石内都






















今年はじめに観た展覧会は、写真家土田ヒロミ個展だった。広島の被爆者の遺品を冷徹に捉えた「ヒロシマ・コレクション」という連作が印象的だった。そして、今年最後の鑑賞になるだろう展覧会が、きしくも写真家石内都「ひろしま/ヨコスカ」目黒区美術館)となった。

石内の最新の仕事「ひろしま」は、広島平和記念資料館が保存する被爆者の遺品を、カラー写真で鮮やかに記録したもの。被写体は女性のワンピースやブラウス、女の子の服などが多く、やわらかな色彩や、華やいだ模様が美しい。

そこに感じられるのは、被爆者たちの「死の記憶」ではなく、「生の痕跡」だ。とりわけ心惹かれた、青を基調にした花柄のワンピースの写真を前にしたとき、「被爆者」という言葉でつくせない、ひとりの女性の生命を思わずにはいられなかった。

石内都の「ひろしま」には、土田ヒロミの「ヒロシマ・コレクション」にはなかった、ひとりひとりの「生」を照射する鮮やかさと、やわらかさが感じられた。


モノクロの画面に、モルタルのじっとりとした湿度を感じさせる「アパートメント」シリーズ。アメリカの影・止むに止まれぬ疾走感をダークな画面に定着させた「絶唱、横須賀ストーリー」。指先、手術跡、火傷跡など、様々な人体を洗練されたタッチで捉えた諸作。

亡き母の遺品を撮影した「Mother's」が、今年母を亡くした私にとって深く響いたことは、言うまでもない。

今年の美術展鑑賞数は、普段より少なめだったが、年末にずっしり心に残る展覧会を体験できた事は幸せだった。

夕凪の街 桜の国※こうの史代の漫画「夕凪の街 桜の国」は被爆後の広島を描いた秀作だ。映画化もされているが、100ページばかりの紙幅に込められた原作の読後感は、石内都の「ひろしま」に通じるものがある。強くおすすめの作品です。