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2014年06月17日

「法科大学院 理念倒れ」(2014年6月17日付・日本経済新聞朝刊)

6月17日付・日本経済新聞朝刊2面に「法科大学院 理念倒れ」と題する記事が掲載されています。

「予備試験の人気過熱、志願者数が逆転」
「即戦力養成の機能果たせず」
「受験制限に異論」

といったサブ見出しも掲げられています。

記事の署名者は「山本有洋、伊藤大樹」となっています。


日経にしては、これまで以上に踏み込んだ内容になっています。
「司法修習生の就職難の影響で法曹志願者は減少傾向」など、これまでになかった言及も見られます。

気になった内容を一部引用します。

・「予備試験が優先。法科大学院は保険」。法曹を目指す東大2年の男子学生(22)は言いきる。修了に2〜3年かかる法科大学院はそのまま司法試験に合格したとしても法曹になれるのは20代半ば。数百万円の学費も割に合わないと感じる。「法科大学院は研究者志望のために残すぐらいでいい」と突き放す。

・優秀な人材を確保したい弁護士事務所も予備試験組に注目。ある大手弁護士事務所は今年12月、予備試験組限定の就職説明会を実施する。「法科大学院中退」「法学部卒」・・・。別の大手弁護士事務所のホームページの若手紹介欄では最近、こんな学歴が目立つ。キモは「法科大学院を修了していない」こと。予備試験経由で司法試験に合格した「優秀メンバー」だと、顧客らに暗に分かる仕掛けだ。予備試験の合格者の中には、「本番」の司法試験の合否判明前に弁護士事務所から内定が出るケースもある。

・大学院側からは「法科大学院は予備試験に落ちたら行く場所という印象だ」と悲鳴が上がる。

・政府は予備試験の受験制限を検討中だが、異論もあり先行きは不透明だ。ある法務省幹部は「制限しようとすれば駆け込みでさらに学生が殺到し、司法試験制度が瓦解するかもしれない。だが、もはや一度壊さないとどうにもならないのではないか。迷宮入りだ。」と打ち明ける。


細かい突っ込みどころ(東大2年で22歳とか:苦笑)は別として、法務省幹部の「もはや一度壊さないとどうにもならない」というのは、瓦解覚悟で予備試験受験制限を導入するということなのか、はたまた司法試験の受験資格を開放する(ロー制度の瓦解を覚悟する)という意味なのか、よく分かりません。

ただ、ここまで書かれてしまっては、もう法科大学院を選択する志願者は出てこないでしょうね。
なにせ「法科大学院を修了していないこと」がステータスなんですから。
予備試験ルートが本流で、法科大学院はカネと時間で受験資格を買うバイパスルートとなっている実態が、一般読者にもよく分かる記事になっていると思います。


ところで、本記事で一番注目されるのは、中央ロー・大貫裕之教授のコメントかもしれません。
「現状(予備試験への人気)が放置されるなら撤退も辞さない」


中央ロー「撤退も辞さない!(キリッ)」


ダチョウ倶楽部「どうぞどうぞ!」




軽々しく撤退を口にしていますが、中央大の法学部が予備試験教育に力を入れ、合格実績の広報に注力し始めている動きもある中で、どこまで本気なのかという感もあります。
いずれにせよ、中央は早急に経営方針を決断する必要に迫られています。今年の入試は、ほとんど選抜として機能していませんからね。このままではじり貧の運命が待っていることでしょう。
以前にも書いたとおり、私は中央が「定評ある法科大学院」同士の内ゲバの震源地となると予想します。


<参考>
最大手ローの「撤退」発言に見る法科大学院の「世間知らず」さ(弁護士法人 向原・川上総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ)
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-11879472225.html

schulze at 12:30│Comments(6) 司法試験 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by ぷるぷる   2014年06月17日 13:30
大学2年で22歳というのは本人にとっては真剣だと思いますよ。大学受験で2年遅れている人がローに進学した場合、年齢的に後戻りが難しいですから。

予備試験に4年生までに受かれば、遅れを取り戻せますし、いわゆる「新卒カード」もキープ出来るので、他業界への就職も容易です。むしろ、大学受験で遅れている人ほど予備試験にこだわるでしょう。

ところで、予備試験の受験資格について、例えば24歳以上に限るという年齢制限を導入した場合、現役で大学に入学した人は2回留年しない限り学部在学中に予備試験を受験できなくなるのに対し、2浪した人は学部4年で受験できることになります。

学部の飛び級を考慮して年齢制限を23歳以上に設定した場合、現役入学者は学部在学中の予備試験受験が不可なのに対し、1浪した人は4年生から、2浪した人は3年生から受験できることになり、同じ学部生であるにもかかわらず、予備試験を受験可能な学生と受験不可能な学生に分かれることになります。浪人経験者と比べ大学受験で努力したであろう現役入学者を却って不利に扱うことになるという点でも年齢制限はいびつな主張なんでしょうね。
2. Posted by 弁護士HARRIER   2014年06月17日 14:51
憲法違反の疑いのある行為を求める提言書の次は「撤退するぞ」のゴネゴネ攻撃(;´Д`)
もう処置なしというか、利権を守りたい人たちはここまで恥も外聞もない行動ができるのだなと思います。もはや断末魔ですね。
やはり、法曹養成の資格はないと断ぜざるを得ません。
3. Posted by 黒猫   2014年06月17日 21:45
私も最初に記事を読んだときは「アホか」と思いましたが,よく考えてみると中央大学は本気で法科大学院からの撤退を考えているのではないか,という気もします。
少なくとも,今後はこれを奇貨として「中央大学は法科大学院から撤退するぞ」という噂を広めて入学志望者を激減させ,中央ローを本当に撤退するしかない状況に追い込むのが最善ではないでしょうか。
4. Posted by はげちゃびん   2014年06月17日 22:03
この発言がどれほど本気なのか真意は分かりませんが(おそらくブラフだと思いますが)、いずれにせよ推進室が予備試験受験制限に関して否定的な見解をはっきり打ち出したことは法科大学院にとって相当な衝撃だったようで、ここ数日の法科大学院側の狼狽ぶりは、不謹慎ながら見ていてメシウマですね。
5. Posted by ぱぱ   2014年06月17日 22:17
まぁビックローの中の一教授の話でしかありませんからね。
慶応も予備試験を廃止せよなど言ってますが、慶応中央あたりは予備試験対策もちゃんとやってるので、本音と建前を上手く使い分けて、どっちに転んでもちゃんとやっていけるようにするんでしょう。
>>予備試験制度は、法科大学院を中核とした新たな法曹養成制度の理念に反する制度であるから、制限的に運用すべきであるし、予備試験に代替する仕組みが創設できるならば、可及的速やかに廃止すべきであると考える。
http://www.ls.keio.ac.jp/news/2013/post-7.html
6. Posted by 南風   2014年06月18日 01:31
地方単位会に所属する身分からすると、適正配置論(もともと無理でしたが)が維持できなくなった中で、予備試験を制限することに地方法曹には何のメリットもありません。
今回の提言は、中央の一部ローが暴走していることを如実に示すと思います。このまま、中央のロー維持派と地方の元ロー維持派で内部分裂して、受験資格撤廃になってほしいですね。

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