2016年12月14日

【二回試験結果雑感】69期はレベルが低かったことになってしまうのか?

69期の二回試験結果(不合格者54人、不合格率3%弱)は、大変残念な結果であったと思います。
貸与制移行後、二回試験では不合格者を出さないよう抑制されている感もあり、政策的な判断もあるように思えたため、この結果は正直なところ予想外でありました。

もちろん、不合格者数や不合格率だけで見れば今年よりも結果の悪かった期は以前にもあるわけですから、ことさら69期の皆さんの出来が悪いということでは、必ずしもないとは思います。
二回試験の出題自体も、年度によって方式や内容も異なりますし、数字だけをもってして比較は不可能です。
安易な結論を導くことは戒めなければならないことも自覚しています。

ただ、貸与制の下で経済的に苦しい状況にある修習生が、不合格によってさらに次の二回試験まで1年を過ごさなければならないことには同情を禁じえず、不合格者が一人でも少ないほうが望ましいことは言うまでもありません。
今回の結果は、研修所にとってみても苦渋の決断だったかもしれませんが、ここ4〜5年ほどは不合格者は極力出さないことが研修所の方針であったことは明らかと思われますから、何らかの方針変更があったのかどうか。
なぜこのような結果になったのか、分析してみる必要はあるように思います。


もし、司法修習生のレベルや質という点で、何かしらの問題があるのだとすれば、私は次の二つの点を懸念します。

1.研修所の起案は、合格者の増員や修習期間の短縮に合わせて、起案方式がフル起案から部分起案になったり、主張整理起案がなくなったりと、内容が削減され簡易になってきている。
(参考:JILA岡口祭りでの岡口さんの講演より「研修所では要件事実の教育から事実認定教育へと移行している。法曹養成の過程で要件事実を学ぶ場がなくなりつつある。研修所で要件事実教育を行わなくなった背景には、合格者数が増えたため白表紙記録の作成や個別の添削に労力がかかりすぎることがある。」
にもかかわらず、一定数の不合格者が出てしまうことは、司法修習生の質の低下は相当に深刻ではないのか。すなわち、研修所としてはなるべく合格させたいと思って最低ラインを下げているのに、それすらクリアできないという事態になっているのではないか。

2.同時に、法曹養成の中核として位置付けられている法科大学院の教育能力についても、根本的な疑問が向けられるべきではないか。


ここで、69期の皆さんが、どういう期であったかを振り返ってみますと、
平成27年(2015年)の司法試験に合格した方々が中心であるということになります。
(もちろん、修習へ行く時期が合格年次とずれている方も一定数いらっしゃいます。)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52166230.html

平成27年の司法試験では、次のような特徴がありました。
ー験者数は、平成26年の司法試験からほとんど変化がなかった(H26=8015人→H27=8016人)。合格者数・対受験者合格率はそれぞれ微増(H26=1810人、22.6%→H27=1850人、23.1%)。
△燭世掘◆孱鞠3回まで」の受験回数制限が、この年から「5年5回までに」緩和された最初の年である。
よって、受験者の母集団を平成26年司法試験と比較すると、受験者数に変化はないのに、受験回数が多い者の割合が増えた。すなわち滞留者の占める割合が増えた、ということになる。
ぢ變閏圓多い母集団層のほうが、当然レベルも低くなるのではないか?となれば、同じ合格率であっても、合格者のレベルも平成26年(68期相当)よりも下がっている可能性がある?
ッ仕式の科目数が3科目に削減されたのも、この年からである。3科目以外は負担が減ったとも言える?

・・・もちろん、これらはあくまでも事情でしかありませんが、背景として頭の片隅には入れておくべきではないかと思います。

ちなみに、これは今回の二回試験結果とは何ら関係ないとは思いますが、
平成27年の司法試験は、例の「ブルー卿事件」が起きた年でもありました。
いろいろな意味で、波乱があった年ではありました。


【追記】
繰り返しにはなりますが、今回の結果だけで、特定の期のレベルがどうの、と断じることができるわけがありません。
もしかしたら、今回の二回試験結果も、特定の科目で難しい出題があって、不合格者が増えただけかもしれません。
本記事の趣旨も、69期の皆さんを貶めようというものではありませんので、その点は誤解なきようお願いします。

私が懸念していることは、司法試験の受験者(母集団)がこれから減る一方だという事実です。
法科大学院が人材を排出する力は、衰えていく一方なのです。
なぜなら、志願者が法科大学院へ入学しないからです。
そのことが、司法試験の合格者にどのような影響を与えるのかは、注視しなければならないと思います。

今年(平成28年)の司法試験のように、合格率を維持し合格者数を減少したとしても、受験者全体の母集団が劣化しているのでは、合格者も質が下がるのは当然のことです。
法科大学院の修了者は、人数が減っているだけでなく、法科大学院入試の段階でほぼ全入で競争がない実態を考えれば、司法試験合格率を維持したとしても、質についての懸念が出てくるであろうと思います。

二回試験の合否は、政策的な判断によるところが大きいように思われる一方で、
修習生の変化について、一番肌で感じているのは、他ならぬ司法研修所であると思います。
来年以降の結果がどうなっていくは、引き続き重要な指標として注目していきたいと思います。

schulze at 00:00│Comments(2)司法修習 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by 一条   2016年12月16日 00:15
本当にお久しぶりです。69期司法修習生だった一条です。私は無事合格していました。

さて、今回の二回試験ですが、集合の起案に比べて難易度は下げてきていました。
一部の科目はかなり難易度が下がったものもあります。
この姿勢からして、当局は二回試験は簡単にして不合格者はなるべく出さないことにしているのだと思いました。

私の受けた感覚からすると、この問題を解けないのであれば、不合格は致し方ないのかたと。もう一年頑張ってもらうのはある意味当然なのかなと。
不合格者への同情といったものはあまり湧いてきません。どうしてこんな簡単なレベルの問題が解けなかったのか、不思議です。
上から目線で辛辣でごめんなさい。でも私は思うのです。
2. Posted by schulze   2016年12月16日 22:06
一条様
二回試験合格、おめでとうございました。
ご報告いただき、とても嬉しかったです。同時にホッとしました。ここまでの一条様が辿られた道のりを考えますと感慨深いものと思いますが、これからが本当のスタートです。実務でのご活躍をお祈りしております。予備試験合格組の人は、なんだかんだで最終的には自力で道を切り開けるはずです。頑張ってください。

今年の二回試験は、特定科目(民弁?)での不合格者が多かったようですね。今年からことさら基準を厳しくしたというわけではないでしょうが、小問の数が減った(?)とか、微妙な変更もあったと耳にしています。
不合格だった方に対しては、今は貸与制ですので、この環境下でもう1年待たなければならないのは、たしかに気の毒ではあると思うのです。その意味で同情しています。「あんな簡単な試験に落ちるのか」という意味では・・・うむむ。受かってしまえば何でも言えますよ(笑)。

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