加藤泉の奇妙な彫刻に出会ったのは東京都現代美術館「MOTアニュアル2007」である。この時の印象をブログではこんな風に書いていた。

私が一番気に入ったのは、加藤泉の作るプリミティブな造形の奇妙な木彫の人形たち。画像は彼女のペインティング作品だが、立体作品にも子どものような胎児のような動物のような植物のような、多義的で不思議な者たちが表されている。東南アジアの民芸品のような色と質感も持ったオブジェたちは、日常生活の裏側にひっそり佇み、我々にひそやかに語りかけてくる存在のようだ。そう、水木しげるの愛する「妖怪」だ!

中年とオブジェ 2007年4月9日



そう、私は「加藤泉」を不可思議なオブジェを創り出す風変わりな女性アーティストだと夢想していたのだ。この勘違いは、加藤の造形の両性具有な曖昧な特質により抱かされたとも思う。






時を経て、原美術館(品川)で「加藤泉ーLIKE A ROLLING SNOWBALL」を観た。そのタイトル通り、加藤の想像力が肥大し、造形表現が枝分かれし、進化の系統樹のような進化(深化)が感じ取られる展示だった。

中でも彼の特質を最もよく表す木彫作品。2007年に観たプリミティブで不可思議なオブジェたちの中にすでに胎動していた「なにか」が、揺籃の後、増幅し、爛熟し、思いがけない造形へと成長していた。まるで、昆虫類に寄生した菌が超現実的な造形を顕現させる「冬虫夏草」を連想するようなメタモルフォーゼ。

2020年で閉館となる品川の原美術館に棲みついたかのような異形のオブジェたち。彼らはかつての個人邸宅に潜んだ、紛れもない「妖怪」だった。