中年とオブジェ

美術館・街で見かけたオブジェ 旅先で手に入れたオブジェ オブジェの視点で世の中を楽しむ中年の日常。

丹波マンガン記念館

『孤独のグルメ』





採集地 京都(丹波マンガン記念館)

丹波マンガン記念館再開







2009年5月31日に閉館した、京都の鉱山資料館「丹波マンガン記念館」。閉館の情報を知り直前のゴールデンウィークに駆け込んだ時の画像を紹介しよう。かつて現代美術家高嶺格はこの鉱山跡地に小屋を建て住み込み、焼き物を作り、真っ暗闇の坑道の中で体験するインスタレーション「在日の恋人」に取り組んだ。その製作過程は彼の著書「在日の恋人」に詳しい。在日韓国人である奥さんと高嶺の関係についても語られた一冊。

この本の中でも印象的だったマンガン記念館の館長・李さん一家が、手作りで手がけてきたこの観光坑道と資料館は、全国各地の鉱山資料館を巡ってきた私にとってもひときわ異彩を放つ存在だった。坑夫人形のマネキンたちの朽ち果てた姿には戦慄すら覚えたし、朝鮮人強制連行の資料を中心とした展示室の執着には目を見張るものがあった。






丹波マンガン記念館はその後曲折を経て、今年7月3日より再開館されたことを最近知った。毎週日曜開館、金土は予約制での見学となるそうである。私が訪れた2009年には、高嶺が過ごしたらしき小屋も残っていたのだが、今はどうなっているのやら。




丹波マンガン記念館公式ホームページはコチラ

2009年のその他の画像はflickrの丹波マンガン記念館set

「在日の恋人」を読んで書いた記事はコチラ

東海道ぶらり旅

佳水園

4月25日から30日まで、京都を中心に東海道をぶらぶらしてきました。高速1000円乗り放題利用の車旅です。さいわい渋滞は一度もなし。車での長旅は久しぶりで、サービスエリアにスターバックスがあったり、コンビニがあったり、高速道路の様変わりに驚きました。さて今回の旅はカテゴリー別に振り返ってみます。

建築
佳水園(村野藤吾)
京都東山のウェスティン都ホテルの別館。建築に興味のない方にとっては普通の数奇屋建築に見えるかもしれませんが、平面構成のリズム・家具・建具・照明など、村野流のモダンなディテールにあふれた空間でした。夕食は部屋食で京懐石をいただき、ゆったりと過ごしました。

京都御所
申し込み不要の一般公開期間中と現地で知り、急遽見学。すごい人出でした。

京都国立近代美術館( 槇文彦)
今見ると、ちょっと野暮ったい。平安神宮の大鳥居の馬鹿でかさに負けてます。

豊田市美術館(谷口吉生)
いつ見ても、クールで美しい。

・豊田大橋、豊田スタジアム(黒川紀章)
有機的で過剰な造形の大橋と、巨大なスタジアム。バブリーです。

資生堂アートハウス(谷口吉生)
達人にも模索の時代があったのか。いまいちです。

アート
・ヤノベケンジ「ウルトラ展(豊田市美術館)
巨大な新作は、電磁波を発する強烈なエレクトリック作品。でも「キンダガルテン」のときほどの規模の個展ではなく、物足りなさも・・・

石田徹也展と静岡県ゆかりの画家(浜松市美術館)
石田徹也の展覧会ははじめてでしたが、原画ならではの感動はあまりなし。かなり大きな作品があることや、NHKでは放送しないだろうダークな作品もあることは発見でした。

・都築響一「着倒れ方丈記(京都国立近代美術館)
常設展の新コレクションとして特集展示。チープな狭いアパートに住み、ブランドもののファッションに人生を捧げる、「着倒れ」な人たちの部屋の写真がズラリ。あきれた人たちがいるものだ。「オブジェ倒れ」な私も笑えませんが。

丹波マンガン記念館

B級スポット
丹波マンガン記念館(京都)
今年5月31日で閉館する、鉱山観光スポット。苔むした坑夫マネキンの姿に感動。「在日の恋人」の高嶺格が住み込んだ小屋も発見。裏京都観光を堪能しました。

五色園(愛知県日進市)
広大な敷地にコンクリートの人形たちが散在する宗教テーマパーク。侘びさび系。

紫峰人形美術館(愛知県高浜市)
3万体の人形たちが繰り広げる、豪華絢爛な舞い踊り。言葉にできない物凄いパワースポット。

旅めし
神馬(京都)
西陣近くの蔵造りの居酒屋。雰囲気もお料理も最高です。再訪してますますファンになりました。

大甚本店(名古屋)
大衆酒場の王道を感じさせる老舗。なぜかシャネルの眼鏡をしたご主人が、いい味出してます。

・千代娘(豊橋)
タイムスリップしたような懐かしい店内。料理もいい。

あんかけ家(名古屋)
名古屋独特の食文化、「あんかけスパゲティー」を体験。B級だけどくせになる。

登喜和(京都)
丹波マンガン記念館からの帰り道、京北周山町で昼飯に立ちよった肉屋さん併設の食堂。何気なく喰った牛肉野菜炒め定食が驚きのうまさ。あとで知ったのだが、実は黒毛和牛のステーキ・すき焼きが格安で食べられる名物店だった。今は寂しいこの町が、かつては北山杉の産地として栄えたという。

ドライブイン藤田屋(知立)
昭和の雰囲気の街道沿いの食堂。安くて大盛り。名物お菓子「大あんまき」も旨い。

・すいのや(掛川)
掛川城の大手門横の駄菓子屋。静岡おでんを格安でおやつにいただく。黒はんぺんにじゃがいもが旨い。

スマート珈琲店(京都)
ご主人が毎朝焙煎するコーヒー。お土産にも買いました。

鈴木珈琲店(豊橋)
上質でシンプルなモーニングセットがよい。

ジャズ遍路
・ろくでなし(京都)
・ロジウラのマタハリ(名古屋)
・グッドベイト(知立)
・キーボード(豊田)
・グロッタ(豊橋)
・アドリブ(豊橋)

いつものごとく盛りだくさんな旅となりました。この中からいくつブログにアップできることやら。それにしても、我ながらダイナミックレンジの広い旅でした。(悪趣味とも)

明日から京都へ

明日から新緑の京都へ向かいます。

高嶺格の「在日の恋人」の舞台となった、丹波マンガン記念館が5月31日で閉館するのです。今まで全国各地の炭鉱・鉱山の資料館・テーマパークを旅してきましたが、丹波マンガン記念館は初訪問です。朝鮮人強制連行の歴史を前面に打ち出した資料館と、ボロボロに朽ちかけた坑夫マネキンがいい味を出しているという坑道見学。京都の山奥にひそむ見逃せないスポットです。

いつも旅の宿はチープなビジネスホテルなのですが、今回は村野藤吾設計の佳水園に1泊します。ウェスティン都ホテルの離れの数奇屋建築です。簡素な中に、村野のディテールへのこだわりが感じられるといいます。

京都では、蔵造りの老舗居酒屋「神馬」(しんめ)を再訪しようと思っています。喫茶店のモーニングも楽しみです。

神馬※2005年の年賀状で、神馬
を紹介しました。

「在日の恋人」 高嶺格

在日の恋人昨年、都現美で川俣正高嶺格(ただす)のトークを聴いた。高嶺が京都の丹波マンガン記念館のある山中に住み込み、坑道内で作品を展示するインスタレーションを行ったと知りその詳細を知りたいなと思っていたのだが、その「在日の恋人」というプロジェクトと、高嶺の在日2世の恋人との恋愛・結婚・出産にいたる出来事をつづった「在日の恋人」という本を読んだ。

丹波マンガン記念館は、かつてのマンガン鉱山の坑道を公開し、マネキンの坑夫人形が坑内作業を再現する、鉱山テーマパークだったそうだが、その展示の主眼は、強制連行された朝鮮人の労働の問題を訴えるものだったという。残念ながら昨年、記念館は閉館したそうだ。

高嶺は、マンガン坑道のある山中に住み込み制作を進めることにこだわり、記念館の館長、李さんに助けられながら、手作りのアトリエを建てる。李さんの差し入れのすじ肉を喰い、酒を飲んで酔って踊り狂い、じたばたしながら制作の日々を過ごして行く。そんな日々をビデオで記録し続けるのも作品制作のひとつだ。

坑道内のインスタレーションは、高嶺が焼いた焼物を闇の中に展示し、鑑賞者がひとりきりで坑道に入って行って漆黒の闇を体験するというものになり、イベントとしてアコースティックのコンサートも行われる。

マンガン記念館自体が李さん一家の「作品」だととらえ、高嶺はこのようにいう。

何よりマンガン記念館には、現代美術作家の求めてやまない「政治的メッセージ」がある。「社会問題に対する言及」がある。そして最も愕然とすべきは、美術館に寄生しているかぎり実現しえない「ラジカルな態度」が、ここでは実現しえている、ということだ。

しかし、マンガン記念館の持つメッセージ性に依拠してしまうことにも高嶺は安住しない。

なんか、作品コンセプトなどといってウダウダ考えるのが、子供っぽく思えてしょうがなくなってきた。

そんな心情を吐露する高嶺にとって、このプロジェクトは生活することと創作することが渾然となった、言葉に還元する事のできない、特別な時間だったのだろう。

本書では、在日2世である恋人Kとの関係も語られる。日本人でもなく、韓国人でもない、アイデンティティーの揺らぎの中で悩み、韓国に留学しても答えの見つからないKさんの素直な気持ちをつづった書簡が心に響く。Kさんも簡単な言葉に置き換えられない問題を前に、じたばたしているのだ。

Kさんのアボジ(父親)は、マンガン記念館でのプロジェクトについてネット上で知り、高嶺の結婚の申し入れをすんなり受け入れたというのも面白いエピソードだ。

いろんなもやもやしたものが、もやもやしたまま心に届いてくるような、そんな本だった。そこには、コンセプトで割り切れるような分かりやすい創作も、小説のようにくっきりした人生もない。子供の誕生に立会い、出産するKさんの表情を撮影し続けた高嶺にとって、人生と創作は渾然一体となったじたばたとしたあがきなのだろう。

僕にとっての在日とは、まず何よりKだった。そして、アボジであり李さんであった。他にも大勢知ってはいるけれども、僕にとっての在日とは、一般ではなくあくまでも具体的個人だった。

カフェトーク 川俣正×高嶺格

訂正:本文中で、昨年に記念館が閉館したそうだと書きましたが、昨年に閉館の予定が発表され、2009年の5月31日までは見学ができることを知りました。その後は新しい運営母体を設立し、再オープンを目指しているのだそうです。(2009・3・25追記)
プロフィール

テツ

「中年とオブジェ」とは赤瀬川原平の名著「少年とオブジェ」へのオマージュである。美術、オブジェ収集、エリック・ドルフィーを愛好する。

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