2012年02月27日

朝日新聞社説「日弁連会長選―利益団体でいいのか」

日弁連会長選―利益団体でいいのか(2012年2月26日 朝日新聞社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial20120226.html#Edit2
『ここまでの論戦を見て改めて感じるのは、弁護士がどんどん内向きになっていることだ。仕事がないのに数だけ増えている。競争が厳しく収入も減り気味で、あこがれの職業でなくなりつつある。会内のそんな声を反映し、両氏とも年2千人の司法試験合格者を1500人以下に減らすよう訴えている。はたして多くの国民は、これをどう聞くだろう。私たちも無理な増員を進める必要はないと唱えてきた。だが本当に弁護士は社会にあふれているのか。人々の法的ニーズは満たされているのか。 』



( ゚д゚)ポカーン


相変わらず、すごいこと書いてますね・・・。
司法試験の合格者数を減らすことは、どこまでも弁護士の既得権保護のためとしか朝日には映っていないのでしょう。
ここまで徹底していると、かえってすがすがしいような気もします。

でも、心配になってくるんですが、朝日はこの社説の路線でいつまで突っ走るつもりなんですかね。

『私たちも無理な増員を進める必要はないと唱えてきた。』


工エエェェ(´д`)ェェエエ工

いつ、そんなこと唱えてました?

2011年9月5日付社説「法律家の養成―腰据え本題に取り組め」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51892411.html
2011年6月14日付社説「司法改革10年―次代担う層どう育てる」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51869928.html
2010年11月24日付社説「修習生の給料―理念なき存続後が心配だ」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51790002.html
2010年9月12日付社説「司法試験―改革の原点踏まえ論議を」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51759378.html
2010年8月29日付社説「司法修習生―国民が納得できる支援を」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51754160.html
2009年9月12日付社説「法科大学院―法曹が連帯し質向上を」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51614585.html


どう見ても、まずは増員ありきで徹底していたはずだと思うんですが。

新聞に限らず、学者の先生も「既存の弁護士とは少し違った弁護士をつくるというのが法科大学院だったはず」とか「弁護士の新しい業務モデル,あるいは業務形態を探っていくことを目指し法律家を増やしたのだと推測」とか、今ごろになって微妙に説明を変え始めているのを目にするんですが、そういうのって

卑怯だな

って思います。

『本当に弁護士は社会にあふれているのか」』


そこまで言っちゃったら、もう朝日新聞に逃げ場はないですよ。
実際にあふれているんですから。
それが見えないのなら、単なる無知か、それとも意図的に見ないようにしようとしているかのいずれかでしょう。

以前にも書きましたが、ここまでハッキリと立場を明言してしまった以上は、朝日はもはや法科大学院と心中するしかありません。
これから法律家があふれていくことによる問題が、たくさん発生してきます。
そのときに、もはや朝日には発言の資格がなくなるんじゃないでしょうか。
自分たちの社説との整合性が正面から問われるときが必ずやって来るはずだと思います。
そのときに後悔するのは、彼らなんですけどね。

『人々の法的ニーズは満たされているのか。 』


ここで挙げられている具体例は、どれも適切でないと思います。
オリンパスの問題にしても、役員に法律家がいなかったから起きたわけではありませんよ。
原発の賠償が進まないのも、「法律家の数が足りないから」ではありません。
法的ニーズが満たされているかどうかを、すべて「数」の問題に帰着させようとするから、おかしなことになるんです。
いくら数を増やしたところで、これらの問題が解決するわけじゃない。

この社説も、一般の読者から見たら奇異に感じるんじゃないですか?
司法試験合格者を減らすと、原発の賠償問題やオリンパスの問題が解決しなくなるだなんて、誰だって思わないでしょう。
論理の飛躍があることぐらいは、普通の読者でも分かりそうなものです。
私は、マスコミもそろそろ従来の路線に固執することができなくなって、現実を前に転向を余儀なくされる日が来るように思います。マスコミが今まで何を言ってきたのか、きちんと検証する必要があると思います。


(追記)朝日社説について取り上げているブログ等
「朝日」が見ようとしない「改革」の現実(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)
http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-397.html
もはや朝日社説は、弁護士に何か怨みがあるに違いない。(ニガクリタケは偶に生えます)
http://blog.livedoor.jp/hypholomafasciculare/archives/3867863.html
毎度のこととはいえ・・・(PINE's page)
http://puni.at.webry.info/201202/article_10.html
「日弁連会長選−利益団体でいいのか」(武本夕香子弁護士)
http://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20120226230137
日弁連会長選と朝日新聞の社説(武本夕香子弁護士)
http://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20120229101646
朝日新聞が、何故、ここまで日弁連会長選挙にこだわるのか(猪野亨弁護士)
http://inotoru.dtiblog.com/blog-entry-475.html
なぜ弁護士は朝日新聞が嫌いか?(匠の弁護、村上匠弁護士)
http://murakamibengoshi.blog122.fc2.com/blog-entry-119.html
語尾に「全ては弁護士不足が原因と思っています」をつけると朝日新聞社説
http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-af6f.html(弁護士のため息、寺本ますみ弁護士)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51935242.html
またも朝日新聞の弁護士バッシング(坂野真一弁護士)
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2012/02/28.html
朝日新聞の弁護士バッシングについて〜勝手な想像(坂野真一弁護士)
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2012/03/02.html
朝日社説と中坊の亡霊(花水木法律事務所)
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-1d3c.html


(追記)あまりに腹が立ったので、さらに追加のエントリーをアップしました。
「朝日の社説のどこがおかしいのか」
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51935288.html

schulze at 00:02│Comments(11)司法制度 | 司法試験

この記事へのコメント

1. Posted by 新63th   2012年02月27日 00:21
少なくとも地方都市において、修習生はあぶれていても、弁護士が社会にあふれているという実感はありません。
何かデータはあるのでしょうか?
また法律家があふれることによる問題点、という話もよく聞きますが具体的危険を感じません。質の低下?書面提出期限を守らないのも、懲戒を受けているのも1000人以下時代の先生方ばかりですが、、、。
2. Posted by 新63th   2012年02月27日 01:06
補足ですが、私もこの社説は何の洞察も展望もない稚拙なものだと思っています。ただ、多数の国民の代弁とは言えるのではないかと感じています。
法曹人口の増大によって、ほとんどの国民はまだ何らのマイナスも被っていません。そしてその内のほとんどは今後も被らないでしょう。対して、法テラスの資力要件を満たす人や刑事被疑者などは増大による利益を享受していると思います。現時点で不利益を被っているのは、ある程度経験を積んだ既存法曹と、一部の若手弁護士でしょう。
このような現状で法曹人口増大反対ばかりを強調していれば、内向きで既得権益保護などと批判されても致し方ないのではないでしょうか。
ちなみに、私も現状での2000人合格は「多い」と感じています。しかし、何人にすべきかと問われれば、その答えはまだありません。
3. Posted by schulze   2012年02月27日 07:38
新63thさんの現状認識(弁護士が社会にあふれている実感はない、法律家があふれているとしても具体的危険を感じない、など)が弁護士の多数から共感を得られるかどうか私には疑問ですが、一方で合格者数の議論が所詮は弁護士の業界内の話であって、国民一般から見たら関心がないのは事実かもしれません。新63thさんがこの社説を「多数の国民の代弁」とお感じになられているのも、「日弁連が内向き」だとする点に関してでしょう。私もその点は否定しないですね。
4. Posted by schulze   2012年02月27日 07:50
もしこの社説が「法曹人口の問題は弁護士会内部の問題にすぎない。弁護士会で議論すべきことはもっと他にもあるから、会長選挙で人口問題ばかりがクローズアップされているのはおかしい」という趣旨なら、ひとつの意見としてもっともだなと感じるところがあります。
でも、この社説はそうじゃないんです。「人口問題なんて内向きだ」と反論のしにくいことを持ち出しておきながら、言ってることは減員反対なんですね。法曹人口さえ増えれば、世の中で起きてる問題が解決するかのように誘導(誤導と言っていいと思いますが)しているのです。そこが問題でおかしいところなんですが、このような誘導は国民からも見透かされているんじゃないかと私は思っているのです。だから私はこの社説が多数の国民を代弁しているなどとは全く思いません。
5. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月27日 11:04
新63期さんへ
具体的危険を感じるころには、多分手遅れになると思います。

個人的には、増員してもらって全然構いません。が、なぜ反対するか。以下の点が懸念される&顕在化しているからです。
そのときにどうするか、どうなるかというと
・イソ弁を安く、しかもこき使うことができる
(しかも労働者ではないので解雇も自由)
・不当な依頼者の要求でも、どうにかして受任に結びつけるために、無理して受ける、その結果、濫訴(「ええっ!これで訴えたりするの!?」)が出てくる。その兆候は既にあります。
・競争というが、現実には、宣伝上手だがギャランティの高い事務所に倒産の依頼が殺到している(お客は、ギャランティが他に比べて高いと思っていない)、しかもその事務所に頼むと同廃で済むところが管財になっちゃうので、管財費用も余計にかかってしまう。顧客に明白な不利益が生じている。個人顧客は弁護士選択の前提となる機会と情報が十分にない。
6. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月27日 11:04

次に「国民の意見の代弁」というけれど、大半の国民はまったく無関心です。そもそも意見すら持っていない。大手新聞のいう「世論」は、自分たちの意見でしかないことが多い。マスコミと接していると、記者個人の意見とすら激しく齟齬していることが多いのです。
ただし、質の低下云々の議論については、私も与しません。そもそも「弁護士の質ってなあに?」という定義がないから、議論ができないからです。若手は、昔の先生が嫌がってやらなかった被疑者段階の弁護だって一生懸命やってるのです。ドブさらい的な仕事だってやってるのです。お客さんと話をしていて「敷居が高いと思っていた」「こんなことで相談しづらかった」と言われ、相談を受けると「相談できてよかったです」と感謝されます。これまでの弁護士はどんなイメージ戦略してきててん、と言いたくなることが一杯あります。だから質が下がったなどと言われる筋合いはないと思って仕事しています。そこは自信もっていいと思います。
7. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月27日 11:15
新63期さん

「国民の意見」とマスコミが声高にいうときは、それが本当なのかただのマスコミ(や国)のプロパガンダなのかをよーく見極めないと、甚だ危険だと思いますですね。

schulzeさん
誤導と詭弁はこの手の社説に必ずといってよいほど隠されています。裁判員とかアホな制度(と私は思っている)が「改革」などと真顔で言われているぐらいですから。

要は、「弁護士だけ増やしても、ためにならんよ」ということを言っていくことなんでしょうね。
現状の司法が使い勝手が悪いままである原因はいろいろあって、それを「弁護士」だけに矮小化しているから、なんにも改善しないことを粘り強く言っていくしかないんですよね。
8. Posted by 弁護士自治への介入反対   2012年02月27日 13:53
この2年間を非難するということは、現会長の続投反対を宣言したということで、弁護士自治に介入するということになります。大いに問題があると思います。
9. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月27日 15:16
再投票の前なので、何らかの意図があるように思うんですけどね。
そういえば、東京のどっかの弁護士会では、山岸候補を推そう!というFAXが出まわり、単位会レベルでその旨の決議がされたとかされなかったとか。
10. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月27日 15:23
しかし、東京のような大きな単位会で、そのような政治的な匂いのする意見をまとめきれるなんて凄いです。個々人ごとに思想信条が違うはずなのに。
そのような政策ばかりがまかりとおるのなら、もう会務(県弁固有の会務を除き)はやんなくていいってことですよね。だって、旧主流派は「競争だ!仕事はお前らが自分で努力して見つけろ!日弁連の意見は東京大阪(の派閥)で勝手にそう決めたんだ!それに従え!!」ってことでしょ?
なら、そうするよってことで。笑。
11. Posted by 弁護士HARRIER   2012年11月28日 16:44
明日かそのあとぐらいの西日本新聞に、僕のコメントが出ますので、チェックしてくださると幸いです。

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