2016年02月12日

予備試験合格者はロー修了生に比べ司法修習の辞退率が明らかに高い傾向

当ブログでは、これまでも何度か司法試験合格者数と司法修習生の採用者数を比較し、司法修習の辞退率のデータを算出していますが、あらためて気付いた点があります。


69期の司法修習生については、まだ採用者数しか判明していないのですが、
66期から68期までは、司法修習生採用者の内訳のデータが公表されています。

(66期)
採用者数2035人
うち司法試験受験資格が予備試験合格による者40人(2.0%)、法科大学院修了1995人(98.0%)
【予備試験合格者の年齢分布】24歳以下=20人、25〜29歳=2人、30〜34歳=10人、35〜39歳=4人、40歳以上=4人、平均29.1歳
(67期)
採用者数1969人
うち司法試験受験資格が予備試験合格による者112人(5.7%)、法科大学院修了1857人(94.3%)
【予備試験合格者の年齢分布】24歳以下=61人、25〜29歳=11人、30〜34歳=17人、35〜39歳=15人、40歳以上=8人、平均28.3歳
(68期)
採用者数1761人
うち司法試験受験資格が予備試験合格による者146人(8.3%)、法科大学院修了1614人(91.7%)、旧司法試験合格1人(0.1%)
【予備試験合格者の年齢分布】24歳以下=88人、25〜29歳=20人、30〜34歳=10人、35〜39歳=18人、40歳以上=10人、平均27.4歳


司法試験の合格者の内訳は、すでに公表されていますので、
これをもとに、法科大学院修了生と予備試験合格者の司法修習生採用者数を比較してみますと、明らかに差があることが判明しました。


数字は左から司法試験合格者数→修習生採用者数
(66期)
全体 2102→2035 辞退率3.2%
ロー修了生 2044→1995 辞退率2.4%
予備試験合格者 58→40 辞退率31.0%
(67期)
全体 2049→1969 辞退率3.9%
ロー修了生 1929→1857 辞退率3.7%
予備試験合格者 120→112 辞退率6.7%
(68期)
全体 1810→1761 辞退率2.7%
ロー修了生 1647→1614 辞退率2.0%
予備試験合格者 163→146 辞退率10.4%
※注:68期の採用者には旧司法試験合格者が1名います。


予備試験合格者の辞退率が高いのは、社会人の比率が高いなど様々な要因が考えられますが、無給修習であることが何より一番の原因であるとしか、私には考えられません。
旧司法試験合格者にも、まだ修習に行かれていない方がいるはずですが、貸与制の下では3年間で1名しか採用されていないのも、同じ原因であると思われます。
司法修習の給費制復活は、喫緊の課題であると言えるでしょう。

69期のデータも気になるところです。
内訳について、速やかに開示されることを望みます。


<再掲>
新修習(新司法試験合格者、新60期〜69期)の採用者数の推移
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52147134.html
(左から、「修習期に該当する年度の(新)司法試験最終合格者数」→「当該修習期の採用人数」)
60期 1009→*991 辞退率1.8%
61期 1851→1812 辞退率2.1%
62期 2065→2043 辞退率1.1%
63期 2043→2021 辞退率1.1%
64期 2074→2022 辞退率2.5% ←当初貸与制が開始とされていた期
65期 2063→2001 辞退率3.0% ←実際に貸与制がスタートした期
66期 2102→2035 辞退率3.2%
67期 2049→1969 辞退率3.9%
68期 1810→1761 辞退率2.7%
69期 1850→1787 辞退率3.4%
(注)辞退率とは、「修習期に該当する年度の(新)司法試験最終合格者数」と「当該修習期の採用人数」差から機械的に算出したものです。
実際の採用にあたっては、過去の司法試験合格者で修習開始を遅らせた人たちが合流することになりますので、その年度の司法試験合格者の辞退率を表わしたものではありません。

<追記:参考>
旧修習(旧司法試験合格者、55期〜旧65期)の採用者数の推移
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51984036.html
(左から、「修習期に該当する年度の旧司法試験最終合格者数」→「当該修習期の採用人数」)
55期 994→992
56期 990→1007
57期 1183→1183
58期 1170→1188
59期 1483→1499
旧60期 1464→1455
旧61期 549→568
旧62期 248→261
旧63期 144→150
旧64期 92→102
旧65期 65(59+6)→73
(注)旧修習はすべて給費制です。


<参考>
修習期別に見た該当年度の司法試験合格者数
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52131449.html
修習期------旧 ----新 ----計
第56期----*990--****--*990
第57期----1183--****--1183
第58期----1170--****--1170
第59期----1483--****--1483
第60期----1464--1009--2473
第61期----*549--1851--2400
第62期----*248--2065--2313
第63期----*144--2043--2187
第64期----**92--2074--2166
第65期----**65--2063--2128
第66期----****--2102--2102
第67期----****--2049--2049
第68期----****--1810--1810
第69期----****--1850--1850
(注:修習期に相当する年度の司法試験合格者数であって、その修習期の人数ではありません。)

schulze at 00:01│Comments(14)司法修習 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by 予備夫   2016年02月11日 23:02
仰る通りかと思います。
真っ当な感覚を持つ社会人であれば、現在の職を辞して無給の修習に行く選択をすることは非常に難しい、と考えるように思います。
結果、修習に行くのが、家が裕福で生活の心配のない学生さんばかりになってしまえば、多様な法曹という理念に悖るように思います。
給付制の復活を願うばかりです。
2. Posted by ヒロ   2016年02月12日 02:06
>無給修習であることが何より一番の原因であるとしか、私には考えられません。

本当にそうでしょうか?

私は、弁護士の深刻な就職難や給与待遇の低下、独立開業の困難さ等といった、弁護士資格の経済的価値の暴落が一番の根本的な原因だと思います。

仮に、弁護士という職業が売り手市場で、その経済的価値が高ければ、一年間無給であっても職を辞して修習に行くと思います。

万が一、給費制が復活したとしても、弁護士が約38000人にまで急増した現在、職を辞してまで弁護士業界に足を踏み入れたいと思う社会人(特に既婚者)は多くはいませんよ。

今後も、4万人、5万人、場合によっては6万人まで急増するわけでしょ?

どう考えても、ハイリスク・ローリターンで、多くの人は生業として成り立たたなくなると思いますよ。

あらゆる原因を、「給費制廃止」にするのは如何なものかと思いますよ。
3. Posted by schulze   2016年02月12日 07:21
もちろん修習に行かない(行けない)理由は人それぞれですから、何か一つだけの理由であるということはありえません。私も無給修習であること「だけ」が理由であるとは言っていません。ただ、彼らは予備試験にチャレンジまでして司法試験に最終合格をした人たちだということを考える必要があると思います。業界の厳しさ、資格の価値の暴落、それらを含めて司法試験をやってきた人たちなのです。そんな彼らも、最後の最後で修習を断念している。それは修習の無給が何よりも大きな要因であることは間違いないと思います。
4. Posted by つれづれ   2016年02月12日 09:15
schulzeさんの主張は、法科大学院など作らず旧制度のまま定員微増で対応すべきだった、ということだと思います

私もそうだと思います

しかし、大増員してしまっている現況で、法科大学院もそのまま、定員も過剰だと思われる人数のまま、給費制を復活させるのはいかがかな、と思います
5. Posted by schulze   2016年02月12日 11:15
つれづれ様
私の立場や意見にご配慮をいただき、ありがとうございます。現状のまま法科大学院も残し司法試験合格者も減員しない状態であることを前提にすれば、給費制復活が困難であることは事実であるとは思います。それは政治的な意味においてであり、たとえば予算の確保が困難であるとか、そういう種類の話だと理解しています。給費制実現のためには、それだけを叫んでいればいいというものではなく、法曹養成制度全体を俯瞰したうえでパッケージとして検討されるべきものだと理解しています。
6. Posted by schulze   2016年02月12日 11:21
本記事において私が念頭に置いていたことは、末期の旧司法試験ですね。特に新試験が始まったあと、60期台の旧修習をみてみますと、司法試験の合格者数よりも修習生採用者数のほうが多くなっているのです。これは言うまでもなく給費制廃止による駆け込みがあったことを示すわけですが、一方で貸与制になった後は旧司法試験合格者の司法修習生採用は3年間で1名しかいないのです。ここで重要なことは、貸与制の下で採用者がいないことではなく、給費制の下で駆け込みがあったという事実です。つまり、給費制であれば修習に行くという判断をした人たちが、それなりの数で存在したということになります。
7. Posted by 芳賀   2016年02月12日 11:38
合格者に、国家上級試験同時合格者が多いのかもしれない
ですね。
そうだと、底が抜けた法曹界には行かないでせう。修習が
有償でも厳しいところ、無償ですからなおさらですよね。

なお、釧路市で開業だと弁護士会費、国民年金と国保だけ
で年間200万楽々オーバーで仕事は少ないとのことです。
8. Posted by つれづれ   2016年02月12日 18:55
たぶん、一度増やして多すぎた、ということで、公認会計士とか弁理士とかは合格者減らしてますけど、弁護士でそれができないのは法科大学院の存在なんですかね

過ちては改むるに憚ることなかれ、ということで戻せば良いと思うんですが、法科大学院で美味しく食ってる人が相当数いるから、なかなかそれも、なんでしょうね

法科大学院ができたことで、法学〜法社会学とか法哲学とか?〜、法解釈学もそうかもしれませんが、そちらの方もダメになってるんじゃないですかね?

詳しくないんであれですが、端から見てると、全部悪い方向になってるんじゃないかな?、という気はします
9. Posted by なな   2016年02月12日 21:09
ロー既習1年で予備試験に合格→翌年司法試験合格する方の中には一定数、修習へは行かずロースクールに卒業するまで残る人がいます。
そのようなことを行なった知り合いの主な理由として、リサーチペーパーを書くためや、留学、変わり種としてはダブルライセンスをするために修習辞退し、翌年に繰り越しています。
大抵そういう方は司法試験直後に四大に内定が決まっていたりします。
ただでさえ人数が少ない予備試験合格者のさらに10%ですから、そのような方が結構な割合を占めていると思いますよ。
10. Posted by L   2016年02月12日 21:19
「新宿事務所」司法書士を懲戒請求 非弁行為の疑い
http://www.asahi.com/articles/ASJ2B4K17J2BULZU006.html

合格者を減らすのもいいですが、非弁行為をきちんと取り締まる仕組みを作るべきです。犯罪なんですから。
11. Posted by schulze   2016年02月12日 22:41
ななさんよりご紹介いただいたような事例も、たしかにあるでしょう。ただ、そういう理由で修習を見送っているとしたら、いずれ修習に行かなければならないことになります。そうすると、長いスパンで見れば平準化していくはずです。まだ3年分しか統計がありませんからハッキリしないですが、今後のデータで辞退率が低下していくようであれば「そのような方が結構な割合を占めている」と評価できるのだろうと思います。
12. Posted by 感じたこと   2016年02月13日 11:06
 この数字はローには社会人はほとんど進学してないことを別の角度からいってるんでしょうね。予備経由で司法試験に受かっても、仕事と折り合いがつかず、その年の修習を辞退するというのはよくある話でしょう。ロー生は学生ですからそういう事情はないです。
 あと給費制に関しては労働者でないものにそもそも給費すべきなのかって根本的な問題があります。裁判員制度とか法テラスとか金のかかる司法制度を導入した以上、削れるところは削るってことなんでしょうね。
 ローの補助金は、文科省からでているものですから、直接には関係ない気もします。
13. Posted by schulze   2016年02月13日 12:01
ローの補助金が文科省管轄で修習に関係ないというのは、そのとおりではあるのですが、事実上バーターの関係で法科大学院が導入された経緯があるわけです。これは政治的な意味ですが、給費制の復活は法科大学院が存続する以上は難しいというのが現実です。
14. Posted by schulze   2016年02月13日 18:26
参考のため、旧修習(55期〜旧65期)での採用者数の推移を追記しました。

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