2008年03月19日

『続渡世人』

ひさびさに浅草名画座へ。初めて朝イチの回に行ったんだけど、早朝割引で1200円が900円になった。ラッキー。いつものように場内は人生の大先輩たちでいっぱいです。みんな妙に姿勢がいいから、スクリーンが見えづらい。背中半分ぐらい背もたれから出てるんだもん。

まあ、どうでもいい話はおいといて、今回のお目当ては「続渡世人」。主役は一応、梅宮辰夫ってことになってるみたいだけど、実質的な主役は「特別出演」の鶴さんです。

監督は「昭和残侠伝」の佐伯清。この人の作品って何ともいえない雰囲気がある。ちょっと格式高いというか、古きよき時代の香りがするっていうか。正直言うと、個人的には結構苦手です。なんとなく入り込めないところがあるんだよね。なんつーか、昔の時代劇っぽい所作や台詞回しをそのままヤクザ映画に持ってきたような感じがあるんですわ。殺陣も時代劇っぽいし。
他の監督、たとえばマキノ作品や内田吐夢の「飛車角と吉良常」なんかでは感じないから、このスタイルは佐伯監督の個性なのかもしれません。そういう美学自体はアリかなとも思うんだが、残念なのは物語がとにかくギクシャクしてるとこ。

たとえば「組長が代貸しにヒットマンの役目なんてやらせるの?」とか「自分の命を狙ってるはずの親分を頼って、女房と子供を預けるなんてさすがにねーだろ」とか「組まるごとと偉い軍人を皆殺しにして、お咎めナシってのもなあ」とか、とにかく「えー?うそーん!」って突っ込みたくなるようなことが山盛りで、観てるこっちはそのたびに冷めちゃうわけです。脚本は「叔父貴」と「叔父御」の言い方を使い分けてたり、妙にキッチリしてるんだけど「そこじゃねーだろ」と思わずつぶやいたね、オレは。細かいこと言うようだけど。
実はこの「?」なカンジは前作の「渡世人」もまったく同じでした。
(ちなみに物語の大筋や主要キャスト、役回りもほぼ一緒。続編というよりバリエーション、はっきりいうと焼き直し的なところがあるのは否めません。)

ホントだったら、梅宮と鶴田が女をめぐってややこしい関係になったりすべきところを、なぜか早々にキーとなる女(鶴田の女房・万里昌代)が病死。この辺もなんとも解せない。女なんか必要ないってことなんでしょうか。

鶴さんはいつもの鶴さん、ワキを固める若山センセイもいつものセンセイ。決して悪くはないんだけど、どうも今ひとつ精彩に欠けるような気がしたのはオレが映画にのれなかったからでしょうか。

ラストもやけにハッピーエンド。血まみれで終わる他の仁侠映画とはひと味違って、どうみても股旅モノにしか見えない。最後の最後まで、なんか違和感の消えない作品でした。

2008年01月31日

『恐喝こそわが人生』

シネマ・ヴェーラでの特集上映に引き続き、浅草名画座でも深作作品を観ることになった。でもフィルムは退色がひどくて全編真っ赤っ赤。欠落した部分も多くてやたら飛び飛びでした。

それはともかく肝心の映画ですが、なかなかの傑作。深作の反逆思想(というか心情)がストレートに出たかなり直情型の作品だ。

主演の松方弘樹の軽い身のこなしがイイ。この人、個人的には鶴田浩二の後継者という感じがして仕方ない。仁侠映画の鶴さんは背中で男の悲哀を演じる、てな感じだが、松竹や東宝時代の出演作を観ると、いつも何ともいえない奇妙な軽さがある。健さんのぶっきらぼうな軽さとは違う、独特の軽薄な雰囲気を身にまとってるんですな。
これに近いものを若き日の松方にも感じるわけです。年取ってからの色気ムンムンな感じも似てるし。そして、この系譜と背中合わせにあるのが、高倉健から北大路欣也へとつながる、朴訥で透明感のあるキャラのような気がするわけです。

室田日出夫も好演。仲間の一人、城アキラって人がジョー山中にメッチャ似てるなって思ってたらご本人だった。見るからにBLACK&JAPANESE(実際、途中で黒人のお父さんが登場)の彼のあだ名が「ゼロ戦」って…。どんな経緯でそんなあだ名が付くんだよ!この辺が何ともアイロニー。

そして何といってもイイのが佐藤友美。この女優さん、実はあんまり好きじゃなかったんだけど、心を入れ替えることにした。喜怒哀楽がはっきり出る表情と低くてハスキーな声が最高。そして映画の中で何度もアノ名曲「東京流れ者」を口笛で吹きます。特に車中でずぶぬれになりながらのシーンはゾクゾクきたね。本家の鈴木清順作品にはあんまり乗れなかったオレとしては、この曲の良さを初めてしみじみと感じた気がします。

前半は完全な青春映画タッチです。でも途中で丹波哲郎や天知茂、石山健二郎、江原真二郎たちが、突然バタバタと登場してから急に緊張感が上昇。そして一気に結末へ走り出していく。

とはいえ丹波や天知の登場シーンはほんのわずかしかありません。まあ短いとはいえ丹波は結構重要な役どころです。しかし天知茂は完全にカメオ出演。それでもなぜかポスターでは主役級の扱いになってるのがフシギです。なんだかホントにバタバタしてる感じが伝わってきますな。

ことあるごとに過去の静止画がフラッシュバックするのは、正直うっとおしい。「心理描写」と何度も何度もカギカッコ付きで見せられてる気がする。こういうのはいただけないと思うのはオレだけ?

後半のシリアスな展開にも実録モノのような殺伐感は希薄だけど、昭和43年公開という時期を考えれば逆にスゴイところまで行ってる気がする。東映じゃなくて松竹製作ってことを考えれば、さらにビックリです。
ニュープリントが上映されることがあったら、ぜひもう一度見てみたいところですな。(DVDは「デジタルマスター修復版」でキレイです。)




2008年01月30日

『資金源強奪』

最初に言い切ってしまいたいが、この映画はマジですごい。和製犯罪アクション映画の傑作中の傑作です。今回のシネマヴェーラの特集パンフには「愉快な痛快アクション喜劇」なんて書いてあったんで行くかどうか迷ったんだけど、観てみてビビった。こんな作品を知らなかったなんて。

『仁義なき戦い』の集団群像ドラマが好きな人なら、間違いなくハマリます。この映画の魅力は『仁義〜』同様、まず登場人物のキャラがメチャ立ってるところ。主役の北大路欣也をはじめ、梅宮、室田、川谷拓ボン、そして太地喜和子とみんな100%出し切ってる感じです。主役の役柄はいかにも松方がやりそうな感じだけど、北大路がやったことでうまい具合にアクが抜けて、物語の痛快さが際立ってるような気がする。梅宮の悪徳刑事も独特の適度な脂っこさがピタリとはまってます。それから川谷拓ボン最高!どこまでもバカっぽく、可笑しくも悲しいこの感じは彼にしか出せません。安部徹や名和宏、林彰太郎もそれぞれの持ち味が存分に炸裂!天津敏なんかいつも以上に小狡くて、思わずハァハァしちゃうよ。こんなにたくさんの俳優が魅力的な映画、今の時代では物理的に作れないだろうなー。

この作品のスゴイところはそれだけじゃありません。そんだけ人物が魅力的なうえに物語がハラハラドキドキの連続。高田宏治の脚本は最近のナントカっていう大作ではえらく評判が悪いらしいけど、この時代、少なくともこの映画に関しては完璧です。セリフもいいし、ツボをバッチリ押さえた物語の展開もお見事の一言。そして名和宏と北大路、太地をめぐる冷たい情念の関係と梅宮や川谷のおかしさ、悲しさなんかがきれいに心理的なコントラストを描く仕掛けになってる。
この脚本と深作のたたみかけるような映像が、ド迫力で奇跡のコラボを見せてるんですなー。『仁義なき〜』ってなんとなく笠原和夫の色が強い作品のような気がしてたけど、あの映画的な興奮っていうのはやっぱり深作の天才のなせる業だったんだなと、いまさらながら思いました。(クレジットの名義は『ふかさくきんじ』。そうなった経緯はウィキペディアによれば、結構いろいろあったようです。)

大映の雷蔵や勝新モノ、あるいは日活の清順+木村威夫の映画なんかたまに観ると、映像の美しさに思わずうっとりするんだけど、この映画を見て男はやっぱり東映だなと決意を新たにしました。(何の?)

上映時間は91分。すべてが完璧です。

2008年01月24日

『狼と豚と人間』

シネマヴェーラの深作監督特集にて。

前回、マキノ作品の健さんはイイ!って書いたけど、こっちの健さんはかなり悪い人でした。弟の目の前で仲間を拷問しちゃったりするんだが、それでも健さんはやっぱり健さん。ただの悪人には見えません。こういう役を「高倉健」っていう個性の中で演じきるところが、やっぱりスターの貫禄なんでしょう。

お話の軸となるのは、三国連太郎+高倉健+北大路欣也の三兄弟が織り成すドラマ。豪華なんだけど、なんだか観ててとても違和感を抱く兄弟です。この居心地の悪い異質な感じっていうのは、映画全体を通じて流れてる気がする。

末っ子・北大路はスラム街の仲間となぜか「ウエストサイド物語」風のグループを組んでる。つまり突然ミュージカル調になって、指を鳴らしながら歌いだすわけだ。
なんかこの辺もアレレって感じなんだけど、メンバーの一人、若き石橋蓮司はかなりいい味出してます。(あとは岡崎二朗とか。)

どうなっちゃうのかなと思いつつ観てると、物語は一気に濃密な犯罪ドラマへ。江原真二郎を含めて個性派ぞろいの俳優さんがそれぞれ存在感を示しながら、爆発的なテンポで映画は進んでいきます。しかし深作作品のこのスピード感って、乗っちゃうとホント気持ちいいね。今回もモノローグと静止画で構成される冒頭部分がカッコイイです。

脚本は妙にきっちりしてて、まるで舞台劇みたいな構成。そのせいか一見心理劇みたいな雰囲気になってますが、実はいろんな異物を怒涛のように押し流していく「うねり」こそが、この映画の最大の魅力だと思う。いやスゴイよ、深作監督!

北大路欣也は兄貴に苦労を押し付けられる気の毒な役なんだけど、右太衛門の御曹司が「ウンコがどうとか」ってセリフを言ってるのを見るとなんだか複雑な気分。あとのちの監督夫人の中原早苗が出てますが、この人、個人的になんか苦手です。この映画の役も、もうちょっと垢抜けた女優さんの方が良かったんじゃないかなー。

でも映画全体が持つパワーはホントに圧倒的。なんか世間ではそれほど評判のよろしくない作品みたいですが、僕は文句なしに名作だと思います。

狼と豚と人間


2008年01月23日

『侠骨一代』

というわけで「瞼の母」の併映は『侠骨一代』。こちらもかなりの「母恋モノ」です。名作の呼び声高い作品ですが未見でした。

冒頭、兵隊になってる健さん。そこでいきなり大木実を前に、おふくろを思い出して号泣します。「大丈夫か、健さん」と思わず心配になるんだが、その後はホームレス生活を経た後、飯場で大活躍し始めます。マキノ作品(他には日本侠客伝シリーズとか)の健さんは、後年のひたすら寡黙なキャラと違って陽気でいいね。この映画も喜怒哀楽がストレートに出てて魅力的。声もデカイし。こういうのをイナセっていうんだよな、きっと。

で問題の「母」だが、演じるのは藤純子。なんと本物の母親と母親そっくりの花魁の二役です。うーん、実に直球の設定ですな。当然、健さんはご指名して上がってもまるで手は出さず。お金だけ渡して逃げるように帰っていきます。

健さんの役どころは実際、一連の「日本侠客伝」とかなり近いんだけど、この映画は何といっても藤純子でしょう。まずとにかくきれい。姿かたちもそうだけど、普通の人がやったら冗談みたいな身のこなしが、ぴたりとはまって実に色っぽいです。この辺はやはりマキノ御大の演技指導なんでしょうか。
それからセリフもゾクゾクするほど情感たっぷりです。

「あんたと出会って、なんだか分らないものを見つけたの。」
「胸が苦しかったけど、泣きたくなるほど嬉しかった。」

(花魁仲間が)「あんたって本当に…」
「あばずれじゃ… なかっただろう?」

くー。イイ!イイぞ!これもやっぱり御大が付け加えたのかと妄想したくなる。

今まで観た藤純子の映画の中では『女渡世人 おたの申します』がベストだと思うんだけど、この映画の藤もそれに匹敵するほど魅力的。主演じゃないけどね。花魁の微妙で、しかも激しい心の移り変わりを見事に演じきってます。そのうえ母親役までやってるんだからスゴイよなー。健さんは、ただ藤純子の周りで右往左往してるだけに見える。

あと健さんが軍隊生活の後、一緒に暮らす自由生活者たちの顔ぶれが最高。沢彰謙、山本麟一、遠藤辰雄、関山耕司。みんな生き生きとした表情がいいです。この集団のエピソードは、健さんの人物造形って意味でスゴく効いてます。さすが。

仁侠映画の原点は長谷川伸の世界、つまり「瞼の母」。だから主人公がやたらと母ちゃんを恋しがるのは自然なことなんでしょう。でも個人的には(やくざ映画じゃないけど)眠狂四郎のこんなセリフぐらいがしっくりきます。

「俺は母親の顔さえ知らんが女の腹から生まれたことは確かだ。だから女性に理不尽は許さん!」

でもウェットな任侠の世界では、これじゃクールすぎるのかもね。(ちなみに「女性」は「にょしょう」とお読みください。)




2008年01月20日

『瞼の母』

またまた浅草名画座へ。
『男の代紋』で仁侠映画のマザコン問題(大袈裟)について書いたけど、今回は偶然にもその辺の代表作ともいえる2本を見ることになった。まずは長谷川伸原作の歴史的名作『瞼の母』。戦前から何回も映画化されてるけど、見たのは加藤泰版です。

なんつーか、モノスゴイ濃度の映画でした。まず主演の中村錦之助の芝居が実に濃厚。母親の木暮実千代を探し当てた後の錦之助の様子はただごとではありません。同じ長谷川伸原作で翌年公開の「関の弥太ッぺ」とは一味違う、過剰なエモーションの洪水だ。流れる涙は滝のよう。何かにとりつかれたような演技に引き込まれたのか、松方弘樹の芝居も心なしか錦之助調で、物語を一緒に盛り上げていきます。まるで大盛りカツ丼を一気食いしてるような幸福感を感じたね。女優陣も全員熱演。とくに沢村貞子がイイです。

そして何と言っても、息が詰まるほど濃密な加藤泰の演出。三味線弾きの浪花千恵子と出会うシーンの長回しは見てるだけでドキドキしてくる。観客全員の息をのむ音が聞こえてくるようだった。(というのはもちろんウソ。浅草名画座の場内には映画的な緊張感など皆無で、行儀の悪いジイさんたちが大声でケンカしてました。)錦之助・小暮のやりとりの場面の気持ち悪いほどのローアングルとお茶がこぼれた後のズームショット。いや〜映画ってホントにすばらしいですねえ!
あと風景(といってもオールセットだけど)の構図に小津を思い出しました。最後「忠太郎を探しに来る親子、そして隠れる忠太郎」の場面にも映画的な感動が溢れまくってます。

お話はもはや神話的フォーマットともいえる「母探し」。正月にWOWOWでやってた『人間の証明』を何十年かぶりに見たんだけど(松田優作最高!)、あの映画って要は『瞼の母』なんだって初めて気づいた。それと『砂の器』を混ぜてみたっていうか。(結末的には『飢餓海峡』のほうかも。)

それにしても加藤泰はやっぱりスゴイなー。でも森繁は「小津のモノマネの勘違い監督」ってこき下ろしてたみたい。確かにこういう撮影に付き合わせられる俳優はたまんないよね。





2008年01月15日

『極道』

前回の『男の代紋』を見てたら、なぜか「若山が足りない!」と思って、センセーの映画が見たくなった。でもって選んだのがコレ。10本以上も作られた人気シリーズの第一作です。

しかし、まさしく若山富三郎による若山富三郎のための映画って感じだった。脇は文太、金子信雄、待田京介、山城新伍、そして鶴田となかなか豪華なんだけど、光ってるのはただ一人、センセーだけ。なにしろ文太なんてセリフはほとんどゼロだもんね。寡黙でニヒルなキャラってことだろうが、その辺の人物造形がかなり雑。だからほとんど潮健児とかと同じ扱いになってます。まあ東映に移ってきたばっかりで仕方なかったのかもしれないけど、これじゃあまりに不憫だよ。

街田は映画の前半で姿を消すので、大事なところではまったく出番なし。鶴田もカッコイイけど、出番はやっぱりあっさりしたもんです。大木実はとにかくいい人だけどジミ。悪役の天津敏も妙に押し出しが弱くて、全然らしくない。内田朝雄だけじゃ弱いって。

その分、映画の見所をすべてセンセイが引き受けてます。清川虹子とのチューのシーンはウワサには聞いてましたが、意外に情感があってイイ感じ。そのほかにも泣いたり笑ったり怒ったり、若山だけが大忙しで画面を駆け回ってる。

そういう意味で、なんとなく偉大な弟さんの『悪名』を思い出したりしちゃうんだけど、比べるとやっぱり若山の方がどこか暗い。ズバリ言っていささか華がないというか。
とはいえ、大木や潮健児たち取り巻き一派を脇に固めて、張りきりまくるセンセイの姿はかなり魅力的ではあります。まあ、勝新のキュートさには誰もかなわないもんね。
健さんや鶴田みたいにバッタバッタと敵を斬るんじゃなくて、とにかく手榴弾を投げまくるワイルドさはなかなか爽快。まるで戦争映画みたいです。
演出も結構、乱暴というか雑というか。とにもかくにも若山の魅力を堪能するための映画でしょう。それだけでシリーズ化されちゃうんだから、やっぱりスゴイ役者なんだよなー。

2008年01月14日

『男の代紋』

高橋英樹の珍しい東映作品。当然、鶴田・高倉みたいにはしっくりきませんが、なかなかの良作でした。意外なことに街田京介とのコンビがいい味出してます。顔をあわせるたびに対立(というか小競り合い)をするご両人。でも仲がいいのは見え見えって感じです。それがやがて島田正吾という「父親」を得ることによって本格的に兄弟のような関係になっていく。

いわゆる渡世うちの兄弟分の間柄ではないだけに、余計にその関係性の深さが強調されるという仕掛けだ。物語を構成するのは、やくざとしての「親・兄弟」の関係を軸に、三ツ矢歌子親子の「母と子」の情愛、そして高橋・街田の「(擬似)兄弟」の絆という3つの人間関係。よく練られた脚本です。

高橋と三ツ矢の間には恋愛感情もあるんだが、それはあまり深まりません。原因は高橋が三ツ矢の看病をしながら「まるでお袋に孝行してるみたいだ」と高らかにマザコン宣言をしてしまうから。そりゃ、母親には手は出せねーよな。
しかし仁侠映画のヒーローたちは、なんで出てくる女にいちいち母親の影を見出すんでしょうか。健さんも似たようなセリフを何度も言ってるような気がする。(だいたい相手は藤純子。)
三ツ矢が何度、高橋に迫っても「いけねえよ…」とか何とか高橋はいつも及び腰。ケンカはメチャメチャ強いんだけどね。結局「おかみさんはケン坊のお袋さんなんだ…」「…私はただの女よ!」なんて会話があってもやっぱりダメ。「勘弁してくれ」と逃げちゃいます。カッコ悪いぜ、桃太郎!

悪役は天津敏、遠藤辰雄に汐路章。ハンバーグ、エビフライにナポリタン付きの豪華ミックスグリルって感じです。天津&遠藤が「兄弟!」とか何とか言って抱き合ったりしてるの見ると何だか嬉しくなるね。
もちろん皆、悪い悪い。素人には無茶苦茶するわ、引退した元の親分は見捨てるわ、女子供にも容赦なく手を出すわ、手に負えません。まあ最後は当然やられちまうわけなんだが、天津敏の死に様がなかなかスゴイ。

脇では南利明が軽妙な味が出ててイイ感じ。大木実はいつもながらの役を手堅く演じています。

高橋英樹は『刺青一代』とか大好きなんだけど、東映でも何本かいろんな監督のやくざ映画に出てたらどうなってただろーか。ちょっと見たかった気もします。

2008年01月09日

『関東やくざ者』

三ヶ月ぶりに浅草名画座へ。オレもいい加減トシ食ったと思ってたけど、この映画館に来ると、いつも客の中で最年少(たぶん)。2008年、まだまだ頑張らなくちゃなと思いました。昼間から映画見てる場合じゃないね。

で映画の方は主演・鶴田浩二。組のナンバー2は大木実で、その弟分が待田京介。いやー、落ち着きますなあ、こういう配役。前回の適材適所の話じゃないけど、安心して見てられます。今回も小沢茂弘の演出がいい。ところどころ妙な場面があったりするのもご愛嬌。やっぱりこの作品でもスターたちが光りまくってます。
たとえば鶴田と丹波哲郎の横顔の切り返しのシーンは、対照的な2人の個性がバッチリ出てて、両方ともシビレる〜!
それから藤純子が鶴田にしなだれかかる場面のドリーショットも最高。抱き合う2人をカメラがなめるように回り込み、色気ムンムンの表情を追いかけます。現場ではあんまり評判のいい監督じゃなかったみたいだけど、ホントに役者の見せ方は抜群だと思う。
画づくりもズームをやけに多用したりで、あんまりお上品とはいえないかもしれない。でも、みんないい表情してるんだよなー。
藤純子は着物の襟がどれもパックリあいてて、やけにお色気強調してますが、顔が妙に幼くて可愛らしい。それもそのはず、この映画出演時はデビュー3年目。なんとまだ19歳(!)です。(ちなみに『緋牡丹博徒』公開はこの映画の3年後。)

物語の柱となるのは大正時代の米騒動を背景にしたやくざ同士の抗争。前回この映画館で見た『博徒対テキ屋』と同様、ちょっと社会派のテイストです。市民の暴動を煽る汐路章が「政府を倒せ」とか「政府のイヌめ」と叫ぶところなんか、ちょっと公開時の社会背景も反映されてるんでしょうか。
しかしその暴動を鎮圧する鶴さんもスゴイ。まずダイナマイトを集団のまん前にぶん投げて派手に爆発させといてから「皆さーん、落ち着いてー」みたいに諭し始めます。「皆さーん」じゃねえよ。死んじゃうって。

こういうバカバカしさも含めて、小沢演出最高です。二宮ゆき子や北島サブちゃんが突然歌い始めて、ミュージカル調になるのも楽しい。ニコニコ笑いながら歌う子分たちの中に、クレジットに出てない高月忠や潮健児の顔も見えます。(たぶん。違ってたらゴメン。)なんだか嬉しくなりました。

役者では他に丹波哲郎もイイ。まさに、これぞ丹波って感じの役どころです。村田英雄は頑張ってるけど、どうしても訛りが気になるんだよなー。ジャパネットの高田社長よりドイヒーだもんな。街田京介は陽気に登場した最初の瞬間から死相が出ててコワイですが、やっぱりハマリどころをじっくり演じてます。

いやー満足満足。正月映画はこうでなくちゃね。

2008年01月08日

『残侠あばれ肌』

主演は梅宮辰夫。『不良番長』公開前年の仁侠映画です。冒頭に流れる辰っつあんの歌のヘタさに軽く衝撃を受けた。名曲『シンボルロック』を聞いたときはあんまり感じなかったんだけどなー。
そんなことはともかく、組のために殴り込みをかけた結果、クサイメシを食うことになった辰兄ィ。ムショから出てみると愛する女は売春婦に身をおとしたあげく、姿を消していた。女を探す旅に出た彼は、やがて恋人そっくりの別の女に出会う…。

…って、これは『続飛車角』の設定とおんなじですな。そーいや二役を演じる桑野みゆきもどことなく佐久間良子風な感じ。しかしこの人もやくざ映画にあんまりしっくりきません。松竹の看板女優ですが、なぜか映画の全体の雰囲気は大映や日活を連想しました。(ちなみに『続〜』では辰っつあんは青成瓢吉。)

良かったのは辰巳柳太郎。あんまり出てこないけどさすがに渋いです。あと河津清三郎もカッコイイ。他には若き日の谷隼人も出演。こちらははっきり言って芝居になってなかった。個人的に嬉しかったのは砂塚秀夫が大活躍してること。彼ならではの持ち味を存分に発揮してます。この映画で一番光ってたかもね。

主人公のキャラ設定はズバリ高倉健マナー。辰っつあんも頑張ってるけど正直、健さんと比べるとさすがにキツイ。こーいう映画では役者の力って大きいんだなって、改めて思いました。やっぱり大事なのは適材適所。健さんには不良番長や『仁義なき〜』の岩井役はできないもんね。
そういえば池辺良はまたもや結核持ちで、主人公の恋人の兄貴役。まるで風間重吉がスピンオフで出演してるみたいです。なんだか見てて安心したけど、こっちは適材適所っていうよりただ安易なだけだって!

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