羽田国際定期便1番機争いANAのCM「羽田を待っていた。」篇

2010年10月31日

企業が法科大学院卒業生を採用しない理由

「企業が法科大学院卒業生を採用しない理由をもう少し丁寧に考えてみた」(企業法務マンサバイバルさんのブログより)
http://blog.livedoor.jp/businesslaw/archives/52082674.html
『企業が法科大学院卒業生の採用に不安を覚えるのは、法科大学院の教育ではこのような「契約書に書かれていないことも含めて指摘し、きちんと説明できる知識と能力」が身につくとは思えない、という点にあるのではないでしょうか。それがないままに法律の専門知識だけ学んでこられるぐらいなら、学部卒の若いうちに採用してビジネスの世界で揉んで育てたほうがマシ、とすら思われているフシすらあります。たくさんの新司法試験合格者、さらにそれに不合格となってしまった法科大学院卒業生を企業法務で採用せよというなら、授業や司法修習において、ステークホルダーの視点からリスクを指摘し説明できるようにする知識と能力も身につけさせることが必要なのだと思います。』



なかなか鋭い指摘なのではないかと思い、ご紹介させていただきました。


私自身も、企業内で法務をやらせてもらっていますが、私がインハウスとして採用してもらえたのは、たまたま従前から勤務していたということが大きかったわけです。
私の会社では、ロー卒者や弁護士資格保有者を法務担当として採用しようという動きは皆無ですから、このブログで指摘されていることには非常に納得してしまいます。

ここでは契約書のチェックについてしか例として挙げられていませんが、私の経験上、企業内で法務を行う上でどんな能力が必要かというと、法律知識そのものではないように思います。
民法でも会社法でも、ある程度の法律知識が必要なことは間違いありませんが、その一方で、当然ながら企業の法務担当者がすべて司法試験に合格しているわけではありませんし、そこまでの深い専門性は要求されません。
それより必要なことは『会社の業務内容を知る』ということです。その会社がどういうビジネスをしていて、契約や取引の実態がどうなっているか。そういったことをまず把握する必要があります。

ロー卒者や司法試験合格者には法律知識はあったとしても、ビジネスの現場を知らない。そういう人は、実際に現場で発生している問題に適切に対処できませんし、アドバイスもできないと言うことになります。
このあたりが会社にとって採用を躊躇させる大きな要因なのではないかと感じています。


また、会社にとって、法律のスペシャリストと言うのは、必ずしも扱いやすい人材とは限りません。
私の場合は、たまたま弁護士資格を持っていますので、おそらく会社にいる限りは法務の仕事しかしないだろうとは思っていますが、こういう人材は流動性に欠くので本来的には望まれていない面があります。
会社にしてみると、法務で蓄積した経験や知見のある人材は、営業なり製造現場なり管理部門なり、別の部署に異動して能力を発揮することを求めているところがあります。人材はローテーションで回して、多面的な判断の出来る人材を育成したい。法務なら一生法務、というのではなく、いろいろな部署を経験させて、法務面だけでなく財務・経理面、人事面、そういったゼネラリストを求めている。
そういう発想だと、新卒者を育てていって、ローテーションの過程で法務担当に就けるほうが、はるかに合理的なのですね。

これからの時代、専門性を身につけることが必須な面もあるわけですが、その反面、本当に法律の専門知識が必要な分野であれば、実は顧問弁護士の先生がいるのです。
だから必ずしも自社で人材を抱える必要性がない。
もちろん、自社で完結できればコストは下がることは事実です。しかし、現実に法律問題を顧問事務所を通さず社内で完結させるのは大変なことです。よほど有能な人材が集まっている場合は別ですが、そうでない限り顧問事務所の力を一切借りずに問題を解決することなど、事実上出来ないのですよ。たとえばトヨタとか三菱商事とか新日鉄といった、それこそ日本経済を代表するような超有名企業なら、それなりの人材が社内にもいるでしょうが、一般的な普通の上場企業では、そこまでは無理なのが実態です。うちの会社だって、社内弁護士は私一人しかおらず、私一人の力で解決できる問題など、微々たるものでしかない。

そういったことを考えると、実はあまり企業で法律の専門家に対するニーズというのは、それほど多くはないのが実態なのだと思います。
ましてや、今の不況で新規に人材を採用する余力が企業にはない。こういった中で、インハウスローヤーや法科大学院卒業生の採用が今後爆発的に増える可能性というのは、ほとんどないだろうと私は考えています。

schulze at 17:19│Comments(5) 企業法務 | 司法試験

この記事へのコメント

1. Posted by ポリティーク   2010年11月01日 07:21
別にロースクールなんて無駄な組織の弁護をするわけではありませんが、引用ブログの見解は「日本企業の人事制度では弁護士社員の処遇は難しい」と言ってるだけのように思います。
「いくら弁護士が余ってるからって、我が社(企業一般とは言わない)が人事制度まで変えて雇用するわけがないじゃん」と言われれば「御説ごもっとも」と返すより仕方ないわけです。
結局、本質的には法務部に弁護士を雇ったところで法務部の仕事の幅は変わらず、顧問先のローファームへの業務委託が減るわけじゃありませんから、単に院卒を雇う分、法務コストが上がるってだけの話じゃないかと邪推しますけど。
2. Posted by schulze   2010年11月01日 23:10
ポリティーク様のご指摘の通り、ローや修習のカリキュラムが変われば企業が採用を増やすのかと言えば、おそらくそういう問題じゃないでしょうね(^^;)。ただ、ローの理念が社会の隅々にまで法律家を行き渡らせようというのなら、企業のニーズをもっと取り込むべきだったんじゃないかという視点はあっても良いのかなと思われます。ま、いずれにせよ企業が採用しないことには変わりないんですけどね(苦笑)。
3. Posted by 私もインハウス   2010年11月03日 15:05
思ったほどではないにせよ,企業内弁護士は,新司になってから,急増はしています(元が少なかったにしろ,倍増)。ここで述べられていることは,その通りなのかもしれませんが,いくつかの前提条件(企業はゼネラリストを求める,ロー卒生はビジネスの現場を知らない,等)は,今後,変わりうるものであり,絶対固定的なものとまでは言えないと思います。ロー生・修習生に発憤を促す,一種の応援と読むことも可能ですね。
4. Posted by ろーすくーるせい   2011年01月11日 01:39
ぶっちゃけたはなし、論理的に考えて表面上、企業に「弁護士」が不要っていうのは非常によくわかるんですけど、「ロースクールでやった基本的な学問」って結構使えませんか?

少なくとも、日本のMBAよりは説得的な論理展開ができるように訓練されると思うんですが。

というところに着目すれば、「法律の専門家」ではなく、「単純にスペックの高い人材」として企業がマネジャーとして雇うって事もありうる気がするんですよね。

まあ、その場合、必要となるのはかなり高度な能力となるんでしょうけど。


まあ、単純に、一度ビジネスの現場に出て、そっからローに来た自分としては、ローで結構新しい発見とかもあったので、何かしらの使い道はありそうだなーと漠然と考えています。

てか、この議論する人ってみんな「弁護士資格」に固執しすぎな気がしますけどね。

と言っても、ローの教授に同調する気はさらさらないんですが。笑
5. Posted by schulze   2011年01月11日 01:47
ろーすくーるせいさん
問題は二つあって、一つは「ロースクールでやってる学問」が企業にとって本当に必要なものかどうかということ。
もうひとつは結局、処遇の問題なんですよ。年齢に応じた処遇でいいのであれば、採用を検討するという企業もあると思います。
ただ、わざわざ高額の学費を負担してローを出て弁護士資格をとっても、それに見合うだけの報酬が得られないのだとしたら、何のために資格を取るのでしょうか。
結論としては、企業にそれだけのコストを払うに見合う人材だと評価されないといけないわけですが、そういう評価をする企業が実際にどれだけあるのか、ということだろうと思います。

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