「給費制廃止へ、その裏には何が」お好み焼き「ゆかり」

2010年10月25日

問題は「お金がないと法律家になれない」ことではない

日弁連のサイトに、給費制維持をアピールするページがあるのですが、
そこに「明日の権利の守り手を育てるために」と題したリーフレットが掲載されています。

このリーフレットの内容については、登場時から批判はあったところではあるのですが、あらためて読んでみると、日弁連の戦略ミスをつくづく感じますね。

「お金がないと法律家になれない」のが問題だとしても、なぜ貸与制ではダメなのか、ということに何も答えられていないわけです。
お金がない人のためにこそ、生活費を貸与するのではないかと。そう言われてしまったら、何も反論できなくなってしまいます。

このリーフレットで一番問題だなぁと感じるのは、給費制について「お金の心配にとらわれず法律家への道に挑戦できる制度です」と説明していることです。
そうじゃないと思うんです。お金がない人でも法律家になれるようにしようと国が給料を払っていたというわけじゃない。給費制は修習専念義務から導かれるものなんです。そこからして捉え方が間違っている。
修習専念義務を課して、国が一定期間法律家の養成に責任を持つからこそ、その間の給与を保証すべきという議論になるのです。そういう本質に十分に触れられていない。

この問題は「お金がないと法律家になれない」ということではないんです。
「お金のあるなしに関係なく、誰も法律家になりたいとは思わない」ということが問題なんです。
通常の合理的な思考能力の持ち主であれば、新制度では、ローの学費、三振のリスク、修習の貸与、就職難・・・これだけの負担とリスクがありながら、それでもなお法律家になることに意義や合理性を見出せない。そのことが問題なのです。

そういうことを日弁連は正面から問題提起してアピールしなければならなかったのです。
日弁連の戦略が完全に敗北に終わったことは、毎日新聞の社説を読んでも感じることができます。


「社説:司法修習生 一律の給与支給は疑問」(2010年10月21日2時31分 毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101021k0000m070102000c.html
『最高裁が貸与制移行に先立ち合格者に調査したところ、全体の4分の1は貸与を希望しなかった。親の経済支援などによって賄えるということだ。年間100億円の予算で、その人たちにまで給与を払う意味をどこに見いだすのか。


親に養ってもらえる人には、給料を払う意味がないそうです。
(ノ`Д´)ノ・・・~~┻━┻

そりゃそうですよね。「お金がないと法律家になれない」のが問題なんだから、「お金のある人には払わなくてもよい」わけだ。

こんな社説を掲載してしまう毎日新聞も毎日新聞だと思いますが、マスコミがこのような論理を振りかざすのも、もともとは日弁連の出発点が間違っていたからだと感じざるを得ません。

schulze at 00:44│Comments(3) 司法修習 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by kosz   2010年10月25日 07:30
Schulzeさん、先日はコメントありがとうございました。

病気になるのも、困ったトラブルに巻き込まれるのも、本当はあまり変わらなくて、法律家の人も本来はとても身近な存在のはずなんですが…。

しかし、この給費制・貸与制の問題、司法修習がどのように位置づけられているか、というところが大きな問題だと思います。

僕が研修医だった頃、実は大学院生だったために、大学病院からの給与は全く支払われませんでした。朝から深夜まで、そして当直もしていたにもかかわらず…です。で、学費を払っていたわけですから、これは「業務」ではなく「教育」だったのでしょうね、建前上は。そしてバイトをしないと生活できなかったわけです。

このような環境では、十分な研修ができない、ということで臨床研修が義務化され、給与が支払われることになったと認識しています。

司法修習は、医師と比べちょっと複雑なのが、免許制でないというところだと思います。司法修習の場合、司法試験に合格しただけでは働くための資格を得ることができないのですよね?
このことで、修習自体が「教育」なのか「業務」なのか曖昧になって、上手に利用されている気がします。

これまでは「業務」として給与が支払われていたと思うのですが、それがなくなるということは「教育」になるのでしょうか?その場合、逆に学費を支払う…ということが極端にいえば必要なはずですが。

いずれにせよ、金持ち云々の議論は、国民をちょっとばかにしているとしか思えませんし、マスコミも、いい・悪いの価値観を押し付ける前に、さまざまな視点からの意見をいろいろと提示すべきだと思います。

専門外の人に、しっかりと説明・説得できる人材が日本は少ないのかもしれませんね…。
2. Posted by 通りすがり   2010年10月25日 18:13
(たぶん)法律家ではないこの方も同趣旨のことを述べられています。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20101021
3. Posted by やまだ   2010年10月31日 23:13
法科大学院に進学したら初志貫徹して無事法曹界に就職して欲しいものです。新司法試験に落ちて企業就職など考えないでいただきたいのです。

企業は迷惑しています。彼らは法務なんか募集してないのに、面接で法務がやりたいと主張します。新人に法務などやらせるわけありません。そこそこの企業なら法務は会社の業務に精通した経験豊富なベテラン社員と、長年のおつきあいのある顧問弁護士が担当します。新人は営業にきまっているのです。企業では20代で仕事を先輩から教わり、失敗もしてトラブル処理で経験をつみます。30代とは中堅としてバリバリ働き、ベテランとして会社の業績に貢献し、後輩の指導などもする年次です。それを無視しないでください、30代で未経験者・新卒などありえません、といいたいのです。

三振法務博士になったら今の年齢からスタートできる仕事を冷静に考えて欲しいのです。以下の3つに分類できるとおもいます。
?後継者不足で30代なら若手として受け入れ可能な分野…農林水産業・伝統工芸など
?人手不足のため、年齢・経験を問わず門戸を広げている分野…新聞配達業、配送業 など
?年齢・経験は問わず参入できるが競争の厳しい分野…飲食業、タクシー乗務員、起業 など

 「私は司法をめざして法科大学院に行きましたが落ちたので、(しょうがないので)御社に入社して法務を担当したい」…そもそも本当に企業に失礼で、痛々しい話です。


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