こんばんは。ご存知、みよしです。
2011/08/12 00:59:07
めちゃくちゃ面白い舞台を見て、脚本家の方と少しだけ話せて、興奮して「ブログに感想書きます!」って言ったら「今日書いてください今日!」って言われたので、頑張ります。

というわけで(?)めちゃくちゃ面白い「エダニク」(真夏の會)の感想です。
230811
あらすじ
舞台は東京近郊のとある町の屠場。
その屠場は小規模ながら腕のいい職人を抱え、
ブランド豚の加工を請け負っていた。ある日の午後、
職人達の休憩室も兼ねた研磨室は予期せぬ来訪者を迎えていた。
生体が物体へと次々と変えられていく建物の中、
緊張感なく交わされる会話。
ある事件をきっかけに突然、死のイメージが膨張し始める。
(公式サイト:http://www.manatsu-kyokuto.net/ より引用)

感想
「エダニク」は、屠場の休憩室を舞台にした、会話劇です。
映画で言えば「キサラギ」「12人の優しい日本人」のように
ひとつの部屋、登場人物の会話のみで話が進行して行きます。
登場人物は、サワムラ、ゲンダ、イマイのたった3人。
初めて演劇を見るという友達に誘われ、前から3列目でした。

このブログにしては珍しく、現在(今週末まで)上演中なので
出来るだけネタバレはしないように書いています。
また、同じ理由で、最後に公演情報を記載しておきます。
興味を持たれた方は是非とも!行ってみて下さい。


前置きが長くなりましたが、本当に!面白かったです。
脚本の横山拓也さんの書く会話は、言葉遊びが本当に上手くて
「こういう会話友達としたなあ」「このノリ解るなあ」の連続でした。
打って変わって、屠場とは?畜産とは?というやり取りのなかでは
「どんな気持ちで屠畜するのか」「仕事としての屠畜について」
そもそも「肉を食べること」への疑問が強く描かれ、
そこにウゥッとなりました。打ちのめされた。

可哀想、と思うと同時に、肉を食べる。
その奇妙さ、価値観の居心地の悪さがありました。
普段は見ない振りをしている、根本的な価値観だったので
たまに揺さぶられると、弱いのかもしれません。
当たり前だけど、誰かの命を貰って生きているのだな、と。

あらすじの「ある事件」を解決するため話し合うんですが、
終盤になればなるほど、問題は休憩室で解決できる範囲を越え、
「ここには居ない誰か」「ここでは起こっていない出来事」
を取り込んで、際限なく膨らんで行きます。

特に「ヤナギさん」は名前でしか登場しませんが、
間違い無く影の主役です。思わず彼の人生に、思いを馳せてしまう。

ヤナギさんに限らず、キャラクターがとても魅力的でした。
眼鏡で愛妻家のサワムラ、直情型で短気なゲンダ、
ひょうひょうとしてつかみ所の無いイマイ。
現実に居そう、でも居なさそう、そのバランスがとても良かったです。
見た直後は、イマイくんが面白いなーと思ったけれど
思い返すのは、ゲンダさんの頬の引きつりだったり
サワムラくんの目のぱちぱちだったりする。皆凄かったです。

舞台を走り回り、ぽんぽん出て来る言葉に見入っていると、突然のラスト。
そのあまりの衝撃と、後日談に救われたような思いでした。
(暗転した瞬間、友達の手を握ってしまった)テンポからの解放。
終演後、会場の外に脚本の方がいらっしゃって、直接聞けたのですが
ラストは「それでも続いて行く食肉工場を書きたかった」
とおっしゃってて、ああーと思いました。
自分が死んでも恋人と別れても友達と喧嘩しても、世界は続く。
それは救いでもあって、虚しくもあって、喜劇にもなり得る。

「エダニク」で一番面白いな、と思ったところは
あらすじにもある「死のイメージが膨張し始める」ところです。
ある事件に関係するある物体(凄いネタバレ回避感)から漂う
「死の匂い」が部屋に充満して、ただの休憩室がそうでなくなる。
それは休憩室の外まで伝播して、取り返しがつかなくなる。
ここには居ない誰か、ここでは起きてない問題まで持ち寄って、
「ただの休憩室」が3人の「脳の中」になってしまうというか…。
上手く書けませんが、そんなことを思いました。



8/24追記「エダニク」戯曲集を購入しました。
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「完全に空気を支配してるやん」
「自分「迎合」の意味知らんと使ってるやろ」
「許すとか許さないとかじゃないですけど、もう許しますから」
「◯◯を人質に立てこもってるんですよ」(◯◯はネタバレ)
「なんで全部ここに持ち込もうとするんですか」
「この建物の塀を越えたとたん、うちの豚はモノになっちゃう」
「こっちにだけ命背負わすなや」
個人的にグッときた台詞でした。
舞台上で役者さんの口から聞くのとは、また全然違う印象。