ネオ・トロピカリア






















今年最初の美術展は、東京都現代美術館「ネオ・トロピカリア ブラジルの創造力」。1960年代から現在まで、アート・ファッション・建築など幅広くブラジルの文化を紹介する展覧会。「トロピカリア」といえば、ブラジル音楽の世界では1960年代のカエターノ・ヴェローゾ等の革新的な活動が知られているが、この展覧会でもブラジル音楽の魅力を取り入れた展示が多く観られた。

フェルナンダ・タカイエリオ・オイチシカの、若き日のカエターノ・ヴェローゾに赤いケープを着せた写真にドキリ。様々なデザインのケープを観客がまとい、ヘッドホンで音楽を聴き踊るという参加型の作品は、ブラジル音楽好きの私にはグッとくる選曲ばかり。

ドレスに自在なドローイングを描いたロナウド・フラガのコーナーでは、フェルナンダ・タカイが「ハウ・インセンシティブ」を歌っているモノクロの映像が投影されていた。ユニークなデザインの紙のドレスを着たフェルナンダが、知的でかわいいー!(左の画像は彼女のCDジャケットより)

アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスというユニットは、ワイヤレスのヘッドフォンで部屋のあちこちから何種類もの音楽をキャッチして、映像とともに楽しむという空間を構成。床のクッションに寝そべって、時間があればいくらでも楽しんでいられそうだ。

美術展としての限界なのかもしれないが、どうせやるならガンガン大音量で音楽を聴ける場も欲しかった。

色彩にあふれた通路をめぐった果てに黄色いマンゴージュースを飲むインスタレーション、古い町並みを鮮やかな色彩で再生させるプロジェクト、地震がないブラジルならではの華奢な構造が可能にした近未来的な建築など多彩な展示を楽しむことができたが、神の啓示を受けて作品を作り始めたというアルトゥール・ピスポ・ド・ホザリオの船のオブジェは強く印象に残った。もっと多くの作品を観てみたいアウトサイダー・アーティストだ。

エルネスト・ネトそして、圧巻なのがアトリウムの大空間を占拠したエルネスト・ネトのインスタレーション「リヴァイアサン・トト」だ。白い布に大量のビーズが包まれ有機的なフォルムを描いて天井から垂れ下がっている様は、未知の生命体の作り出した造形のようである。各階の通路から眺め、床に置かれたクッションに寝そべり見上げ、様々なアングルから楽しんだ。その大きさと重力から解き放たれたような浮遊感。これは、この大空間でこそ体感できる大作だ。

ブラジルのアートの多様性をその混淆のままに提示した「ネオ・トロピカリア」展。焦点が定まらない雑然とした多彩さが、ブラジル文化の豊穣さを伝えているのだろうな。