週刊ダイヤモンド2017年2月25日号「弁護士・裁判官・検察官 司法エリートの没落」緑のカールおじさん?

2017年02月19日

「法科大学院入学者のうち司法試験出願までに至る割合」の推移【訂正あり】

平成29年司法試験出願者数の速報値が6,716人であったことは、すでにお伝えしましたが、
ひとつ気になるのは、平成29年3月末で法科大学院修了見込みとなっている出願者たちの人数が1,692人しかいません。

平成29年3月末での修了者とは、
標準年限で考えますと、平成27年4月に既修コースへ入学した人(1,431人)と平成26年4月に未修コースへ入学した人(811人)の合計2,242人を主な母体とするものです。

もちろん、標準年限で卒業できずに留年する人も多数いますが、ここでは標準年限を基に
「法科大学院入学者のうち司法試験出願までに至る割合」
を機械的(仮想的)に計算しますと、平成29年司法試験出願者では75.5%ということになります。


このような考え方で、過去の統計をとってみました。

※数字は左から
司法試験出願者のうち当該年の3月末にロー修了見込みの人数
母数となる法科大学院入学者数(=2年前の既修入学者数+3年前の未修入学者数)
出願率%
をそれぞれ示す。

H18年 2,137人/2,350人(=H16既2,350人)/90.9%
H19年 4,325人/5,480人(=H17既2,063人+H16未3,417人)/78.9%
H20年 4,714人/5,660人(=H18既2,179人+H17未3,481人)/83.3%
H21年 4,778人/5,774人(=H19既2,169人+H18未3,605人)/82.8%
H22年 4,589人/5,610人(=H20既2,066人+H19未3,544人)/81.8%
H23年 4,309人/5,352人(=H21既2,021人+H20未3,331人)/80.5%
H24年 3,692人/4,746人(=H22既1,923人+H21未2,823人)/77.8%
H25年 3,176人/4,115人(=H23既1,916人+H22未2,199人)/77.2%
H26年 2,687人/3,529人(=H24既1,825人+H23未1,704人)/76.1%
H27年 2,269人/2,942人(=H25既1,617人+H24未1,325人)/77.1%
H28年 1,968人/2,542人(=H26既1,461人+H25未1,081人)/77.4%
H29年 1,692人/2,242人(=H27既1,431人+H26未811人)/75.5%


この表から読み取れることは、以下の通りです。

1.ロー修了見込みの人数の激減
法科大学院への入学者が減少しているのですから当然とはいえ、ロー修了者も激減しています。
ピークである平成21年修了見込み者は4,778人でしたから、平成29年は64.6%減。
おおよそ三分の一に減ったことになります。
このことは、ロースクールの人材供給力が低下していることを如実に示しています。

2.ロー入学者が司法試験出願までに至る率も低下している
年によって変動はありますが、全体的に見れば、ロー入学者が司法試験出願に至る率は低下しているようです。
このことは、標準年限で卒業できず留年する人が増えている可能性があるほか、ローを修了しても司法試験を受験しない人が増えている可能性を示すものだと思います。
司法試験の受験を敬遠するロー生が増えているのだとすれば、これもロースクールの法曹への人材供給力が低下しているということになりそうです。


3.来年(平成30年)はどうなる?
H28年の既修入学者1,222人+H27年の未修入学者770人=1,992人。
ロー入学者の司法試験出願率を今年並みの「75%」と仮定しますと、
H30年のロー修了見込み司法試験出願者は「1,494人」となります。



【追記と訂正】
コメント欄にて、ロー修了見込み者が減少しているのは予備試験合格が理由ではないか?というご指摘がございました。
まったくその通りであると思い直し、上記の表に予備試験合格者分を加筆してみることにしました。

ここでは「法科大学院課程修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者」を追加したほか、直近の年度で、予備試験合格(および予備試験合格資格に基づく司法試験合格)を理由に法科大学院を中退した人数を加えています。

中退者の取り扱いは、厳密にいうと不適切で、中退した際に在籍している法科大学院の年次ごとに場合分けをしないといけないのですが、面倒であったのと、おおよその傾向が掴めれば良いとの解釈で、直近の年度の中退者をすべて含めています。

そうしましたところ、「ロー入学者に対する司法試験の出願率」は、むしろ上昇しているということが分かりました。
そのため、「ロー修了者が司法試験受験を敬遠している」という推論は必ずしも適切ではないことになります。
この点はお詫びして撤回したいと思います。申し訳ございませんでした。


H24年
 檻院.蹇悉の四縦3,692人
 檻押)_並膤惘_歡修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者6人
 檻魁H23年度に予備試験合格を理由にロー中退3人
,旅膩 3,701人
4,746人(=H22既1,923人+H21未2,823人)
78.0%

H25年
 檻院.蹇悉の四縦3,176人
 檻押)_並膤惘_歡修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者57人
 檻魁H24年度に予備試験合格を理由にロー中退9人
 檻粥H24年度に司法試験合格(予備試験合格資格で受験)を理由にロー中退14人
,旅膩 3,256人
4,115人(=H23既1,916人+H22未2,199人)
79.1%

H26年
 檻院.蹇悉の四縦2,687人
 檻押)_並膤惘_歡修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者143人
 檻魁H25年度に予備試験合格を理由にロー中退9人
 檻粥H25年度に司法試験合格(予備試験合格資格で受験)を理由にロー中退27人
,旅膩 2,866人
3,529人(=H24既1,825人+H23未1,704人)
81.2%

H27年
 檻院.蹇悉の四縦2,269人
 檻押)_並膤惘_歡修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者155人
 檻魁H26年度に予備試験合格を理由にロー中退13人
 檻粥H26年度に司法試験合格(予備試験合格資格で受験)を理由にロー中退57人
,旅膩 2,494人
2,942人(=H25既1,617人+H24未1,325人)
84.8%

H28年
 檻院.蹇悉の四縦1,968人
 檻押)_並膤惘_歡修了見込者で,同課程修了の資格に基づいて受験するが,同課程を修了できなかったときは司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者120人
 檻魁H26年度に予備試験合格を理由にロー中退21人
 檻粥H26年度に司法試験合格(予備試験合格資格で受験)を理由にロー中退49人
,旅膩 2,158人
2,542人(=H26既1,461人+H25未1,081人)
84.9%

schulze at 20:31│Comments(10) 司法試験 | 司法制度

この記事へのコメント

1. Posted by 弁護士Y   2017年02月19日 22:39
いつも興味深く拝見しております。
こうして見ますと、ロー入学者、ロー卒業見込者は本当に激減してますね。来年以降も受験予定者は減りそうです。

あと、今年、受験予定者が1000人減少しましたが、これはどういう原因なのでしょうか。先生が仰るようにロー卒業見込者が減っているのもありますし、一度受けるが落ちて別の道に転向という方が増え、受験2回目以降の受験者が減っているような感じもしております。
2. Posted by 受験生しろくま   2017年02月19日 22:55
私見ですが、予備試験合格者の増加に伴って、ロースクールに進んでも2年次に予備試験に合格して退学したり、3年次に合格して予備試験合格の資格で司法試験に出願する者が増えているからではないでしょうか。

法科大学院在学中に予備試験に合格している者の動向の推移まで含めないと、おっしゃるような推論には疑問が残るかと思います。
3. Posted by 近江直樹   2017年02月19日 23:09
卒業できず退学も増えているかと思います。1年(や2年)で留年するとけっこう退学するようです。最近は、入試がザルなので、留年も増えているかと思います。
退学しない留年は、前の年の留年が入ってくるので、あまり関係ないかと思います。
4. Posted by schulze   2017年02月19日 23:43
受験生しろくま様
まったくご指摘の通りかと思い直しまして、予備試験合格者の動向も含めて計算してみたところ、私の推論が誤っていたことが判明しました。本文は追記の上、修正いたしました。私の推論は、お詫びして撤回いたします。申し訳ございませんでした。
5. Posted by 受験生しろくま   2017年02月20日 00:59
schuluze様
迅速な対応に感服しました。
これは完全に推測ですが、出願率の増加には三振制度廃止が影響しているのではないでしょうか。
法科大学院は後がないと退路を絶って覚悟しないと入れないものになってしまったのかもしれないですね。
6. Posted by 受験生しろくま   2017年02月20日 01:01
schulze様 お名前を間違い大変失礼しました。
8. Posted by schulze   2017年02月20日 08:16
引き続きコメントいただき、ありがとうございます。実は上記の修正、まだ不十分な点があり、それは旧司法試験合格による不出願を考慮に入れていないところです。これはどの年次のロー入学者が旧試抜けしたのかの見極めができないので、うまく統計に取り込むことができませんでした。
それはさておき、たしかに「5年3回まで」の三振制の下で、出願を回避した人はいたかもしれません。ただ、当時受け控えをする人たちは、とりあえず出願はしておいて受験するかどうかは当日までに判断するという人たちが多かったように思います。何か決定的な要因を挙げるのは難しいように思いますが、私が注目するのは「未修入学者が激減したこと」です。既修の人たちのほうが司法試験への熱意はあるように感じるからです。
9. Posted by 芳賀   2017年02月20日 12:41
入学者に対するロー修了者の割合が減少しているのではないで
せうか?
中堅以下の私大ローの話ですか、入学試験では、学費全免等で
釣っておいて、いざ入学すると、進級要件が厳しくて中退者が
続出聞きます。
進級要件が、必修科目を2科目落とすか、良以上が8割以上の
ローで顕著なやうです。
また、ローに入るも法曹に適性がないと判断して退学すると聞き
ます。
10. Posted by トップ10ローぐらいは悪くないのでは   2017年02月20日 16:21
予備に移るのはむしろ上位行に多いわけで、ローから司法試験を受けないというのもいろいろかと思います。

トップ10ぐらいをみれば、ロー制度はそこそこうまく機能しているのではないでしょうか。入学者はだいたい法曹になれるし、旧試時代にはまずない、地頭はいいけど、あの勉強には耐えないタイプの人材が法曹いなりやすくなっていると思います(その分、新規参入増でしんどくなることは否定できませんが)。またたとえば東大では、受験向けではないけど、有益な講義も多いと思います(受験者がすべて予備校仕立てのおつむというのも相当くらくらするものがあるのでは)。
しかもローにはいるお金や時間のない人は(予備だけ、あるいはローで様子見しながら)予備を選ぶ道もある。
要するに、予備だけローだけというよりは、トップ10くらい+予備のほうが制度としていいように思えます。

それより下のローに入学してもあまりいい教育や環境が得られず、入学者の人生を無駄にしがち、という評価はまあそうかなと思いますが、それは学生のほうもよくわかっていて、だからこそ、いまの志願者激減なのではないかと思います(トップ10だって減ってはいますが、人材レベルがそれほど悪化していないなら、情報がいきわたり、無駄な受験をする人がへったとも考えられます)。
11. Posted by schulze   2017年02月21日 13:49
コメントされる際には、捨てハンドルではなく、他人と識別可能な何らかのハンドルネームを名乗られますよう、お願いいたします。

ロー制度がそこそこうまく機能していると言えるかどうかは、|にとってそこそこうまく機能していると考えるのか、という問題と、◆屬修海修海Δ泙」をどのように評価するのか、という問題がありますね。法曹志願者の大幅減少、さらに法科大学院へ進学しない(できない)人へのルートである予備試験の門戸が過度に制約されておりロー修了生との(学力面での)同等性がまるで実現していないという「実害」を目の当たりにしながら、それでもなお「そこそこうまく機能している」と評するのなら、それは見ている景色の違い、ないし価値観の違いということになるでしょうか。たしかに見方によっては、北朝鮮の国家体制も「そこそこうまく機能」していると言えなくもないですしね。

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