こんばんは。ご存知、みよしです。
壱坪シアタースワンで、iaku「人の気も知らないで」を見ました。
※ツアー公演は来週の三重が最終だそうですが、多少ネタバレがあります
hitonoki
あらすじ(フライヤーより引用)
春の日曜日の午後。桜は散った。
彼女たちは交通事故で入院中の同僚・アデコのお見舞い帰りにカフェでお茶をしている。
今日は寿退社した別の同僚の結婚式の余興の打ち合わせを
しなければいけないのだけど気分じゃない。
入院中のアデコの治療痕があまりにもショッキングだったから。
「目に見える身体の一部欠損」を負った彼女をどのようにサポートしていくか、
それぞれの生活・事情・思いに”繋がれた”ところから激しい議論が交わされる…。



感想
劇作家の横山拓也さんが主催される「iaku」の公演は「エダニク」でハマり、
「目頭を押さえた」「流れんな」と見ていたのですが、久しぶりに感想を書きます。

「人の気も知らないで」は「エダニク」と同じく、会話が主役の作品。
舞台は客席と地続きのテーブル二つに椅子が四つ。照明も音響もなし。
役者さんは時折飲み物を飲んだりするものの、基本は座ったまま。
そんな55分という短い尺の作品でしたが、味の濃い食べ物ほど少量で満足できるように
見終わった後は色んな考えが頭をぐるぐると渦巻いて、大変でした。

登場人物は綾(伊藤えりこ)(ノリと面倒見が良い。7歳年下の彼氏がいる)
心(宿南麻衣)(真っ直ぐかつ素直。意見ははっきり言うタイプ。綾たちの後輩)
長田(永津真奈)(毒舌クールなインテリ系。マッサージの常連)な三人の女たち。

カフェに入ってきた綾と心は、ミニコミ誌の先輩後輩の関係。
お見舞い、花粉症、同期の結婚式、これから来る長田の話などが取り留めもなく語られる。
遅れて綾の同期である長田が合流し、取引先の社長やマッサージの話を経て
本題である、結婚式の余興の打ち合わせを始めるものの、
長田のある提案で三人の思惑は徐々におかしな方向へ……。といった感じ。

全体を通して関西弁ということもあり、前半の綾と心のやり取りは
ノリツッコミや歌ネタ(絶妙な「Joy to the love」)が多用され、とても楽しい!
(ただ、今思い返すと、アデコの治療痕を見たショックの反動なのかな? とも思える)

長田が到着してからは長田VS心の力関係が目まぐるしく入れ替わり、
仲裁する綾の暴露によってそれぞれの過去が明かされていくのですが
これが攻撃ならぬ口撃の連続で、見ていてハラハラしました。
ふらりと入ったカフェで、隣のテーブルがこんな感じだったら怖すぎる。

長田のある秘密が分かってからは、彼女が心へ浴びせ続けた言葉が、
そのまま長田自身のことを表していた
と分かり、ふわりとした弛緩がある。
その直後に「こんな後出し、ずるい!」と激高する心の気持ちも、すごく分かる。
自分だけが知らなかったこと、自分だけ悪者にされたような、そんな気持ちなのかな?
少し違う喩えかもしれないけど、秘密を共有する=女同士の友情みたいなところ、ある。
同期である綾と長田の絆と、そこに入り込めない心のもどかしさを同時に感じました。

序盤の伏線をゆるく回収する形でラストへ繋がっていくのですが
長田や綾は進めるきっかけが出来たけれど、心はしんどいだろうな。
二人が心の真っ直ぐさと、筋の通し方を好意的に受け止めてくれることを祈りたい。
(あと、長田の相手の職業を考えると、カミングアウト済みなのか? とふと気付く)
にしても、甘いものを食べて元気出そう!って、女の特権的な気分転換方法ですね。
かくいう私も帰り道に甘いものが食べたくなって、チョコレートを買いましたよ(報告)

舞台上には出てこない「アデコ」の存在やキャラクターが色濃く見えるのは
「エダニク」での「ヤナギさん」に近いものを感じました。
あと、男性ながら女性の会話をここまで書けてすごい、と思う反面、
男性だからこその距離感と目線の冷徹さなのかな
、とも。そんなリアリティ。
ざっと全体の感想はこんな感じでしょうか……。でも、まだまだ書きたいことがある。
雑談混じりになりますが、もし良ければもう少しお付き合い下さい。

まず、痛みや喪失をどう処理するか三者三様だなぁ、ととても興味深かった。
アデコの事故というイベント(嫌な言い方になりますが)があり三人は
心→今後のアデコの人生や、自分にできるサポートを考える
綾→事故が起こった原因の追及と、その責任の所在を明らかにしたい
長田→アデコに感情移入する/自分に置き換えて考えてしまう と、
それぞれが「過去」「現在」「未来」の考え方を体現している気がしました。

脚本を書かれた横山さん曰く「他者が抱える傷への想像力の話。」である今作は
「人の気なんか知らないよね」という、諦めであり救いでもあると思う。
その傷がどう癒されるのかその人自身でさえ分からなくても、
ある日突然誰かの一言ですーっと楽になることがある。
そういう意味では、長田が言われた「出来損ないのニューハーフ」も、
アデコへの「不幸中の幸い」も、そういう意図じゃなかったかもしれない。

誰かの照れ隠しが誰かの地雷だったりするし、
誰かにとって最良の言葉のチョイスが、言われた方にとって最悪だったりする。
私たちが言葉を使ってコミュニケーションをする限り、
この埋まらなさを抱えていくしかないんだな、と改めて思い知らされる。

(言葉にだけ頼るのは良くないですね、と自戒の念を込めて……。)

それと、「欠損」というキーワードが個人的にとても気になった。
「四肢全部」と「頭・胴体」ではどちらが私なんだろう、とふと考える。
長田の「右腕の無い男と結婚できるか?」という台詞と、
「目なら?生殖器なら?」という追い打ちにグサグサと射抜かれてしまった。
ただ、結婚した後で右腕が無くなる可能性はゼロじゃないし、
それを言い出すと「どうせ死ぬなら生きてても仕方ない」と極論になる気がするけど。

(なんとなく)関連する自分の呟きふたつ。


終演後は、アンケートを書きながら会場の写真を撮ったり(許可は頂きつつ)
ラスト一冊だった短編戯曲集を購入したりと、隅々まで堪能しました。
(タイトルからして気になる「嫁に来ない課」「仮面夫婦の鑑」!こちらで購入できます)
今回の台本もあったものの、記憶そのままの熱量で書きたかったので見送ることに。
三人を演じた伊藤さん、永津さん、宿南さんを間近に見たものの、
さっきとは皆別人のようで、さすがプロだわ!と感じました(当たり前)
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さて、えらい長さになってしまいましたが、今後のiakuの公演予定と
脚本の横山さんに心をくすぐられた話をして終わりにしたいと思います。
・会場の入口でちょこんと目印のように立っている横山さん
・終演後「感想を下さい」をあれこれ言い換えて訴える横山さん
・「(感想を)書きやすいテーブルが…非常に書きやすいテーブルがございますので」
(※ほんとにただの萌えポイント列挙でしかない)



iaku 今後の予定
「人の気も知らないで」全国ツアー2014
7月18日(金)〜19日(土)三重:津あけぼの座

「目頭を押さえた」DVD発売&「流れんな」新フライヤー公開記念 iakuトークイベント
8月9日(土)21:15〜22:45 大阪:common cafe

「流れんな」
東京公演(10/25-11/2)@三鷹市芸術文化センター 星のホール
三重公演(11/8-9)@三重県文化会館小ホール

※より詳細な情報は公式(http://www.yokoyama-iaku.com/)をご覧下さい。