こんばんは。ご存知、みよしです。
5月25日、渋谷の無限大ホールで「又吉直樹主催 実験の夜 vol.38」を見ました。
「実験の夜」とは、ピース又吉さんが定期開催しているライブで
演目と演者は当日のお楽しみという、不思議なライブです。
決まっているのは、又吉さんが出演して、何かをするということだけ。

38回のうち私が見に行ったのはほんの数回なので、まだまだ新参者です。
ただ今回は、エンディングで「おおっ」と感じたことがあったこともあり
vol38のレポをしつつ、自分なりにこのライブを魅力を書いてみたいと思います。



◯開演前
「気になる言葉、好きな単語を書いて下さい」というA4のアンケートが配布され
舞台上には飛行機の滑走路のようなセットが置かれていました。

◯オープニングトーク
この日の又吉さんは、上下黒い服で、靴下だけが赤い。
『火花』の発表以降、差し色に赤がよく使われているような気がします。

先日発表がありましたが、『火花』で三島由紀夫賞にノミネートされたものの、
発表の瞬間は別のお仕事をされていたそうです。
結果がわかったあと、スタッフさんや編集さんは黙り込んでいたものの
綾部さんだけは「取れなきゃ意味ねぇんだ」と又吉さんに声を掛けたというw

◯メンバーの呼び込み
しずる村上さん、ライス関町さん、ブロードキャスト房野さん、ジューシーズ児玉さんの4名。
ちょっと順番があやふやですが、企画の準備をお客さんがしている間、
居酒屋で強面の先輩芸人たちに会ったお話で盛り上がっていました。
木村祐一さん、品川庄司品川さん、千鳥大悟さんという、映画『Zアイランド』組と遭遇し、
それまではしゃいでいたのに、緊張で無口になってしまう面々。
トイレに近い席で食べていたので、坊主の人が来るたび気にしていたものの
店員さんやお客さんも坊主の人がいて大変だったらしいw
又吉さんは「でも木村さんが全部ご馳走してくれてな」とフォローされていました。

◯紙飛行機文庫
そんなトークの最中にお客さんがせっせとしていたのは、紙飛行機の準備でした。
事前に配られたアンケートを紙飛行機にして、舞台上の滑走路へ飛ばすというもの。
又吉さんが説明しているあいだも「カサ……カサ……」と折る音が止まらないw
舞台上では、眼鏡と教頭先生がつけるような黒のアームカバーが配布される。

ちょっと設定があやふやな部分もあるのですが、「紙飛行機文庫」の企画説明。
村上さんは司会、又吉さんは帯を書く人で、他の3人は編集部員。
編集部員の3人が滑走路に届いた言葉を選び、それを組み合わせでできた本のタイトルに
又吉さんが即興で売れそうな帯を書く、といった大喜利のような企画でした。

お客さんたちが思い思いの飛行機を持つと、又吉さんの合図と楽しげなBGMがw
一斉に紙飛行機が飛ばされる光景はとてもファンタジックで、どこか懐かしかったです。
私は今回遠くの席だったので、飛ばした飛行機が中腹で落下するアクシデントが……。
(もしどなたかの身体にぶつかっていたら申し訳ないです、すみません)
けれど、前方の席にいる方々が不時着した紙飛行機を懸命に滑走路へ飛ばして下さったので
ほぼすべての紙飛行機が舞台上に届いていたと思います。こんな所で人の優しさに触れる。

村上さん「普段の実験の夜とは違う、陽気な光景でしたね!」w
早速、届いた紙飛行機の中からお題にする言葉を選ぶ編集部員たち。
舞台のホワイトボードには「そして / からの / は / の / と / に / が / も」と助詞等が並び
いくつかのお題が組み合わされる。お題が決定すると又吉さんがその帯を考え、
その回答が、ちゃんとした本の装丁のようにモニターへ投影される。

「腹ペコ」の「海外旅行」
  北半球は食べ尽くされた。逃げろ!南半球

解説:腹ペコ、という単語を擬人化?する発想。
   海外では「スプーン」というタイトルで販売されるとのことwありそう!

「関節」「ヒューヒュー」「おじさん」
  アイドルの追っかけはもう古い! わしはアレを応援する

解説:アイドルの歌やダンスではなく、軋む関節を応援する男の物語。
   ライス関町さんいわく、ジブリで映画化されるほどの人気作だとかw
   ボキボキッと骨が鳴る音を集音マイクで拾って〜と又吉さんが説明するも
   村上さんに「そんな光景ジブリで見たことないわ!」と一刀両断されるw
   個人的に、石田衣良さんのIWGP「骨音」を思い出したりしました。

この辺りで又吉さんが「みんな真剣にやってる? ちゃんと探してな」と不安がるw
感動できる作品を、と編集部員が懸命に言葉を探すものの、
又吉さんはなかなかGOサインを出さない……。
そんな中、決まったのが次のお題でした。いや、なんで?ww

「夕焼け」「ベロベー」
  夜はベンベーロ

解説:児玉「シュールにシュールを返すなよ!」ww
   朝も気になりますね、と誰かが言ってて「確かに!」と思いました。

◯メトロノーム大喜利
大量の紙飛行機は一旦滑走路にまとめられ、次の企画へ。
メトロノームのカチ、カチ、という音の合間に「早すぎるわっ」等の台詞があり
タイミングをあわせて大喜利を考える、というもの。印象的だった回答だけ抜粋。

「早すぎるわっ」
  ブロキャス房野「20歳でブルーチーズ」→早すぎるわっ
  又吉「早すぎるか?」→早すぎるわっ

この辺でジューシーズ児玉さんがフリップを使わずボケはじめ、
以後他のメンバーもフリップをほとんど使わなくなるw
児玉さんのこういうところが、すごいなーと思います。囚われてない!

「85歳で急に超能力に目覚めたじじいか!!」
  又吉「(空を見上げながら)雨が降る……」
「神よ」
「幻」
  又吉さんが関町・房野・児玉を従え異国の神話に出てくる神様みたいになってました。
  (この説明でまったく伝わる気がしなくてつらい)

◯限界あっちむいてホイ
2人1組になり、フリップで出されたテーマに沿ってあっちむいてホイをする企画。
「スーパースロー」(もはや顔芸の戦い)
「高速」(開始直後に「負けた〜!」と崩れ落ちる又吉w)

「反抗期」
  村上さんに「じゃんけんしろよ」と言われるものの、ふてくされる又吉と関町。
  又吉「ハァ?それやっていいことあるん?なんかくれんの?」
  村上さんの熱血教師っぷりもハマっていました。

「ホラー」
  薄暗く照明が落ち、児玉と関町があっちむいてホイをするたびに
  舞台上の誰かが倒れて行く展開w 最後はみんなが床に倒れて終了。

◯エンディング
5月26日に発売された堀本裕樹さんとの共著「芸人と俳人」の告知。

また、又吉さんから嬉しいお知らせも。以下会話のぼんやりした記録。
又吉「来年くらいに、実験の夜を大きな会場でやってみたいですね」
村上「いいですねそれ! 今まで何十回としてきた集大成ってことですね」
又吉「せやな、ずっと実験ばっかりしてたから……。
   やから、本番ってことなんかな」
村上「本番の夜!」

終わりっぽい雰囲気になったところで、又吉さんが「ではそろそろフライトしましょうか」と
言い出し、訝しそうなメンバー。又吉「無限大ホールが昔飛行場やったって知ってた?」w
突如設定を思い出した又吉さんと、椅子を並べただけの操縦席に座らされる面々。
ゆるいイラスト&ライス関町さんに雑な写真加工を施した写真などがモニターに写し出され
そのまま舞台袖へ飛行機が飛んで、今回の「実験の夜」in空の旅は幕を閉じました。



◯「実験の夜」とは
ざっくりとしたレポートだったので、どの程度伝わるかがとても心配ですが
「紙飛行機文庫」で、大人たちが紙飛行機を集める姿がなんとも奇妙だったり、
(言葉を書いた紙飛行機を飛ばす、という設定自体もとても美しいなと思います)
それぞれの芸人さんの発想の瞬発力には、毎回すごいなぁと思わされます。

「実験の夜」は1時間公演なので、「もっと見たい」と思うところでサクッと終了しますが、
だからこそ、月に1回のお楽しみ感があるのかもしれません。
平日の21時45分開演となると、関西からはなかなか行き辛かったのですが
今は東京に引っ越したので、むしろこの時間帯の開催がありがたく思えます。

これまで数回通っていて、なぜ突然レポートを書いたかというと
最後の又吉さんの「本番の夜」の構想に、特別な興奮を覚えたからです。
多忙を極める又吉さんがどれだけこのライブを大事にしているかは
これまでに開催された回数を見ても明らかですが、
今回のエンディングでも、「あそこはもうちょっとこうするべきやったな」とか
「次はああしてみたらええんかな」
と、次々にアイディアが出てくる。

少し前の話になりますが、3月に草月ホールで開催された『火花の秘話』というイベントで
西加奈子さんと対談された際、「実験の夜」にも関連したお話があったので
抜粋して書いてみたいと思います(より詳細な、イベント全体のレポートはまたいつか)

西さんは又吉さんと出会った当初から、その思考回路に非常に興味を持っていて
「今何考えてるんですか」「それはどういう意味ですか」と質問責めにしていたそうです。
「今でも何しでかすかわからへん。床の上を突然転がり出すんじゃないかって思う」と。
又吉さんは笑いながらも「それはでも、めっちゃ正解です」と話す。

又吉「僕、めちゃくちゃお客さんの前でやりたいんですよ。やりたいって衝動がすごい」
NSCに入って、まったくウケなくても「やれた」から満足だったそうです。
例えば、道の往来で突然叫び出す男は、傍目には異常者でしかないですが、
それを「一発ギャグ、叫ぶ男」とでもパッキングすれば、笑いとして成立する。
「だからギャグとかやなくて、ある種の病気なんです」と、
又吉さんは恥ずかしそうに話されていました。

又吉さんの「ギャグをやりたい」「小説を書きたい」はどちらも根っこにあるのは衝動で、
その衝動は狂気と紙一重かもしれず、だからこそ物凄く惹かれるのかなと思います。
又吉さんの中で、衝動と狂気と笑いはとても近しいところにあるのかなぁ、とか。

ところで、「実験の夜」は回ごとに又吉さんが話す割合がかなり低いときがあって、
それでも満足感があるのは不思議だなと思います。又吉さんが企画・主催してるからかな。
又吉さんの「やりたい・好き・面白い」という感情の延長線上に「実験の夜」があって、
感情の輪郭は曖昧になって、まるで意識を共有してるような瞬間が時折あるのです。

こう書くとヤバい奴みたいですが、そんな思考の一端を、これからも覗き見たいです。

6月は桜桃忌にあわせ「太宰治ナイト」があるため、次回の開催は7月21日(火)ですが
もし、この記事を読んで興味を持たれた方がいらっしゃったら、とても嬉しいです。
無限大ホールはすり鉢状の劇場なので、どこからでも見やすいかと思います。
(という文言はほーぼーさんのブログ「劇場へいこう」から頂きました(勝手に)

最後に、ずーっと気になってたんですが「実験の夜」って公演タイトルは
ここから来てるんだろうか。実験の夜、発見の朝、本番の夜。
実験の夜、発見の朝
パラダイス・ガラージ
イーストウエスト・ジャパン
1998-09-15