サウンドエフェクト:コンプレッションに関する記事。本記事では3回目として、コンプレッションのパラメータであるReleaseについてパラメータによる波形の変化を確認した。
前回のAttackに引き続き今回はReleaseというパラメータについて波形の変化を調べてみる。
今回の実験条件は、前回同様以下とする。
図1は、使用するコンプレッサのGUIである。いくつかのパラメータつまみがあり、その中のRelaseというパラメータを変化させてみる。
- DAW:SONAR 8.5 LE
- 音源1:Drop Zone Pro Dry Kit 01のバスドラム(SONAR LE付属の音源)
- 音源2:フルスケールDC信号(フリーソフトWaveGenで作成)
- コンプレッサ:Cakewalk Compressor/Gate(SONAR LE付属のプラグインエフェクタ)
- オーディオファイル:リニアPCM、16ビット、44.1kHz
- 波形ビューワ:SoundEngine Free(波形表示)
- 画像編集ソフト:Paint.NET(波形比較画像作成用)

図1 コンプレッサのGUI
比較する際のコンプレッサのパラメータは以下のとおり。Releaseは0(最小値)から4(最大値)までの4種類を用意し、その他は固定でRelease値による波形変化を比較する。また、比較する波形は、フルスケール直流信号と前回使用したバスドラムの音の2種類を使用する。
- Release:0、0.05、0.25、4
- Ratio:3:1(DC信号のとき)、Ratio:5:1(バスドラのとき)
- アタックタイム:0
- スレッショルド:-10dB
- インプットゲイン:0dB
- ゲートモード:OFF
図3.1に各Release値設定における出力波形4つを重ねがきしたものを示す。縦軸は波形のレベル、横軸は時間で数値の単位は秒である。波形は青がAttack0、紫が0.1、緑が0.2、オレンジが0.5である。入力信号は0.4秒後に0dB⇒-12dBと遷移するDC信号である。レベルが変わった瞬間は直前までの圧縮動作がそのまま働くため、一旦-20dBまで圧縮されるがそこから徐々に圧縮動作が解除され最終的に入力レベルと同じ-12dBに落ち着く。しかし、それはRelease値が大きいほど圧縮動作が解除されるまでの時間が長くなっている。つまり、Releaseは圧縮を解除するスピードを決めるパラメータであることがわかる。Releaseを長くとっていると、短い時間内に急峻にスレッショルドを下回る波形が入力されても圧縮動作を継続するといえる。Releaseの設定によって、鋭い立ち下がりの波形に対しては圧縮を解除せず、ゆったりした波形に対しては圧縮を解除するというような動作をさせることが出来るだろう。

図3.1 直流を入力したときのRelease設定に対する応答波形変化の比較
図3.2にバスドラムの音を入力した際の出力波形4つを重ねがきしたものを示す。グラフの軸は図3.1と同様である。波形の色は、黒が入力波形そのもの、その他の色は図3.1と同様である。負側の第2ピークはRelease値=0の場合とそれ以外で圧縮率に違いが見られる。これは、負側の第2ピークに対しては、Release値=0では圧縮動作が解除されるのに対し、それ以上では波形変化が早く圧縮動作が継続したままになっている。つまり、今回使用したバスドラムの音に対しては、Releaseが0より大きければ、正側第一ピークの圧縮率を保ったまま、負側第2ピーク以降の波形を圧縮することが出来ると同時に、スレッショルドを下回るレベルの正側第2ピーク以降についても圧縮することができ、正側第一ピークをより強調した波形を作り出せると考えられる。
ためしにこれらをそれぞれ聞き比べてみた。変化を文章で伝えるのは非常に難しい&主観的にならざるを得ないが、基の音はドンッのあとにわずかにボワッという音が続く感じがして、Release=0においても同様の印象であった。しかし、Release=0.05、0.25、4は、後ろに続くボワッという部分が押さえられて音の立ち上がりが強調されているように感じた。(本ブログでは音源を載せることができないので仕方なく文章で表現する)

図3.2 バスドラムの音を入力したときのRelease設定に対する応答波形変化の比較
サウンドエフェクト:コンプレッションのパラメータであるReleaseについてパラメータによる波形の変化を確認することができた。今後は、今まで見てきたRatio、Attack、Releaseを組み合わせによりどのような波形変化を起こすことが出来るかを試してみたい。