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2012年02月29日

朝日の社説のどこがおかしいのか

2月27日のエントリーからの続きです。

朝日新聞の社説(26日付)のどこがおかしいのかを、あらためて考え直してみたんですが、
司法試験の合格者数の話をしているのに、いつの間にか弁護士の仕事への姿勢の話(?)になってるんですよね。
ここが、とてつもなく意味不明なんです。
『本当に弁護士は社会にあふれているのか。人々の法的ニーズは満たされているのか。 (中略)事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける。そんな昔ながらの弁護士像はもはや通用しない。法科大学院のありようを見直したり、必要な法律や制度を整えたりするのはもちろんだが、同時に弁護士が意識を改め、仕事に向き合う姿勢を見直していかなければならない。』

これ、文章が論理的につながってないと思うんですね。
最初にニーズの話をしていて、弁護士の数が足りないんだ、と。社会に弁護士はあふれてなんかいないじゃないか、という話をしていたはずなのに、突然「昔ながらの弁護士像だと通用しない」だとか、「弁護士が意識を改め、仕事に向き合う姿勢を見直していかなければならない」という話になってるんです。
これは言ってることが滅茶苦茶だと思います。

もし朝日が「昔ながらの弁護士像はもはや通用しない」とか、「弁護士が意識を改め、仕事に向き合う姿勢を見直していかなければならない」と本気で考えるなら、合格者を増やすなんてことじゃなくて、端的に「既得権に胡坐をかいてるような弁護士にはペナルティを与えよ」とか「(原発の賠償請求などの)仕事をしない奴からは弁護士の免許を取り上げろ」とか、そういう主張になっていくのが自然ではないですかね。
それがなぜ、司法試験の合格者数を増やせという主張になるだろうのか・・・?
私にはまったく理解ができません。
法的ニーズが満たされていない現実がありながら、弁護士が「事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける」ことしかやってないのなら、ニーズを満たすことを義務化して強制させたほうが手っ取り早いと思うんですが。

数が足りないのだから増やせ、という話なら、単純に「ニーズがこんなにあるぞ」って話をすればいいだけなんですよ。
弁護士の意識だとか、仕事への姿勢の問題ではないはずです。

いやいや、本音はそうじゃないんだ、と。既得権に胡坐をかいてる弁護士がいるから、数を増やして競争させたいんだと。それでこそサービスが良くなっていくんだと。
朝日がそういう「競争原理」に基づいた増員論を言うのなら、それはそれで筋は通ると思います。
でも、数を増やして競争原理でサービスを向上させるというのは、(そんなことで本当に向上するのかよ!?という疑問はともかくとして)法的ニーズの有無はもはや関係ないことです。
政策的に弁護士を競争させたいという発想だから、「法的ニーズが満たされていないから弁護士の数を増やせ」という主張とは次元が異なるんですよ。
だったら、原発の賠償請求だとか、オリンパスの問題だとか、国境を越えたトラブルがどうのとか、朝日が挙げている具体例は関係ないってことになります。

もっと言えば、競争原理によって弁護士の仕事に向き合う姿勢を変えさせることは可能かもしれないけど、その結果として、弁護士が今まで以上に採算性を追求するようになるのは不可避でしょう。
そうしたら、それこそ誰が不採算の法的サービスを担うのか、という問題が起こります。
朝日が挙げている具体例など、むしろ解決が遠のくでしょう。

そのあたりがごっちゃになってる点が、この社説のおかしなところなんです。
これでは朝日は弁護士に何か怨みがあるに違いないって感想が出てくるのも当然です。
主張がもともと論理的でないから、単に弁護士を叩きたいがための文章になってるんですね。

でも、そんなことは、きっと一般読者にも分かることだし、実は当の朝日新聞も分かっているのかもしれません。
朝日の目的は、ただ一点でしょう。スポンサーである法科大学院の意向を忠実に代弁しているだけなんじゃないですか。


それにしても、今回の社説で一番腹が立ったのは、被災地の復興とか、原発の被害とか、そういうことに対して採算を度外視して、ボランティア同然に被災者のために奔走している弁護士が、世の中にはたくさんいるわけでしょう?
そういう人たちの存在を侮辱していると思うんですね。
そうでなくても、「事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける」だなんて、あたかも世の中の弁護士が皆、殿様商売で胡坐をかいてるかのようなレッテル貼りをして・・・。
ホント、人をバカにしてますよね。何様なんだ?って思います。

schulze at 00:01│Comments(10) 司法制度 | 司法試験

この記事へのコメント

1. Posted by ぴよ猫   2012年02月28日 23:20
>「事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける」

そもそも私のような一般人からするとこれの何がいけないのかわかりません。
それで回るんならそれでいいじゃありませんか。
むしろこれを否定しようとしたところからほころびが出たように思えます。

朝日新聞の論調は戦前の「日米開戦やむなし」といった類のプロパガンダにしか見えません。国民はそんなもの望んでないです。

このままいけば言うに事欠いてそのうち「一億総ざんげ」とか言いそうで嫌です。
2. Posted by schulze   2012年02月28日 23:53
ぴよ猫様
受け身の姿勢が良くないって言いたいんでしょうけど、「あいまに人権活動も手がけ」てるなら、十分に立派だと思いますがw 非難される理由がないですね。たとえばもしこれが医者だったら「病院で患者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、診察や手術するのが主な仕事」で、ほかを手がけるヒマなんてないと思いますが、それを非難する人はいないでしょう。
3. Posted by いなかロー弁   2012年02月29日 11:53
朝日の社説は、非常に漠然としているので読み取りづらいです。
しかし、ある程度解釈で補充すれば、「事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける。そんな昔ながらの弁護士像はもはや通用しない。」というのは、要するに、従来の街弁的なスタイルを捨て、一般企業にどんどん雇用され、あるいは役員になり、国際交渉の現場に立ち合い、契約書を巻き上げる・・・というような活動に多くの弁護士資格者が取り組んでいけば、毎年2000人や3000人の弁護士が供給されても問題ないはずだ、ということを言っているのではないかと思います。

私は地方の街弁なので、”そりゃ現実的じゃないでしょ、そういう道があるとしても地方は単に限られたパイの食い合い(下手をするとあえて紛争を目立たせる形での需要創出が続発する)だろう”と思います。
ただ、大企業の現場で「新弁護士像的弁護士」の需要があるのか否かは実感があまりないんですね。仮に需要があまりないとしても、「そういう人材」が出てくればまともな待遇(法科大学院に通う大きな負担とリスクを補えるようなもの)で雇う気があるかどうかも知りたいところです。
4. Posted by schulze   2012年02月29日 12:06
いなかロー弁様
ご意見ありがとうございます。たしかに増員の受け皿として企業に期待している、あるいは政策として企業内に弁護士を入れていくべきだ。それはそれで朝日がそういう意見なら理解できますが、どうして従来の街弁スタイルを否定しなければならないのでしょうか。新しい弁護士たちがどんどん企業に進出すれば良いだけの話です。街弁スタイルにも国民のニーズがあるのではないですか。街弁スタイルを捨てると、原発被害の補償が進むとでも言うのでしょうか。私には理解できません。
大企業の現場で「新弁護士像的弁護士」の需要が本当にあるのなら、朝日新聞がじゃじゃん社内弁護士を採用しているはずでしょう。朝日新聞の役員にも弁護士をどんどん採用するべきだと思いますが。
5. Posted by schulze   2012年02月29日 12:10
あと、朝日の社説は「非常に漠然としているので読み取りづらい」なんてことはなくて、彼らの立場はきわめて明確だと思いますよ。
6. Posted by 大阪の弁護士   2012年02月29日 13:28
 ブログ主さんのいわれるとおりだと思います。

 開業医が「診療所で患者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、処方箋を書くのが主な仕事で、合間に往診も手がける」状態であることには何も言わないくせにね。

 薬害おこした製薬会社の役員に医師はいなかったはずだし、国境を越えた伝染病を任せられる医師は極めて少ないし、医療過疎地で若手が仕事を始めたら、介護や老人医療をはじめとして医療にかかわる多くの問題は掘りおこされるはずですが?
 これらは医者を増やしても解消しないんですが。

 それとも朝日は、これらを全部、その辺の開業医にやれとでもいうんでしょうかね?
7. Posted by パインアメ   2012年02月29日 14:59
なぜ弁護士の話で急に医師が出てくるのか理解できません。
8. Posted by schulze   2012年02月29日 15:05
パインアメ様
医師だったら同じことは朝日新聞も言わないだろうに、ということですよ。医師も弁護士も似たような問題を抱えていながら、なぜ弁護士だけを批判するのか?同じ論理を医師にも投げかけられるのか?という指摘です。
9. Posted by 弁護士HARRIER   2012年02月29日 17:15
最近、自分の中では、アサヒさんは九スポより信ぴょう性低い新聞なので・・・
記者のレベルは高いのに、社説になるといきなりヘンになるのは何でなんでしょうね。
10. Posted by schulze   2012年02月29日 20:42
弁護士HARRIER先生
新聞社の中も決して一枚岩ではないと思いますよ。現場の記者の中には、社説のスタンスに疑問を感じている人も必ずいるはずかと。
大学が新聞社にとって無視できないスポンサーであることが一番だとは思いますが、社説書いてる人が大学教授と個人的に親しいとか、案外そういうところも影響しているんじゃないかと勝手に想像しています。

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