要旨

 JRAの2012年リーディングサイアーに関する一考察である。過去10年にわたるリーディングサイアーランキングの変遷とともに今年のランキングの意味合いおよび来年以降のトレンドについて考察した。


背景と目的

 2012年もJRA全レースが終了し、リーディングサイアーランキングが確定した。今年のリーディングサイアーランキングは昨年2位のディープインパクトがトップとなり、現役時代最強を誇った同馬が種牡馬としても最強の地位を確立しつつある状況である。本記事では、昨年と同様、過去10年にわたるランキング変遷とともに今年のランキングの意味合いと今後のトレンドについて考察する。


記事の詳細

1.2012年リーディングサイアーランキング

 まず、表1にまとめた2012年リーディングサイアーランキングを見てみる。
1位はディープインパクト(以下、ディープ)であり、昨年末の記事でキングカメハメハ(以下、キンカメ)を抜いてしまうかもしれないと弱気に書いたが、あっさり抜いてしまった。2位キンカメとの差は約6億円であるが、過去2年連続リーディング1位を3年目で抜いたというのは極めて優秀といえる。そして、三冠牝馬ジェンティルドンナが出てきていよいよ歴史的名種馬の気配ができてた。さらに、それを裏付ける数値として以下が挙げられる。

  1. 勝馬率が.500とサンデーサイレンス全盛期並に高い
  2. アーニングインデックス(以下EI)が2.92とサンデーサイレンス全盛期並に高い
 まず、勝馬率.500は2002年と産駒が少なくなった2007年以降を除き生涯.400以上を維持した父サンデーサイレンス(以下、SS)に勝るとも劣らない水準である。そして、ディープは現在種牡馬デビュー以降3年間ずっと4割以上をキープしていて、過去4年のリーディング1位アグネスタキオン(以下、タキオン)、マンハッタンカフェ(以下、マンカフェ)はリーディング獲得時いずれも3割台であり、キンカメも2010年の.412が最高となっていることから、ディープの能力は傑出しているといえる。
 次に、アーニングインデックスであるが、2.92という値はやはり父SSに匹敵する。タキオン、マンカフェ、キンカメとも1点台後半であったことを考えると、やはり極めて優秀といえる。
 2位はキンカメとなった。ディープに抜かれはしたが獲得賞金は3位の約2倍にあたる43億を稼ぎ出し、通常であればリーディング1位でもおかしくない水準である。そして、当馬の勝馬率は.371とディープには及ばないが優秀である。また、1頭あたりの平均出走回数が5.2回とレースをたくさん使える丈夫さがあるため、コンスタントに活躍できているといえる。
3位ステイゴールドは昨年のオルフェーヴルに続き、ゴールドシップという大物を出し相変わらずのポテンシャルの高さである。4位シンボリクリスエスはほぼ予想通りである。勝馬率.261、EI 1.10とも凡庸だが出走回数の多さで稼いでいる印象である。5位クロフネは昨年と変わらず非常に安定している。6位~10位についてであるが、フジキセキは年齢的には踏ん張ったといえる。7位、9位は新興勢力として期待したダイワメジャー、ハーツクライが予想通り食い込んできた。8位タキオン、10位マンカフェは過去リーディング1位としてはややさびしいが、勝馬率、EIがそのパフォーマンスを物語っている。


表1 2012年リーディングサイアーランキング
順位 馬名 勝馬率 EI 賞金[億円] 代表産駒
1 ディープインパクト 0.492 2.88 50.3 ジェンティルドンナ
2 キングカメハメハ 0.369 2.04 44.7 ルーラーシップ
3 ステイゴールド 0.246 2.25 24.4 ゴールドシップ
4 シンボリクリスエス 0.261 1.1 23 ストロングリターン
5 クロフネ 0.286 1.29 20.9 カレンチャン
6 フジキセキ 0.299 1.26 19.7 サダムパテック
7 ダイワメジャー 0.362 1.45 19 カレンブラックヒル
8 アグネスタキオン 0.278 0.91 17.2 グランデッツァ
9 ハーツクライ 0.352 1.52 16.4 ギュスターヴクライ
10 マンハッタンカフェ 0.243 1.15 16 ショウナンマイティ


2.過去10年間の変遷

 本節では、単年成績ではなく過去の流れにおける今年のランキングの意味合いを明らかにするため、図1にまとめた過去10年のリーディングサイアーランキングの変遷を見てみる。
 2007年まではSS独壇場であり、サクラバクシンオー、フジキセキ、スペシャルウィークが上位を形成していが、その後、2008年タキオン、2009年マンカフェとリーディング1位の変化もあり、クロフネ、シンボリクリスエスが上位に浮上、00年台前半に現役で活躍した産駒が何頭もリーディング上位に入れ替わり立ちかわり顔を出してきて、内国産/国内調教種牡馬の活躍が確実になった。そして2010年からはキンカメが1位を獲ったが、今年ディープに抜かれる格好となった。ディープ、キンカメとも先述したとおり非常に優秀なので、今後数年はディープ、キンカメを中心としたリーディング上位が形成されるだろう。
 過去のリーディング1位タキオン、マンカフェはディープ、キンカメのいる状況では厳しいと昨年書いたが、予想通り順位は下降気味である。ジャングルポケット、ネオユニヴァースも10位以内から陥落し今後の上昇は厳しいだろう。代わりに、ハーツクライ、ダイワメジャーが台頭してきた。
 SS勢力という見方をすると、2010年以降安定してSS産駒が10位以内に6頭以上ランクインしており相変わらずである。ただ、少し不安材料として考えられるのはSS孫世代の種牡馬の活躍である。現在、目立ったSS孫種牡馬がおらず、SS直仔種牡馬以降に孫世代が上位を形成できるかは不透明といわざるを得ない。


リーディングサイアーの変遷_2012年

2.今後の展望

 前節までを踏まえてここでは今後の展望を行ってみたい。
 ディープは今年リーディング獲得となり、先述のとおり勝馬率、EIとも圧倒的であることから来年も1位だろう。キンカメはディープに抜かれたものの相変わらず成績は傑出しており来年もリーディング2位は堅いだろう。シンボリクリスエス、クロフネは非常に高い安定感がある。そして、ダイワメジャーは昨年新興勢力として期待すると書いたが予想通り上位に食い込んできた。勝馬率が高く活躍が期待できそうである。この3頭が5位以内を形成するだろう。ステイゴールドはオルフェーヴル、ゴールドシップといった大物の活躍によるところが大きく読みづらい。10位前後を形成する力はあるだろう。マンカフェ、タキオンは10位に残れるかという状況になってきた。代わりに、ハーツクライが10位以内形成に加わってきた。ネオユニヴァースのように数年は10位以内を形成できるかもしれない。フジキセキは今年かなり踏ん張ったが、もう年齢的に来年以降10位ぎりぎり確保なるかという状況である。ネオユニヴァース、ジャングルポケットは今年の成績が物語るとおり、今後の上昇は厳しいだろう。
 新興勢力について触れておく。今年は、初年度100位以内に入った馬はブラックタイドのみのようだ。2008年以降リーディング1位となった馬は初年度100位以内であることを考えると、リーディング争いに加わりそうな新種牡馬は今年はいなさそうである。2年目種牡馬でいえば、アドマイヤムーンが今年25位とよい位置に上がってきた。もしかすると10位前後まで挙がってこれるかもしれない。 最後に2013年のリーディング予想を表2にまとめておく。


表3 2013年リーディングサイアーランキングの予想
順位 馬名 コメント
1位 ディープインパクト 極めて傑出した能力によりほぼ確実。
2位 キングカメハメハ 傑出した能力で上位を維持。
3位グループ シンボリクリスエス、クロフネ、ダイワメジャー 常連と新興。安定的に結果を積み重ねるだろう。
6位-10位グループ アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、ステイゴールド、ハーツクライ、フジキセキ、アドマイヤムーン、ゼンノロブロイ ネオユニヴァース、ジャングルポケットの後釜をハーツクライが引き継ぎそう。


まとめと今後の課題

2011年のリーディングサイアーランキングについて、過去10年の変遷および今後の展望を交えて考察を行うことができた。