概要

 オーディオインターフェースを用いて自作した電子回路のノイズを簡易的にはかる方法を考えてみた。


背景と目的

 電子回路のノイズを測定するには、本来ちゃんとした測定器が必要だが、大変高価であるため個人でそのようなものを買うのは難しい。そこで、オーディオインターフェースを用いてオーディオ帯域内のノイズについて簡易的にはかる方法を考えてみた。


活動の詳細
1.方法

 まず、オーディオインターフェース(以下、オーディオI/F)に入力された信号のレベルは、PC内ではディジタルフルスケールに対する比dBFSで表示される。したがって、このdBFS値が物理的な電圧の何Vに対応しているかをはっきりさせる必要がある。そこで、まずはdBFSと電圧の対応を求めてみる。
 今回使用するオーディオI/FはUA-25(EDIROL)である。UA-25の説明書を見ると、仕様として規定入力レベルが最大+4dBu(TRS標準タイプ、ここで、0dBu=0.775V)とある。なので、TRS標準タイプ入力端子に+4dBuを与えて本当に0dBFSになるかをフリーソフトWaveSpectraを用いて確認したが、そうならなかった。その理由を検討したところ、UA-25はA/Dコンバータ前段に入力AMPのゲインが前面パネルのSENSというつまみでコントロールできるからであった。つまり、dBFSと電圧の対応はSENSつまみによってどうにでもなるということであるが、ゲインを上げ過ぎると入力電圧範囲が狭まるし、入力AMPの持つノイズも増幅されてしまう。また、小さすぎるとと、記録されるディジタル値のビットが目減りして精度が悪くなる。そこで、今回はSENSつまみを調整することで+4dBu入力時に0dBFSになるようにする。その結果、およそ4目盛りを少し上回ったあたりで対応が取れた。(図1を参照)これで、dBFS値と電圧は

電圧値[uVrms]=0.775*10^{(4+dBFS値)/20+6}

として、求められるはずである。

dBFS_+4dBu
図1 +4dBu入力時の0dBFSになるようにあわせた

2.ノイズ測定

 次に、実際にノイズを測定してみたい。ここではノイズの大きさが既知の回路を用意してその値とオーディオI/Fで測定される値が対応するのか見てみた。ただし、測定時のフィルタの条件はあわせられないのでそれなりに近いであろう設定で比較する。
 まず、ノイズが約240uVrms(30kHzLPF)のものを測定してみた。そのとき、WaveSpectra上ではRMS値-73.8dBFSと表示された。これを電圧に換算すると、0.775*10^((+4-73.8)/20+6)=250uVrmsである。したがって、なかなかよい対応がとれたと思われる。
 次に、ノイズが約15uVrms(30kHzLPF)と小さいものを測定してみた。このときのWaveSpectra上のRMS値は-91.9dBFSであった。これを電圧に換算すると、0.775*10^((+4-91.9)/20+6)=31.2uVrmsとなり、大きく上回ってしまった。しかし、いろいろ理由を検討したところ、そもそもオーディオI/Fの入力AMPが持つノイズがあるため、入力信号が非常に小さいときはそのノイズが測定値に影響を与えているのではないかと考えられた。つまり、入力されるノイズとオーディオI/Fの持つノイズが無相関と考えると、

(入力されるノイズ^2+オーディオI/Fの持つノイズ^2)^0.5

という合算値が測定値に現れると思われるので、

入力されるノイズ=(測定値^2-オーディオI/Fの持つノイズ^2)^0.5

として計算してみればよいと思われる。ここで、オーディオI/Fの入力AMPが持つノイズは1で示したゲイン設定では、およそ28.8uVrmsであった。(入力ショートで-92.6dBFSとなることから)これで計算してみたところ、12uVrmsとなった。まあまあ対応が取れているといえるのではないだろうか。

 以上より、もちろん厳密ではないが、おおよその値としてオーディオI/Fを用いて測定することが可能であることがわかった。


まとめと今後の課題

 オーディオI/Fを用いて電子回路のノイズを測定する方法がわかった。今後の自作回路の評価に役立てたい。