丹沢ホーム秦野から丹沢山中へと車を走らせる。久しぶりの大自然の緑が美しい。ヤビツ峠を越え、しばらく下っていった渓流沿いに、丹沢ホームはポツンと建っていた。

原広司設計のこの国民宿舎については、ネット上にも建築サイドからの情報がほとんど見つからなかった。果たして予算に制約があるだろう小さな建築に、原広司の設計力はいかに生かされているのだろうか。木漏れ日を受けた玄関を入ると、吹き抜けの明るく広々した食堂と、まるで京都駅ビルを思わせる大階段が目に飛び込んできた。これは想像以上に凄い。

京都駅ビルの竣工が1997年。丹沢ホームの竣工が1996年だから、この大階段のアイデアは、ほぼ同時期に規模をちがえて構想されたものなのだろう。列柱の並ぶ廊下は、宮城県図書館とデザインが共通している。この階段の分を客室にしたら倍の部屋が取れる。この宿舎の御主人も自らそう認めていた。それでも実現したこのスペースには、グランドピアノも置かれていて、結婚式などのイベントにも使われるのだという。

この日は丹沢山中とはいえ、ものすごい猛暑。水着に着替え宿舎の前の渓流で水を浴びた。川遊びなどするのは学生の時以来だ。真夏の渓流の水はきれいで冷たくて極楽気分。

外観大階段客室











食堂食堂俯瞰渓流






列柱大階段の花客室廊下






客室は大階段をあがって、空中回廊のように伸びる廊下に沿って並んでいる。食堂の吹き抜けの上部に斜めに高くなっていく空間に配されている。しかし、エアコンの無いこの宿舎、客室の暑さは半端ではなかった。建物全体の熱気が部屋に上がっていく上に、窓は茶室風に小さく風通しが悪い。さすがにデザイン優先の現代建築の弱点も思い知らされた。夜には川風で気温も下がり、何とか扇風機の涼で眠ることができたけれど。宿舎のおばちゃんも「うちは天然暖房だからね」とあまりの暑さにやけ気味に言っていた。実際、この暑さは問題で、竣工の後に屋根に散水装置を設置したほど。それでも今年の夏のような暑さには焼け石に水だ。

共同風呂は3人も入れば一杯の小さなもので、浴室と脱衣所の仕切りも無い最小限のスペース。洗面所もトイレも共用。テレビもないし携帯は圏外。アメニティーがどうのとのたまう客にはとてもお勧めできないが、丹沢の山中にこんな空間があろうとは楽しいではないか。この大階段を一番楽しんでいたのは子供たち。キリスト教の団体の子供たちが林間学校で宿泊していたのだが、大階段でわいわい遊んでいた。

山小屋としてはじまった丹沢ホームの歴史。2代目の宿舎を大学院生だった原広司に依頼したのが始まりで、今の3代目の建物に建替えたのだという。夏の暑さにはまいったが、新緑や紅葉の時季に訪れたら素晴らしい環境だろう。自然の中で現代建築。楽しい夏の休暇だった。

丹沢ホームHP