにヘミングウェイ家族を撮影した写真に傾きかけた日差しが感じられるくらい。いずれにせよ、晴れている。空は青く、彩度が高いこともあって、気持ちのいい写真だ。キャパがどこまで色のことを意識していたかはわからないが、案外、カラー写真が性にあっていたのではないかとも感じた。つまり、高感度カラーフィルムがあれば、キャパはよろこんで使ったのではないだろうか。大量にフィルムを消費し、乱写気味だったという証言(前掲の『ロバート・キャパ最期の日』)もあるキャパだが、なるほど、カラー写真でもかなりのカット数のなかから選ばれたのではないかと感じるさりげないショットが多い。とくに日本の写真で、子供の目線まで降りて撮影しているローアングルの写真が印象的だった。

 そして、点数はそれほどなかったが、ヘミングウェイ一家の狩に付き添って撮影した写真がなかなかいい。リラックスしたムードの中で、ヘミングウェイと息子たちが狩を楽しんでいる。キャパはそこにいないかのように、自然に被写体を捉えている。スナップの名手、キャパの面目躍如たるシリーズである。

 展覧会にはカラー作品のほか、わずかだが、モノクロの代表作も展示されている。キャパをよく知らない人にも楽しめるだろう。20日までと会期が短いのでお見逃しなく。

*キャパが使っていたカラーフィルムについては横木安良夫さんのブログが参考になる。

2月15日(火)〜20日(日)
日本橋三越新館7Fギャラリー

<付記>
ISO25*はISO12の間違いだというご指摘を横木安良夫さんからいただいた。展覧会のカタログを見ると、「略歴」欄の1936年の項に「スチルカメラ用35ミリコダクロームが発表される。デイライトタイプの感度はISO10だった」とある。コダクロームについては横木さんのブログ記事「僕のコダクローム その1」に詳しい。

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この記事へのコメント

1. Posted by 横木安良夫   2005年02月16日 11:43
今回デジタルプリントだが、コダクロームは、耐久性が高く、今でも当時と同じような美しい発色を止めている。デジタルだからこそ、コダクロームの発色を再現できている。感度は、ISO12だ。低感度だが、天気がよく順光だったら、125分の1、F5.6で撮影できるので、問題はない。こってりとした描写はコダクローム特有の色だ。ただ、日本の写真はコダクロームではないのかもしれない。
コダクロームついての僕のblog
http://alao.cocolog-nifty.com/the_eye_forget/2005/01/post_19.html
2. Posted by タカザワケンジ@scanners   2005年02月16日 11:59
>横木さま
コメントありがとうございます。
ISO12……、今ではちょっと考えられない低感度ですね。ご指摘ありがとうございました。
キャパのカラー写真の発色の鮮やかさには会場でも驚いている人が多かったですね。横木さんの『ロバート・キャパ最期の日』をもう一度読み返したくなりました。
3. Posted by BergeracK   2005年03月26日 12:40
写真集を本屋さんで買おうとすると
やはり、それなりな値段しますからw
中身を、じっくり確認してから購入を決めたい
高価なものになるほど、なかなかビニールが厚いです(^^;)

シロクマといいますと
どうしても故・星野さんの不幸を想い出してしまいますが
こちらで紹介してくださった写真家さん
あの愛らしさに負けぬもの感じました

熊は、ほんと二通りの顔をもっていますし
シロクマが獲物を捕らえ、あの白い顔を、真っ赤に染めながら
食する姿は、まさに野生のものですよね


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