今年は即興演奏ユニット「トマソンズ」の活動が好調で、その分美術館へ足を運ぶ機会は少なめだった。近所なので行けるつもりだった横浜市民ギャラリーあざみ野の石川竜一写真展も、風間サチコ参加のあざみ野コンテンポラリーvol.7も見逃してしまったし。

Twitterのつぶやきで振り返ってみると、大きなインパクトを受ける展覧会はなかったものの、面白く楽しめる企画に出会えた1年だった。

辛口のコメントをした村上隆の昨年から今年にかけての2大展覧会、「五百羅漢図展」と「スーパーフラット・コレクション」は、美術展とはなんだろうかとか、現代美術と古典ってどんな関係にあるんだろうかとか考えさせられた意味においては、今年観た中で忘れられない展覧会であったことは間違いない。

横浜市民ギャラリーでは11人の抽象画家のグループ展でオープニングのライブ演奏を務めさせていただき、絵画作品にインスパイア―された即興演奏という機会を得ることができた。来年2月末にも同企画展にお誘いを受け、また新しい音を出せればなあと思っている。

 




☆☆☆「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」(練馬区立美術館)

しりあがり寿の現代美術 回・転・展@練馬区立美術館。回る回る。ヤカンが、ダルマが、縄文土器が、聖徳太子が、連合艦隊が。みんな回っている。オブジェが回転するだけでこんなにシュール!静止画のみ撮影可。回転は見て感じるしかない。

チープな博物館の可動式展示の如く、意味もなく回転するオブジェたち。これは果たして現代美術のインスタレーションなのか?笑える映像作品「回転道場」はビデオアートなのか?しりあがり寿の回・転・展@練馬区立美術館はまるで現代美術の実験場。

パロディーでオリジナルを異化し、髭の生えたOLや幻覚を見る弥次喜多を描いてきた漫画家。動画をトレースして劣化させることでゆるめ〜しょんを生んだアニメ作家。オブジェを回転させた現代美術家。しりあがり寿の回転展はズレが生む笑いを問う。


☆☆☆宮本隆司「九龍城砦 Kowloon Walled City」(キャノンギャラリーS)
品川のキャノンギャラリーSで宮本隆司の九龍城砦写真展。暗い会場に浮かび上がるモノクロームのスラムの闇。香港の湿気を孕んだ空気の重さが感じられる。出品作を掲載したリーフレットも配布。7月4日(月)まで。

各地の建築物の解体現場の光景を撮影した宮本の「建築の黙示録」のシリーズ。彼の表現は阪神淡路大震災の記録でひとつの頂点に達したと感じるのだが、彼の九龍城砦の写真にはほかの建築撮影の仕事にみる超然とした客観性とは異なり、ある種の体温とクールな視線が同居している。九龍城砦の持つ場の力に半ば呑みこまれ、ギリギリの足場で対峙した写真からは、「神の視線」を思わせるような黙示録のシリーズからは得られない生々しさ、臭い、濃密な空気が迫ってくるのだ。(中年とオブジェ 2016.6. 19)


☆☆風間サチコ「電撃‼ラッダイト学園」(無人島プロダクション) 

明日13日(土)より無人島プロダクションで風間サチコ個展「電撃‼︎ラッダイト学園」スタート。イギリス産業革命期の機械破壊運動ラッダイトと現代の学校制度批判がどのように結びつくのか?風間さんの妄想力に期待!オープニングレセプション18時〜

風間サチコ「電撃‼ラッダイト学園」@無人島プロ始業式に出席。学校を舞台に暴力・破壊を描く。バットを振り回す未来派風生徒、おぞましい同調圧力を秘めた下駄箱のグラフィカルな構成美。装甲車のナンバーが37564(皆殺し)という笑いも。

風間サチコ「電撃‼ラッダイト学園」@無人島プロダクション。今まで細部の集積・群像表現の多かった風間にしては、単体の人物像主体のダイナミックな画面。いまいち動きが描けてないのが劇画に堕さない魅力でもある。私は民衆絵画的なごった煮の作品のほうが好みかな。


☆☆「気仙沼と、東日本大震災の記憶」展(目黒区美術館)
2/13(土)より「気仙沼と、東日本大震災の記憶」展が始まりました(3/21まで)。詳細はhttp://www.mmat.jp で。震災直後から2年間にわたり記録された被害状況の写真を中心に、目黒区と縁の深い気仙沼とその周辺についても民俗資料でご紹介しています(無料)。

目黒区美術館きた。気仙沼のリアス・アーク美術館の新たな常設展示を紹介。3月21日まで。入場無料。
「震災以前と何も変わらず、何事もなかったかのように"美術館"を再開することなど考えられませんでした。被災地の博物館、美術館として、被災社会が必要とするものを、被災者である私たち学芸員が提供していくことにこそ、大きな意味がある」リアスアーク美術館学芸員の山内宏泰氏


☆☆「未来を担う美術家たち18th DOMANI・明日展文化庁芸術家在外研修の成果」展(国立新美術館)

国立新美術館Dmani展に来た。ゲスト枠に風間サチコさん。久しぶりに大作版画を楽しむ。何故彼女は巨大船を描くのだろう?キャプションにある以上の深層性があるような気がします。


☆☆「美の精鋭たち2016―the meaning of life」(横浜市民ギャラリー)

本日2月2日〜8日「美の精鋭たち2016」抽象画家11名の描く心象風景。初日17時より即興演奏ユニット「トマソンズ」のライブやります。横浜市民ギャラリーにて。





☆☆「村上隆のスーパーフラット・コレクション―蕭白、魯山人からキーファーまで―」(横浜美術館)

横浜美術館の村上隆スーパーフラットコレクション。山本作兵衛の炭坑画があった。

横浜美術館の村上隆スーパーフラット。川俣正の小品もあり。

横浜美術館の村上隆スーパーフラット。もはや、古美術・古道具から現代美術まですべてが等価に感じられる。美術館の備品が作品に見えてしまったり。

横浜美術館の村上隆スーパーフラット。撮影OKだけど「展示風景」に限るという縛り。単体作品とかクローズアップは不可。インスタレーション展示も全体で一作品なのでダメ。村上の脳内マンダラのような展示室、撮りたかったな。


「村上隆の五百羅漢図展」(森美術館)

村上隆の五百羅漢@森美術館。最終日直前臨時延長の深夜に鑑賞。REALKYOTOの浅田彰のレビューに倣って言えば、「5分で通り過ぎてしまった」感じ。膨大で長大で細部にも拘泥しているのだろうけど、密度がなくスカスカ。神は細部に宿っていなかった。

村上隆の五百羅漢@森美術館。辻惟雄を引き合いに出して日本美術史に絡めたコーナーとか、制作の裏側見せたコーナーとか、蛇足感漂ってた。狩野一信持って来ちゃ、ある意味自身の敗北宣言か。

村上隆の五百羅漢@森美術館。この宝誌和尚像を模した人形が般若心経唱えるのが一番面白かった。


☆☆「クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム― 」(神奈川県立近代美術館葉山館)

クエイ兄弟―ファントム・ミュージアムー@神奈川近美葉山。まぶしい夏日と海水浴客のすぐ隣に秘められた異界。デカダンスと病理性。不協和なBGM。数多くのアニメが編集上映され、人形たちのインスタレーションも蠱惑的。夏の幻燈会の儚さ。どっぷり浸かるなら作品上映会狙いかな。 


☆☆「アルバレス・ブラボ写真展―メキシコ、静かなる光と時」(世田谷美術館)

アルバレス・ブラボ写真展@世田谷美術館。メキシコ革命の動乱・壁画運動などの前衛芸術運動の時代を経ながら独自の静謐な世界を表現。町の看板・洗濯物などを切り取る視線はまるで路上観察者の先達。モノクロで事物のフォルムを抽出しユニークなタイトルで落とし込む。おすすめです。


☆☆「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス―さざめく亡霊たち」(東京都庭園美術館)

クリスチャン・ボルタンスキー展@東京都庭園美術館。新館の大型インスタレーションは映像・音響に加え、床に敷かれた干し草の匂いに嗅覚まで動員。ベンチに座って沈潜する。干し草の上を裸足で歩いて触覚も刺激されたらなあと夢想。作家も想定したのではないかなあ。


都築響一presentsエロトピア・ジャパン「神は局部に宿る」(アツコバルー)

都築響一presentsエロトピア・ジャパン「神は局部に宿る」@アツコバルー(渋谷)。秘宝館・ラブホテル・イメクラなど、都築ワールドを追ってきた者には目新しさはないが、久々の鳥羽SF未来館フィギュアはやはり強烈!

都築響一presentsエロトピア・ジャパン「神は局部に宿る」@アツコバルー(渋谷)。入場料1000円であの展示ボリュームはちと高いが、オリエント工業の銘品ラブドールの肌をオサワリできるとあればやむなし。


トーマス・ルフ展(国立近代美館)

トーマス・ルフ展@東近美と篠山紀信「快楽の館」@原美術館をはしご。自分が撮影せざる天体写真を加工するルフ、原美術館で撮影したヌード写真を等身大でその場に展示した紀信。写真そのものは異質だが共にコンセプチュアル。写真自体に没入できる強度が無いのも共通点。

トーマス・ルフ展@東近美。ベッヒャー・シューレの優等生らしく証明写真を巨大に引き伸ばしたり、集合住宅をフラットに撮影した作品がいい。よりコンセプチュアルな作品群は、観念先行で面白みはない。トーマス・デマンドのような倒錯性は感じられず。写真を愛さないことを目指しているのだな。