往年のグルメ番組「料理の鉄人」で、辛口コメンテーターとして異彩を放っていた蔡瀾(チャイラン)は現地人ならではの香港グルメ本も出していて、中国返還直前には友人6人と香港旅行をして蔡瀾お勧めの店を食べ歩いたりした。その蔡瀾が香港で一番の麺と推す九記牛腩(ガウゲイグーナム)。返還前に訪れたときはちょうど昼休み中で、いつの日かリベンジを誓ったのであった。





久々に探し当てた九記牛腩は、屋台風からガラス張りのこぎれいな小食堂に建て替わっていた。夕方の飯時、店の前にはここの麺目当ての客が行列している。香港人が並んでまで食うというのはよほどのことだ。列の後ろに居た一人客の男性は広州からの旅行者だった。やはりうわさに聞く九記牛腩を初体験しにやってきたという。麺類のみの店なので回転は早い。ほどなく入店して、広州人のにいさんと相席してビールで乾杯。デフォルトのメニュー牛腩伊麺を選ぶ。牛バラの煮込みの載った卵麺である。

予想以上のあっさり味。牛バラは柔らかく、卵麺は若干平たくコシがありもちっとしている。これに牛の甘みが滲みでた淡白なスープがよくからむのである。スープまで完食するとなかなかのボリューム。




広州のにいさんはまだまだこれから食べ歩きをして過ごすという。彼と別れ、欧米人の多い蘭桂坊 (ランカイフォン)の路地をバーを求めてぶらりと歩き夜は更けていった。