1945年8月6日 午前8時15分、
広島市民の上に、人類史上初めて、
1発の原子爆弾が落された。
人々はその時の太陽の百倍の閃光を
"ピカッ″と言い、続いておそった
衝撃波を"ドン″と呼んだ。

「ピカドン」木下蓮三・小夜子


はじめて、アニメ「ピカドン」を目にしたのはいつのことだったか。ヒロシマの原爆を思うとき、忘れることのできない印象をあたえた7分ほどの短編アニメーション作品である。作者は木下蓮三と妻、小夜子。手塚治虫が設立した虫プロで活躍したアニメ作家だ。

日本的な柔らかな色調の画面。原爆投下の日の朝の描写が静かに続く。効果音とBGM以外にセリフは一切ない。通勤の路面電車、乳飲み子を抱く母、軍需工場。やがて上空に米軍の爆撃機が現れ、原爆を投下する。

そのあとは凄惨な情景が、カラフルでさえある色調で描かれる。閃光・爆風・灼熱。焼けただれた女子高生、肉が溶け崩れていく母子、川の水を求めさまよう人々。





その後、このアニメを見る機会はなかったのだが、図書館でこの作品が絵本化されていることを知り、後年手に入れることができた。アニメの進行をそのまま巧みに紙面に構成した、フルカラーの絵本である。原爆投下直後の壮絶な画面も再現されている。静止画による「ピカドン」も、オリジナルのアニメに劣らない鮮烈な印象を与えてくれる一冊だ。

アニメ「ピカドン」がDVDなどでソフト化されていないか、広島の平和記念資料館のミュージアムショップで尋ねてみたこともあるのだが、入手することはできなかった。





漫画「はだしのゲン」を有害図書扱いしたり、平和記念資料館の皮膚の焼けただれた再現人形を残虐を理由に撤去要求したり。原爆の惨禍の忘却を加速するような動きを感じるいま、アニメ「ピカドン」やこの絵本のことを、多くに人に知ってもらいたいという思いを抱く。目をそむけたくなるほどに悲惨な被害をヒロシマは体験したのだということを抜きにして、脱色された原爆言説のみが流通するようになってはならないのではないだろうか。