例のブログ騒動についてアイスホッケー商東戦

2011年10月12日

司法修習給費制 廃止なら法曹の将来歪める(10月12日付 宮崎日日新聞社説)

司法修習給費制 廃止なら法曹の将来歪める(2011年10月12日 宮崎日日新聞社説)
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?itemid=41315&catid=15
『司法試験に合格後、司法修習生としての研修期間に国庫から「給与」を支払う給費制を継続するか。それとも返済義務のある貸与制に切り替えるか。「法曹の養成に関するフォーラム」などで議論されてきた問題が「打ち切り」という結論に傾こうとしている。だが、それでいいのだろうか。(中略)法科大学院修了者の司法試験合格者が当初の目標を大きく下回り、それが同大学院への入学希望者減と質低下、さらに司法修習修了後の「考査」不合格者増を招くという悪循環に陥っている。給費制廃止によって悪循環がさらに加速しないか、そんな危惧の念をぬぐえない。(中略)弁護士はだれでも「お金にならない仕事」を抱えているといわれる。しかし、弁護士になった時点で多額の借金を抱えているようだと社会正義より、お金になる仕事を優先させることにならないか。つまり社会的弱者にしわ寄せがいく。司法の改革はまだ道半ばである。将来の全体像さえ決まっておらず、給費制の廃止はその全体像を歪(ゆが)める恐れがある。結論を急がず議論を継続した方がいい。』


先日の長崎新聞の社説といい、今回の宮日といい、地方紙のほうが全国紙よりもはるかにまともです。
地方からこういう声が上がるのは、心強いです。
地方紙のほうが、スポンサーとしての大学の意向であるとか、これまでの司法改革へのスタンスだとか、変なしがらみがない分、ストレートに正論を書けるのかもしれませんね。

ただ、
『東日本大震災で東北地方が大打撃を受け、立ち直りの道筋がいまだに見えていない。復旧・復興に一円でも多く振り向けるため給費制を見直そうという動きがあるのは仕方のないことかもしれない。』
とあるのは、残念ながら事実に反するでしょう。
貸与制への移行は、もともと東日本大震災の前から方針として示されていましたし、直接の関係はありません。
さらに震災後も、これと結びつけて給費制廃止へつなげようという動きも、(中にはそういうことを言っている人もいるかもしれませんが)特に見られないというべきでしょう。

だいたい、震災の復旧・復興のために予算を回すというなら、なぜ数ある予算の中で修習生の給費だけがターゲットになるのか理解できません。
防衛大学校や気象大学校の給費も同じことなのでは?
給費制より、法科大学院への補助金カットの方が先でしょう。

それにしても、地方からこういう声が多く上がるようだと、中央の全国紙はどう対応するのでしょうか。
弁護士とか法曹人口に興味のない一般読者からすると、こういった社説と、全国紙の社説と読み比べて、どちらがまともに映るのでしょうかね?
いずれ、全国紙のみが孤立化して、主張の異様さが明白になっていくのではないかと思います。

schulze at 21:16│Comments(15) 司法修習 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by なめ猫   2011年10月12日 23:31
そういえば、旧司法試験のときは学部卒業後に実家に帰省し家業を手伝ったり、家庭教師をしながら、極力お金を掛けずに独学で勉強を続けて、受験予備校は通信制の答案練習だけを利用し、苦学の末に最終合格する人も結構いました。
しかし、無意味に時間を拘束されアルバイトが出来ない上に、どうしてもローのそばに下宿せざるを得ないとなると、よほど経済的に裕福でなければ全く不可能で受験資格すら与えられないことになります。
そうして新司法試験に合格した人たちが、投下資本回収と生存競争のため、地元に帰ることなく都会でのビジネスロイヤーを志向すれば、皮肉にもロー制度によってかえって司法過疎を進行させることになりかねないと考えます。
2. Posted by ポリティーク   2011年10月13日 06:39
地方紙と地元国立大学との関係は、中央紙と大学よりもズブズブで、大学側の意向から独立してるがゆえに社説の論調が違うのではないと思います。

どちらかというと、合格者数と給費制をゼロサムの関係に捉えて批判するLS協会と、実際に学生を受け入れ一定程度彼らの合格後の生活に関心がある現場の意識の乖離が、このような違いに顕れているのではないかと。

LS協会など、所詮ただの利益集団ですし、そこを代表する学者は親方日の丸的な地位にいる方々ですからね。
3. Posted by 大阪の弁護士   2011年10月13日 12:12
 宮崎日々新聞の記事ですが、給費制廃止に疑問を投げかけている点や給費制に関して法曹の公益性を述べている点は他の新聞よりましなのですが、その他の点は首をひねることばかりです。

 まず、給費制廃止に疑問を投げかける主たる理由を、宇都宮執行部が弁護士会の内からも外からも大批判を浴びた弁護士の貧困問題にしているところが気になります。また、貧困問題を述べるにしても貧困の原因である法科大学院制度の是非にはいっさい触れられていません。
4. Posted by 大阪の弁護士   2011年10月13日 12:12
つづき

 何よりも、法科大学院への入学希望者減と質低下の理由を合格者が当初の予定数を大きく下回ったことにしていますが、法科大学院側の主張を鵜呑みにするもので大きな間違いです。
 旧試験は新試験の10分の1の合格率でしたが、法科大学院入学希望者の何倍もの志望者がおり、かつ志望者は増大の一途をたどっていました。合格率が極めて低いことは志望者減の理由にも質低下の理由にもなっていなかったのです。
 入学希望者が減少し質が低下した原因は、法科大学院に進学して弁護士になることの時間的経済的ロスに見合うだけの見返りが弁護士になっても得られないからです。そのため自分の能力に自信がある(そのため上記ロスが大きいと思っている)層から選択されなかったのです。
 2000人も合格するのに、3000人から減ったことで志望をあきらめるような能力しかないのであれば、志望をあきらめてもらった方が質の維持に資するかもしれません。

 さらには地方弁護士会の登録者数増加は50期代から顕著になっており、合格者数1000人で十分だといえます。またゼロワン地域解消は合格者増との関連性はあまりなく、法テラスや公設、ひまわり基金などの採算をあまり考えなくてよく、その場所に永住しなくていいシステムを弁護士会が作ったことによるものが大きいです。

 以上の理由から、私は宮崎日々新聞の記事を礼賛する気にはなれないのです。
5. Posted by schulze   2011年10月13日 12:57
大阪の弁護士様
宮日内部の人がどこまでこの問題につき深く認識しているか次第だと思います。ご指摘のとおり、あの社説は不十分なものだと私も思いますし、ところどころ認識がおかしい点もあります。私も礼賛したつもりはありません。ただ、今の時点でハッキリと「給費制がなくなるのはおかしい」と明言してくれたことに意味があると考えています。司法制度改革がおかしいと感じている我々からすれば不十分な社説かもしれませんが、今はこういった味方となるメディアを増やしていくことが肝要ではないでしょうか。
6. Posted by 大阪の弁護士   2011年10月13日 15:20
 そうですね。
 schulzeさんのおっしゃるように、給費制に理解を示さないメディアがほとんどなのに、不十分とは言え、敢えて疑問の声を上げてくれたことを評価しなければならないのかもしれません。

 給費制や法曹人口問題に関しては、弁護士会が内輪でああだこうだ言って議論したり決議を上げたりしても全く進展しないし、法務省や文科省、最高裁と正面から議論したって相手にしてくれない。メディア対策と議員対策をして絡め手から攻めないと解決しないですよね。

 ぜひとも日弁連執行部、特に宇都宮さんは、このような弁護士会に理解を示してくれるメディアに直々に出向いて、担当者の理解を深める活動をして欲しいですね。
7. Posted by 弁護士HARRIER   2011年10月13日 15:31
給費制問題は、皆さまもご指摘のとおり、正面から正論をかましてもダメです。
他の研修機関の給費が容認されているのに、また、グダグダと見なされているLSへの補助金が容認されているのに、修習生の給費制はダメという理由がない。ただ給費制を維持すると、司法試験合格者数が絞られ、それがLS関係者という「権力者」の意向に反するから、修習生への給費制が槍玉に上げられているのでしょう。
8. Posted by ぴよ猫   2011年10月13日 21:56
結局ロー関係者の生き残りをかけた政治闘争なんですよね、給費制の問題は。

教え子たちの給費を削ってまでローという利権を維持することに腐心する。

なんと醜いことか。
9. Posted by schulze   2011年10月13日 22:07
ぴよ猫様
その政治闘争とやらが本当にローの生き残りにつながるのなら、まだいいんですが、「貸与制→ロー生き残り」ってもはや風が吹けば桶屋が儲かる式の論理構造でしかないですね。
貸与制→司法試験合格者増→ロー志願者増、ではなくて、実態は司法試験合格者増→就職難→ロー志願者減だし。
かと言って、司法試験合格者減→ロー志願者減、でしょうしね。
早い話、どう転んでもロー制度は詰んでるんですけどね(笑)。
10. Posted by ぴよ猫   2011年10月13日 22:22
schulze様
>早い話、どう転んでもロー制度は詰んでるんですけどね(笑)。

そうですね。

「生き残りをかけた」ってのはそういう悲壮感にあふれた感じを出したかったからですよw

実際、法務省内部では合格者数と貸与給費の話はリンクしてないでしょうしね。
そもそも資格試験を受験する資格のための学校が資格の価値を毀損するようなことをして生き残れるはずがないです。
このあいだの鎌田氏の「夢」云々の話もどこまで本気なのか怪しいもんです。

いずれにせよ、ロー関係者は自己責任ですけど、修習生に付けを回してまで、ひいては法曹界をむちゃくちゃにしてまで生き残ろうとする姿は醜悪です。
11. Posted by schulze   2011年10月13日 22:55
ぴよ猫様
そうそう、ロー関係者の主張って、弁護士の資格の価値を毀損するようなことばかりですよね。
それって自分で自分の首を絞めていることに、どうして気付かないんでしょうね?
「図書館にも弁護士を(キリッ」なんて言って、ローに学生が集まるとでも思ってるんでしょうか。
12. Posted by 市民   2011年10月17日 18:23
ロースクール利権とはよく分からない屁理屈を思いついたものですな。
そういえば、札幌にローの教員をして、ローからお給料をもらいながら、「ローは諸悪の根源。ローは廃止!」と主張している弁護士がいますが、「ロースクール利権」との関係で、このような主張をする人間についてあなた方はどう思いますか?

参考 http://inotoru.dtiblog.com/blog-entry-399.html
13. Posted by schulze   2011年10月17日 18:59
市民様
「あなた方」って誰に言ってるんでしょうか?ここは個人で運営しているブログですよ。
「どう思いますか」って言われても、私はどうも思いません。「ローの教員をして、ローからお給料をもらっている」弁護士が「ロー制度を守れ!合格者増やせ!予備試験反対!」などと唱えているのなら、私としても思うところがありますが、「ローが諸悪の根源。ローは廃止!」という主張なら、別にいいんじゃないですか。
ロー廃止を唱えながらローで教えていても、何ら問題ないですよね。制度設計としてのローをどう考えるかという問題と、後輩(学生)を指導するというのは、別の話ですからね。
あと、「参考」として猪野先生のブログが貼られていますが、どういう趣旨で「参考」として紹介されているのですか。私は猪野先生のプライベートな活動についてはよく存じ上げていないのですが、あなたのいう「札幌で〜と主張している弁護士」とは猪野先生のことなんですか?だったら本人に聞いたほうが早いんじゃないでしょうか。もし関係ないなら、先生のことと誤解を招くような記載はお止めください。
14. Posted by 市民   2011年10月17日 20:25
コメント欄の複数の人間が「ロー利権」などという概念を吹聴しているから「あなた方」と言っています。
一般人に誤解を与えかねない表現なので批判したまでです。
挙句にそのようなことをローから現に経済的利益を受けながら主張している弁護士がおり大変問題だと感じてます。
国民の総意で導入されたロー制度を弁護士の都合だけで覆されてはたまりませんのでね。
15. Posted by schulze   2011年10月17日 21:22
「ロー利権」という言葉を使っておられるのは、ぴよ猫さんのことですかね。「複数の人間」が「吹聴」というのが何を指しておられるのかが、よく分かりませんが…。
ちなみに、せっかくの機会なので私自身の考えを付記しておきますと、「ロー利権」という用語そのものは、私も誤解を招く可能性があると思っていて、使わないように心がけています。誤解を招くというのは、日弁連が法科大学院制度を維持しようとしている理由について弁護士の利権や利益(要するに利権化したロースクール)を守るためではないか・・・と思われてしまうという点においてです。私はこの考え方は違うのではないかと思っていて、以前もそのことをブログにまとめました。
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51888267.html
日弁連が法科大学院を擁護しているのは、ロースクールが利権化しているからではなく、法曹養成の担い手としての地位につき政治的思想・思惑があるためであるというのが私の考えですが、その考え方は今も変わっていません。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
例のブログ騒動についてアイスホッケー商東戦