中年とオブジェ

美術館・街で見かけたオブジェ 旅先で手に入れたオブジェ オブジェの視点で世の中を楽しむ中年の日常。

村野藤吾

梱包材の谷村美術館







採集地 糸魚川
     

百貨店に棲むもの





採集地 東京(日本橋眦膕亜

茶人用





採集地 京都(佳水園)

目黒区総合庁舎 アルバム













目黒区総合庁舎 建築ガイドツアー

毎年、目黒区美術館の主催で行われている目黒区総合庁舎の建築ガイドツアーに、初めて参加した。村野藤吾設計の旧千代田生命本社ビルを、目黒区がコンバージョンして再生したこの庁舎。テーマ別の3つのコース設定の中から、「和室・茶室集中コース」を選んだ。






庁舎前面の駐車場の下が、かつての福利厚生フロアである。喫茶スペースや和室が並び、庭のある茶室もしつらえられている。和室・茶室に実際に上がり、そこで空間を味わいながら聴講するボランティアの建築家のガイドは、村野建築のオリジナリティー・ディテールの美を、日本建築史の知識をベースに解き明かす興味深いものだった。 







私自身、個人で数回自由見学したことのある目黒区総合庁舎だが、この建築における贅沢なモダン数寄屋部分と、モダニズム建築の本棟部分の関係を何か異世界を対立させたような構図として受け止めてきた。しかし、ガイドによる解説を聞き、数寄屋部分に見られる柱と壁面が分離しているディテールが、本棟の鋳造フレームとガラスウォールの複層性にも共通しており、エントランスホールの構造柱と壁面をずらしたデザインにも通奏していると気づかされた。普段非公開の茶室・和室内部を見学できたことはもちろん、この建築の見方を深めてくれる充実した建築ガイドツアーであった。




村野藤吾の宝塚カトリック教会

外観側面
外観
住宅街の中に

国立国際美術館で9月12日(日)まで開催されていた「横尾忠則全ポスター展」にあわせ、大阪に小旅行をした。1日目は芦屋のヨドコウ迎賓館(フランク・ロイド・ライト設計)と宝塚カトリック教会(村野藤吾設計)をめぐり、2日目に横尾忠則全ポスター展鑑賞。そのあとは大阪で訪ねたかったジャズ喫茶や居酒屋でゆったり過ごしてきた。

今回は宝塚カトリック教会のレポート。阪急宝塚南口駅のすぐ近くの線路沿い、住宅街の中に現れた異形の教会だ。

ご待望の鯨のような皆様の教会堂がやっと完成いたしました。大洋を漂いつづけていた白鯨がようやく安住の地をみつけ岸辺に打寄せられたとでも申しましょうか。(中略)この建築は敷地の形が三角形になるような性格にあるため、平面計画の上でも三角形という制約を受けました。鯨のシッポの部分、即ち前の方に塔屋を、後方の部分に会堂を配し、全体としては、できるだけ素直な表現に努めました。
村野藤吾「宝塚カトリック教会の設計にあたって」

なるほど言われてみれば鯨にも見える。しかし、私の第一印象は住宅街の中に出現したナメクジ怪獣ナメゴンなのであった。

隣接する事務所の窓口で記帳をすると、教会の方が建物の内外を丁寧に案内してくださった。はじめに照明の落とされた教会堂の内部を自然光だけで目にした瞬間の美しさ。建物にあわせデザインされたシンプルで端正な椅子。村野らしいうねった階段手すり。煉瓦を積み白く塗った内壁の仕上げ。ウェーブを描く木質の天井の有機性。小規模な建築の中にディテールの魅力があふれている。

もっともダイナミックだったのは、建物側面に突き出た雨樋の排水口。現在は隣接する建物の関係で雨水受けが設置されているが、創建当初はここから地面まで雨水がドウドウと流れ落ちたのだという。繊細にして大胆。異形にして優美。静かに椅子に腰掛け過ごした、至福のひとときであった。

内部
側面窓
スリット窓
階段
会堂全景

宝塚カトリック教会図面


1965年竣工の宝塚カトリック教会。大気の汚染などで黒ずんでいた外壁が、昨年の改修でまた「白鯨」としてよみがえった。

2009年 私のお気に入り 建築

谷村美術館日生劇場


私にとっての今年は、村野藤吾イヤーでした。同じ建築家の仕事を集中して体験することは美術の回顧展にも似て、単体では見えてこない発見がありました。

・日生劇場(東京)
深海の生物の体内を感じさせるホール、繊細な螺旋階段、赤いカーペット。ディテールの美しさに魅了されました。

・佳水園(京都)
1泊2食で宿泊し、建築の美しさも、京懐石の美味も堪能。パブリックスペースで静かに過ごした夜の時間は至福の贅沢。かなりの老朽化も目の当たりに。

・谷村美術館(糸魚川)
経営難で既に閉館していた谷村美術館を、今夏の特別臨時開館期間に訪問。「有機的な造形」などと言った言葉では語りえないほどの、深く包み込まれるような空間体験でした。

久しぶりに再訪した目黒区総合庁舎(村野藤吾)では、見過ごしていた多くのディテールを発見。建築展では坂倉準三展(鎌倉近美・汐留ミュージアム)が印象に残ります。現存する坂倉建築を求める旅に出たい。目黒雅叙園の百段階段にも驚かされました。

目黒区総合庁舎 和室

和室外観

和室

障子

天井

床の間


目黒区総合庁舎の池に面した和室の一室は、来庁者の休憩のために開放されていて、自由に過ごすことができる。閉庁近くの遅い時間には訪れる人もなく、静かにその造作を楽しんだ。京都の佳水園まで出かけなくても、こんなに身近に村野藤吾のモダン数奇屋を味わうことができるのだ。

ためしに障子を締め切ってみる。繊細でモダンなデザインに包み込まれた空間の陰影は、ぞくっとするほど美しかった。屋根の緩やかな勾配・天井の細かな仕上げ・雁行するリズミカルなプラン。巨大なオフィスビルの中に、こんな世界があることのギャップが面白い。千代田生命、道楽が過ぎたのかもしれないな。

駐車場の下に作られた茶室にも、機会があれば入ってみたいものだ。

茶室茶室


※佳水園についての記事
佳水園 パブリックスペース

佳水園 部屋とめし

佳水園 アルバム

目黒区総合庁舎 エントランスと螺旋階段

エントランスホール

トップライトトップライト

ガラスタイル壁


壮麗な白い神殿のようなエントランスホール。目黒区総合庁舎として使用されている現在の目で見ると、あまりに過剰な贅沢空間だ。列柱の部分には水が張られ、外光を映しこんでいる。ずらりと並んだトップライトの不思議な造形は、有機的で淡い彩色が美しく、なんだか宇宙戦艦ヤマトのガミラス人のデザインセンスを思わせる。

重厚なガラスタイルの仕切り壁を通り過ぎると、大きな螺旋階段が姿を現す。繊細な部材で形作られたその有機的フォルムは、日生劇場の螺旋階段に観たデザインと同質のものだ。ただ、こうしたエントランスのディテールの魅力が、空間全体にまで緊密な「美」を構成しているかというといささか疑問。「部分」が突出しすぎて、全体の印象が拡散している感はいなめない。

眼福ではある。

階段
 
階段

手摺階段


※日生劇場についての記事
村野藤吾の日生劇場

目黒区総合庁舎(旧千代田生命本社ビル)

庁舎正面

庁舎とエントランス部

池と和室

車寄せ窓


目黒区総合庁舎は、そもそも1966年に千代田生命本社ビルとして竣工したオフィスビルである。千代田生命の経営破綻により目黒区に売却され、2003年に目黒区総合庁舎として再生された。設計者村野藤吾のエッセンスを感じさせる魅力を各所に残し、そのディテールの美しさを楽しませてくれる。目黒区美術館主催で建築見学ツアーなどが企画されることもあるようだが、普段の開庁時でも十分楽しめる建築だ。

今年春に宿泊したウェスティン都ホテル京都の佳水園の竣工が1959年。高層のホテル棟と、ホテル上層階からアプローチする離れの佳水園の関係が、千代田生命本社ビルのオフィス棟と、低層部の池に面した和室・半地下の茶室の配置に反転して反復されていることが興味深かった。都ホテルと千代田生命の設計において、主たる機能を果たす本体と、別世界を形成する「はなれ」との配置計画の変奏が、村野のテーマだったのではないだろうか。

正面エントランスホールから庁舎内部にふみ込むと、村野特有のディテールの美が待ち受けている。

谷村美術館の中へ

光明仏身をのぞむ

光明仏身光明仏身の間

金剛王菩薩天彦の間

曼珠沙華

谷村美術館の外観の異形の中には、有機的で胎内的な空間が包み込まれている。順路案内の平面図は、まるで生物の細胞か臓器の図のようだ。床・壁・天井は柔らかい曲線を主体に構成され、石や木などの質感の変化が空間をより豊かにしている。

木彫芸術家澤田政廣(文化勲章受賞)は戦時中糸魚川に疎開したことがあり、その縁で自身の彫刻を展示する美術館を糸魚川に建設することを望んだ。地元の実業家谷村建設の谷村繁雄が美術館の施工・設立をすることとなり谷村美術館が生まれたわけだが、設計に村野藤吾を推したのも澤田政廣だったそうだ。澤田も村野も日本芸術院会員で文化勲章受章者。親交があったのだろう。谷村社長は建築界の重鎮の名を聞いてびっくりしたそうだ。

最初から展示する作品が決められ、その仏像をいかに美しく見せるかというコンセプトで設計されたのが谷村美術館なのだ。6つの展示室それぞれに1体から数体の彫像が設置され、窓からの自然光と照明器具がそれぞれに異なった陰影をあたえている。床石に映りこむ仏像の姿・観る位置により変化する照明が落とす影まで計算されているという緻密な設計。展示室から展示室へ移動するにしたがい次の作品がおごそかに姿をあらわす動線の妙も見事だ。内部空間の曲面の表情の幻惑的なうつろいは、写真ではとうてい伝えることが出来ない。

今まで訪れてきた村野建築では、ディテールへの徹底したこだわりに感動の中心があったのだが、谷村美術館ではディテールの魅力という次元を超え、身体全体で感じる空間の豊かさに陶酔させられた。そしてこの空間が特定の美術作品のためだけに存在しているという事実!

美術館の理想が実現された世界のひとつがここにある。

聖観音

天井格子窓

聖観音をのぞむ

天窓


彫刻作品では端正な「金剛王菩薩」の坐像、ふくよかな胸の「光明仏身」、羽の生えた天使のような「天彦」が印象に残った。阿修羅のような「曼珠沙華」もエキセントリック。

memeさんのブログ「あるYoginiの日常」で谷村美術館の丁寧な探訪記がまとめられています。こちらの記事おすすめします。

※谷村美術館の館内は撮影禁止です。
今回は事前に美術館に撮影の許可を申請し、ブログへの掲載を承諾いただいています。

村野藤吾の谷村美術館(糸魚川)

正面
庭園より
右手より
側面


谷村美術館で、わが建築界の長老はなにをテーマとしたんだろうか。
知らなくて出かけるとこれは驚きます。本当は知らずに出かけてほしいのだが、それでは私の仕事にならないから続けるが、村野藤吾は日本海の波音が届く美術館の設計にあたり、
“サバク”
そう、砂漠をテーマにしたのだった。

「藤森照信の特選美術館三昧」

新潟県糸魚川の谷村美術館は1983年竣工。建築家村野藤吾(1891―1984)が死の前年、92歳のときに竣工を見届けた建築だ。村野の死後竣工した仕事を除けば、まさに遺作である。藤森照信の上記著書でその存在は知っていたが、未訪のうちに今年1月経営難のため閉館。ところが今年の夏、特別に臨時開館が行われるという情報をmemeさんのブログで知り、訪問することができた。

受付の門をくぐり、回廊に囲まれた敷地の中に現れた異形のモノ。藤森照信の解説によれば、世界各地の砂漠地帯の民家に見られるアドベ(粘土)建築の造形を引用したデザインだそうだ。さらにはアメリカのプエブロインディアンの建築の中に、まさに村野が手本にしたとみられる教会建築があるという。

私自身が連想したイメージは、沖縄の亀甲墓。西方浄土・補陀落などの彼岸とつながっているかのような聖域性を感じた。この美術館、内部には故澤田政廣が制作した数体の仏像彫刻が常設展示されており、美術館のリーフレットでは、シルクロードの砂漠の石窟寺院をイメージして、彫刻と建築が調和した世界を実現していると説明している。

美術館内部の様子については別エントリで紹介するが、これを見ずして村野建築は語れないというべき空間が生み出されている。今年は村野藤吾の建築をあれこれ訪ねる年となったが、谷村美術館は村野藤吾の精神・脳内ワールドがそのまま形になったとでも形容すればよいだろうか。彼の頂点のひとつであることは間違いない。

窓回廊スリット
窓
回廊より
モアイ


※谷村美術館及び隣接する庭園が2009年8月1日(土)から8月16日(日)まで特別開園されています。(会期中無休)今後の公開の見込みは不確定だそうです。ちなみに庭園は島根県の足立美術館の庭園と同じ中根金作による作庭です。

私は今回、富山県入善の発電所美術館塩田千春展もあわせて訪問しました。糸魚川と入善は結構近いですよ。(車で30分)この夏のおすすめです。

佳水園 アルバム

大広間棟

佳水園の客室棟は瀟洒で美しいのだが、異彩を放っていたのが大広間などがある大きな棟の造形。コンクリートと木造の混構造で、まるでチベットやブータンなどのゴンパ(僧院)を思わせる。

階段照明非常口

非常口はなんと「にじり口」の様式。女将も「今の法律では許可にならないでしょうね」と言っていた。ここをくぐると中庭に出る。階段に埋め込まれた照明は、フランク・ロイド・ライトのクラフト感に通じるセンス。

仕切り壁廊下コーナー

垂直と水平のシンプルな平面構成の随所に、三角形をモチーフにした遊びが見られるのも特徴だ。

玄関

すべて一点モノの障子の光彩が美しい玄関ホール。繊細な日本の美の象徴。

階段手摺村野藤吾といえば、「手摺」。佳水園にも、美しい工芸品のような階段手摺がありました。

佳水園は大変素晴らしい建築でしたが、随所に雨漏りのあとが見受けられたり、補修中で使用を中止している客室もあるようで、老朽化が進むなか、メンテナンスの困難さも感じられました。いずれはホテル客室としてではなく、文化財的な保存の対象となっていくのではないでしょうか。泊まるなら今のうちに。

佳水園 部屋とめし

広縁

フロアライト床の間

各室とも、踏込み、次の間、化粧室、および和風浴室のついた組部屋で、これが2方を外気に面するようにのびのびと配置され、日本住宅の良さを十分味わえるようにしてある。それぞれの人がそれぞれの仕方で住んでいる住宅にあるような、親しみやすさとか、くつろぎとか、ほっとするような安心感といったもの、それらに近い雰囲気が村野のホテルにはあった。

「新建築」1960年7月号

佳水園の客室は、一見するとごく普通の地味目の和室なのである。水まわりのプランは最小限、ひのきの風呂もすこぶる小さい。しかし裏山に面した広縁の建具が、ガラス戸・障子ともに三枚組みであったり、照明器具がシンプルでモダンな村野のオリジナルであったり、天井の仕上げが部位ごとに異なっていたり。そのディテールには見入るほどに発見がある。

客室

お造りあいなめの卓袱風

甘鯛の道明寺豆ごはん

この日は、佳水園を味わい尽くそうということで、夕食は部屋食で京懐石をいただいた。手の込んだ仕事をしながら、華美な印象を与えることなく、しみじみ美味しく、部屋の雰囲気にも通じる温かみのある料理だった。締めの釜炊きの豆ごはんがなんとも香り良くおいしい。

驚いたのが「ヘブンリーふとん」という特製の布団。仲居さんが二人で手際よく組みたてた布団は洋式のベッドマットを畳の上に置いたような作り。外国人客からの「布団が固くて眠れない」というクレームに対処するため、外資のウェスティン傘下になってから開発したのだという。たしかに寝心地はベッドそのもの。

夜更けになると、窓の外は暗い静かな林の闇につつまれ、まるでどこかの山荘にでもいるような気分だ。今回利用した1泊2食の宿泊プラン。デザイナーズ系高級温泉旅館よりも確実に安いだろう。

村野藤吾に関心があり宿泊したと知り、様々な資料をわざわざコピーしてくださったり、大広間を見せてもらったり、館内の撮影を自由にさせていただいたり、女将にはほんとに感謝である。

風呂ヘブンリーふとん

佳水園
設計:村野藤吾
竣工:1959年(昭和34年)

佳水園 パブリックスペース

門
佳水園
庇京都東山、蹴上にそびえる巨大なウェスティン都ホテル。エレベーターで7階まで上がり、本館内をしばらく進むと、ホテル裏手の山の上に出る。モダン数奇屋の離れ佳水園は、その立地からしてすでに、ホテルの中の別天地だ。桧皮葺きの門をくぐると、目の前に醍醐寺三宝院を模したという庭園(京都市文化財)を取り囲んで、二寸五分勾配のやわらかな屋根の客室がリズミカルに配置されている。












ロビー1
ロビー2
ロビー3
玄関を入りまず、そのパブリックスペースのゆとりある空間に惹きつけられた。村野藤吾のデザインした丈の低いソファに身体を預け、女将から抹茶と和菓子をいただく。大きなガラス窓越しに庭を臨み、館内におだやかな外光が射しこむ。壁に掛けられた書は、ノーベル文学賞受賞直前に川端康成が揮毫したものだとか。「雨過如山洗」(雨過ぎて山洗うが如し)。かぶとが飾られているのは、いかにも外国人観光客向けのサービスだ。
ロビー4
ロビー5
夜のロビー

このロビーに見られる「雁行」のリズムは、佳水園の平面構成全体の基調にもなっている。夜、本館のバーに出かけジャズライブを観て飲んだ帰り、部屋にもどる前に誰もいないロビーでゆったり。この静かな別世界に泊まれる歓びに包まれる。

日生劇場アルバム

エントランス天井

タイル画ガラスタイル画

受付カウンター階段

レッドカーペット

エスカレーターロビー椅子

ロビー天井カフェコーナー

スピーカーのろま大将

曲面美竣工 1963年
設計 村野藤吾
この日のステージは北島三郎
のろま大将のポスターも

村野藤吾の日生劇場

外観コーナー柱

村野藤吾が設計したウェスティン都ホテルの離れの数奇屋建築「佳水園」については、宿泊したことのある友人のべろ蔵の話も聞いて気になってはいたが、今回の東海道ぶらり旅で目的のひとつとした決め手は、今年4月に見学した日生劇場で受けたインパクトにあった。この日、ブログ「きゃおきゃおの庭」のきゃおきゃおさんのコーディネートで、ステージ開演前の劇場を見学したのだ。

劇場の入っている日本生命日比谷ビル。いっけん普通の近代建築に見えるが、コーナーの仕上げ、窓手摺のデザイン、ピロティー柱のトマソン風味など、さりげない中に「変」な味わいが加えられている。

階段

階段手摺1階段手摺2

劇場の方の案内でいよいよ内部へ。エントランスはアールデコ風アレンジの天井、大きなガラスタイル画、そしてレッドカーペットが目を引く。ロビーフロアに上がると、村野藤吾独特の螺旋階段が左右に。有機的な繊細なフォルムは、以前見学した目黒区庁舎の螺旋階段にも共通するデザイン。赤いカーペットがより一層、やわらかく暖かい印象を与えている。スケール感は意外に小さく、小じんまりとしている。

そしていよいよ、劇場の内部へ。深海に潜む、怖ろしく巨大なアンコウの腹の中に入り込んだとでもいう気分。「有機的な建築」というと、ガウディーが想起されるけれど、ガウディーの建築が植物や菌類のメタファーに満ちている感じがするのに対して、村野のこの劇場は、魚類のヌメヌメした軟らかい感触、深海の静かな暗さを連想させる。てらてら輝く壁面は魚鱗のようであり、フジツボのような形状のスピーカー、この建築の一番の見所であるアコヤ貝をびっしり埋め込んだ天井など「海の底」をイメージさせるデザインに満ちている。点々と輝く照明は、ちょうちんアンコウか、発光する生命体か。

劇場内部

天井吸音壁

客席と天井入場口手摺

まだ、写真でアップしたい魅力あるディテールにあふれた日生劇場。別エントリでさらに紹介したいと思う。「神は細部に宿る」という言葉を体現した、村野藤吾畢生の建築だ。

※きゃおきゃおさんが美しい写真で、日生劇場を紹介したエントリ、その1その2その3

明日から京都へ

明日から新緑の京都へ向かいます。

高嶺格の「在日の恋人」の舞台となった、丹波マンガン記念館が5月31日で閉館するのです。今まで全国各地の炭鉱・鉱山の資料館・テーマパークを旅してきましたが、丹波マンガン記念館は初訪問です。朝鮮人強制連行の歴史を前面に打ち出した資料館と、ボロボロに朽ちかけた坑夫マネキンがいい味を出しているという坑道見学。京都の山奥にひそむ見逃せないスポットです。

いつも旅の宿はチープなビジネスホテルなのですが、今回は村野藤吾設計の佳水園に1泊します。ウェスティン都ホテルの離れの数奇屋建築です。簡素な中に、村野のディテールへのこだわりが感じられるといいます。

京都では、蔵造りの老舗居酒屋「神馬」(しんめ)を再訪しようと思っています。喫茶店のモーニングも楽しみです。

神馬※2005年の年賀状で、神馬
を紹介しました。
プロフィール

テツ

「中年とオブジェ」とは赤瀬川原平の名著「少年とオブジェ」へのオマージュである。美術、オブジェ収集、エリック・ドルフィーを愛好する。

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