要旨

 JRAの2010年リーディングサイアーに関する一考察である。過去11年にわたるリーディングサイアーランキングの変遷とともに今年のランキングの意味合いおよび来年以降のトレンドについて考察した。


背景と目的

 2010年のリーディングサイアーランキングは種牡馬3年目のキングカメハメハがトップとなり、サンデーサイレンス(以下SSと表記)を持たない馬が1994年以来16年ぶりにトップとなった。すなわち、現在の日本競馬はサンデーサイレンス一色だったここ十数年の状況から変化しており、また内国産あるいは日本国内調教馬が2008年以降3年連続でトップとなりそれらの馬が日本独自血統が繁栄しつつある。そこで本記事では、過去11年にわたるランキング変遷とともに今年のランキングの意味合いと今後のトレンドについて考察する。


記事の詳細

1.2010年リーディングサイアーランキング

 まず、表1にまとめた2010年リーディングサイアーランキングを見てみる。
1位キングカメハメハは2位のフジキセキに対して賞金で言えば12億円以上、割合で言えば約1.5倍以上稼ぎ出した。サンデーサイレンスの1位陥落以降2008年のアグネスタキオンの2位との差は1.35倍、2009年1位のマンハッタンカフェの2位との差は1.12倍でありこれらに比べてキングカメハメハは優れていることがわかる。この要因としては以下のようなことが考えられる。

  1. 出走頭数、出走回数が多い
  2. 勝馬率が高い
  3. EIが高い
aについては、当馬は種付け頭数が非常に多く、種牡馬としての仕事を十分にこなしてきたこと、また表には挙げてはいないが1頭あたりの出走回数が多い=競走馬として多くのレースに出走できる丈夫な産駒が多いということが背景にあると考えられる。
bについては、産駒レベルの平均値が高くクズが少ない優秀な種牡馬ということである。
cについては、産駒が上級レースで活躍できることを示しており、実際にアパパネ、ローズキングダムといった世代トップクラスを輩出している。
 以上より、当馬は質、量とも充実した優秀な種牡馬であることは疑いようがなく、来年以降も優秀な成績が期待できると考えてよい。
2位以下は昨年とほぼ同じSS後継が中心で順位が入れ替わっただけである。10位以内に入ったジャングルポケット、ネオユニヴァースは期待度からすれば当然といえる。むしろネオユニヴァースは種牡馬としてはキングカメハメハと同期であるが今年水を開けられた感がある。ダンスインザダークは残念ながら10位以内から陥落した。勝馬率、EIとも低水準なのが気になる。


表1 2010年リーディングサイアーランキング
順位 馬名 勝馬率 EI 賞金[億円] 代表産駒
1キングカメハメハ0.4121.9137.2ローズキングダム
2フジキセキ0.3131.424.7キンシャサノキセキ
3シンボリクリスエス0.3041.323.8アリゼオ
4クロフネ0.3751.2823.7ブラボーデイジー
5マンハッタンカフェ0.2941.3722.9ゲシュタルト
6アグネスタキオン0.3131.3721.5レーヴディソール
7スペシャルウィーク0.2831.4220.8ブエナビスタ
8サクラバクシンオー0.3511.3220.1グランプリボス
9ネオユニヴァース0.2681.2618.6ヴィクトワールピサ
10ジャングルポケット0.251.2717.4ジャガーメイル
11ダンスインザダーク0.1630.915ダノンヨーヨー
35 ディープインパクト0.4591.175.37リアルインパクト

2.過去10年間の変遷

 本節では、単年成績ではなく過去の流れにおける今年のランキングの意味合いを明らかにするため、図1にまとめた過去10年のリーディングサイアーランキングの変遷を見てみる。
 2001年は90年代後半からつづくいわゆる御三家時代末期でSS独壇場の時期であるが、このころから10年後の現在にわたりサクラバクシンオー、フジキセキ、ダンスインザダークはずっと上位キープであり、これら3頭はやはり優秀であることがわかる。特にサクラバクシンオーの安定感は顕著であり、同様の成績を残した父サクラユタカオーから強く引き継いでいると思われる。しかし、産駒の代(ショウナンカンプなど)までは伝わっていないようだ。ダンスインザダークはトニービン没落後ブライアンズタイムと競り合いを見せてきたが、今年は11位となり勝馬率、EIとも低水準で今後の浮上が難しい印象だ。さすがにピークは過ぎたかもしれない。
 スペシャルウィークは2005年に10位以内に入ったが、その後ある意味頭打ちであり、当馬の種牡馬としてのポテンシャルを示しているのかもしれない。このような見方をするとタニノギムレット、ネオユニヴァース、ジャングルポケットも同様の気配を感じる。一方、クロフネ、シンボリクリスエスは頭打ち感よりも安定感を感じるられる。
 アグネスタキオン、マンハッタンカフェはデビューから4年目にいずれもリーディング1位を獲得し順位の遷移が非常に似ている。しかし、今年デビュー3年目のキングカメハメハに抜かれてしまい今後は苦戦を強いられそうだ。
 最後にディープインパクトに触れておく。当馬の初年度成績(順位35位、勝馬率0.459)は父サンデーサイレンスの(31位、0.625)には及ばないがキングカメハメハの初年度(44位、0.267)をしのぎ、2年目の勝馬率(0.386)をもしのぐ。また、ここ数年のリーディング10位以内常連の中で初年度40位以内という例はない。したがって、当馬は種牡馬としても傑出している可能性が高く、2年後にディープインパクトがリーディングサイアーというのも考えられなくはない。そのときのライバルはやはりキングカメハメハだろう。


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図1 過去10年のリーディングサイアーランキング変遷


2.今後の展望

 前節までを踏まえてここでは今後の展望を行ってみたい。
 キングカメハメハはデビュー3年目でリーディング獲得、2位との差の大きさを考えると今後数年はリーディング最有力であろう。フジキセキは活躍期間が長く優秀であるが、年齢的には今後緩やかに後退していくだろう。シンボリクリスエス、クロフネはいままさに高値安定状態であり今後数年はまず10位以内常連であろう。特にクロフネは勝馬率が高く安定感を示していきそうである。マンハッタンカフェ、アグネスタキオンはキングカメハメハ、シンボリクリスエス、クロフネに負けてしまったことで今後リーディング復権は望めそうもない。しばらくは10位以内常連で踏みとどまれるだろう。スペシャルウィークはシーザリオ、ブエナビスタのような大物輩出の可能性が当馬の魅力であり、特に牡馬の後継が重要課題である。ネオユニヴァース、ジャングルポケットは前述のとおりスペシャルウィーク的なポジションとなりそうである。サクラバクシンオーは安定してはいるが高齢ということもあり徐々に後退していくと思われる。その前に後継馬を輩出したい。ダンスインザダークは勝馬率、EIが低く残念ながらこのまま後退を続ける可能性が高い。どうにか後継が浮上してくることを祈る。 最後に2011年のリーディング予想を表2にまとめておく。


表2 2011年リーディングサイアーランキングの予想
順位 馬名 コメント
1位グループキングカメハメハ2010年圧倒的成績につき最有力。
2位グループクロフネ、シンボリクリスエス高値安定の2頭。リーディングは無理でもこの位置は十分確保可能。
4位グループアグネスタキオン、マンハッタンカフェ、フジキセキ現在サンデーサイレンス系最有力だが3位以内は難しいかもしれない。
6位グループスペシャルウィーク、ネオユニヴァース、ジャングルポケットある意味で安定感があり、5位以内は無理でも10位以内常連になれるかもしれない。
9位グループディープインパクト、ゼンノロブロイ、ロージズインメイ、ステイゴールド、サクラバクシンオーディープインパクトは来年早くも10位以内へ。ゼンノ、ロージズとも好位置をキープしており期待大。サクラバクシンオーはどうにか踏みとどまるか。

まとめと今後の課題

2010年のリーディングサイアーランキングについて、過去10年の変遷および今後の展望を交えて考察を行うことができた。今後は特定の種牡馬1頭に着目したより詳細な考察を行ってみてその馬の特徴を詳しく捉えるといったことにトライしてみたい。