ステイトメント2011

「東京インプログレス」は、都市と水辺の関わりを比較検証してゆく継続的なプロジェクトとして始まりました。プロジェクトの最初の構築物は、変わりゆく東京の風景を眺める物見台として、同時期に建設が進む「東京スカイツリー」が見える隅田川対岸に建設され「汐入タワー」と名付けられました。

期せずして、この「汐入タワー」建設中に東日本大震災が起きました。
2011年3月11日以降、東京に限らず日本全体の状況が大きく変化しました。
進まない復旧作業、政治の混乱、そして今後半世紀近く続く原発の事故処理……。私たちが震災を通じて見たものはいったい何なのでしょうか。あの巨大な廃材の山は私たちに何を伝えるのでしょうか。

(中略)

震災から遠く離れた場所で、私は一つのアクティヴィティを提示したいと思います。それは変容する都市「東京」に対する提示ではなく、東京が対峙する震災の図像へのアクティヴィティ。
私たちが見た被災地の光景を通じ、東京で、そして世界で被災地の風景に関わる活動を行ってゆきます。

7.2011 川俣正







8月31日、東京の水辺の風景と向き合った川俣正のプロジェクト「東京インプログレス」の3つの構築物を巡る「リバーサイドツアー」第2回に参加した。観光バスに乗り込み3つのポイントをつなぐツアーは、さながら東京の特殊観光の趣き。この日は、各所でアコースティックな演奏ユニット「表現」によるパフォーマンスも展開され、水辺の川風・漂う音響・川俣正の構築した「場」が補完しあい、厳しい暑さにも関わらずなんともゆったりした時間が流れていった。集合場所は「東京スカイツリー」を対岸に臨む「汐入タワー」。まだスカイツリーがクレーンにより建設中だったときに来て以来の再訪だったが、雨風で木材は色褪せ、独特の枯れた味わいが加わっていた。

このタワーの内外で響く、ヴァイオリンやアコーディオン、コントラバスの音色は、時にミュージシャンの姿なきタワー自体の共振のようでもあり、演劇的な空間を生み出しもし、心地よい彩りある時間を味わわせてくれた。









ツアー一行は、バスに乗り込み次の目的地、「佃テラス」へと向かった。(続く)





※汐入タワー初訪問の時書いた記事はこちら

川俣正 東京インプログレス

川俣正の東京でのプロジェクト東京インプログレスにより竣工した汐入タワー。建設中の東京スカイツリーのビューポイントに建てられた、川俣らしいラフな造作のタワーだ。今年2月19日の上棟式では、盛大にもちまきも行われたそうだが、3月予定されていた竣工イベントは、東日本大震災の影響で中止に。一般公開も休止していたが、現在は見学自由。

川俣の仕事であるから、当然このタワーの竣工自体は表現の一側面に過ぎない。準備段階から地元の小学生等を巻き込みワークショップを重ね、東京の新しいランドマーク、スカイツリーが建設される同時代に汐入タワーの建築にかかわることで、個人のアクションを歴史の転換点に結びつけ、身体的記憶を獲得すること。そんなもくろみがこのプロジェクトにはある。

プロジェクト進行中に何度か川俣のトークを聴講したのだが、彼はいつもパリのエッフェル塔の工事中の写真の事を話題にしていた。建築が完成することにより消失してしまう「建築中」という進行形の姿。我々が写真でしか取り戻せないその姿を、作られつつある塔(スカイツリー)を眺めながら、自らがパーソナルな体験として塔(汐入タワー)を建築する記憶を身体に埋め込むこと。

ワークインプログレスの方法論を、東京において実践した貴重なプロジェクトだ。

中年とオブジェ 2011.6.16