中年とオブジェ

美術館・街で見かけたオブジェ 旅先で手に入れたオブジェ オブジェの視点で世の中を楽しむ中年の日常。

三笠プロジェクト

川俣正 三笠プロジェクトのレプリカ模型






日本各地のアートプロジェクトが盛んである。近年は一般雑誌や旅行案内などにも地方アートプロジェクトが取り上げられ、その「観光化」は著しい。私も初期の直島を訪ねて以来、越後妻有や新潟などにも足を運んだし、中之条ビエンナーレには出演者としても関わったりした。しかし、やがて感じはじめた安易な「サイトスペシフィック」への疑問は、2009年に大地の芸術祭について書いた下記の拙文のころより変わりがない。


少子高齢化・過疎化が進み、廃校・廃屋が次々に生まれる越後妻有。今回大地の芸術祭の一端を垣間見ましたが、現在の方法論で運営し続けていくならば、いづれ行き詰まり破綻することが予見されます。既成の美術館のホワイトキューブから解放され、里山や廃校・廃屋が鑑賞の場となるということは、一見豊かで自由なプロジェクトのように思えますが、それは形を変えた「美術館」という制度への依存に他ならないのではないでしょうか。

「廃校・廃屋を美術館にするばかりが、アートプロジェクトというものじゃない」という川俣さんの言葉はラジカルですが、アートプロジェクトの未来に向けられた真摯なメッセージを感じます。

中年とオブジェ(2009年9月8日)



川俣正による北海道インプログレス。その新たな取り組みのスタートであった2011年からの三笠プロジェクトは、とてもユニークな地方アートのあり方を形にした。川俣が故郷の旧炭鉱町三笠市で、高校の同級生など地元の知己を中心に募った会員制のアートプロジェクト。私も賛助会員的に加入し、毎年会費を納め会計報告を受け、川俣の手になるオリジナルドローイングなどの「会員特典」をプレゼントされている。

地方アートでありながら、行政の主導でもなく、企業の助成もうけず、メンバーの顔が見えるコミュニティーに支えられたその運営方法は、作品そのもののスタイルをこえて、プロジェクトの方法論自体が川俣のアート表現になっている。それはたとえば、彼がディレクターを務めた年の横浜トリエンナーレにおいて、市営の路線バス車両を埠頭の先にある会場までのシャトルバスとしてダイナミックに往還させた手腕にもみられたような、自己の表現の「場」そのものを創造してしまう、インフラレベルの構築の姿勢に通じている。

三笠プロジェクトにおいて川俣が試みたのは、廃校の体育館に現れたかつてない規模の炭鉱町のインスタレーションそのものというよりも、その制作のオーガナイズの方法を模索することだったのではないだろうか。

三笠でのプロジェクトの完成を受け、今度は川俣の母校のある岩見沢の地でプロジェクトは新たな展開をみせるという。「三笠ふれんず」第5期会員特典は100分の1スケールの三笠プロジェクトレプリカ模型。川俣正と菊地拓児の共同制作で、私は3口の会費で夜の炭住街もセットされたバージョンを贈ってもらった。

北海道の地で自分が個人的に関わっているアートプロジェクトが進行しているというワクワク感。このユニークさのなかには、何か新しい可能性があるような気がする。








ブログ「コールマイン研究室」
『三笠ふれんず』第5期会員募集

記憶遺産





採集地 三笠(北海道)

ジャングルジム





採集地 北海道(三笠プロジェクト)

「腹を割って話そう」





採集地 北海道(三笠)

川俣正 三笠プロジェクト2013








北海道の廃校になった小学校の体育館に、炭坑町が生まれた。

川俣正が作品を生み出す姿を初めてみた。

川俣さんと一緒に焼き肉を食べた。

川俣さんと同窓生の皆さんとカラオケBOXで歌った。


2年目をむかえた三笠プロジェクト
三笠ふれんずは秘密結社。
「ふれんず」の一員に仲間入りさせていただいた貴重な時間。

会員制の‘閉じた’アートプロジェクト
助成金に頼らない、行政の加担しないアートプロジェクト
町おこしのイベントではない、地方の秘密結社によるアートプロジェクト

あまりに特殊で、面白くて、奇妙で、新しくて、美しくて。
旅を振り返って、じわじわとその魅力を反芻しています。

これからしばらく、三笠プロジェクトのレポートを続けます。

北海道インプログレス 東京インプログレス




川俣正が東京の水辺、隅田川沿いで展開してきたプロジェクト「東京インプログレス」。10月27日(日)にこの11月には解体が始まる豊洲ドームを会場に、クロージングイベントが行われます。

川俣は、それに先行して北海道の三笠での巨大炭坑町インスタレーション制作を進行中。私はこの廃校の体育館での制作の様子とお披露目を体験するため、今日から北海道入りします。

帰り道は、室蘭の工場夜景見学バスツアーとか弘前の前川國男建築巡りなど、寄り道しつつのんびり旅の予定。東京インプログレスのクロージングには参加できませんが、豊洲ドーム・佃テラスを未見の方にはこの機会に見納めをおすすめします。川俣正のトークや、アーティストたちによるパフォーマンスもあるそうです。

それでは、久しぶりの北海道行ってきます。


川俣正 三笠プロジェクト 2013





かつて北海道の炭坑町だった三笠。アーティスト川俣正の出身地であるこの町で「三笠プロジェクト」というアートプロジェクトが進行している。廃校になった小学校の体育館を大胆に使い、かつての炭坑町の風景をモチーフにした巨大インスタレーションの制作がなされているのだ。目黒区美術館の炭鉱展の時にも川俣は炭坑町の風景をインスタレーションとして提示したが、三笠における制作ははるかに大きなスケール。

今年は、川俣がパリからやってくる10月後半に、集中的にインスタレーション制作が行われる予定だという。10月25日(金)が今年の制作完了とお披露目のイベント。このプロジェクトは、地元三笠の川俣の同窓生らを中心にした「三笠ふれんず」という賛助会員による会費や、ボランティアの手により運営されている。今年は私も三笠ふれんずの一員として自身の手で制作の一端に関わり、お披露目の場に参加すべく、北海道へ乗り込もうと計画している。

目黒区美術館のインスタレーションの拡大版であるばかりでなく、地上の町の地下部分には夜の炭鉱住宅街と坑道をモチーフにしたもうひとつの風景が内包されるというから楽しみだ。

札幌からほど近い岩見沢からアクセスできる三笠の町は、産炭地時代の炭鉱遺構もいくつか残り、この場所で川俣の炭坑へのアプローチを体験するのは、「場」のもつ記憶と現在を重ね合わせる、興味深い機会となることだろう。昨今、乱立する、レジャーランド化した地方アートプロジェクトとは一線を画した達成を期待したい。

Tadashi Kawamata Expand BankART










横浜のBankART NYKが、川俣正に占拠された。「Expand BankART」のタイトルどおり、木材や廃材の窓枠が大量に集積して、BankARTの内部・外部・周縁部に異形の構造物が侵食している。それと同時にプロジェクターやディスプレイで、川俣の仕事を俯瞰する大量のドキュメント映像を館内各所で上映。

これだけの規模で、実際の川俣の構造物を体験したのは初めてだ。かつてBankART NYKの3階は、この廃墟感漂う倉庫施設そのものを剥き出しにした常設作品のためのスペースだったのだが、今回川俣はそれをしのぐ、この空間ならではの取り組みを形にしている。

しかし、BankARTを舞台にした壮大な新作には、「新しい川俣正」の姿はない。これは一種の回顧展だ。写真・映像・図録などで触れてきた「川俣正」の大仕掛けな再現であり、既視感は拭い去れない。それでも川俣がこれだけストレートに形ある作品を提示したことは、今や貴重な体験の機会であることは間違いない。

私自身は、日本における川俣の新たなる方向性としては、北海道の廃校を舞台に進行中の「三笠プロジェクト」に、より期待を寄せている。目黒区美術館「炭鉱展」で出現した炭坑町のインスタレーションが、さらにスケールアップされて制作されつつあり、校舎全体をズリ山に見立てた巨大な構造物で覆い尽くす計画も構想されているという。川俣の出身地三笠で、会員制のサポートで運営されているこのプロジェクトは、昨今地方の町で乱立するアートプロジェクトのあり方への問題提起の実験でもある。






※BankARTでの展示は2013年1月13日(日)まで。元旦をのぞき会期中無休。チケットはパスポート制で、3分冊の図録をセットした割安な入場券も用意されている。なお撮影は自由だが、個人的記録目的に限っての許可で、館内の展示についてはブログ等での公開は禁止。映像展示は大量に上映中なので、のんびり時間を取って川俣ワールドに浸るのがお勧め。運河をはさんで対岸からの遠景も是非眺めていただきたい。

※追記:今年3日に再訪した際、あらためて受付スタッフに確認すると、内部を撮影した写真もブログ掲載などを通知すれば公開は差し支えないとの回答だった。集客いまいちのようだしな。でも川俣組のこの架設工事は是非現場で見てほしい。再訪した印象は、ちょっと整いすぎた現場かなといったところ。結構お金かけてるような感じです。(2013.1.6)
プロフィール

テツ

「中年とオブジェ」とは赤瀬川原平の名著「少年とオブジェ」へのオマージュである。美術、オブジェ収集、エリック・ドルフィーを愛好する。

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