岸邸宮ヶ瀬から厚木への帰り道の途中に、厚木市指定有形文化財の古民家があると知り、寄ってみた。豪壮な門構えのなかに、どっしりした木造2階の母屋と土蔵。屋根は瓦が重々しい寄棟造だ。

かつての庄屋の屋敷だったという岸邸は、柱が太く、重厚な、力強い建築。室内に入ると、欄間などの細かい細工に目を奪われる。階段を登って2階に上がって驚いた。西側の窓は、真っ赤なガラスがはめ込まれた、美しい市松模様のデザイン。創建当初からの意匠だそうだが、和の空間にモダンなテイスト。鈴木清順の映画にでも出てきそうだ。レトロな洋室も風情がある。

明治24年に建築されたという岸邸には、北側の部屋には天窓も造られ、その合理性・機能性も先進的だ。生活にもモダンなものを取り入れていたようで、当時使われていたオーブンやタルト型、挽肉器などが展示されていた。見学無料、他に見学者も無く、ひっそり佇む隠れた名建築だ。

身近な丹沢周辺に、建築・食の魅力的なスポットを再発見した今回の小旅行。神奈川も捨てたもんじゃないと楽しんだ2日間だった。

外観2外観1装飾彫






天窓階段洋室






古民家岸邸