要旨

 JRAの2011年リーディングサイアーに関する一考察である。過去10年にわたるリーディングサイアーランキングの変遷とともに今年のランキングの意味合いおよび来年以降のトレンドについて考察した。


背景と目的

 2011年もJRA全レースが終了し、リーディングサイアーランキングが確定した。今年のリーディングサイアーランキングは昨年に続きキングカメハメハがトップとなり、日本国内調教馬が2008年以降4年連続でトップとなり確実に日本独自血統が繁栄しつつある。そこで本記事では、昨年の記事同様、過去10年にわたるランキング変遷とともに今年のランキングの意味合いと今後のトレンドについて考察する。


記事の詳細

1.2011年リーディングサイアーランキング

 まず、表1にまとめた2011年リーディングサイアーランキングを見てみる。
1位はキングカメハメハであり、これは昨年末の記事で予想したとおりとなった。2位との差は昨年よりも広がり入着賞金で約17億円、割合で言えば約1.7倍となった。サンデーサイレンス没後としては非常に優秀な成績である。この要因については昨年と換わらず以下のことが言える。

  1. 出走頭数、出走回数が多い(1頭あたりの平均出走回数が多い)
  2. 勝馬率が高い
  3. EIが高い
aについては、当馬は種付け頭数が非常に多く、種牡馬としての仕事を十分にこなしてきたこと、また1頭あたりの出走回数が多い=競走馬として多くのレースに出走できる丈夫な産駒が多いということである。
bについては、産駒レベルの平均値が高くクズが少ない優秀な種牡馬ということである。
cについては、産駒が上級レースで活躍できることを示しており、今年の重賞勝利数は全種牡馬トップの12勝である。以上より、当馬は今年も質、量とも充実した優秀な成績であり、来年以降も同様の活躍が期待される。
2位にはディープインパクトが入った。昨年の記事では10位以内と予想したが2位に入るとは思わなかったため予想以上の活躍といえる。当馬の優秀性は数字として現れており勝馬率0.485はサンデーサイレンス全盛期(2000年前後)の水準、またG1勝ち馬3頭輩出は全種牡馬中最も多い。2年目で2位というのはトニービン(2年目3位)以上の成績であり来年以降がますます楽しみになった。
3位シンボリクリスエスはほぼ予想通りである。重賞勝ちが2勝と少ないものの昨年とほぼ同様の成績で安定感を示した。4位ステイゴールドは三冠馬オルフェーヴルを輩出しポテンシャルの高さを見せた。5位クロフネは非常に安定した成績を残した。6位~10位は昨年とほぼ同様でディープインパクトにあっさり抜かれたという印象である。また、遂にサクラバクシンオーとスペシャルウィークが10位以内から陥落しそれぞれ11位、12位である。新興勢力として期待したゼンノロブロイ、ロージズインメイであるがそれぞれ13位、21位であり10位以内の争いには加われなかった。


表1 2011年リーディングサイアーランキング
順位 馬名 勝馬率 EI 賞金[億円] 代表産駒
1 キングカメハメハ 0.356 1.93 41.5 トゥザグローリー
2 ディープインパクト 0.485 1.95 24.6 マルセリーナ
3 シンボリクリスエス 0.294 1.26 24.2 サンカルロ
4 ステイゴールド 0.31 2.27 23.4 オルフェーヴル
5 クロフネ 0.283 1.35 23.4 カレンチャン
6 マンハッタンカフェ 0.322 1.6 23.2 ヒルノダムール
7 ジャングルポケット 0.247 1.24 21.3 トーセンジョーダン
8 アグネスタキオン 0.289 1.15 21.1 リディル
9 ネオユニヴァース 0.339 1.23 20.7 イタリアンレッド
10 フジキセキ 0.312 1.29 20.1 サダムパテック


2.過去10年間の変遷

 本節では、単年成績ではなく過去の流れにおける今年のランキングの意味合いを明らかにするため、図1にまとめた過去10年のリーディングサイアーランキングの変遷を見てみる。
 2002年~2007年まではSS独壇場であり、サクラバクシンオー、フジキセキ、スペシャルウィークが上位を形成していが、昨年のダンスインザダークに続き今年遂にサクラバクシンオー、スペシャルウィークが10位から陥落した。スペシャルウィークはブエナビスタ等世代最強クラスを輩出するポテンシャルがあり、毎年重賞5勝程度の活躍をしているが勝馬率がやや低く全体的な成績が上がらなかったようである。クロフネ、シンボリクリスエスはここ数年安定感を示しており今後もしばらくは上位を形成するものと思われる。
 アグネスタキオン、マンハッタンカフェは順位の遷移が非常に似ておりリーディング1位を獲得したあと5位以下に落ち込んでしまった。力があるのは間違いないが、ディープインパクト、キングカメハメハのいる状況でリーディングを取り返すことは困難だろう。ジャングルポケット、ネオユニヴァースはそれぞれ10位以内常連を形成しつつある。
 ディープインパクトは2年目の今年2位、勝馬率0.485となった。これはキングカメハメハやトニービンをしのぐ成績であり、種牡馬として傑出していることが明白となった。
 現在上位を形成するメンバー全体を見渡すと、サンデーサイレンス後継の頭数非常に多くそれ以外はほぼ外国産の日本調教馬である。内国産の日本調教馬はジャングルポケットが見当たるぐらいで、サンデーサイレンスの血が入っていない馬はほとんど上位にはいないという状況である。


リーディングサイアーの変遷2011

2.今後の展望

 前節までを踏まえてここでは今後の展望を行ってみたい。
 キングカメハメハは順当に2年連続リーディング獲得となり優秀な成績であるのは間違いないが今年のG1勝ちは1頭であり、ディープインパクトが圧倒的な成績で迫ってきていることから、来年はもう少しディープインパクトとの差が埋まることになるだろう。2位ディープインパクトは2年目成績としては傑出しており来年以降数年にわたってリーディング争いを確実にするだろう。場合によっては来年キングカメハメハを抜いてしまうかもしれない。シンボリクリスエス、クロフネは非常に高い安定感がありいずれも今後数年はまず5位以内を形成するだろう。ステイゴールドはオルフェーヴルの活躍で上昇したが、来年以降数年はおそらく10位以内を形成するだろう。マンハッタンカフェ、アグネスタキオンはしばらくは10位以内常連でだろうが3位以上の上位に食い込むのは難しいだろう。ネオユニヴァース、ジャングルポケットはスペシャルウィーク的な10位前後のポジションに安定しそうである。フジキセキは年齢的なピークを過ぎつつあり、徐々に後退するだろう。
 また、新興勢力について触れておく。今年初年度の種牡馬で活躍したのはダイワメジャーである。初年度35位は実は昨年のディープインパクトと同じであり、勝馬率、EIはそれほど高くないが今後期待できそうな1頭といえる。また、ハーツクライも2年目の今年16位と着実に上位に食い込んできた。来年以降10位以内を形成できるかどうか気になるところである。 最後に2012年のリーディング予想を表2にまとめておく。


表3 2012年リーディングサイアーランキングの予想
順位 馬名 コメント
1位グループ キングカメハメハ、ディープインパクト 傑出した能力により、この2頭が争うのはほぼ確実。
3位グループ シンボリクリスエス、クロフネ 抜群の安定感で上位を維持。
5位グループ ジャングルポケット、ネオユニヴァース、アグネスタキオン、マンハッタンカフェ いわゆる常連。安定的に結果を積み重ねるだろう。
9位グループ フジキセキ、ステイゴールド、ハーツクライ、ゼンノロブロイ、ダイワメジャー 新興勢力のゼンノ、ハーツが面白そう。ダイワも食い込んでくるかもしれない。


まとめと今後の課題

2011年のリーディングサイアーランキングについて、過去10年の変遷および今後の展望を交えて考察を行うことができた。