中年とオブジェ

美術館・街で見かけたオブジェ 旅先で手に入れたオブジェ オブジェの視点で世の中を楽しむ中年の日常。

大地の芸術祭

『花様年華』






採集地 鎌倉/越後妻有

Trick or treat





採集地 十日町(越後妻有アートトリエンナーレ)

列車を待ちながら





採集地 新潟

変な看板 てんぐデパート




蔵王の山懐にあるひなびた一軒宿の温泉「峩々温泉」を旅したときのことだった。たしか近くにある遠刈田温泉あたりで、こけしの展示館など観た道すがら、車の窓からこの看板の姿が飛び込んできて、あわてて引き返して路上観察。記録にとどめたのであった。

よく観ると、壁面には「てんぐデパート」という古びた文字板がある。巨大なてんぐ面の鼻先は、あきらかに電線にまで屹立しておるし、ちょっとこれはマズイのじゃないか?というレベルの脱力物件であった。この時にはヤマザキ・デイリーストアになっているところも、小味が効いているではないか。この非日常性!どこが「デイリー」なのだか。

このような看板はとうの昔に撤去されているのだろうなあと、記憶にうずもれていたこの写真をみて思いつつも、試みに「蔵王 てんぐデパート」と検索してみた。すると、なんと2009年10月付けのコチラのブログがヒットしたのである。

蔵王の名スポット : ヒラードのOH!!蔵王

「てんぐデパート」という文字は消失しているが、「観光案内所てんぐ」という看板は健在。電線と鼻先の出会いも相変わらずだ。

さて、明日からの三連休。久しぶりに新潟への旅に出かける。水と土の芸術祭をメイン会場中心に様子見してくる。大友良英飴屋法水が組んだインスタレーションのプロジェクトが気になっている。帰りには途中下車して越後妻有の大地の芸術祭の目玉、クリスチャン・ボルタンスキー「No Man's Land」を公開最終日に見届けてくる予定だ。大量の古着の山が大型クレーンで掴み上げられ、落とされるという一大インスタレーション。

そんな、アートツーリズムの隙間に、またしても「てんぐデパート」のような思わぬ発見があればなあとココロの片隅で思いつつ、旅の支度を始めている。

大地の芸術祭2009 里山の風景 アートプロジェクトの未来

清津峡
美人林
星峠の棚田
棚田の稲

清津峡・美人林・星峠の棚田など、大地の芸術祭の舞台となったエリアで、美しい風景とも出会いました。

2009年7月31日(金)に聴講した川俣正「炭坑とアート」というレクチャーのなかで、川俣さんは地方や地域でおこなうアートプロジェクトの可能性についても触れていました。川俣さん自身、大地の芸術祭にも直島にも関わっているわけですが、廃校や廃屋など何でもかんでも美術館にしてしまえばいいという流れとは違うものを目指したいと考えているそうです。

今年の越後妻有アートトリエンナーレでは、川俣さんも廃校を一校もらったそうで、そこは【198】インターローカルアートネットワークセンターという世界中のアートプロジェクトのアーカイヴ施設として運営してみたいと語っていました。今、世界各地で無数のアートプロジェクトが実施されているそうですが、そのほとんどは記録も十分に残らない一過性のものになっていて、アーカイヴの必要性は切実な問題なわけです。(川俣さんの廃校、今回は残念ながら訪問できませんでしたが)

少子高齢化・過疎化が進み、廃校・廃屋が次々に生まれる越後妻有。今回大地の芸術祭の一端を垣間見ましたが、現在の方法論で運営し続けていくならば、いづれ行き詰まり破綻することが予見されます。既成の美術館のホワイトキューブから解放され、里山や廃校・廃屋が鑑賞の場となるということは、一見豊かで自由なプロジェクトのように思えますが、それは形を変えた「美術館」という制度への依存に他ならないのではないでしょうか。

「廃校・廃屋を美術館にするばかりが、アートプロジェクトというものじゃない」という川俣さんの言葉はラジカルですが、アートプロジェクトの未来に向けられた真摯なメッセージを感じます。

越後妻有の風景の豊かさを前にすると、大地の芸術祭の人為が、楽しいながらもちっぽけなものに思えてしまったのも、私の率直な感想です。

大地の芸術祭2009 アート編 2日目

大地の芸術祭2009。松之山温泉に1泊して2日目は松之山エリアからスタート。ブナ林や棚田などの風景も楽しみながらのんびり鑑賞。時間が足りなくて鑑賞拠点である【147】まつだい「農舞台」を見逃してしまいましたが、星峠は足を伸ばしたかいがありました。2日目の行程は以下。

・ブナの美しい林、「美人林」(びじんばやし)を散策
【223】「森の学校」キョロロ
【224】足下の水(遠藤利克)
【226】松之山プロジェクト(川俣正)
【234】最後の教室(クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン)
・松之山温泉街のそばとジャズ店「滝見屋」で昼食
松之山温泉→星峠
・日本最大の規模の星峠の棚田を散策
【215】脱皮する家
【214】コロッケハウス
・ミュージアムショップで星峠の棚田米を購入
星峠→松代→十日町エリア
【33】絵本と木の実の美術館(田島征三)
・カフェでお茶
【28】ストーム・ルーム(ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー)
・十日町駅でレンタカーを返車し、駅前の居酒屋「記念ホール」で夕食
【45】GO FLIGHT AIRSHIP
ほくほく線・上越新幹線で東京へ

キョロロ

【223】「森の学校」キョロロ(手塚貴晴+手塚由比)
【224】足下の水(遠藤利克)
緑の林に囲まれた赤錆びた異形の建築「キョロロ」。暗闇の階段を延々のぼって展望塔へ。展示スペースには昆虫・蛇・蛙・ドジョウなど。明るいカフェテリアもあり。外観が内部空間にダイレクトに反映された設計は面白い。キョロロの中庭のような部分がそのまま遠藤利克の作品となっている。

松之山プロジェクトボードウォーク

【226】松之山プロジェクト(川俣正)
キョロロの周囲を散策するボードウォークのあちこちに、様々な小屋が現れる。裏山を登ると螺旋スロープの物見塔が。こどもの秘密基地のようだ。長年のプロジェクトなのでちょっとくたびれた感じ。

旧東川小学校体育館旧東川小学校

最後の教室

最後の教室 廊下電球

【234】最後の教室(クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン)
これぞまさに廃校プロジェクトそのもの。朽ちた鉄筋コンクリートの廃墟のような小学校の内部はすべて闇に閉ざされ、暗い電球・漆黒の額縁・棺のようなオブジェなどが、いかにもボルタンスキーらしい死の匂いを漂わせる。

メインの体育館は床に敷き詰められたわらの匂いに満ち、闇に目が慣れるまでは無数の電球の光しか見えない。やがて不思議な光景が浮かび上がってくるさまは直島の南寺(タレル作品)にも通じる。この空間に魂を奪われたようにしばし佇んだ。

旧理科室から響く心臓の鼓動音は、校舎の外でも聴こえる強烈さ。廃校という魂の失われた場所に響く心臓の音は何を意味するのだろう。まるで、生と死の狭間、幽冥界からの遠い呼び声のようだ。

脱皮する家

2階からの眺め屋根組み

コロッケハウス

【215】脱皮する家
【214】コロッケハウス
ともに鞍掛純一・日本大学芸術学部彫刻コース有志による廃屋を丸ごとオブジェにしてしまう試み。山深い星峠の集落というロケーションが、さらに魅力を増している。「脱皮する家」は床・柱・壁・梁・天井、すべてを彫刻刀で刻んだ執念が痛快。

民家全体に金属を吹き付けた「コロッケハウス」は、モダンでクールなオブジェのよう。2軒とも、開放された開口部からの眺望が素晴らしかった。

星峠まできたら棚田の眺めを楽しむのもおすすめ。

絵本と木の実の美術館

【33】絵本と木の実の美術館(田島征三)
木造校舎の旧真田小学校は、木造トラス構造の屋根組みが美しい。校舎いっぱいに流木で作られた原色のオブジェがあふれ、空間に生命力が満ちている。人体模型などの学校の備品を並べた光景がオブジェ心を刺激した。

陰の「最後の教室」と陽の「絵本と木の実の美術館」。対照的な廃校プロジェクトだが、やはり深い精神性を感じる「最後の教室」により惹かれる。

ストーム・ルーム

【28】ストーム・ルーム(ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー)
古い歯医者の2階の旧診療室に入ると、雷鳴が響き雨が降りしきる光景につつまれる。鑑賞を終え現実の空を見上げたときの落差がなんとも不思議な、体験型インスタレーション。

【45】GO FLIGHT AIRSHIP
こうして2日間の鑑賞を終え十日町駅前の居酒屋で夕食。帰りの駅のホームに立つと、目の前に青く光る飛行船型のバルーンが。夜だけ空に浮かぶ作品だと思い出した。これでほんとの見おさめだ。

気に入った場所ではなるべくゆっくり過ごすと、このペース。大地の芸術祭はやはりスケールが大きい。常設作品で見送ったものも多いので、いずれ再訪したいものです。

飛行船

大地の芸術祭2009 アート編 1日目

大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ2009、アート鑑賞編です。1日目は10:12東京発ののんびり出発で上越新幹線で越後湯沢に昼前着。トヨタレンタカーを借りて、翌日十日町で乗り捨て返車して帰路につくルートを選択しました。(乗り捨ては無料で可)1日目の行程はこんな感じ。

・越後湯沢で昼食
越後湯沢→清津峡
【132】清津峡トンネル美術館
【131】うつすいえ
【130】アジアを抱いて―富山妙子の全仕事展1950―2009
【129】空の粒子/西田尻(青木野枝) 
・青木野枝作品の隣の旅館でお茶
清津峡→中里→松之山エリア
【229】黎の家
【232】家の記憶(塩田千春)
・松之山温泉に宿泊

清津峡トンネル美術館

【132】清津峡トンネル美術館
なにしろロケーションがすばらしい。風が心地よい峡谷の清流沿いにコスモスが咲き、観光用トンネルである清津峡トンネルの一角が展示スペース。闇の中に炭化させた樹木のオブジェが照らし出されるさまが幻想的。

【131】うつすいえ
民家の天井から照らされた無数の光がガラスの床にも映りこむ。屋内をもっと暗くしたほうがよいのでは?いまいち。

旧清津峡小学校炭坑

出征

【130】アジアを抱いて―富山妙子の全仕事展1950―2009
廃校になったばかりのモダンなデザインの旧清津峡小学校の教室に、88歳の現役女性画家富山妙子の絵画がびっしり展示されている。戦争・炭坑・アジア・光州事件などの重い歴史的テーマを描きながら、グラフィックな美・土俗的なモチーフ・混沌としたエロスなどが混在する独自の作風は、観る者の精神にパワーを与えてくれる。未知の作家だったが、力作の数々に魅了されじっくり鑑賞した。

ひとつでも多くの作品を観たいという誘惑も強いが、心に響いた作品とはじっくり対峙するのも大地の芸術祭の楽しみ方の大切なポイントだと思う。

青木野枝

【129】空の粒子/西田尻(青木野枝)
古い蔵と赤錆びた鉄のオブジェがひとつに溶け合ったインスタレーション。溶接によりつなげられた鉄の輪は、まるで昔からそこに存在していたかのよう。蔵の内部にまでオブジェは増殖している。隣接する温泉旅館はひなびていい雰囲気なので、食事やお茶を楽しみたい。

黎の家黎の家オブジェ

【229】黎の家
黒塗りの民家の中に無数の鍋釜が吊るされたオブジェは、過剰なエネルギーに満ちている。ここはイタリアンのレストランでもあり、リーズナブルで美味しいらしい。スタッフが使用するためのシャワー・風呂のデザインも洒落ている。

塩田千春家の記憶

家の記憶

【232】家の記憶(塩田千春)
ここは場所を探すのに迷ってしまった。カーナビにない新しいトンネルが近くにあったため通り過ぎてしまい引き返すことに。廃屋に張りめぐらされた黒い糸の集積は、偏執的なまでの密度。予想以上の力作だった。民具や着物・宙に浮く窓枠・古い本などが糸の中に取り込まれ、「家の記憶」を伝える。いつもヨーロッパ的退廃を感じさせる作家、塩田千春だが、日本の民家を舞台にすると土着的なパワーが生まれるのだなあと印象を新たにした。「場」の力を引き出すことに成功した作品だ。

そんなわけで1日目の鑑賞は終了。松之山温泉でゆったり過ごしました。

大地の芸術祭2009 旅めし編

へぎそば

舞茸天ぷら中野屋 湯沢店

大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ2009に行って来ました。鑑賞拠点のひとつ松之山地区の松之山温泉に宿泊しての1泊2日。作品の数を多くこなすことよりも、のんびりしたペースで鑑賞してお茶したり食事したり。見逃したものも多いけれど里山でリフレッシュしてきました。

アート鑑賞の記録の前に旅めしのレポートから。

1日目、上越新幹線で昼前に越後湯沢着。駅前の中野屋へぎそばを食べる。「へぎ」とはそばを盛り付けた大きな木の器のことだそうで、中野屋では2人前分・4人前分などあった。山形の大板そばにも似ている。一口づつ小分けに盛られたそばは食べやすく、つるつるしてなかなかコシが強い。つなぎに海藻の布海苔(ふのり)を使っているそうである。舞茸の天ぷらも注文。湯沢のリゾートマンション族らしき客多数。レンタカーを借り清津峡・中里エリアへ向かう。

清津峡温泉せとぐちせとぐち店内

古い蔵と溶接した鉄の作品が融合したインスタレーション【129】青木野枝のとなりに、古風な温泉旅館「せとぐち」がある。囲炉裏のある天井の高い広間でトコロテンを食べた。室内には熊の剥製や流木などが飾られ、レトロでひなびたいい雰囲気。ユースホステルも併設されているという。食事をするとパスポート割引あり。

1日目の夕食は松之山温泉の旅館でゆったり部屋食。地元産の豚肉・鯉こくなどがすこぶる旨かった。棚田米だというご飯はふっくらもちもちで甘く、ふわっとした炊き上がり。夜食におにぎりも握っていただいた。

店内

座敷

カレー南蛮そば&ライス滝見屋

2日目は松之山エリアを鑑賞して松之山温泉街のそばとジャズの店「滝見屋」で昼食。ほんとは1日目の夜、飲みに行きたかった店だがあいにく不定休で閉まっていた。看板メニューというカレー南蛮そば半人前にご飯をつけてもらう。そばは半分の量だが具と出汁はしっかり1人前分。スパイシーで汗が出るが味はまあまあかな。そばよりも、真空管アンプ・大きなスピーカー・店内にあふれるレコードやオブジェに心奪われる。温泉街でジャズ。是非夜に再訪してみたい店だ。

絵本と木の実の美術館カフェ


【33】田島征三の絵本と木の実の美術館は古い木造校舎いっぱいに作品があふれ、カフェでもこどもたちが使っていた机・椅子をリフォームして利用している。青ジソのドリンクは、酸味とほのかな甘さが疲労回復によろしい。BGMはボサノヴァ。

記念ホール

十日町でレンタカーを返車。ほくほく線・上越新幹線で帰るまでしばらく時間があるので駅前の居酒屋で過ごすことにする。松之山の滝見屋で教えてもらった「記念ホール」という不思議な名前の店へ。カウンターと小上がりの小さな店だが、ひとりで切り盛りする女将さんの手料理は上品で、旨く、安い。お通しの煮物・地の枝豆・子持ち鮎の塩焼き・大きな栃尾揚げ(油揚げ)の納豆詰めなどいただく。締めのおにぎりは、コンビニおにぎりの2倍はあるジャンボサイズだ。味噌汁・自家製茄子漬付き。酒は川西の地酒「松の井」が飲める。十日町市街に宿泊なら夕食は「記念ホール」を強くおすすめします。

「記念ホール」という店名は、ほくほく線開通の年に開店した「記念」だとか。(飯山線だったかも)旅の最後に居酒屋も開拓できて、ほろ酔い満足の帰路であった。(上越新幹線にはエチゴビールもあるし)

今回、大地の芸術祭の会場で運営されるカフェ・レストランを何ヶ所か目にしたが、無個性なモダンデザインが多く、越後妻有ならではの魅力はあまり感じられなかった。地元のそば屋や居酒屋のほうが私には好み。

※旅めし編のあとアート鑑賞編をアップ予定ですが、とりあえずのおすすめ情報を。【130】富山妙子(旧清津峡小学校)は、戦争・炭坑・アジア・光州事件など歴史的な重いテーマを、独特のタッチで描いた力作をたっぷり展示した回顧展でした。88歳現役女性画家の作品は、この世代の作者だからこそ表現しえた時代の軌跡を伝えています。

富山妙子

文中の【 】は、公式ガイドブック・ガイドマップの作品番号です。          
プロフィール

テツ

「中年とオブジェ」とは赤瀬川原平の名著「少年とオブジェ」へのオマージュである。美術、オブジェ収集、エリック・ドルフィーを愛好する。

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